5 漁船の安全操業,海難防止及び救助体制の整備

(1) 漁業無線の情報化体制の強化

 漁船の安全操業等に必要な情報通信の円滑化を図るため,漁業用無線施設等の適正かつ機能的な配置,新メディアの利活用等全国的見地から将来の漁業無線局の在り方について調査検討を行った。

(2) 漁船の海難防止

 ア 5年の漁船の要救助船舶隻数は,732隻で,前年に比べ26隻減少した。また,依然として全要救助船舶隻数1,791隻にしめる漁船の割合は高く,41%を占めている。なお,漁船の海難による死亡・行方不明者は117人であった。

 海難の状況をみると,衝突,乗揚げ及び転覆海難が多いことから,海難防止講習会の開催,訪船指導の実施等により,海難防止思想の普及の徹底を図るとともに,航法や海事関係法令の遵守,出漁前の整備点検,見張りの励行,気象・海象情報の的確な把握,救命いかだ等の取扱方法の習熟,相互連絡・協力体制の確立等の指導を行った。

 イ 気象に関する予報・警報,巡視船艇・航空機,航路標識等で観測した霧,流氷,海流等の気象・海象情報及び船舶交通安全のための航行警報を直接印刷電信,無線電信,無線電話等により提供した。

 さらに,東京湾等船舶交通のふくそうする海域においては,海上交通に関する情報を無線電話等により提供した。また,日本近海の海流を予測した海流推測図等をファクシミリ等により提供した。

 一方,従来の紙海図と同程度の情報量と精度に加え,ブラウン管上に自船等の位置,進路,速力等の航行の安全に必要な情報を表示できる電子装置に必要な航海用電子海図を作成するためのシステム整備を引き続き行った。また,(財)日本水路協会においては,5年12月,紙海図の内容を簡略化した航海用電子参考図(ICメモリカード)7枚を発行した。

 ウ 海上交通情報機構を始めとする灯台,灯浮標等の航路標識の整備について,52件の新設整備を行うとともに,1,179件の改良改修を行った。特に,5年7月から段階的に北西太平洋ロランCチェーンを米国から引継ぎ運用するとともに,同チェーンと利用範囲の重複する4のロランA局及び4のデッカチェーンを廃止した。さらに,北西太平洋ロランCチェーンの有効エリア拡大に向け必要な施設整備を行うとともに,隣接国のロランC局(同様のシステムであるロシアのチャイカ局を含む。)との国際協力チェーンの構築のため,関係国と技術的検討を行った。

 エ 海難防止,安全操業,作業の効率化等に資するため,気象官署,静止気象衛星,海洋気象観測船,海洋気象ブイロボット等による観測を行い,その成果を速やかに提供するとともに,これらの資料及び一般船舶・漁船からの通報に基づいて解析・予報を行った。また,気象庁船舶気象無線通報(EGC:インマルサットシステム及びJMC:無線電信)により北西太平洋海域等における警報,概況等の周知を図るとともに,気象庁気象無線模写通報(JMH:無線ファクシミリ)により,各種天気図,波浪・海氷・海面水温・海流の実況図及び予想図,表層(深さ100m)水温実況図,静止気象衛星雲写真,台風予報図等の周知に努めた。

 さらに,主要な漁業用海岸局に天気概況,海上予報・警報,台風位置等の各種情報を通報するとともに,同局を介して,漁船の行った気象観測成果を収集したほか,海上気象観測通報の技術指導及び気象知識の普及に努めた。

 このほか,漁業気象通報として,警戒を要する海域の現況と予報,各地の気象情報,気圧配置等について,ラジオを通じて放送した。

 オ 陸岸に近い海域において操業する小型漁船の漁獲能率の向上と操業の安全を確保するため,無線設備の普及促進を図り,元年から簡易なハンディ型の無線設備を使用する小型漁船に適した通信システム(略称「マリンホーン」)の普及促進を行った。5年12月に宮城県女川湾地区で運用が開始されたことに伴い,5年末のマリンホーンの運用地区数は10地区となった。

(3) 漁船の海難救助体制の整備

 海難情報の迅速な入手・伝達を図るため,日本海東部地区における陸上通信所の統合再編成に必要な施設の整備に着手するとともに,「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS)」に適切に対応するため,日本語NAVTEX送信局の整備に着手する等関連通信施設の整備を行った。

 また,効果的な捜索救助業務を実施するため,引き続き巡視船艇・航空機の整備を図るとともに,日本の船位通報制度(JASREP)への参加促進とその有効な活用を図った。

 さらに,船舶交通のふくそう状況,気象・海象の状況等を勘案し,海難の発生のおそれがある海域にあらかじめ巡視船艇を前進配備するとともに,航空機の機動性とヘリコプターのつり上げ救助能力の活用を図るなど,巡視船艇・航空機を効率的に運用した。

 このほか,転覆船内からの遭難者の救出等救助が困難な海難に対応するため,羽田特殊救難基地等の資器材の充実等を図るとともに,研修・訓練の強化等により,救難技術の向上に努めた。また,海上における救急救命体制の充実強化を図った。

 一方,(社)日本水難救済会等を指導・育成し,我が国沿岸における民間の海難救助体制の充実強化を図った。また,洋上で発生した傷病者に対し,医師・看護婦等の迅速かつ円滑な出動等が行われるよう,同会の洋上救急事業について,指導及び協力を行うなど,洋上救急体制の一層の充実強化を図った。