2 我が国の木材需給と木材貿易をめぐる国際的な動向

(1)木材需給の動向

 平成16年の用材の木材需要量は丸太に換算して8,980万m3であり前年より3%の増加となった。平成15年の我が国の国産材供給量 (用材)が15年ぶりに前年比増となったことに続き、平成16年においても前年より40万m3、対前年比2.5%増の1,656万m3となり、2年連続で国産材供給量 は増加した。製材用材では国産材供給量は前年より26万m3、対前年比2.3%増となったことから、その結果製材用材の自給率は前年より0.4ポイント上昇して32.7%となった。他方、パルプ・チップ用材、合板用材での自給率はそれぞれ、11.2%、3.9%となった。また、輸入量 は前年より3%増となる7,325万m3となった。その結果、用材全体の自給率は前年より0.1ポイント低下して18.4%となった(図W−34)。

(合板用材供給量の増加)

 平成15年の合板用材(合板用丸太及び合板等)輸入量は、建築基準法改正により平成15年7月からホルムアルデヒド発散量 の表示が義務化されたことへの対応が、輸出国の一部において間に合わなかったことで減少したが、平成16年では、原産国でこの対応が進んだことなどから輸入量 は前年比8%の増加となった。合板等においては、インドネシアとマレーシアの2国で我が国輸入量 の9割を占めているが、近年中国からの輸入が増加しており、平成16年の丸太換算の輸入量 は前年比27%増となった(図W−5)。

 合板用材については、近年の技術の向上等により小径材も利用可能となり、スギ間伐材等の国産材針葉樹の利用も増加している。

 5年程前までは、国産材の合板用丸太は広葉樹が過半を占め、その供給元は北海道など一部に偏っていたが、平成16年ではスギが国産材の合板用丸太の5割を占めるなど針葉樹が9割以上となり、供給元の地域も北海道、東北地方のほか、中国地方や九州地方など全国的に広がりつつある。その結果 、平成16年の合板用の国産材供給量は、前年比52%増、5年前に比べ約4倍となるなど大幅な増加となった(図W−6)。

(中国、ロシアからの輸入形態の変化)

 平成16年では構造用集成材の輸入量は前年比13%増となった。供給元の内訳は、欧州材が7割を占めているが、全体に占めるシェアは平成15、16年と減少しており、中国からの輸入量 が急増している。平成16年の中国からの輸入量は前年の倍増となる13万m3となりシェアも2割を超え、国別 でみると、オーストリア、フィンランドに次ぐ第3位の供給元となった(図W−7)。

 中国から我が国への林産物輸入は、以前はチップ用材が大半を占めていたが、このように近年は構造用集成材や合板等の木材製品の輸入が増えはじめている。ロシアから中国への針葉樹丸太の輸出が近年急増しており、これらも我が国に輸入される木材製品の原料として供給されていると考えられている。

 また、ロシアから我が国への木材の輸入は、丸太の輸入が8割を占めているが、一方で製材品の輸入が増加傾向にあり、平成16年では150万m3を超えた(図W−8)。

 かつて、東南アジア諸国からの輸入が原料としての丸太から製品としての合板へシフトしていったように、ロシアからの輸入も製品の割合が増加傾向にあり、同様な経緯をたどる兆候がみられる。

(国産材輸出の動向)

 近年、国産材輸出が増加しており、平成15年以降の丸太の輸出量は7千m3を超え、平成17年の輸出量 は2万2千m3と、前年の約3倍となった(図W−9)。丸太輸出の8割近くが中国への輸出であり、中国への輸出増加が全体の輸出量 増加をけん引している。

 急速な経済発展を続ける中国では木材需要が増加しているが、平成10年(1998年)に起きた大洪水を契機に、長江上流域等における天然林の伐採禁止等の措置を講じており、国内産の丸太供給が減少している。一方で輸入が増加しており、平成14年(2002年)の丸太輸入量 は平成10年の5倍以上となっている(図W−10)。

 国産材の輸出にあたっては中国の木材需要について把握することが重要である。例えば、都市部においてはマンション等の集合住宅が多く、内装や建具、家具等を対象として売り込んでいくなど、戦略的な取組が重要である。

(2)木材価格の動向

 スギ、ヒノキ、ベイツガの丸太価格の動向を長期的にみると、いずれも昭和55年が最高値となっておりその後は下落しているが、ベイツガよりもスギ、ヒノキの下落幅の方が大きくなっている。ベイツガについては平成元年以降はほぼ横ばいであるのに対し、スギ、ヒノキは下落傾向が続いており、平成17年の価格はいずれも昭和55年の3割程度の水準まで下落した(図W−11)。

 近年の短期的な価格推移をみても国産材価格は低調である。スギ、ヒノキの乾燥材及び未乾燥材、ホワイトウッド集成材の価格をみると、スギ、ヒノキでは下落・低迷の傾向にある。ホワイトウッド集成材は、平成17年においては前半は上昇し、後半は下落している。スギ乾燥材とホワイトウッド集成材はともに柱に多用されることから両者は、価格面 で競合している(図W−12)。

 スギの価格については、従来は代表的な製材用材の樹種であったベイツガの影響を受けて下落し、近年ではホワイトウッド集成材等との競合が厳しいことから、低迷している。短期的には、平成16年に多発した災害により被害木の出材が増加したことも影響しているものと考えられる。

(3)木材貿易をめぐる国際的な動向

(WTOでの林産物貿易交渉の動向)

 平成13年(2001年)11月にカタールのドーハで開催された第4回WTO閣僚会議において、いわゆるドーハ・ラウンドが立ち上げられ、世界の貿易の更なる自由化に向けた交渉が開始された。林産物は非農産品市場アクセス交渉グループにおいて関税削減方式、分野別 関税撤廃等についての交渉が行われることとなった。平成15年(2003年)9月にメキシコのカンクンで開催された第5回WTO閣僚会議では、先進国と途上国との対立等を背景に具体的な合意のないまま閉会した。その後交渉は停滞したものの、平成16年(2004年)7月のWTO一般 理事会においてモダリティ(交渉の大枠)を確立するための枠組みが合意された。

 平成17年(2005年)12月に香港で開催された第6回WTO閣僚会議においては、非農産品市場アクセス交渉は、農業交渉等と同様にモダリティ合意には至らなかったものの、関税削減方式について一定の方向性が示されるなどの進展がみられ、平成18年(2006年)4月末までにモダリティに合意し、同年中に交渉を終結することとされた。

(EPA/FTAでの林産物貿易交渉の動向)

 WTOを中心とした多角的貿易体制の枠組のもとでの貿易自由化についての交渉が進められる一方で、近年、特定の国・地域のみで関税撤廃等を行う経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)が世界各地で進められている。EPA/FTAは構成国間のみでの交渉であるため比較的短期間での交渉妥結が可能であり、WTOにおいては先進国と途上国が鋭く対立し、なかなか交渉が進展しないことなどがEPA/FTAの取組が増加している背景としてあげられている。

 我が国は、WTOを中心とした多角的な自由貿易体制の維持・強化を基本としつつ、これを補完するものとしてEPA/FTAを積極的に推進している。これまで我が国においてはシンガポール、メキシコとのEPAが既に発効しており、平成17年12月にはマレーシアとの間で協定の署名が行われた。また、平成16年11月に、フィリピン、平成17年9月にタイとの交渉が大筋合意に達し、早期の署名に向けて作業を行っているほか、ASEAN(東南アジア諸国連合)全体、インドネシア、チリとの交渉が行われている。

(違法伐採対策の動向)

 各国における持続可能な森林経営の取組を著しく阻害するものの一つとして、違法伐採があげられる。違法伐採の国際的な定義はないが、一般 的にそれぞれの国の法律に違反して伐採される行為を指している。

 違法伐採問題は平成10年に英国で開催されたバーミンガム・サミットで取り上げられ、平成12年の九州・沖縄サミットにおいて、この問題への対処方法を検討することが合意されてから、国際的・社会的な関心が強く持たれるようになった。

 我が国は、平成15年にはインドネシアとの間で、二国間協力による先駆的な事例となる、違法伐採対策のための協力に関する「共同発表」・「アクションプラン」を策定し公表したほか、「アジア森林パートナーシップ(AFP)」等においても、違法伐採問題について積極的に議論に参加し、国際的な取組・協力を通 じて違法伐採対策の推進に取り組んでいる。

 このような取組を進める中、平成17年7月に英国で開催されたグレンイーグルズ・サミットでの行動計画の中で、違法伐採対策についての取組が明記された。行動計画の中では、違法伐採に取り組むことが森林の持続可能な経営に向けた重要な一歩であることへの合意や、違法伐採対策について各国が最も効果 的に貢献できる分野において行動することで違法伐採対策を推進することなどが記されている。

 我が国では、この行動計画を受けて、「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を作成するとともに、グリーン購入法に基づく政府調達の基準を見直し、木材・木材製品に関し、合法性が証明されていることを基準とした。また、持続可能性への配慮も併せて定めている。