第2節 農村の地域資源の現状と課題

 前節でみたように、農業集落は、過疎化や高齢化、混住化等の進行に伴い大きく変化しており、その社会活動や農業生産活動に様々な影響や問題をもたらしている。

 本節では、農村の有する農地・農業用水、多様な生態系など様々な地域資源や農業の有する多面的機能の保全活用の重要性を指摘したうえで、地域資源の保全に関する地域での取組状況と課題、農地・農業用水等の資源や環境の保全と質的な向上にかかわる施策の取組を促進する必要性、バイオマスの利活用に向けた取組と課題を明らかにする。

(1)農村の多様な資源の現状と多面的機能

(農村の有する多様な資源)

 農村には、農地・農業用水、多様な動植物、農村景観等多様な地域資源が存在している(図III−7)。特に、農地・農業用水等は、農業生産にとって最も基礎的な資源であり、食料の安定供給の確保や多面的機能の発揮に不可欠な社会共通資本である。農地・農業用水等の整備状況をみると、全国469万ha(平成17年)*1の農地のうち、水田面積の6割が30アール程度以上に区画整理され、また、畑地面積の7割以上で農道が、同じく2割で畑地かんがい施設が整備されるなど、優良な農業生産基盤が整備されつつある*2。さらに、約4万5千kmの基幹的な水路を含め全国で約40万kmに及ぶ農業用用排水路、約7千か所のダム等基幹的水利施設や約21万か所のため池等が*3、全国の年間水利用量の3分の2に相当する566億m3の農業用水の利活用を支えている*4。

 農村には、これら農地・農業用水等の資源に加えて、豊かな自然環境や多様な生態系が培われ、美しい景観が保全されている地域が数多くある。例えば17年度に全国311地区の水田を対象に行われた調査では、我が国に生息する淡水魚の約300種のうち94種が水田周辺の水路等で確認され、希少種も18種が発見された*5。過去5年間の同調査の結果をもとにみると、国内に生息する淡水魚の種類のうち、コイ科で70%、ドジョウ科で71%の種が確認されている。このように、農村では、多様な生態系の保全に関して、水田をはじめとする農業生産の基盤が密接不可分にかかわりをもちながら、その役割を果たしている。

*1 農林水産省「耕地及び作付面積統計」

*2 農林水産省「土地利用基盤整備基本調査」及び「農用地建設業務統計」に基づく推計(16年3月現在)。

*3 農林水産省「基幹水利施設整備状況調査」(7年3月調査)及び補足調査(14年5月調査)、「長期要防災事業量調査」(9年3月調査)に基づく推計。

*4 国土交通省「日本の水資源」(17年8月公表)

*5 農林水産省、環境省「田んぼの生きもの調査2005」

(生産活動を通じて発揮される農業の多面的機能)

 農業は、食料を供給する役割だけでなく、その生産活動を通じた国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等様々な役割を有している。

 このような農業の有する多面的機能については、13年11月の日本学術会議の答申において幅広い学術的な見地から整理がなされている(表III−1)。また、一部の機能については、日本学術会議の特別委員会等の議論を踏まえ、株式会社三菱総合研究所において一定の仮定のもとに貨幣評価の試算が行われている(表III−2)。

 これらの効果は、地域住民をはじめ国民全体が享受し得るものであるが、その一方で、農業生産活動の停滞や集落機能の低下等により、多面的機能の発揮に支障を生じる事態が懸念されている。

 また、都市的地域や平地農業地域では、例えば、「子どもの農業体験等が学校の授業等で取り入れられている」ことが住民の理解の促進に効果をあげているとの調査結果も得られており*1、今後、地域での具体的な取組を通じて、農業の有する多面的機能の具体的な役割や重要性について、農業者や地域住民等に理解を求めていくことが重要となっている。

 また、農業は、林業や水産業と農山漁村地域のなかで相互に密接なかかわりを有しており、特に、農林水産業の重要な基盤である農地、森林、海域は、相互に密接にかかわりながら、水や大気、物質の循環に貢献しつつ、様々な多面的機能を発揮している(図III−8)。

*1 農林水産省「「食」と「農」、多面的機能の発揮等に関する調査」(15年3月公表)。全国3,369市町村の農政担当者を対象として実施したアンケート調査(回収率50.8%)。

(2)農村資源の保全管理の動向と課題

(変化がみられる集落の農地・農業用水等の維持保全活動)

 農村の有する資源は、農業生産活動や集落活動等を通じて維持されてきているが、適切な保全管理がなされずに、いったん、その特質や機能が損なわれると、復元に多大な時間と経費が必要となる。このため、その適切な保全管理の取組が重要となる。

 農道、農業用用排水路の維持管理形態について、その中核を担う農業集落の農家戸数規模別にみると、戸数規模の小さい集落ほど、農家のみによる維持管理の割合が低下するとともに、集落で維持管理を行わない割合が上昇している(図III−9)。また、総戸数規模別の維持管理形態をみると、大規模集落ほど全戸出役により維持管理を行う割合が低下する傾向にあり、農家戸数の減少や混住化等が進行するなかで、これまでの集落を主体とする維持管理が難しくなっていることがうかがわれる。

 次に、農道を「集落全戸」と「農家のみ」で管理する集落(2年)を対象として、2〜12年の維持管理形態ごとの割合の変化を農業地域類型別にみると、中間農業地域、山間農業地域では2年には3分の2の集落が「集落全戸」で管理し、12年もそのうちの過半が管理を継続している(図III−10)。一方、都市的地域では2年に6割、平地農業地域では5割が「農家のみ」で管理していたが、12年に同じ管理を継続するものはそれぞれその半数に満たず、3割は「集落で管理しない」状況となっている。

(地域で異なる維持保全活動の内容と農家等の負担の高まり)

 農地・農業用水等の維持保全にかかわる共同作業の具体的内容は、地域ごとに異なるが、例えば、水田では、水を取り入れる前や定期的な農業用用排水路の泥上げ、雑草が繁茂する夏の期間を中心とした草刈りやごみの除去等が行われている。

 農家1戸当たりの年間作業時間は34.1時間で、水路等の草刈りや土砂上げが主な取組となっている(図III−11)。また、10アール当たりの作業時間では、水田地域では3.1時間、畑地域では1.8時間であり、水利施設の整備状況や立地条件の違いから、水田の作業量が多くなっている*1。

 これらの活動について、例えば17年に農業用用排水路の維持管理を集落で共同して行っている集落を対象にして5年前と比較すると、19%の集落では参加人数が減少している*2。また、農家戸数規模別に共同作業を実施している集落の割合、1回当たりの作業時間をみると、農家戸数規模が小さくなるほど、共同作業の実施割合が低下するとともに、1回当たりの作業時間が増加している(図III−12)。

 また、共同作業を行う地域の3割は集落の住民全体に呼びかけを行っているが、実際の出役時間では全体の8割を農家が占めている*3。

 このように、これら集落構造や維持管理活動の形態の変化に伴い農家等の負担が高まりつつあることがうかがわれる。
写真1

*1 農林水産省「資源保全実態調査」(17年8月公表)。図III−11の注釈参照。

*2 農林水産省「農林業センサス付帯調査 農村集落調査」(17年)

*3 農林水産省「資源保全実態調査」(17年8月公表)。図III−11の注釈参照。

(景観形成や生態系保全等の地域環境の保全活動への取組)

 集落の共同活動としては、地域の景観形成や生態系・水質の保全等の取組も行われており、「景観保全・景観形成活動」は58%の集落で行われ、10年前に比較して4ポイント上昇している*1。また、「自然動植物の保護」は、7%と取組の割合は高くないものの、地域によっては環境保全に対する意識の高まり等を反映して、様々な取組がみられるようになっている。

 例えば、宮城県栗原市、登米市、大崎市にある遊水地とその周辺の水田は、天然記念物であるマガン等の越冬地として全国でも有数の規模を誇り、ラムサール条約湿地*2にも登録されているが、この豊かな自然環境の保全に向け農業者を含め多様な主体が参画した活動や環境保全を重視した農業生産の取組が進められている。また、国の特別天然記念物であるコウノトリが国内で唯一生息する地域であった兵庫県豊岡市では、人工飼育されてきたコウノトリの野生への復帰を目指し、アイガモ農法による無農薬の水稲栽培、転作田のビオトープ*3化、水田の冬期湛水によるコウノトリの餌場の自然生態系の再生など、農家、地域住民、行政、団体等が連携を図りつつ、様々な取組が進められている。

*1 農林水産省「農林業センサス付帯調査 農村集落調査」(17年)

*2 「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」に基づき、締約国が、水鳥の生息地等として国際的に重要な湿地を指定し、登録簿に掲載された湿地。

*3 動植物が恒常的に生活できるように造成・復元された小規模な生息空間。

(地域の共同活動に対する負担感と多様な主体の参画への期待)

 農地・農業用水等の維持管理にかかる地域の共同作業に対しては、農家の7割が、「負担を感じる」または「どちらかといえば負担を感じる」と回答しており、負担感が高くなっている*1。

 また、担い手農家のうち今後の共同活動に問題がないとする割合はわずか2割であり、今後、作業内容等に応じて農家や非農家、地域住民、市町村等の多様な主体の参画に期待していることがうかがわれる(図III−13)。

 一方、一般市民を対象とした意識調査によると、農家が中心となった農地・農業用水等の維持管理活動が、集落構造の変化等によりぜい弱化していることについて6割が認識している*2。また、維持管理活動の今後のあり方について、9割が「活動が実施されるような対策を行って続けていくことが必要」と考え、その理由として8割が「食料生産がこれ以上低下してはいけない」をあげている(図III−14)。このように、維持管理活動の変化が及ぼす影響や何らかの対策を講じることについて、理解が広がっていることがうかがわれる。

*1 農林水産省「農村の地域資源(農地、農業用水等)の維持管理に関する農家の意向」(17年2月公表)。全国の農業者3,000人を対象として実施したアンケート調査(回収率59.0%)。

*2 農林水産省「国民意識調査」(18年1月公表)。図III−14の注釈参照。

(地域資源の保全管理施策の構築の必要性)

 これまでみてきたように、農地・農業用水、農村の多様な生態系等の地域資源は、農家を主体とする集落の農業生産活動や社会活動を通じて、地域において一体的に維持保全が図られてきた。これら資源は、地域住民をはじめ国民が広く享受している農業の多面的機能の発揮にも深くかかわっている。しかしながら、兼業化や高齢化、過疎化、混住化等の農業集落の構造的な変化や農業生産活動の停滞が続くなかで、その維持保全が困難となりつつあり、その維持保全を図るための仕組みを構築することが求められている。

 また、担い手の育成・確保の取組や「品目横断的経営安定対策」の導入を通じた地域農業の構造改革の加速化に対応するためにも、担い手だけでは困難である膨大かつ広範な農地・農業用水等の維持保全に、農業者だけでなく地域住民等も含めた多様な主体が参画して取り組む施策を構築する必要がある。

 さらに、環境問題に対する国民の関心の高まりにこたえ、我が国農業生産全体のあり方を環境保全を重視したものに転換するためには、農村の環境保全の維持向上に深くかかわる農業者による環境負荷軽減の取組を、地域的な広がりをもって促進していく必要がある。

 このように、農地や農業用水、農村環境の維持保全の取組は、地域において、面的な広がりと相互の関連性を保ちつつ、多様な構成員がともに生活する農村社会の特質を踏まえて、地域における一体的な施策として新たに構築する必要がある。

(農地・水・環境保全向上対策(仮称)の具体的な取組の方向)

 これらを踏まえ、経営所得安定対策等大綱(17年10月)では、地域において農地・農業用水等の資源や環境の良好な保全と質的向上を図るため、地域ぐるみで効果の高い共同活動と、農業者ぐるみでの先進的な営農活動を総合的かつ一体的に実施する活動を支援する「農地・水・環境保全向上対策(仮称)」を導入することが決定された。この施策は、産業政策として導入される「品目横断的経営安定対策」とあわせて地域振興政策として新たに導入されるものである。

 現在、「農地・水・環境保全向上対策(仮称)」については、19年度からの導入に向けてその具体的な準備、取組が進められている(図III−15)。

 地域の共同活動に関しては、農業者を中心に地域住民や自治会、NPO、企業等、地域の事情に応じて多様な主体が参画する活動組織が主体となる。この活動組織が策定した活動計画に基づき、農地等の適切な保全管理とあわせ、農業水利施設等の長寿命化、地域の生態系や景観保全に資する活動を行うなど、効果の高い取組を実践する場合に、国・地方公共団体・農業者等の役割分担を踏まえて支援を行うこととしている。

 また、営農活動に関しては、この共同活動への支援を行う地域において、たい肥の散布や浅水での代かき等環境負荷低減に向けた取組を共同で行ったうえで、地域内で作物ごとに生産者の半数以上が取り組むなど相当程度のまとまりをもって、化学肥料や化学合成農薬を原則5割以上低減するなど先進的な取組を実践する地域に対して支援を行うこととしている。環境負荷低減に向けた取組に対する支援として、一定の活動経費を活動組織に交付するとともに、先進的な取組に対する支援として、技術の導入にかかる経営コストの増加経費に着目し、取組面積に応じて活動組織に対して交付するもので、取組を行った農家への配分ができる仕組みとなっている。

 このほか、地域の活動をさらに高度なものとしていくため、協定に基づく地域のより高度な取組を対象に支援を行うこととし、その内容は今後実施する予定のモデル的な支援の取組等を踏まえつつ、検討することとしている。今後、19年度からの施策の円滑な導入に向け、施策の普及啓発、推進体制の整備を促進する必要がある。

(3)バイオマスの利活用の促進

(循環型社会の形成に資するバイオマス等の地域資源の利活用)

 バイオマスとは生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」である。主なバイオマスには、家畜排せつ物や食品廃棄物等の「廃棄物系バイオマス」、稲わら、間伐材等の「未利用バイオマス」、プラスチックやエタノール等に利用可能なさとうきび、とうもろこし等の「資源作物」等がある。

 バイオマス中の炭素は、植物が大気中の二酸化炭素を光合成により吸収(固定)したものである。このため、バイオマスの燃焼は、大気中のもともとの二酸化炭素を増加させないこととなる。このような、バイオマスのもつ特性は「カーボン・ニュートラル」と呼ばれる。我が国は、京都議定書のもとで2008〜2012年の間に温室効果ガスの排出量を1990年に比べ6%削減する義務を負っており、バイオマスの利活用は二酸化炭素の排出量の削減に有効であるとともに、持続可能な循環型社会の形成等に資するものである。さらに、最近、中国をはじめとする経済発展が続く国々の原油の需要増大や有限である原油埋蔵量の中長期的な供給懸念等を背景として、原油価格が高騰しており、我が国経済社会に様々な影響を及ぼしている。このため、化石資源に過度に依存しない経済社会を構築していくうえでも、バイオマスや風力等の地域資源の利活用は重要な課題となっている。

(バイオマス資源の総合的な利活用に向けた取組)

 我が国で平成14年度に発生した廃棄物等は5億8千万トンであり、このうちバイオマス系循環資源は3億1千万トンで全体の54%を占めている*1。また、農業、食品産業由来の廃棄物系バイオマスや未利用バイオマスの経済的価値は約1,900億円との試算もあり*2、日常の経済活動においても一定の役割を果たしている。しかしながら、バイオマス系廃棄物の利活用の状況をみると、農地へのたい肥等の還元による自然循環率が27%であるものの、循環利用率が14%と低くなっており、バイオマスの総合的な利活用の推進が課題となっている(図III−16)。このため、14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」*3に基づき、関係府省や産学官が連携して、推進体制の整備や都道府県マスタープランの策定、木質系廃材や未利用材の熱源・発電利用、家畜排せつ物や食品廃棄物の肥飼料化、メタン発酵等の技術の開発・実証、実用化等の取組が推進されている。

 また、市町村段階では、地域の実情に応じて効率的・総合的な利活用システムの構築を目指す「バイオマスタウン構想」の取組も進められている。

 さらに、17年からは、バイオマスプラスチックをはじめ、バイオマスを原料とする新たな商品の普及を目的として、バイオマスマークの運用が始められている。

*1 環境省「循環型社会白書」(17年版)

*2 農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算」(15年度)

*3 [用語の解説]を参照。

(石油代替資源としてのバイオマスのエネルギー利用に向けた各国の取組)

 現在、日常生活に不可欠な電気、ガソリン、プラスチック等は、原油等の化石資源にその原料の多くを依存している。しかしながら、化石資源は、数十年後に枯渇するともいわれていること等から、この資源に代替するバイオマスをエネルギー等に利活用する取組が国内外で推進されている。

 現在、世界各国では、石油に代替するエネルギーとしてエタノールを自動車等の燃料として利用する取組が進められており、これらのエタノールのほぼ全量がさとうきびやとうもろこし等の資源作物を原料に製造されている(図III−17)。特にブラジル、米国は、世界のエタノール生産量の7割を占めるとともに、エタノール消費量の90%以上が燃料用需要で占められるなど、石油からバイオマスへのエネルギー代替が積極的に推進されている(図III−18)。

 さらに、米国は1999年の大統領令により、バイオマス製品、バイオマスエネルギーの利用を2010年までに3倍に増加する目標を掲げており、ガソホール(ガソリンにエタノールを10%添加した自動車用燃料)と呼ばれるバイオマス燃料の使用が広がっている。また、中国、インド、タイなどアジア各国でもバイオエタノールを混合したガソリンの導入が進められている。

 また、バイオディーゼル燃料(BDF*1)の利用については、欧州連合(EU)が積極的に取り組んでおり、世界のBDF生産量の大部分を占めている。EUは2010年までにバイオマス由来燃料の市場に占める割合を5.75%とする基準目標を設定しており、生産量も増加傾向で推移している。

*1 BDF:Biodiesel fuel

(国内でのエネルギー利用等に向けた取組)

 国内のバイオマスの年間賦存量は、原油に換算すると、廃棄物系バイオマスが2,400万kl、未利用バイオマスが550万kl、資源作物が540万klに、それぞれ相当し、これらの合計は、我が国の平成16年の原油輸入量2億4,300万klの1割に相当する*1。バイオマス由来燃料の利用については、京都議定書目標達成計画(17年4月)において、22年度には輸送用燃料に原油換算で50万klの導入が目標とされている。

 国内のバイオマスのエネルギーへの利活用としては、BDFの製造・利用の取組が全国で推進されており、家庭や飲食店から回収した廃食油に化学的処理を行って燃料化し、市営バス、ごみ収集車や公用車等の燃料に使用されている。京都市の取組では、国民400人が1年間に排出する二酸化炭素に相当する年間4千トンの削減に貢献している*2。

 また、地域の様々なバイオマス資源を活用したバイオエタノールの製造等の実証試験が北海道十勝地区、山形県新庄市、大阪府堺市、岡山県真庭市、沖縄県宮古島市、伊江村の全国6か所で行われている。

 さらに、バイオマスの製品については、とうもろこし等の資源作物を原料としたバイオマスプラスチックの開発や利活用が民間企業等で図られており、既にパソコンや携帯電話等の家電製品の外装材、リボンやラッピング材等として利用されている。

 これらの取組に加え、風力発電や雪氷の熱利用等の地域資源の利活用に向けた取組が推進されている。

*1 経済産業省「資源・エネルギー統計」

*2 環境省「環境白書」(17年版)

事 例

バイオエタノールの製造・利用に向けた取組 図1

 沖縄県の離島の伊江村では、平成17年度から農林水産省等の関係府省等の連携により、バイオエタノールの製造・利用に向けた実証試験の取組が行われている。

 この取組は、バイオエタノールの原料となる高バイオマス量さとうきびの栽培から、糖蜜の製造、エタノール発酵・精製等によるバイオエタノールの製造、バイオエタノール混合ガソリンの製造、同燃料を用いた自動車走行利用までの実証試験を一貫して行うものである。

 計画では、島内の50アールの畑で栽培される高バイオマス量さとうきび(年間30トン)の糖蜜から製造されるバイオエタノール混合ガソリン37klを、伊江村役場の公用車で使用することとしている。バイオエタノール混合ガソリンの普及を図るためには、特に原料費を含めた製造価格の低減が重要である。このため、台風や干ばつが多い厳しい自然環境のもとでのさとうきびの安定多収栽培技術、資源循環型でかつ効率の高い製造工程を実地検証するとともに、各工程での効率向上のための研究が進められている。

 バイオエタノール混合ガソリンの普及は、二酸化炭素排出量の削減、地域の資源作物の利活用の促進、化石資源への依存からの転換に役立つことが期待されている。今後は、この実証試験によって得られる知見や課題等をも踏まえつつ、バイオエタノールの製造・利用の取組を推進することが課題となっている。写真1

(バイオマス等の地域資源の利活用の促進に向けた課題)

 バイオマス等の地域資源は、地域により発生する種類や量、形状が異なるため、原料の収集・輸送の経費の効果的な削減方法をはじめとして、地域特性に応じたシステムを構築する必要がある。また、バイオマスは、地域における農業生産活動を通じて生み出されるものが多いという特徴をもっている。このため、農業の振興は、食料の安定供給や多面的機能の発揮等の役割にとどまらず、化石資源に代替するエネルギーやバイオマスプラスチック等の様々な製品の生産にもつながる意義を有しており、ひいては地球温暖化の防止、循環型社会の形成等に貢献するものである。一方、バイオマスの利活用に取り組む市町村等では、施設設置等の資金調達、取組体制の整備、製品の利用先の確保等の課題があげられている(図III−19)。

 これらのバイオマス利活用をめぐる課題とこれまでの対策・施策の進捗状況の評価等を踏まえ、18年3月に新たな「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定された。新たな総合戦略では、バイオマス由来輸送用燃料の利用の促進、未利用バイオマスの活用等によるバイオマスタウン構築の加速化、人材支援・技術協力等によるアジア諸国等海外との連携等を図ることとされており、今後、国、地方公共団体等をはじめ、大学等の研究機関、民間企業、地域の環境NPO等が一体となった取組の推進が重要である。