3 漁業協同組合の組織体制の整備と強化

(1) 漁業協同組合の現状

(横ばい又は減少傾向で推移している漁協の事業)

 漁業協同組合(漁協)は,漁業者の協同組織として,販売事業,購買事業等の経済事業及び信用事業等の実施を通じて,水産業の振興及び組合員の福祉の向上,漁業権の管理を中心とした資源や漁場の管理,水産業を核とする漁業地域の活性化等の広範な役割を果たしており,我が国の水産業,漁業地域の発展に大きく貢献してきている。

 平成10年度末の漁協数は2,964組合であり,このうち,沿海地区漁協は1,871組合,内水面地区漁協は888組合,業種別漁協は205組合となっている( 表III-3-1 , ダウンロード )。

 沿海地区漁協の99%を占める沿海地区出資漁協の9年度末における1組合当たりの正組合員数は163人,職員数は10人であり,農業協同組合と比べると,正組合員数では約1/16,職員数では約1/13となっている。

 また,組合地区の大きさをみると,市町村の区域以上の漁協は,近年,合併の進展に伴って若干増加傾向を示しているものの,沿海地区漁協の73%は依然として市町村の区域未満となっている。

 近年,水産業,漁業地域は,我が国周辺水域における資源状態の悪化,漁業就業者の減少・高齢化等の厳しい状況に直面しているが,こうした中にあって,漁業者の経営と生活の維持安定を図り,活力ある漁業地域を創出していくためには,漁協が経済事業等の実施を通じ,今後とも地域において中心的な役割を果たしていく必要がある。

 しかしながら,漁協の実施する事業は,昭和50年代後半以降は,漁業環境の変化を反映して,おおむね各事業とも横ばい又は縮小傾向で推移している。

 沿海地区出資漁協の9年度の事業の実施状況をみると,販売及び購買事業を行っている組合は約8割であり,その事業規模は,販売事業取扱高1兆3,971億円,購買事業供給高2,056億円となっている。これを前年度と比較すると,販売事業についてはほぼ横ばい,購買事業については6%の減少となっている。

 また,信用事業については,9年度においては約6割の組合が実施しており,その事業規模は,9年度末で貯金残高1兆7,332億円,貸付金残高6,808億円で,前年度末と比較すると,貯金残高については5%の減少,貸付金残高については7%の減少となった。これは,引き続き信用漁業協同組合連合会(信漁連)への事業譲渡が進められたこと,漁業への投資が手控えられていること等によるものである。なお,信漁連を含めた取扱高では,貯金残高2兆5,722億円,貸付金残高1兆445億円で,それぞれ前年度末と比較してほぼ横ばい,1%増加となっている。

 指導事業については,1組合当たりの指導担当職員が0.6人にすぎない一方で,今後,新たな海洋秩序への円滑な移行や,資源管理型漁業への取組,組合員に対する漁業経営・技術の向上のための的確な指導・助言,漁業の担い手の確保・育成等を図るための指導,国民の海洋性レクリエーションに対する需要の高まりに対応した取組等,多様な面で漁協の対応が望まれている。

 以上のような現状を踏まえれば,漁協の各種事業の充実・強化は,極めて重要な課題であり,そのためには,合併,事業統合等により組織の規模拡大を推進しつつ,経営の改善と組合員の負託にこたえ得る的確な事業展開を図ることが必要となっている。

(金融自由化と経営の健全化)

 金融の自由化等が急速に進展する中で,市場規律の発揮と自己責任原則の徹底を基本とした透明性の高い金融システムを構築することが必要となっているが,このような金融システムの下では,経営の健全性を確保することが金融機関の存続のための必要条件となる。このため,他の金融機関と同様,信用事業を行う漁協等についても,その健全性の確保のため,10年4月から,自己資本比率等の客観的指標に基づき行政庁が早期に業務改善命令を行うことができる早期是正措置が導入されるとともに,監査体制の強化,業務執行に当たる者の職務専念の確保等が義務付けられているところである。

(2) 漁協合併を中心とした漁協の組織体制の整備と強化

 漁協は,漁場・資源の管理,漁獲物の販売,資金その他の経営資材の確保等に当たり,零細な漁家が協同することによりスケールメリットを発揮し,より効率的かつ効果的にこれらの業務を行うことを目指すものである。しかしながら,漁協の規模は依然として零細であり,協同化によるスケールメリットを十分発揮できない現状にあることから,合併等による組織体制の整備と強化が必要である。

 合併等の推進に当たっては,先ず漁協自らの主体的な努力に負うところが大きく,漁協役職員等の関係者が指導的役割を果たしながら,地域の実態に応じた形で積極的に推進していくことが重要である。

 漁協系統組織においては,これまでも,合併等の組織整備のための実践活動を行ってきたところであるが,昭和42年度から平成10年度までの間の合併実績は268件(参加811漁協),漁協数の推移でみると昭和42年度当時の約2割の減少にとどまっているところであり,農協や森林組合の合併の進捗状況と比較した場合,大きく立ち後れている( 図III-3-1 )。

 また,合併の推進が図られている一方で,信用事業については,4年度以降,漁協から信漁連に対する事業譲渡が進められており,4年度から10年度までの間に475件の信用事業の譲渡が行われている。

 10年3月に成立した「漁業協同組合合併促進法」に基づき,全国漁業協同組合連合会が作成した「漁業協同組合の合併の促進に関する基本的な構想」(基本構想)によれば,21世紀に向けて組合員の負託に応えられる事業展開を図るため,系統全体のスリム化及び事業機能の充実,事業の複雑化・高度化に対応した経営の自己責任を果たし得る業務執行体制の確立,安定的な事業利益の確保を基本的視点として,自立漁協を目指した広域的な漁協への再編を図ることとし,10年後を目途に「1県1漁協又は1県複数自立漁協」の構築を目指した取組を行うこととされている。

 また,基本構想に基づき,各都道府県漁連が作成する「漁業協同組合の合併の促進に関する基本的な計画」については,11年10月1日現在で38都道府県漁連から都道府県知事へ届出がなされており,現在,この基本計画の実現に向けての具体的な取組がなされているところである。