9 漁船の安全操業,海難防止及び救助体制の整備

(1) 漁業無線の情報化体制の強化

 我が国漁船漁業における通信手段として不可欠な存在である漁業無線局の経営基盤を早急に確立するため,漁業無線局の連携・統合による施設整備を図る事業に対し助成した。

(2) 漁船の海難防止

 ア 海上保安庁の調査では,平成11年の漁船の要救助海難船舶隻数は694隻で前年に比べ72隻増加した。また,全要救助海難船舶隻数1,920隻に占める漁船の割合は依然として高く,36%を占めている。なお,漁船の海難による死亡・行方不明者は101人であった。海難の状況をみると,衝突,乗揚げ及び転覆海難が多いことから,海難防止講習会の開催,訪船指導の実施等により,海難防止思想の普及の徹底を図ったほか,航法や海事関係法令の遵守,出漁前の整備点検,見張りの励行,気象・海象情報の的確な把握,救命いかだや消火器等の取扱方法の習熟,相互連絡・協力体制の確立等の安全運航に関する指導を行った。

 イ 気象に関する予報・警報,巡視船艇・航空機,航路標識等で観測した霧,流氷,海流等の気象・海象情報及び船舶交通安全のための航行警報を直接印刷電信,インターネット,無線電話等により提供した。

 さらに,東京湾等船舶交通の輻輳(ふくそう)する海域においては,海上交通に関する情報を無線電話等により提供した。また,日本近海の海流を予測した海流推測図等をインターネット等により提供した。

 一方,航海用海図については,従来の紙海図と同程度の情報量と精度に加え,ブラウン管上に自船等の位置,針路,速力等の航海の安全に必要な情報を表示できる航海用電子海図の刊行を行ったほか,同図の更新情報をCD-ROMに格納した電子水路通報の発行を行った。

 なお,海上保安庁の指導の下に(財)日本水路協会から発行されている航海用電子参考図の整備・普及を促進した。

 ウ 灯台,灯浮標等の航路標識の新設及び既設標識の光力増大等の機能向上を推進し,また,設置した標識の信頼性を高めるため,老朽化した航路標識施設,機器の代替更新等の改良改修を実施した。

 エ 海難防止,安全操業,作業の効率化等に資するため,気象官署,静止気象衛星,海洋気象観測船,海洋気象ブイロボット等による観測を行い,その成果を速やかに提供したほか,これらの資料及び一般船舶・漁船からの通報に基づいて解析・予報を行った。また,気象庁船舶気象無線通報(EGC:インマルサットシステム)により北西太平洋海域等における警報,概況等の周知を図ったほか,気象庁気象無線模写通報(JMH:無線ファクシミリ)により,各種天気図,波浪・海氷・海面水温・海流の実況図及び予想図,表層(深さ100m)水温実況図,静止気象衛星雲画像,台風予報図等の周知に努めた。

 さらに,主要な漁業用海岸局に天気概況,海上予報・警報,台風位置等の各種情報を通報し,同局を介して,漁船の行った気象観測成果を収集したほか,海上気象観測通報の技術指導及び気象知識の普及に努めた。

 このほか,漁業気象通報として,警戒を要する海域の現況と予報,各地の気象情報,気圧配置等について,NHKのラジオ放送を通じて提供した。

 また,全世界の海洋データの収集を行い,「エル・ニーニョ監視予報センター」において,エル・ニーニョ現象等の解析・予測情報を国内外へ提供した。

(3) 漁船の海難救助体制の整備

 海難が発生した場合に迅速かつ的確な救助を行うため,巡視船艇・航空機,情報通信網等の整備を推進したほか,世界的な枠組みの中で捜索救助に関して隣接国との協力,連携を強化する一方,日本の船位通報制度(JASREP)への参加促進とその有効な活用に努めた。

 さらに,漁船の出漁状況,船舶交通の輻輳(ふくそう)状況,気象・海象の状況等を勘案し,海難の発生のおそれがある海域にあらかじめ巡視船艇を前進配備し,海難への即応体制に万全を期したほか,航空機の機動性とヘリコプターのつり上げ救助能力の活用を図るなど,巡視船艇・航空機を効率的に運用した。

 このほか,転覆船内からの遭難者の救出等救助が困難な海難に対応するため,羽田特殊救難基地の資機材の充実を図ったほか,研修・訓練の強化により救助技術の向上に努めた。また,救急救命士のヘリコプター搭載型巡視船への配置を促進するなど,海上における救急救命体制の充実強化を図った。

 一方,沿岸部に空白のない救助体制を構築するため,(社)日本水難救済会等に対し支援・指導し,我が国沿岸における民間の海難救助体制の充実強化を図った。また,洋上で医師の救急往診の必要な傷病者に対し,医師・看護婦等の迅速かつ円滑な出動が行われるよう,同会の洋上救急事業について,協力及び指導を実施した。