平成7年度 農業の動向に関する年次報告


第1部 農業の動向 概要

                                  農林水産省
( Sorry,Japanese Version Only. )

 本年度の報告は、大きな変革の時代に直面している農業、農村及び食品産業の特徴的な動
向を全6章にわたり幅広く分析・検討した。特に、農産物輸入の増加や円高の進行等を背景
に消費者の関心が高まっている食料品の内外価格差と、農業、農村の活性化の鍵となる次世
代を担う農業生産の担い手という二つの課題について、特集として重点的に検討を行った。

I  平成6〜7年度の特徴的な動向

1   天候に恵まれた農業生産
 6年度の農業生産数量は、天候に恵まれて豊作であったことから、全体で12.4%上昇

2 景気・為替変動と農業、農村、食品産業
 食料費支出は、消費者が「値ごろ感」のあるものを求める低価格志向が続いていること
を背景に、景気回復期に入ってもマイナスで推移。また、急速な円高の進行等による農産物
の輸入の急増
により国内産地に影響。一方、食品製造業では生産拠点の海外移転等が、大手
スーパー等では食品の開発輸入等が進行。

3 農協系統の事業・組織のあり方
 農協系統では、これまでも単位農協の合併等を推進。7年12月に「住専問題の具体的な
処理方策について」が閣議決定されたのを機に、金融システムの一部を構成している信用事
業を中心として農協系統の再編・合理化の早急な実現が強く要請されることとなり、農政審
議会において8年1月から農協系統の事業・組織のあり方について検討に着手

4  ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策の実施状況
 同合意の実施初年度の7年度には、「ウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策大綱」に
基づき、効率的かつ安定的な経営体の育成、農業農村基盤の整備、中山間地域等農山村地域
の活性化等のための対策を実施。

II 食料需給と農業、食品産業

1 食料需給と食生活
 1人当たりの供給熱量は、ほぼ飽和水準にあるが、消費品目構成の変化健康・安全志
向の高まり
等がみられる。食料自給率は、3年度以降、異常気象により米が著しく減収となっ
た5年度を除き、46%(熱量ベース)で横ばいで推移

食用農産物の自給率の推移

2  米の需給動向と新たな米流通
 7年産米の作柄が、作況指数102の「やや良」となったこと等から、米の需給は引き続き
緩和状態で推移
7年11月に施行された「食糧法」においては、米の需給及び価格の安定を
図ることを基本とし、新生産調整推進対策、備蓄・調整保管を実施するほか、従来の流通規
制が緩和

3 国際化時代の畜産物需給と畜産経営
 食肉の国内生産量は、牛肉が増加傾向にあるが、豚肉、鶏肉は引き続き減少。7年4月以
降、円高の進行、関税率等の引下げにより食肉の輸入量が急増し、冷凍牛肉及び豚肉につい
て関税の緊急措置が発動
。牛乳・乳製品は、近年、需要量、生産量ともほぼ微増ないし横ば
いで推移。

4 畑作物等の需給動向
 野菜生産は、輸入量が増加するなか、数量、品質、価格の各面で安定した供給が以前にも
まして重要。花きは、切花の家計購入金額が減少となったが、家庭消費は定着

5 食品産業の動向
 食品小売業は、スーパー等のセルフ店の店舗数、販売額に伸び外食産業は、景気低迷の
影響から売上高の伸びが鈍化食品製造業は、出荷額の伸びに鈍化がみられるなか、弁当等
の調理食品に回復のきざし

6 技術開発と環境
 生産性向上、高付加価値化、労働快適化及び環境保全の分野において、農業者の要望の高
新技術の開発・普及が2005年までに進展。また、食料の生産と消費に伴う環境への負荷を
低減するため、環境保全型農業の取組、廃棄物のリサイクルへの取組等が進展

III 世界の農産物需給と国際協力

1 農産物の国際需給と貿易
 最近の穀物等の国際需給は全体として引き締まり傾向中長期的には、人口の増加等による
需要増、環境面等の制約によりひっ迫する懸念もある。このため、各国における持続的な食料
生産に向けた努力が必要。

世界の人口の見通し

2 国際協力
 開発途上国からの協力ニーズは、対象国の発展段階により多様化・高度化。我が国は、
主要穀物等の増産だけではなく、流通・加工、研究・開発等多様な協力を実施

IV 食料品の内外価格差とその要因(特集)

 昭和60年のプラザ合意以降、急速に進行した円高を背景に拡大した食料品の内外価格差
について、その要因を探るとともに、縮小に向けた課題を検討

1 食料品の内外価格差の現状
 我が国の食料品の小売価格は、欧米諸国に比べ3〜4割程度割高

2 食料需給構造と価格形成
 食料品価格に対しては資材費等の直接的なコストのほかにも、国土条件の制約、消費者の
志向や人件費、地価、エネルギー価格、為替レート等の種々の要因が重層的に影響

食料品の価格形成にかかる諸要因

3 食料品の生産、流通、消費における内外価格差要因

(1)農業生産資材の小売価格等をアメリカと比べると、製造・流通段階での人件費やエネル
ギー価格、資材の消費規模、使用条件等の違い等から1.2〜2.4倍の価格差

農業生産資材価格の日米比較

(2)流通段階では、トラック運送料金は大口・長距離輸送ほどアメリカより割高の傾向。ま
た、多段階な食品卸売業の構造、多頻度最寄買い等の消費者行動、さらには、多頻度小口
配送の増加等はいずれも製品価格の押し上げ要因

(3)きわめて小さな農用地面積(1戸当たりはアメリカの136分の1)や、著しく高い農地
価格(アメリカの約100倍)のため、土地利用型農業では規模拡大が容易でなく、農産物価
格はある程度割高とならざるを得ない
面がある。

4 食料品の内外価格差縮小に向けての課題

(1)円高等を背景に国際市場からの影響が強まると見込まれるなか、食料を安定的に供給
していくこととあわせて、食料品の内外価格差の縮小を図る努力が必要

(2)我が国の場合、各産業に共通する人件費、地価、エネルギー価格等が諸外国と比べ高
水準
であるといった問題はあるが、農業においては規模拡大等を通じたコスト低減を進
めていくことが重要。また、関連産業においても一層の合理化、効率化等の努力が必要。

V 次代を担う農業生産の担い手の新たな展開(特集)
 
 これまで農業生産を中心的に担ってきた昭和一けた世代が、農業からリタイアする時期に
さしかかろうとしており、次代における農業、農村の活性化に必要な担い手確保のための課
題と方策について検討。

1 農業生産の担い手の長期的変貌

(1)農家、農業労働力の構造変化

 a 農業就業人口(農業に主として従事している者)に占める65歳以上の者の割合は、
 40年には13%であったのが、7年には46%と、高齢化が急速に進行
 b 昭和一けた世代は農業就業人口の約3分の1を占め、大きな山を形成女性では、最
 近5年間でこの世代の人数が減少しているが、男性では、定年を契機とした流入等によ
 り増加

 

1歳刻みにみた農業就業人口曲線の平成2〜7年の変化(男性)

1歳刻みにみた農業就業人口曲線の平成2〜7年の変化(男性)

 

農家人口、農業従事者等の年齢別の構成

農家人口、農業従事者等の年齢別の構成

 c 他方、1年間に1日以上農業に従事した者(農業従事者)をみると、若年層において
 も農村地域に数多く存在
。しかし、経営規模の制約から親子二世代就農に踏み切れず、
 「他産業が主」となる者も少なくない。このため、これら若年層のなかから次代の農業
 経営者を確保していくことが課題

(2)若い担い手の就農動向

 a 若い担い手は、就農経路の変化を伴いつつ、ここ数年少数ながら増加傾向で推移。ま
 た、このうち新規参入者も着実に増加。

若い担い手の動向

 b Uターン青年の就農理由は、「やり方次第でもうかる」、「時間が自由」等の「自
 発的理由」が、「家の事情等による理由」を上回る
。また、農業生産法人の従業員は、
 職安や一般求人広告によって募集されることが多い。このようななかで、近年、「職業
 としての農業観」が形成
されつつある。

 c 若年層が新たに就農する際「技術」、「農地」、「資金」の三つの課題に直面。こ
 れらの面への支援を実施している市町村ほど、新規就農者が多い。

(3)農業、農村における女性の役割
 農家女性は農業就業人口の約6割を占めるが、特に若年層でその割合が高い。近年、女
性の役割を前向きにとらえ、農家女性による起業や家族経営協定が進展

2 農地流動化の動向と規模拡大による効果
 借入による農地流動化が着実に進行し、経営耕地面積の農家1戸当たりの規模別面積シェ
アは3ha以上層で上昇。しかし、その効果が十分に発現するためには、分散農地の解消、
ほ場の大区画化等の推進が重要

3 多様な農業経営の展開

(1)稲作等の土地利用型農業では、数は少ないものの大規模経営が着実に増加。他方、高所
得を実現する集約的・複合的な経営もみられ、農業経営は多様化。また、担い手を確保し
ている農家は積極的な経営を展開。なお、農業経営基盤強化法に基づく農業経営改善計画
は約6万計画(8年2月)。

(2)地域の農業生産の維持・発展のためには、地域内の高齢者や兼業従事者も含めた多様
な主体の円滑な連携、役割分担に基づく地域全体での取組も有効

4 意欲のある若い担い手を確保するための条件
 若い担い手を十分確保するために今後求められる取組としては、次の4点。

(1)意欲のある者が若いうちから農業に本格的に従事できるような就農の場の創出
(2)新規参入者等に開かれた職業としての農業を確立するための就農条件の整備
(3)職業としての農業の魅力を高めるため、高い農業所得とゆとりある労働条件の実現
(4)農村の活性化にも寄与するとの観点から、地域全体での支援体制の構築

VI 農村社会の変化と活性化

1 農村の人口動向と生活環境
 農村地域では高齢化とともに混住化も進行。このため、高齢者にも住みやすい農村社会の
維持・向上を図る動きや、計画的な土地利用への取組がみられる。また、農村の生活環境施
設の整備水準について、都市との格差、農村間の格差の縮小が引き続き必要

2 中山間地域の活性化
 中山間地域の活性化に当たっては、就業機会の確保が重要。そのためには農林業、「農村
型リゾート」等の地域内発型産業の振興が重要
。また、農業の担い手、集落・地域のリーダー
等の育成・確保等の人づくりに向けた多様な取組がみられる。

3 農村と都市との交流
 農村と都市双方にとって多様な効果が期待できる都市農村交流が活発化。農業体験サービ
スを提供する農家民宿等の普及が図られるなどグリーン・ツーリズム(農山漁村滞在型余暇
活動)の振興等が注目
される。

む す び

 我が国の農業、農村及び食品産業は、大きな変革の時代に直面している。今後、諸施策を
積極的に推進し、変革の時代に力強く対応していくためには、特に次の4点が重要

 (1)担い手の確保・育成、農地流動化の促進等を進めることにより、農地、労働力を有効か
 つ効率的に活用できる農業構造の実現
を図ること。

 (2)国民の豊かな食生活を支える食料の安定供給を維持・確保するため、国内生産を基本と
 しつつ、輸入、備蓄を適切に組み合わせ
ていくこと。

 (3)農業と食品産業との連携の強化、生産・加工・流通の各段階での高度化、合理化を推進
 するとともに、食品表示等の消費者政策の普及・浸透を図ること。

 (4)都市住民にも開かれた農村空間の維持・形成を図り、条件が不利な中山間地域の活性化
 に努めるとともに、食料供給と環境との調和を図ること。

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