1 漁業生産と我が国周辺水域の水産資源の動向

(1) 漁業生産の動向

(10年の漁業生産)

 我が国漁業生産量は,平成元年以降減少傾向で推移しており,10年の漁業生産量は,前年に比べ10%減少し668万4千トンとなった( 図I-2-1 )。我が国の漁業生産量が700万トンを下回ったのは,昭和40年以来33年ぶりである。

 魚種別にみると,かたくちいわし,かつお等が前年に比べ増加したものの,さんま,まいわし,さば類,するめいか,さけ・ます類等が前年に比べ減少した( 図II-1-1 )。

 漁業生産額(捕鯨業を含む。)は,前年に比べ9%減少し2兆292億円となった。

(漁業部門別生産量及び生産額)

 沿岸漁業(海面養殖業を除く。)の生産量は,大型定置網やさけ定置網,採藻等で減少したことから,前年に比べ11%減少して158万2千トンとなり,2年続けて減少した。生産額は,前年に比べ9%減少し6,074億円となった。

 海面養殖業の生産量は,ぶり類,のり類で増加したものの,ほたてがい,かき類,真珠等で減少したことから,前年に比べ4%減少して122万7千トンとなり,4年続けて減少した( 図II-1-2 )。生産額は,前年に比べ9%減少し5,464億円となった。

 沖合漁業の生産量は,大中型まき網,近海いか釣等で減少したことから前年に比べ13%減少して292万4千トンとなり,前年において9年ぶりに増加した生産量は,再び減少に転じた。生産額は,前年に比べ9%減少し4,910億円となった。

 遠洋漁業の生産量は,大中型遠洋かつお・まぐろまき網,遠洋まぐろはえ縄等で増加したものの,遠洋底びき網等で減少したことから,前年に比べ6%減少して80万9千トンとなり,前年において6年ぶりに増加した生産量は,再び減少に転じた。生産額は,前年に比べ9%減少し2,396億円となった。

 内水面漁業・養殖業の生産量は,平成3年以降減少傾向で推移しており,10年の生産量は,前年に比べ7%減少し14万3千トンとなった。生産額は,前年に比べ7%減少し1,442億円となった。

(2) 我が国周辺水域の水産資源等の動向

ア 水産資源の動向

 我が国周辺水域における主要魚種の資源状態を,過去20年間程度の推移を踏まえて評価すると,まあじ,かつお,しろざけ等の限られた魚種は高い水準にあるが,まいわし,まさば,さんま,多くの底魚類等多数の魚種で低い水準になっている。さらに,それぞれの資源は,多くの魚種,系群 *1 で横ばい又は減少の傾向にある( 図II-1-3 , 図II-1-4 )。

 資源状態が悪化した背景としては,漁場環境の悪化と漁獲努力量の増大が大きく関与していると考えられる。すなわち,沿岸域の開発等に伴い,藻場・干潟の埋立て,海砂利の採取,自然海岸の減少等が進み,水産資源の繁殖・保育の場が減少している。また,漁船の大型化,漁労機器の高性能化等により漁獲能力が大幅に向上するとともに,漁獲努力量が増大している。さらに,浮魚類にあっては,水温や餌の変化等環境要因も少なからず関与していると考えられる。

*1 系群:ひとつの魚種の中で,産卵場,産卵期,回遊経路など生活史の一部あるいは全部が他と区別される群(例えば,春期関東近海で産卵し夏期釧路沖にまで回遊するまさば群は「まさば太平洋系群」)

イ 主要魚種の資源と生産の動向

(漁獲可能量対象魚種)

 さんまは,太平洋北西部に広く分布する。さんま資源は,63年以降資源水準が上昇し,その後高位水準を維持していたが,最近では低位水準で変動の大きい時期に入ったと考えられる。生産量は,50年代後半以降おおむね20万トンから30万トンの範囲で推移しており,10年は,前年に比べ50%減少し14万5千トンとなった。

 すけとうだらは,北海道周辺,東北沿岸及び北部日本海に分布する。太平洋の資源は,卓越年級群 *1 に支えられ,高位水準で増加傾向にあるが,オホーツク海及び日本海北部の資源は,低位水準にとどまっている。生産量は,近年30万トン台で推移しており,10年は前年に比べ7%減少し31万6千トンとなった。

 まあじは,太平洋及び日本海から東シナ海にかけて広く分布する。まあじ資源は,全体的には依然として高い水準にあるといえるものの,最近では減少する傾向を示し始めている。生産量は5年以降30万トン台で推移しており,10年は前年に比べ4%減少し31万1千トンとなった。

 まいわしは,太平洋,日本海,東シナ海等に広く分布する。まいわし資源については,これまで数十年単位で豊凶を繰り返してきているが,近年では,過去最高の漁獲量を記録した63年以降,減少を続けており,資源状態は低位水準で減少傾向となっている。生産量は,元年以降減少を続けており,10年は前年に比べ41%減少し16万7千トンとなった。

 さば類は,太平洋,日本海,東シナ海等に広く分布する。まさば資源は,散発的に卓越年級群の発生がみられるが,総じて低位水準で減少又は横ばい傾向となっている。ごまさば資源は,高位又は中位の水準となっている。さば類の生産量は,4年以降増加傾向で推移していたが,10年は前年に比べ40%減少し51万1千トンとなった。

 するめいかは,太平洋,日本海,東シナ海に広く分布する。するめいか資源は,近年は稚仔(ちし)の良好な出現状況から高位水準を維持していたが,10年には海洋環境の変化により,資源は一時的に大幅に減少した。しかしながら,11年の資源は日本海については高い水準に回復していると推定されている。生産量は,近年おおむね30万トン台で推移していたが,10年は前年に比べ51%減少し18万1千トンとなった。

 ずわいがには,日本海縁辺部,大和堆 *2 ,銚子以北の太平洋岸及びオホーツク海の水深150〜450mの範囲におおむね分布する。ずわいがに資源は,主漁場である日本海において近年良好なものの,資源水準は総じて中位又は低位で横ばい又は減少傾向にある。生産量は,近年おおむね4千トンから9千トンの範囲で推移しており,10年は前年に比べ4%減少し4千7百トンとなった。

(かつお・まぐろ,さけ・ます類)

 まぐろ類は,世界の海洋に広く分布して大回遊を行っている。太平洋のまぐろ類について,魚種ごとに資源の状況をみると,めばちは,中位水準にあるものの減少傾向で推移している。また,くろまぐろは,他のまぐろ類に比べて資源変動が大きいものの,2年以降,数度にわたって卓越年級群とみられる年級群が出現しており,近年ではおおむね中位水準で推移している。きはだは,中位水準で横ばい,びんながは,中位水準で増加傾向にある。まぐろ類の生産量は,近年,おおむね30万トン台で推移してきたが,10年は前年に比べ12%減少し29万8千トンとなった。

 かつおは,世界の海洋に広く分布し,熱帯水域を産卵場としている。我が国近海へは,主として5〜6月に伊豆半島南東水域へ来遊し,6〜7月には房総半島以北の水域に達した後,9月には南下を開始する。かつお資源は,おおむね高位水準で安定した状態にある。生産量は,近年,おおむね30万トン台で推移しており,10年は前年に比べ23%増加し38万5千トンとなった。

 さけ・ます類は,北太平洋に広く分布しており,現在,全体として高位水準にある。日本近海のさけ類資源のほとんどはしろざけであり,ふ化放流技術の向上等からその資源量はおおむね高位水準で安定している。さけ・ます類の生産量は,近年,おおむね20万トン台で推移しており,10年は前年に比べ21%減少し21万9千トンとなった。

(その他の底魚類等)

 沿岸漁業及び沖合漁業の主要対象となっているその他の底魚類等の魚種の資源状態は,まだい,ひらめ,ほたてがいのように,つくり育てる漁業の成果によって比較的高い水準を維持している魚種もあるが,全般的には低位水準にあるものが多く,横ばい又は減少傾向で推移している。

 ほたてがいの生産量は,50年代以降増加傾向で推移し,近年,おおむね20万トン台で推移しており,10年は前年に比べ10%増加し28万8千トンとなった。一方,さば類,まいわし等の多獲性魚類,まぐろ類等の高度回遊性魚類,ほたてがい等を除いた「その他の魚介類(沿岸・沖合漁業)」の生産量は,50年代前半を頂点として一貫して減少傾向にあり,10年では51年のおおむね7割となっている( 図II-1-1 )。

*1 卓越年級群:特に個体数の発生が多かった年齢群

*2 大和堆:能登半島の北西約260kmにある海底の隆起した場所で好漁場