4 水産物消費

 総務庁「家計調査」によると,4年の1世帯当たりの実質消費支出は,我が国経済が調整過程にある中で,景気減速の影響から前年比0.4%増と59年以来の低い増加となった。

 このような中で,4年の世帯員1人当たりの実質魚介類支出は,魚肉ねり製品が価格の高騰により前年比7.8%減と2年連続して大幅に減少したのを始め,塩干魚介及び他の魚介加工品も前年に比べ減少したものの,生鮮魚介が前年比6.1%増と大幅に増加したため,前年に比べ2.0%増加した( 表I-4-1 , ダウンロード )。魚介類支出は,消費者の健康に対する関心の高まり等を背景として堅調に推移してきたが,景気の減速が続く最近においてもこうした傾向は続いている。なお,4年における生鮮魚介の大幅な増加には,景気低迷下において家庭内で食事をする機会が増えたことや生鮮魚介の消費者価格が比較的安値で推移したこと等の影響もあるものと考えられる。

 一方,調理食品及び外食については,食の簡便化や外部化の進展に伴い年々消費を伸ばしてきており,それとともに調理食品の素材や外食の食材としての水産物消費も増加してきたものとみられるが,最近,景気減速に伴う所得の伸びの低下等を反映して伸び率の鈍化がみられる。4年の実質調理食品支出及び実質外食支出は,前年に比べそれぞれ1.5%及び0.5%の増加にとどまった。

 近年,弁当類,調理パン等の主食的調理食品や調理済みの惣菜等を取り扱ういわゆる「中食産業」の成長にはめざましいものがある。例えば,主食的調理食品支出の近年の伸びを「家計調査」によってみると,外食や他の調理食品の伸びを大きく上回っている( 図I-4-1 )。

 4年に社団法人大日本水産会が東京周辺において持ち帰り弁当,持ち帰りずし及び調理済惣菜を製造・販売する業者に対して実施したアンケート調査によって,これらのいわゆる「中食産業」における魚介類使用の現状と今後の意向をみると,まず,アンケートに回答のあった335業者のうち水産物を取り扱っていたのは,全体の97%に当たる324業者であった。これら324業者においては,取扱品目の約3割に魚介類が使用されていたが,今後の意向としては,38%の業者が「魚介類を使用した品目を増やしたい」としており,「減らしたい」と考えている業者はわずか1%に過ぎず,魚介類使用への意欲は非常に強いことがうかがえる結果となっている。しかしながら,一方で魚介類の仕入れに際しての要望として,「安くて値段の安定した魚介類を供給して欲しい」とする業者が76%にも達していることから,こうした要望にいかにしてこたえていくかが供給サイドにおける今後のポイントとなるものとみられる。

 現在,食生活が量的にも質的にも充足され,食料品間の競合が激化する中で,食料消費においては,簡便化,外部化等消費構造の変化が進行しており,また,健康・安全志向,高鮮度志向,本物志向等消費者の食に対する価値観の多様化もみられている。こうした中で水産物の消費は,水産物の持つ優れた栄養特性が消費者に評価されたこと等もあっておおむね堅調に推移してきてはいるが,流通形態,価格や規格の安定性等において必ずしも消費者や実需者のニーズに十分にこたえていない面もみられる。

 したがって今後は,こうした消費者や実需者のニーズに即応した水産物の供給に努めるとともに,水産物の更なる消費拡大を目指して,中食産業等近年伸長が著しい分野における新たな需要の掘り起こしに努めることが重要であるが,その際,流通段階のみならず生産者サイドにおいても,地域の漁業実態に応じ,活魚出荷等鮮度や品質をより一層重視した出荷体制の確立,フィレ,切身等加工や調理が簡便な形態への一次処理の実施,出荷規模の拡大等による水産物の規格や価格の安定化等に積極的に取り組み,自ら漁獲物の付加価値向上や販路の拡大等に努め,経営の安定化を図っていくことが重要である。

 なお,近年,鮮魚小売店においては,共働き世帯の増加等に伴う食の簡便化傾向,家庭における生ごみ処理の問題等を背景として,切身での魚介類販売が主体となりつつあり,また,輸入物や養殖物の販売も増加傾向にある。こうした中で,魚種や産地の判別が困難である等の表示にかかわる問題が消費者サイドから提起されている。このため,現在,魚介類小売店において鮮魚で販売されるものを中心に,品名,産地,解凍物であるか否か,養殖物であるか否か等表示の在り方について検討が進められている。