3 中小・大規模漁業の経営

(1) 中小漁業の経営

ア 収益性の状況

 4年の中小漁業の1経営体当たりの漁業収入は,前年に比べ4%減少し1億3,002万円となった( 表II-3-1 , ダウンロード )。これは,さば類,すけとうだら,するめいか等多くの魚種で価格が低下したことに加え,まいわし,すけとうだら等の漁獲量が減少したためである。

 一方,漁業支出は,前年に比べ2%減少し1億2,925万円となった。これは,漁船・漁具費が前年に引き続き増加したものの,減価償却費が14%,油費が7%減少したこと等によるものである。

 この結果,漁業利益は,前年に比べ218万円減と大幅に減少しマイナス88万円となり,60年に黒字に転じて以来8年振りに赤字となった。

 なお,漁業収入が減少するという状況下において収益確保を図るためには,一層の経営の合理化が重要となるが,最近における漁業支出の推移をみると,漁船・漁具費及びその他の漁業支出が増加傾向にあり,これらは,修繕等の工賃単価の上昇等に加え,陸上の管理部門の経費,賃借料の増加等によるものと考えられる。一方,減価償却費は最近減少しているが,これは,主に上位階層に顕著にみられる傾向であり,漁業生産の停滞等による代船建造等の減少及び借入金の実質的な負担増等によるものと考えられる。

 最近の中小漁業の収益状況を経営体階層別の漁業収入及び売上利益率の推移でみると,30トン未満階層では漁業収入の漸減に伴い売上利益率が低下している( 図II-3-1 )。次に,30〜50トン階層では漁業収入が停滞しているものの,油費等の減少により4年の売上利益率は前年に比べわずかながら上昇した。一方,50トン以上の4つの階層では漁業収入の年による変動幅が大きく,また,それに伴って売上利益率がほぼ比例的に変動している。特に,4年は100〜200トン及び200〜500トン階層において,まいわし,すけとうだら等の漁獲量が減少したことに加え,多くの魚種で価格が低下したため,漁業収入が大幅に減少し,売上利益率はマイナスに転じた。また,500トン以上の階層では,4年は,漁業収入が増加したものの,売上利益率は依然としてマイナスであった。

 一方,4年の漁労体別の収益状況は,漁業種類によって大きく明暗が分かれた( 表II-3-2 , ダウンロード )。前年に魚価の上昇により漁業収入が増加し収益性が改善された沖合底びき網漁業及び大中型まき網漁業は,すけとうだらの価格の大幅な低下やまいわしの漁獲量の大幅な減少により漁業収入が大きく減少し,売上利益率は大幅に低下した。また,前年に魚価の低下等により漁業収入が大幅に減少し収益性が悪化した遠洋かつお一本釣漁業は,かつおの価格の回復等による漁業収入の大幅な増加等により売上利益率が急上昇し,収益性は大きく改善された。同様に,遠洋まぐろはえ縄漁業は,まぐろ類の価格の上昇による漁業収入の増加等により売上利益率は上昇した。

 なお,漁業利益の黒字,赤字別の経営体の構成割合をみると,57年以降黒字経営体が赤字経営体を上回って推移しているものの,4年は,前年に比べ更に6ポイント低下し51%となった( 図II-3-2 )。

イ 財務内容の状況

 4年の1経営体当たりの総資産は,前年に比べ2%増加し2億546万円となった( 図II-3-3 )。

 総資産の内訳をみると,固定資産は,前年に比べ3%増加し1億626万円となったが,これは,固定資産の約6割を占める漁業用固定資産及び土地等の固定資産が共に増加したことによる。流動資産は,前年に比べ1%増加し9,920万円となった。この結果,総資産に占める固定資産比率は,前年並みの52%となった。

 一方,負債は,前年に比べ1%増加し1億8,717万円となった。自己資本比率は,近年漸増傾向にあり,4年は,前年に比べ0.5ポイント上昇し8.9%となったが,依然として低い状態にある。自己資本比率を経営体階層別にみると,30トン未満階層では,前年より1ポイント上昇して55%となり,また,30〜50トン階層では前年に比べ2ポイント上昇して2%となったものの,50トン以上の階層では自己資本比率がマイナスの状態が続いている。

ウ 指定漁業の経営構造

 最近の中小漁業経営は,まいわし,すけとうだら等の漁獲量の減少に加え,産地価格の低迷もあって漁業収入が減少しており,漁業利益の確保が難しい状況にある。このため,生産構造及び経営構造の再編が鋭意進められてきている。

 こうした状況の中で,4年8月の指定漁業の許可等の一斉更新に際し実施した調査によれば,指定漁業を営む経営体(資本金1億円以上の漁業会社を除く。)のうち,我が国海面漁業生産量及び生産額のそれぞれ約4割を占める沖合底びき網漁業,大中型まき網漁業,遠洋かつお・まぐろ漁業,近海かつお・まぐろ漁業及び以西底びき網漁業の5業種全体としては,漁業専業経営体は85%を占めているものの,経営規模が上位階層になるほど漁業外事業の兼業の割合が高くなっている。

 さらに,これらの指定漁業経営体を単一の漁業種類のみを営む単一漁業経営体と複数の漁業種類を営む複合漁業経営体に分けてみると,単一漁業経営体の割合は,沖合底びき網漁業,大中型まき網漁業及び近海かつお一本釣漁業では7割を超えており,遠洋まぐろはえ縄漁業及び近海まぐろはえ縄漁業では約6割となっている( 図II-3-4 )。

 また,操業統数別にみると,1か統経営の割合は沖合底びき網漁業及び近海かつお一本釣漁業では9割を超えており,次に,大中型まき網漁業,近海まぐろはえ縄漁業及び遠洋かつお一本釣漁業では7割を超えている。一方,2か統以上の複統経営の割合が高い漁業種類は,遠洋まぐろはえ縄漁業のみであり,2か統と3か統以上の割合の合計が全体の約半数を占め,他業種に比べ複統経営化が進展している。これは,当該漁業が長期の航海期間を要するために,運転資金の円滑な確保が必要なこと,複統経営による漁船間の情報交換により漁場探索の効率化が図られること等によるものと考えられる。

(2) 大規模漁業の経営

 資本金1億円以上の漁業会社(大規模漁業会社)を取り巻く諸情勢は,公海漁業規制の強化等年々厳しさを増している。その結果,大規模漁業会社においては,脱漁業化が漸次進行し,営業内容の再構築が進展している。1社当たり平均の売上高は,4年には,前年に比べ2%減少し1,221億円となった。これは,売上高構成割合の約7割を占める商事部門が景気の停滞により前年に比べ5%減少したことによる。一方,漁労部門の売上高は,前年に比べ11%減少し43億円となり,売上高に占める漁労部門の構成割合は4%弱となった( 図II-3-5 )。