耕作放棄地の現状と課題
農地面積の減少と食料自給率の低下
我が国の農地面積は、昭和37年から平成21年の47年間に、約105万haが農用地開発や干拓等で拡張された一方、工場用地や道路、宅地等への転用等により253万haがかい廃されたため、609万haから461万haへと減少しています。
他方、食料自給率は、食料消費パターンの変化も相まって、73%(昭和40年度)から41%(平成20年度)にまで減少しており、これは主要先進国中で最も低い水準です。国際的な食料事情がいっそう不安定化することが予想される中で食料自給率の向上を図るためには、優良農地の確保と有効利用を進めることが重要となっています。
農地の減少理由として、「耕作放棄」によるものの割合が約51%、農地転用によるものの割合が48%となっており(平成21年耕地面積統計)、優良農地の確保と有効利用を進めるためには、転用規制の厳格化はもとより、耕作放棄地の解消及び発生防止が喫緊の課題となっています。
耕作放棄地が与える影響
- 耕作放棄地は、周りの環境に様々な悪影響を与えるおそれがあります。また、一度耕作をやめて数年経てば、農地の原形を失うほどに荒れてしまいます。
- 耕作放棄地が及ぼす周辺地域の営農環境への悪影響としては、病害虫・鳥獣被害の発生、雑草の繁茂、用排水施設の管理への支障等が考えられます。また、地域で中心となって農業を担う経営者への農地集積の阻害要因ともなっています。
- 地域住民の生活環境への悪影響としては、土砂やゴミの無断投棄、火災発生の原因となる等が考えられます。
- 中山間地域等、上流地域で発生した耕作放棄地は、周辺の営農・生活環境を悪化させるだけでなく、下流地域の国土保全機能の低下をも招くことが考えられます。
耕作放棄地の現状
- 耕作放棄地はこの20年間増加しています。耕作放棄地面積は、昭和60年までは、およそ13万haで横ばいでしたが、平成2年以降増加に転じ、平成17年には、埼玉県の面積に相当する38.6万haとなっています。また、農地面積が減少する中、耕作放棄地面積率は、昭和60年から平成17年にかけて約3倍に増加しています。
- 耕作放棄地の所有を農家の形態別にみてみますと、主業農家及び準主業農家の耕作放棄地面積は、平成2年以降横ばいで、平成12年から17年にかけてはむしろ減少しています。一方、土地持ち非農家や自給的農家の耕作放棄地は増加傾向にあります。平成17年には耕作放棄地面積38.6万haのうち24.1万ha(6割強)がこれらの農家によって占められています。また、土地持ち非農家及び自給的農家の耕作放棄地面積率は3割前後となっており、他の経営形態とは明らかな差があります。
- 農業地域類型別に耕作放棄地面積率をみてみますと、山間農業地域が最も高く、平成17年には14.6%と、平地農業地域の3倍に近い率となっています。次いで都市的地域、中間農業地域が12%を超える率になっています。
一方、耕作放棄地面積の増加割合をみてみますと、平成7年から平成17年の10年で都市的地域が179%、平地農業地域が146%、中間農業地域が158%、山間農業地域が155%と都市的地域の増加割合が大きくなっています。
耕作放棄地面積の推移
耕作放棄地の発生原因
平成21年に実施した全国市町村を対象としたアンケートによれば、耕作放棄地の発生要因は、全ての地域類型において「高齢化・労働力不足」が最も高くなっています。「地域内に引き受け手がいない」も比較的高く、地域内の耕作者が減少していることが大きな要因となっています。また、「農産物の価格低迷」や「収益の上がる作物がない」といった農業経営条件の悪化も大きな要因です。
地域的には、中間・山間農業地域において「鳥獣被害が大きいため」の割合が大きくなっていますが、それ以外の要因にはあまり差が認められず、耕作放棄地の発生要因が地域差を超えて一般化していることがうかがえます。
