2 沿岸漁業の経営と漁家の所得

(1) 沿岸漁船漁業の経営

 4年の沿岸漁船漁業の経営状況をみると,魚価は前年並みであったものの,漁獲量が前年に比べ若干増加したため,漁業収入は,前年に比べ2%増加した( 表II-2-1 , ダウンロード )。一方,漁業支出は,海上労働時間等の増加による雇用労賃の増加,修繕等の工賃単価の上昇等による漁船・漁具費の増加等多くの費目で増加したため,前年に比べ6%増加した。この結果,漁業所得は,前年に比べ3%減少し273万円となった。

 漁業所得を経営体階層別にみると,1〜3トン及び3〜5トン階層は漁獲量の増加により増加傾向が続いているものの,1トン未満及び5〜10トン階層は,漁獲量の増減等により変動しており,4年は減少した( 図II-2-1 )。中でも,5〜10トン階層の減少幅が大きいが,これは,漁業支出が増加したことに加え,漁獲量の減少に伴い漁業収入が減少したことによるものである。

 今後,適正な漁業管理に加え,鮮度向上等漁獲物の付加価値向上により漁業収入の増加を図るとともに,漁船の建造,改造等の設備投資の適正化等により漁業支出の節減に努め,経営の安定を図っていくことが重要である。

(2) 海面養殖業の経営

 4年度の海面養殖業の経営状況を養殖種類別にみると,ぶり類養殖業については,種苗代,えさ代の増加等により漁業支出は7,478万円となり,漁業収入は,収獲量は減少したものの価格が前年度に引き続き堅調に推移したため大幅に増加して9,321万円となった( 図II-2-2 )。その結果,漁業所得は,1,843万円となった。

 真珠養殖業については,種苗代等の増加により漁業支出は2,175万円となり,漁業収入は,前年度に引き続く価格の低下により養殖生産物収入は減少したもののその他の収入が増えたため増加し3,250万円となった。その結果,漁業所得は1,075万円となった。

 真珠母貝養殖業については,漁業支出は種苗代,雇用労賃の増加により709万円となり,漁業収入は,その他の収入が増えたことにより増加し1,702万円となった。その結果,漁業所得は993万円となった。

 かき養殖業については,雇用労賃等の増加により漁業支出は1,599万円となり,漁業収入は,収獲量の増大により増加し2,781万円となった。その結果,漁業所得は1,182万円となった。

 ほたてがい養殖業については,漁業支出は927万円となり,漁業収入は,価格が大幅に低下したため減少し1,321万円となった。その結果,漁業所得は394万円となった。

 のり養殖業については,漁業支出は870万円となり,漁業収入は,収獲量が増えたことにより増加し1,528万円となった。その結果,漁業所得は658万円となった。

 わかめ養殖業については,漁業支出は241万円となり,漁業収入は,収獲量が減ったことにより減少し471万円となった。その結果,漁業所得は230万円となった。

 たい類養殖業については,養殖施設面積の拡充等により漁業支出は5,824万円となり,漁業収入は,収獲量が増えたことにより増加し5,839万円となった。その結果,漁業所得は15万円となった。

 なお,最近のぶり類養殖の経営に関する調査によれば,組合員の「組合全利用」体制の確立された漁協が,組合員自らが設定した営漁計画の実施に関する種々の営漁指導をきめ細かく行うことにより,ぶり類養殖業の経営管理を全面的に支援する努力がなされている事例及び組合員の自主的な生産者組織で小割生簀の共同敷設,種苗の譲り合い,餌料の共同購入と配送の合理化,生産物の共同出荷等作業を組織的に行い経営改善に努めている事例もみられる。

 注:海面養殖業については,年度(4年〜翌年3月)の動向を記述しているため,暦年の生産動向とは必ずしも一致しない。

(3) 漁家の所得

 4年の漁家の平均所得は,前年に比べ4%増加し692万円となった( 図II-2-3 )。その内訳をみると,労賃所得及びその他の所得は,それぞれ151万円及び186万円であり,漁業所得は354万円であった。

 この結果,漁家の総所得に占める漁業所得の割合(漁業依存度)は,前年に比べ1ポイント低下し51%となった。

 漁家の所得を業態別にみると,4年の沿岸漁船漁業の漁家所得は,前年に比べ1%増加し598万円であった。また,漁業依存度は46%,労賃所得及びその他の所得の割合は共に27%であった。さらに,沿岸漁船漁業の漁家所得の構成割合を地域別にみると,北海道区,太平洋中区,太平洋南区及び瀬戸内海区では漁業依存度が約5割と全国平均を上回り,漁業生産が漁家所得の中心になっているが,日本海北区,日本海西区及び太平洋北区では冬季におけるしけの影響等厳しい気象・海象等の条件に左右され漁業依存度が3割台と全国平均に比べかなり低く,その反面,漁家所得に占める労賃所得の割合が全国平均を上回っている( 図II-2-4 )。

 次に,4年度の海面養殖業を養殖種類別に漁家所得が高い順にみると,ぶり類養殖業の2,162万円,真珠養殖業の1,478万円,かき養殖業の1,456万円,のり養殖業の939万円等であり,この結果,4年度の養殖漁家の漁家所得は1,049万円となった。また,養殖漁家の漁業依存度は65%となった。

 また,漁家所得を全国勤労者世帯の所得(677万円)と比べると,4年は,前年に比べ1ポイント上昇し102%となり,漁家所得は前年に引き続き全国勤労者世帯の所得水準を上回った( 表II-2-2 , ダウンロード )。しかしながら,世帯員1人当たりの所得で比べると,漁家の全国勤労者世帯に対する割合は,前年に比べ2ポイント上昇し97%となったものの,依然として低いものとなっている。これを都市階級別にみた勤労者世帯と比べると,人口5万人以上の都市の勤労者世帯に対する比率は95%と低いものの,人口5万人未満の市町村の勤労者世帯に対する比率は,103%と上回っている。しかしながら,その比率は,前年に比べ2ポイント低下した。