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農業農村整備と多面的機能(岡山 酒津配水池地域)

酒津南樋門

酒津南樋門

1.酒津配水池地域の歴史と農業

(1)地域のあらましと歴史

 本地域は、岡山県南西部の倉敷市のほぼ中心に位置し、岡山県の3大河川である高梁川に面しています。倉敷市は、山陽自動車道、岡山自動車道、瀬戸中央自動車道が東西・南北に交わる交通の拠点となっています。また、中心部には、文化庁から伝統的建造物群保存地区に選定されている倉敷美観地区、デンマークの魅力や精神を受け継いでいるチボリ公園があります。南部には、瀬戸内海国立公園にある鷲羽山、王子が岳、瀬戸大橋などの景勝地と多数の由緒ある寺社があり、多くの観光客が訪れています。
 また、昔は高梁川が本地域で東西2本の川に分かれていましたが、たびたび起こる洪水と干ばつを解消するため、明治44年から内務省によって高梁川の改修工事が行われ、東側をせき止め、現在の一本の河川となりました。これに併せて、11カ所あった取水施設を1つに統合して造られたのが、笠井堰と酒津配水池です。
 酒津配水池は、3.1haの面積があり、笠井堰から取水した用水を貯留したり、沈砂池としての役目があります。これより、6つの用水路に21の樋門により決められた用水量を分配しています。
 これらを管理運営するため、大正5年に高梁川東西用水組合を設立し、今年創立90周年を迎えているところです。現在、その組合が入っている管理棟は、この建物は大正14年に建築された近代洋風建築で、岡山県近代化遺産に指定されました。

位置図

位置図

東西用水組合管理棟

東西用水組合管理棟

(2)地域の農業

 農業用水は、南側樋門から西岸用水、西部用水、南部用水、備前樋用水、倉敷用水、北側樋門から八ヶ郷用水の6水路により配水されています。受益地は、倉敷市と早島町にまたがる3,274haであり、この地域では、主に水稲が2,072ha、レンコンが80.7ha作付けされています。
 東西用水組合の設立当時は、6,580haあった受益地も都市化に伴い年々減少しています。このため、組合としては負担金の増額によって対応せざるを得ない状況です。

2.農業農村整備事業への取り組み

(1)水環境整備 酒津地区

 酒津配水池は農業用水の安定供給という本来の目的に加え、南側には酒津公園があり、恵まれた周辺の自然環境と相まって、広く市民の安らぎと憩いの場として親しまれていました。しかし、大正14年に造成されてから施設は老朽化してきていたため、維持管理にかかる労力や経費が増大し早急な整備が必要となりました。
 このため、魚巣ブロックによる護岸工の整備をはじめ、配水池周辺の水辺空間の環境整備として木製遊歩道、パーゴラ、四阿などを整備し、多面的機能の増進と地域の活性化を図るために当事業に取り組みました。

工事の概要

平成7~9年度

平面図

平面図

利用保全施設
遊歩道  L=200m
四阿      1基
パーゴラ    1基
ベンチ    8基
高欄工    3ヵ所
案内看板  1式等
親水景観保全施設
水路補修 L=312m
緑化護岸 L=38m
繋船設備 1基
レンガ風舗装 A=890m2
自然色舗装  A=465m2
小舗石舗装  A=235m2
生態系保全施設 魚巣ブロック護岸 L=292m

3.多面的機能発揮のようす

(1)多面的機能の分類

多面的機能 該当地区での発揮内容
国土の保全 洪水防止 取水樋門の操作により、下流・都市部への洪水を防止しています。
自然環境の保全 水質浄化 沈砂地の役割を果たしており、下流への土砂の流出を防いでいます
生物多様性保全 流れの緩やかな配水池と多くの樹木により、多数の生物の生息地を提供しています。
生態系保全 魚巣ブロックを設置し生態系の維持に寄与しています。
良好な景観の形成 洋風建築の管理棟やレンガ舗装、記念碑など歴史を偲ばせます。
保健休養 1年を通して、散歩やウォーキングの場となっており、健康増進に一役かっている。
公園は比較的段差が少なく、車椅子の方も多く来園しています。
文化の伝承 農業用水の歴史を伝えています。
情操教育 小学生から大学生まで、課外授業の場として活用されています。

(2)多面的機能発揮に取り組むことになった背景

 酒津配水池は農業用水の安定供給という本来の目的に加え、南側には酒津公園があり、恵まれた周辺の自然環境と相まって、広く市民の安らぎと憩いの場として親しまれていました。そこで、市街地に近接し、地域の資源といえる美しい自然条件の整った配水池の水辺空間を生かした配水池の保全管理と一体的に各施設の整備を行い、景観・生態系の保全を考慮した工法を取り入れ、配水池周辺の水辺空間の環境を整備し地域住民に快適な憩いの場所の提供を行うことで、農業水利施設の多面的機能を一層高め、豊かで潤いのある快適な生活環境の創造に取り組むことになりました。

4.多面的機能発揮への取り組みと工夫

(1)水環境整備事業 酒津地区

 目的別に「水辺空間ゾーン」、「歴史的景観ゾーン」、「せせらぎゾーン」の3つのゾーンに分け、それぞれの多面的機能を発揮すると共に、配水池のエントランスにあたるせせらぎゾーンを基点として、水辺区間ゾーンと歴史的景観ゾーンを結ぶ道路網を整備し、自然との共存の中で水や水性生物とのふれあい、人と人との語らいの場を創出し、それらが有機的に結合されるよう整備に取り組みました。

(水辺空間ゾーン)

配水池とその周辺の桜並木のある堤防の区域

遊歩道

 配水池右岸堤に、ボードウォーク仕様とした遊歩道を整備し、周辺環境にマッチさせている。その中央には張出デッキを設け、自然・水辺を散策する人と人の交流の場を醸し出している。

標準断面図

遊歩道

護岸

配水池の護岸は、石積みとしているが、水面下には魚巣ブロックを設置し、生態系の保全に努めています。

標準断面図

護岸

(歴史的景観ゾーン)

用水組合の管理棟、記念碑、その他の建物が松やケヤキ等と共存する区域

建物周辺整備

 通路をインターロッキング鋪装とし、管理棟との景観をマッチングさせるとともに、配水池内の見廻りのための繋留施設を設置し、水辺に生える眺めを演出しています。

(せせらぎゾーン)

 静かに満々と水をたたえる配水池と樋門から音を立てて流れる用水路が見事なコントラストを見せる静と動の接点であり、南側排水樋門から用水路が東方及び南方へ伸びる区域

用水路

水路の護岸を石張りとし、景観に配慮しています。

管理棟

繋留施設

標準断面図

用水路

5.住民参加のようす

 酒津配水池の南側一帯は倉敷市最大の公園(昭和26年開設)となっており、スポーツ、レクリエーション、ジョギングの場として地域住民に親しまれています。特に、酒津は県下でも有数の桜の名所として、花見シーズンには県内外の花見客で賑わっています。

桜並木

桜並木

6.取り組みに対する評価

 酒津一帯が整備され美しくなったことで、地域住民の利用に対する美意識も高まり快適な空間として広く認識されるようになりました。また、自然と触れあうことができる、子どもたちの安全な遊び場としての利用も増えています。
 平成15年11月には「東西用水酒津樋門」が、現在も活用されている国内最大級の樋門として、土木学会選奨の「土木遺産」に認定されました。また、平成17年3月には樋門郡が「岡山県の近代化遺産」に認定され、さらに、平成18年2月には「東西用水」が農業や地域の振興をはじめ自然・景観・文化など国土・農村環境の保全形成に貢献する優れた疏水であり、地域によって適切に守られているとして、「全国疏水百選」の一つに認定されました。

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