3 水産物貿易

(1) 輸入の動向

 4年の水産物輸入は,前年に比べ数量(通関時の形態による重量)で4%増の297万トン,金額でほぼ前年並みの1兆6,803億円となった( 図I-3-1 )。なお,輸入額をドルベースでみると,円高の進行により,前年比6%増の133億ドルとなっている。また,我が国の総輸入額に占める水産物の割合は,前年に比べ0.4ポイント上昇し5.7%となった。4年の水産物輸入額を他の主な品目の輸入額と比べてみると,我が国の最大の輸入品目である原油及び粗油の1/2弱の水準であり,鉄鋼の3.5倍,自動車の2.6倍に達している( 図I-3-2 )。主な輸入先別にみると,近年減少傾向にある韓国が引き続き減少したほか,近年増加が続いていたタイが減少に転じたが,前年減少した米国が増加に転じたほか,台湾,中国等は引き続き増加した。また,ロシアからの輸入は大幅に増加した。

 主な品目別にみると,輸入額が最も多いえび類は,近年増加傾向にあったが,4年は,前年に比べ数量で5%減の29万トン,金額で12%減の3,651億円となった( 図I-3-3 )。輸入先別にみると,ヴィエトナムからの輸入は増加したものの,インド,フィリピン,台湾等からの輸入は減少した。

 まぐろ・かじき類は,きはだ,びんなが等が増加したため,前年に比べ数量で6%増の27万トン,金額で15%増の1,690億円となった。

 さけ・ます類は,チリ,ノールウェー,ロシア等からの輸入が増加したこと,主力である米国からの輸入価格が上昇したこと等により,前年に比べ数量で14%増の17万トン,金額で28%増の1,299億円となった。

 かに類は,ロシア及び中国からの輸入が増加したため,前年に比べ数量で5%増の12万トン,金額で4%増の969億円となった。

 たら類は,すけとうだらの国内生産量が減少傾向にあることに加え,前年減少した米国のすけとうだら漁獲量が回復したこと等により,米国,ロシア等からのすけとうだら輸入が急増したため,前年に比べ数量で34%増の27万トン,金額で19%増の831億円となった。

 たこ類は,カナリー諸島,モーリタニア等からの輸入が増加したため,数量では前年に比べ8%増加し12万トンとなった。しかしながら,総じて価格が低下したため,金額では17%減少し528億円となった。

 いか類は,前年に比べ数量で3%増の10万トン,金額で3%減の456億円となった。そのうちもんごういかは2年以降減少が続いており,4年も減少した。もんごういかを除くいかは,増減を繰り返しているが,4年は増加した。

 さば類は,近年の日本近海における生産量減少に伴う加工原料の供給不足を補う形で輸入量を急増させてきたが,4年は,輸入の大半を占めるノールウェーを始めアイルランド,オランダ等からの輸入が減少したため,数量では前年に比べ29%減少し14万トンとなった。また,ノールウェー産の価格が低下したため,金額では45%減と大幅に減少し174億円となった。

 水産物の調製品は,輸入が年々増加している。4年は,うなぎ調製品,いくら調製品,えび調製品等が増加したため,数量で前年比8%増の15万トン,金額で5%増の1,739億円となった。このうち,うなぎについてみると,活魚での輸入が数量で1万7千トン,金額で224億円であったのに対し,調製品での輸入は数量で3万6千トン,金額で746億円であった。また,缶詰はここ数年増加を続けてきたが,4年は減少に転じ,数量で1万4千トン,金額で136億円となった。

 魚粉は,国内生産量が急速に減少したため輸入が急増しており,4年は,前年に比べ数量で17%増の33万トン,金額で16%増の260億円となった。主な輸入先は,チリ,米国及びロシアであり,4年は,チリ,ロシアからの輸入は増加したものの,米国からの輸入は減少した。また,デンマークからの輸入量は,3年の50トンから4年は1万3千トンヘと急増した。

 次に,水産物の主な輸入先の最近10年間の変化を金額ベースでみると,水産物全体では57年,4年共米国が第1位を占めており,また,その割合も高まっている( 図I-3-4 )。この間米国からは,たら類及びかに類等の輸入が増加している。その他の国々についてみると,57年には第2位であった韓国の割合が低下し,一方で台湾,タイ,中国等の割合が高まっている。

 また,主な品目別にみると,輸入先が多様化あるいは変化しているものが多い。例えば,えび類では,インドの割合が低下し,インドネシア,タイ,中国等の割合が高まっている。まぐろ・かじき類についてみると,57年には5割を占めていた韓国の割合が,台湾,インドネシア等の割合が高まったこと等により,4年には,2割にまで低下している。また,さけ・ます類については,57年にはほぼ全量が米国及びカナダで占められていたが,4年には,チリ,ノールウェー等からの養殖物の増加等により両国の割合は低下している。

 水産物の国内生産量が減少傾向にある中で,国民の根強い需要にこたえ,水産物の国民への安定供給を確保するためには,引き続き相当程度輸入に依存することとなるものとみられるが,国内の安定的な生産と供給体制を確保するため,今後とも国内外の需給動向に即した秩序ある輸入が重要である。

 なお,61年に開始されたガット(関税と貿易に関する一般協定)・ウルグァイ・ラウンド交渉において,水産物についても市場アクセス交渉グループの中で関税引下げ等について議論がなされてきたが,5年12月の最終合意に当たり,水産物285品目のうち246品目の関税引下げ又は譲許についてのオファーを行った。この結果,関税は,5年間で段階的に貿易加重平均で3分の1削減されることとなっている。

〔5年の動向〕

 5年(1〜11月)の輸入は,4年の同期に比べ数量で7%増の291万トン,金額で4%減の1兆4,834億円(ドルベースでは10%増の133億ドル)となっている。

 品目別の輸入量をみると,かに類,いか類,魚粉等が減少しているものの,えび類,さけ・ます類等多くの主要品目で増加している。

(2) 輸出の動向

 4年の水産物輸出は,前年に比べ数量で26%減の44万トン,金額で5%減の1,632億円となった。数量が大幅に減少したのは,水産油脂及び魚粉が大幅に減少したためである。

 主な品目別にみると,生鮮・冷凍魚類は,かつお類,まいわし等が減少したため,数量では前年に比べ2%減少し27万トンとなったが,価格の高いまぐろ類が増加したため,金額では3%増加し390億円となった( 図I-3-5 )。

 缶詰は,まぐろ缶詰が大幅に減少したのを始めほとんどの種類で減少したため,前年に比べ数量で20%減の2万8千トン,金額で22%減の96億円となった。

 ねり製品は,かつての主力であった米国向けが現地生産の増加等から大幅に減少しており,このため全体の輸出量も減少傾向が続いている。4年は,前年に比べ数量で20%減の1万3千トン,金額で9%減の91億円となった。

 魚粉及び水産油脂については,国内生産量の減少に伴い輸出も大幅に減少している。4年は,魚粉が数量,金額共前年比61%減の4万4千トン,43億円となり,水産油脂が,前年に比べ数量で61%減の4万5千トン,金額で42%減の24億円となった。

〔5年の動向〕

 5年(1〜11月)の輸出は,4年の同期に比べ,数量で10%減の35万トン,金額で18%減の1,222億円(ドルベースでは6%減の11億ドル)となっている。

 品目別の輸出量をみると,引き続き多くの主要品目で減少している。

(3) 世界の水産物貿易と需給

ア 世界の水産物貿易

 近年,世界の水産物貿易は拡大傾向が続いている。これを輸入額(ドルベース)の推移でみると,61年以降急速に増加しており,3年は,前年比10%増の435億ドルとなった( 図I-3-6 )。国別にみると,世界第1位の我が国及び第2位の米国が突出している。3年の世界の水産物輸入額に占める両国の割合は,それぞれ28%及び14%となっており,この両国を合わせると4割を超えている。両国の輸入額の差は我が国の輸入額の急増により61年以降急速に拡大したが,このような我が国のドルベースでみた輸入額の急増は,輸入量の増加に加え,我が国に輸入される水産物の輸入先での買付価格が円ベースの我が国市場価格を念頭に置いて決定される場合が多いことから,60年9月以降の円高がドルベースの買付価格の上昇をもたらしたことも大きな要因の一つになっていると考えられる。なお,3位から5位までをみると,フランス,スペイン,イタリアとEC諸国が占めているが,特にスペインは61年以降の増加が著しい。

 一方,輸出額を国別にみると,輸入においてみられたようなぬきんでた国はなく,3年は,世界の水産物輸出額の9%を占めている米国を筆頭に,以下,タイ,デンマーク,ノールウェー,カナダの順となっている。63年以降世界第1位の座にある米国は,対日輸出を中心に引き続き増加傾向にあるが,一方62年まで世界第1位であったカナダは,63年以降は停滞傾向で推移しており,2年までは世界第2位であったものの,3年には,タイ,デンマーク,ノールウェーに次いで世界第5位に後退した。3年に世界第2位となったタイは,近年輸出額が著しく増加している。タイの輸出額は,57年から3年にかけての10年間に6倍に増加しているが,その品目ごとの内訳にも変化がみられており,魚粉類が著しく減少した一方で,缶詰類の割合が増加している。こうした缶詰類,特に魚類缶詰類の輸出の増大に伴い,タイでは,国産原料だけでなく輸入原料の使用が活発化している。このため,生鮮・冷蔵・冷凍魚類の輸入が近年急増しており,3年には,タイは水産物輸入国としても世界第10位となった。

イ 世界の水産物需給

 近年,先進国における健康に対する関心の高まり等を背景とする魚介類消費の拡大,開発途上国における人口の増加や生活水準の向上等から食用魚介類に対する需要は世界的に強まっており,一方で開発途上国等における漁業や養殖業の発展による漁業生産量の増加もあって,世界の食用魚介類の需給規模は拡大傾向にある。

 世界の食用魚介類の供給量は,63〜2年の平均で年間約7千万トンであり,10年前の53〜55年の平均と比べると約4割増加した( 図I-3-7 )。また,1人当たりの供給量は,63〜2年の平均で年間約13.4kgとなり,53〜55年の平均に比べ約2割増加した。年間1人当たり食用魚介類供給量を主な国別にみると,先進国では,アイスランド及び我が国が際立って多い。また,53〜55年の平均と63〜2年の平均を比べるといずれの国においても増加している( 図I-3-8 )。この結果,先進国における平均の年間1人当たり食用魚介類供給量は,この10年間で22.7kgから26.6kgへと17%増加した。一方開発途上国では,近年漁業生産量が急増を続けている中国の増加率が著しく高い。中国の年間1人当たり食用魚介類供給量は,53〜55年の平均では4.2kgに過ぎなかったが,63〜2年の平均では9.3kgと10年前の2倍を超える水準に達している。このため開発途上国の平均も7.4kgから9.2kgへと24%増加し,増加率では先進国を上回った。また,開発途上国の中には水産物を外貨獲得のための重要な輸出品目として位置付け漁業振興を図っている国も少なくないが,こうした国の中には,例えばタイのように,漁業生産量が増加しているにもかかわらず年間1人当たりの食用魚介類供給量が減少している国もみられる。

 次に,この10年間における主な国々の食用魚介類の国内生産量と国内供給量の変化をみると,開発途上国のうち中国,インド,フィリピン等においては,国内生産量,国内供給量共に大幅に増加しているが,両者にはほとんど差がみられない( 図I-3-9 )。これは,これらの国々では国内生産はほとんど国内供給に向けられており,国内生産量の増加がそのまま国内供給量の増加につながったためとみられる。これに対し,タイ及び台湾では,国内生産量が大幅に増加している割には国内供給量の増加は少なく,この間,これらの国々では食用魚介類の輸出が急増したことがうかがわれる。一方,先進国のうち以前から国内供給量に比べ国内生産量が多く主要な水産物輸出国であったアイスランド,ノールウェー及びカナダをみると,アイスランド及びノールウェーについては,国内供給量の増加に比べ国内生産量の増加が多く,この間に水産物輸出国としての供給力が増大したことをうかがわせるが,カナダについては,国内生産量の増加と国内供給量の増加はほぼ等しく,国内生産量の増加は主に国内供給に向けられたものとみられる。これに対し,我が国及びEC諸国においては,53〜55年の平均において既に国内供給量が国内生産量を上回っていたが,その後,国内生産量が伸び悩み又は減少する一方で,国内供給量が大幅に増加したため,国内生産量と国内供給量の差が更に広がっており,この間,これらの国々では食用魚介類の輸入が急増したことがうかがわれる。また,米国は,この間の国内生産量の増加が国内供給量の増加を上回っているが,これは,アラスカ沖を中心とする太平洋側で漁獲量が急増したものの,その漁獲物が主に我が国への輸出に向けられたためである。

 なお,我が国やEC諸国における国内生産量の停滞と消費の拡大,タイ,台湾等のような水産物の輸出振興に積極的な国々の出現等により水産物貿易が世界的に活発化している。世界の食用魚介類生産量に対する食用魚介類輸出量の割合をみると,53〜55年の平均で20%であったが,63〜2年の平均では25%に高まっている。

 我が国は,63〜2年の平均でみると,食用魚介類の全世界の輸入量の16%を占めており,魚種によっては,国内の需給動向が国際需給の動向に大きな影響を与えている。しかしながら,最近では,すけとうだらにおいて,世界的な需給の引締まりが国内需給のひっ迫を招いたことにみられるように,こうした漁業生産の停滞や水産物貿易の活発化等の国際需給の動向が国内の需給動向に大きな影響を与える例もみられ始めている。また,今後,開発途上国における人口増加等に伴う水産物需要の増大が見込まれる一方で,最近,世界の漁業生産量が停滞傾向に転じたことにみられるように,生産が資源変動等に左右されることの多い漁業にあっては,供給は必ずしも安定的に推移しないことから,世界の漁業生産の動向次第では,今後,世界的に水産物需給が引き締まり,水産物貿易への影響が生じることも考えられる。