1 水産物の消費・流通と消費者の購買行動・意識の変化

(1)水産物の消費動向の変化

(生鮮魚介類の1人当たり供給量・購入量の推移)

 生鮮魚介類(冷凍を含む)の1人1年当たり供給量の変化を、純食料ベース(魚の頭や骨を除いた可食部)でみると、昭和39年に9.2kgであったものが平成7年には18.3kgまで増加しました。平成16年は14.8kgで、近年は減少傾向にありますが、長期的にみれば総じて増加しています。

 他方、この間の生鮮魚介(冷凍、洗浄、切断、不要物の除去などの最小限の加工を加えたものも含む)の1人1年当たり購入量の変化をみると、昭和40年頃には16kg前後であったものが、その後緩やかに減少を続け、平成16年には12.8kgにまで低下しています。したがって、1人1年当たりの供給量(純食料)とはまったく逆の傾向となっています(図I−1−1)。

(進む食の外部依存)

 生鮮魚介類の1人1年当たり供給量が増えているにもかかわらず購入量が減少している理由の一つは、この40年間で外食や弁当、おにぎり、調理パン、惣菜といったすぐ食べられる調理済み食品(「中食」(なかしょく)*1と呼ばれている)の形態による摂取割合が増え、食材として消費者に直接購入される生鮮魚介の量が減少したためです。

 過去40年間の食料支出額の内訳をみると、昭和40年頃は生鮮3品(生鮮魚介、生鮮肉、生鮮野菜)と外食がほぼ同額で、調理食品はこれらの半額以下でしたが、その後、米のシェアが大きく減少するのとは対照的に、外食は昭和40年の7.2%から平成16年には18.0%へ、調理食品も同じく3.0%から10.9%へ食料支出額に占めるシェアを大きく伸ばしています。近年は、外食の伸びは止まっていますが、調理食品は伸び続けています(図I−1−2)。

 中食のシェアが伸びている理由として、まず、単身世帯・2人世帯の増加が挙げられます。近年、世帯の少人数化が進んでいますが、平成12年には単身世帯・2人世帯が全世帯の半数となりました(図I−1−3)。1〜2人分の食事を調理することは非効率・不経済な面があること、一般に単身男性は料理頻度が少ないと考えられることから、単身世帯の増加は食の外部依存を進める大きな要因となっています。次に、女性の社会進出が挙げられます。女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、25歳から59歳まで全般に上昇しています(図I−1−4)。このようなことを背景として、炊事等の家事にかける時間は、昭和55年以降、減少傾向にあります(図I−1−5)。

 中食には、外食のように時間や場所の制約を受けることなく、近所のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでいつでも手軽に買えるといった利便性や、接客サービスや飲食場所の提供が不要であるため概ね外食より安いという経済性があります。また、家庭の手作り料理と同等の高品質な料理(惣菜類)をスーパーマーケット等で販売するHMR(ホーム・ミール・リプレイスメント=家庭料理代用品)も、家庭での調理をなるべく簡単かつ短時間に済ませたいというニーズに応え、その市場規模を拡大しています。

 最近、「包丁のない家庭が増えているのではないか」という話が聞かれます。真偽のほどはともかく、このような話が出るほど食の外部依存が進んでいる姿が、データからも明らかになっています。

*1 中食(なかしょく):レストラン等における「外食」と家庭での手作りの食事(「内食」(ないしょく・うちしょく)と呼ばれる)の中間にあたる食の形態であることから、こう呼ばれている。

(最も購入されている魚介類の形態は「切り身」)

 生鮮魚介類の1人1年当たり供給量が増えているにもかかわらず購入量が減少しているもう一つの理由として、食材として販売・購入されている生鮮魚介の形態が切り身や刺身といった最終的に消費される姿のものが増え、頭や骨といった不可食部分を一緒に購入しなくなったことが挙げられます。

 昭和39年には、粗食料ベース、すなわち、頭や骨等の不可食部分を含む丸のままでの生鮮・冷凍魚介類の供給量が16.7kgであったのに対し、購入量も16.0kgとほぼ同量となっており、この頃は魚介類の多くが丸のまま(粗食料の状態)で購入されていたと考えられます。頭や骨などの不可食部分を除いた純食料ベースの供給量は、粗食料の約55%の9.2kgにとどまっています(図I−1−1)。

 平成16年に、(社)大日本水産会が小中学生の子どものいる母親を調査対象として実施した「水産物を中心とした消費に関する調査」によれば、日ごろ最もよく購入する魚介類の形態は、スーパーマーケット、鮮魚専門店、生協等の宅配のいずれも「切り身」が最も多くなっています。鮮魚専門店は他の2つに比べれば「切り身」が少なく「一尾ものや殻つき」が多くなっていますが、スーパーマーケットでは「一尾ものや殻つき」の約4割に対して「刺身」も約4割、「切り身」は7割以上です。生協などの宅配では「切り身」が8割を超えています(図I−1−6)。現在は、総じて、調理しやすい、すぐ食べられる形態のものが多く購入されています。魚の頭や骨といった不可食部分は平均して約45%を占めていますが、それが除去された上で販売・購入されるようになったことが、購入量の減少の一因であると考えられます。

(年齢階層別にみた魚介類の消費動向)

 生鮮魚介類の購入量の推移を世帯主の年齢階層別にみると、現在(平成16年)も20年前(昭和59年)も年齢が高い層ほど購入量が多い傾向があります。これを世代ごとにみると、昭和20年代生まれの魚介類購入量は加齢とともに増えており、50歳代となった現在、1人1年当たり購入量は13.3kgとなっていますが、昭和30年代生まれは、20年前も40歳代となった現在も約8kgで横ばいであり、昭和20年代生まれが40歳代であったときの購入量12.3kgと比べて低い水準にとどまっています(図I−1−7)。

 先にも述べたとおり、外食や調理食品の形態による摂取割合が増え、食材として消費者に直接購入される生鮮魚介の量は減少しています。また、鮮魚の多くが切り身や刺身に加工された上で販売されている現在では、20年前に比べると購入量に占める可食部分の割合が高くなっているため、可食部分は購入量ほどには減少していないことになりますが、いずれにしても、後の世代ほど生鮮魚介類の購入量が少なくなっている点に十分留意することが必要です。

 最近、油脂の摂り過ぎによる栄養バランスの偏りや、食料資源の浪費といった諸問題が顕在化しており、「食育」の推進が重要な課題となっています。良質のたんぱく質や不飽和脂肪酸を豊富に含む水産物の優れた栄養特性や調理方法の普及・啓蒙を進め、特に、若い階層の消費の拡大を図るとともに、社会全体の高齢化が進む中で、魚介類の需要を支えている高齢者のニーズにも的確に応えていくことが重要となっています。

(2)消費者の購買行動と意識

(鮮魚購入時に最も注意するのは「鮮度」)

 農林水産省の食料品消費モニター調査(平成15年度第3回)によれば、食料品を購入する際に注意する点は、鮮魚と野菜は「鮮度や品いたみの程度」が2位以下を大きく引き離して多数です。一方、精肉は「鮮度や品いたみの程度」ではなく「産地や銘柄」との回答が最も多くなっています(図I−1−8上)。

 鮮魚について年齢階層別にみると、「鮮度や品いたみの程度」はどの階層でも最も多い理由となっています。「品質等」は高齢になるほど重視され、「価格」は若い年代ほど重視されています(図I−1−8下)。

(7割以上が購入店を決めている)

 生鮮3品の購入店を決めている割合をみると、鮮魚・精肉については7割以上のモニターが、野菜については7割弱のモニターが購入店を決めています(図I−1−9上)。鮮魚について年齢別にみると、30歳代以下は7割弱が、40歳代以上では8割弱が購入店を決めています(図I−1−9下)。

(購入店を1店に決めている一番の理由は鮮度)

 購入店を1店に決めているモニターについて、その理由をみると、鮮魚と野菜は「新鮮であるから」が最も多く、購入する際に注意する点で「鮮度や品いたみの程度」が最重視されているという結果(図I−1−8上)と一致しています。精肉は「品質がよいから」が最も多く、「新鮮」が決め手となっている鮮魚や野菜とは異なります(図I−1−10上)。

 鮮魚について年齢別にみると、20歳代を除き、「新鮮」が1位、「品質」が2位となっています。一方、20歳代では「近くにあるから」が最も多く、また、40歳代以上でも年齢が高くなるほど「近くにあるから」との回答が多くなっており、利便性も重要となっています。20〜30歳代では「値段が安いから」が他の年代に比べて多くなっています(図I−1−10下)。

(高齢になるほど高い食の安全意識)

 農林水産省食料品消費モニター調査(平成15年度第1回)によれば、高齢になるほど「食の安全性」に対する関心が高いと認識しているモニターの割合が多くなっています(図I−1−11)。

 また、生鮮食品については、20歳代、30歳代では約6割が、40歳代以上では7割以上が「価格に関係なく安心感を重視」または「どちらかと言えば安心感を重視」と回答しています(図I−1−12)。

(トレーサビリティは重要)

 農林水産省食料品消費モニターの約6割が「食品のトレーサビリティは重要」と認識しており、「どちらかといえば重要」も加えると9割以上になります。年齢別では、高齢になるほど重要と考える人が多くなっています(図I−1−13)。

 また、望ましい生産者情報等の入手方法は、「食品のパッケージ(包装資材)に記載」が多数です。「店頭の端末で調べる」も多いですが、「パソコン等インターネットで調べる」よりも、店頭で手軽に知り得ることが望まれています(図I−1−14)。

 トレーサビリティについて「重要」または「どちらかと言えば重要」と認識しているモニターが、加工食品の原材料の中で、鮮魚(養殖)について知りたい履歴は、抗生物質の投与歴、産地や餌に関する情報が多数となっています(図I−1−15)。

 一方、小売業界の中には、消費者は生産履歴データを見ても専門用語が多いため理解することが困難であり、実際のところ見ていないと指摘した上で、詳細な履歴開示の効果を疑問視する声もあります。また、生産者の中にも、トレーサビリティ・システムの構築に取り組んだが、小売価格の上昇につながらずメリットがなかったという意見も聞かれます。

 トレーサビリティ・システムは、食品の流通経路情報を活用して食品を追跡・遡及できる仕組みです。食品の安全性を直接保証するものではありませんが、トレーサビリティ・システムを通じて、食品事故が起きた際の回収や原因究明を容易・迅速に行うこと、生産者から消費者へ様々な情報を伝えること、また、生産物の信頼性の向上に役立てることが可能となります。その導入に当たっては、一定のコストがかかることに留意し、鮮魚が出荷後短期間に消費されるという商品特性を有していることを踏まえて、どのような効果をねらいとするのか明確にして取り組むことが重要です。

(3)量販店のシェア拡大と鮮魚小売店の生き残り戦略

(鮮魚の小売シェア7割はスーパーマーケット)

 農林水産省食料品消費モニター調査によれば、鮮魚を購入する際、最もよく利用されているのはスーパーマーケットで、昭和62年は4割強であったシェアは、平成15年には約7割を占めるに至っています。一般小売店のシェアは減少を続け、平成15年には15%となりました。生協は、平成8年まではシェアを拡大しましたが、その後減少に転じています(図I−1−16)。

(スーパーは利便性、鮮魚専門店は鮮度、生協は安心感)

 平成16年に、(社)大日本水産会が小中学生の子どものいる母親を調査対象として実施した「水産物を中心とした消費に関する調査」によれば、スーパーマーケットのシェアはさらに高く77.6%となっており、以下、生協などの宅配(14.4%)、鮮魚専門店(5.5%)となっています(図I−1−17上)。

 また、購入先を選んだ理由(複数回答)を購入先別に比較すると、スーパーマーケットについては、「便利な場所だから」との回答が最も多くなっています。次いで「価格が安いから」、「魚介以外の買い物もまとめてできるから」、「品揃えが豊富だから」と続いており、便利な場所にある、他の買い物もまとめてできるといった利便性が最も大きな理由となっています。

 鮮魚専門店で購入する理由では、約9割が「新鮮なものが多いから」と回答しており、品揃えや価格でも支持されていますが、鮮度の良さが決定的な理由となっています。また、スーパーマーケット等と比較して、「地元で獲れた魚介を買えるから」、「旬やおすすめの商品を教えてくれるから」という理由が比較的多いのも特徴です。

 生協などの宅配では、約7割が「品物に安心感があるから」と回答しており、「信用できる店(業者)だから」も約4割となっています。「他の買い物もまとめてできる」、「ちょうど良い量で買える」といった利便性でも支持されていますが、生協などの宅配による購入については、安心感が最大の理由となっています(図I−1−17下)。

 この調査結果からみる限り、鮮度で高い支持を得ているのは鮮魚専門店だけですが、それにもかかわらずスーパーマーケットのシェアが増大し、鮮魚専門店等の一般小売店のシェアが減少していることから、全体としては、利便性が最優先される傾向があることがわかります。このような傾向に対応して、スーパーマーケットでは、鮮魚売場で持ち帰り用の寿司を販売したり、惣菜コーナーを設けるといった工夫を行うところが増えています。

(スーパーマーケットは流通量の多い魚種を中心に扱う傾向)

 スーパーマーケットは、大型店舗を多数有し一度に大量の商品を計画的に仕入れるため、取扱品目がマグロ、サケといった流通量の多い魚種やロットがまとまった輸入品が中心となる傾向があります。このために、日本の沿岸や近海で獲れる多種多様な旬の魚を十分に提供できず、地域性や季節感のない売場になっているのではないか、また、売場では鮮魚に通じた人材、いわゆる「目利き」が少なくなってきたため、鮮度ではなく低価格で他店と競争する傾向があり、流通段階における鮮度維持努力が不十分となったり産地魚価安の原因になっているのではないかとの指摘があります。

 一方、スーパーマーケット業界や外食業界からは、生産者は消費者ニーズをあまりにも知らない、魚を獲ることしかせず産地加工の実施に対する要望があっても消極的であるとの声が聞かれます。

 小売業界からは、切り身や刺身に加工したものでなければ売れないが、消費者は価格に敏感であり、加工コストを価格に転嫁することができないため、利益が得られないとの声も聞かれます。

(きめ細かな顧客サービスで生き残りを図る鮮魚店)

 鮮魚小売業の事業所数は、ピーク時(昭和51年)の5万8千から平成14年には2万5千へと26年間で半数以下に減少し、従業者数も15万6千人から8万7千人へとほぼ半減しています(図I−1−18)。また、経営者の約半数が60歳以上となっており、高齢化が進んでいます(図I−1−19)。

 鮮魚店を対象に行った調査では、74%の店が魚をさばいたり3枚におろしたりという前処理(一次加工)サービスを行っており、さらに、配達については63%、ご用聞きについては16%の店が行っています(図I−1−20)。

 切り身や刺身に加工した上での販売は、今やスーパーマーケット等の量販店においても一般的に行われていることですが、配達やご用聞きは小売店ならではの顧客サービスといえます。

 前述のとおり、鮮魚店で魚介類を購入する人の約9割が「新鮮なものが多いから」を理由として挙げていますが、この他の理由として、約2割の人が「地元で獲れた魚介を買えるから」、「旬やおすすめの商品を教えてくれるから」を挙げています(図I−1−17)。鮮魚店が、対面販売の良さを活かして、調理法をアドバイスして旬の魚をすすめたり、顧客の要望を聞いて焼き魚に調理するといった、顧客とのコミュニケーションによってきめ細かなサービスを提供することにより量販店に対抗しようとする努力が伺えます。

 鮮魚店のほとんどは消費地市場で仕入れを行っています。入荷状況は漁模様や季節に応じて変動しますが、中にはそれを逆手にとって、市況に応じて多種多様な旬の魚を提供し、季節感のある店づくりを目指すことで、大手スーパーマーケットとの差別化を図っている鮮魚店もあります。

(4)水産物の流通ルートの多様化の急速な進展

(卸売市場経由率の低下)

 水産物は、水揚げが漁海況等に左右される・集中しやすい、多品種で大きさや品質が多様である、生鮮食用・加工食用・非食用など仕向先が多様である、鮮度落ちが早いため鮮度保持が特に必要であるといった特性を有しています。このような特性を有する水産物については、まず、産地市場において水産物を仕分け、分荷、出荷し、次に、消費地市場において、全国各地の産地市場から集荷された水産物を分荷、品揃え、価格形成、決済を行うという流通システムが発達しました。

 全国から多種多様な鮮魚を集約し多数の小売店に分配するこのシステムは、鮮魚が主に一般小売店(鮮魚店)によって販売されていた時代には有効に機能していました。現在の小売の大半を占めるスーパーマーケットは大型店舗を多数有する大口需要者であり、定量、定質、定価、定時という4つの安定条件(四定条件と呼ばれる)を求めることから、セリ・入札により取引価格が決まる卸売市場システムでは対応しにくい面があり、加工品や冷凍品を中心として、消費地市場を経由しない直接取引や、市場経由であってもセリではなく相対で取引する形態が増えています。この結果、水産物の卸売市場経由率は近年低下してきています(図I−1−21)。

(卸売業者による市場活性化の取組)

 卸売業者は、市場において生産と消費の間を取り持ち、迅速に魚を流通させる重要な役割を担っています。卸売業者が、生産者と販売者の両者との接点を持ち、最新の産地の動きと消費者ニーズの変化を把握できる情報力を活かして、産地と消費地を結び日本各地の季節感あふれた魚のブランド化に取り組む動きもあります。

 産地の生産者が、水産物流通を担い小売業者との太いパイプを持つ卸売業者と連携することによって、独自には困難なブランド化による付加価値の向上や新たな販路開拓を図ることが期待されます。

(水産物にも拡がる電子商取引)

 最近では、冷凍・冷蔵品の宅配サービスとインターネットの普及により、インターネット取引を活用した生鮮食品の産地直売が可能となり、急速に普及しつつあります。インターネット通信販売等の消費者向け電子商取引(BtoC*1)の平成16年の市場規模は5.64兆円で、13年(1.48兆円)からの3年間で3.8倍の伸び率となっています。企業間電子商取引(BtoB*2)の16年の市場規模は102.7兆円で、13年の3倍です(図I−1−22)。水産物の分野でも、独自にBtoB、BtoCにより販路を開拓している生産者や漁協が出現しています。

*1 BtoC:Business to Consumer

*2 BtoB:Business to Business

(小売価格に占める生産者受取価格の割合)

 「食品流通段階別価格形成追跡報告」(調査は平成14年10月及び11月に農林水産省が実施)から、東京で販売された水産物(生鮮)と野菜の流通段階ごとの価格をみると、小売価格に占める生産者受取価格の割合は、水産物では、20〜30%程度となっています。これに対し野菜類は、タマネギは29%、キャベツは40%、ダイコンは43%で、総じて水産物よりやや高い割合となっています(図I−1−23)。

図I−1−24

 水産物は、産地市場があるため野菜類より1段階多い6段階流通となる他、常時冷蔵による鮮度保持が必要であること、また、大半は切り身や刺身に加工されて販売されており、そのための経費がかかることから、流通マージンが高くなりがちです。

 卸売市場を通さず、小売店が直接産地から調達している事例(3段階流通)もあります。マアジについて6段階の事例と3段階の事例を比較すると、生産者受取価格は、6段階の281円/kgに対し3段階は368円/kgで3段階の方が高く、小売価格は、6段階の909円/kg(1尾売り)に対し3段階は679円/kg(トレーパック売り*1)で、3段階の方が低く抑えられています(図I−1−25)。

図I−1−26

 いずれも1事例であり、それぞれの流通形態を代表するデータではないことに留意する必要がありますが、流通経路が短縮されることで、3段階の方が流通マージンが低く抑えられることとなります。3段階流通は一般的な経路ではありませんが、消費者ニーズがより身近なものとして把握できる、消費者との顔の見える関係づくりにつながるといったメリットも期待できます。ITの発達や消費者や食品事業者のニーズに応じて多様な流通経路を開拓することも重要となっています。

*1 トレーパック売り:カット等の処理をせずに、そのままの形態のものを1尾又は複数をトレーに詰めて1パックずつ販売する方法

(5)魚価の消費地高・産地安の実態

(消費者意識は「魚は肉より割高」)

 平成16年に、(社)大日本水産会が小中学生の子どものいる母親を調査対象として実施した「水産物を中心とした消費に関する調査」によれば、夕食に魚介料理を食べる頻度について、56.5%が「週1〜2日」または「ほとんどない」と回答しており、その理由は「肉より割高だから」が最も多く4割に達しています(図I−1−27)。

 一方、漁業者からみれば「燃油価格の高騰が続く中、魚価は低迷しており、燃油代も稼げない」状況にあり、魚価についての認識は生産者と消費者では大きく異なっています。

(消費地高・産地安と言われる要因)

 サバを例として産地価格と消費地価格の現状をみると、産地に水揚げされるサバは、サイズによって生鮮向け、加工向け、飼料・餌料向けと異なる用途に向けられますが、その価格(1kg当たりの単価)は用途によって大きく異なっており、生鮮向けと比べて加工向けは2分の1、飼料・餌料向けは10分の1にしかなりません(表I−1−1ダウンロード)。

 多獲性魚のサバは生産量が大きく変動しますが、生鮮向け出荷量は比較的安定しており、加工向け出荷量も極端には変動しておらず、生産量の増減は主に飼料・餌料向け出荷量に反映されています。このため、産地価格(全用途平均)は、例えば、生鮮向けが1割にとどまり飼料・餌料向けが7割を占めた9年は62円/kgでしたが、生鮮向けが23%に増え飼料・餌料向けが54%まで下がった11年は108円/kgまで上がっています(図I−1−28左)。

 5年間の平均価格で比較すると、小売価格(生鮮)が533円/kgであるのに対し、産地価格(全用途平均)は98円/kgで小売価格(生鮮)の18%程度ですが、生鮮向けの産地市場卸売価格は233円/kgで小売価格(生鮮)の42%程度となっており、どの産地価格と比較するかによって小売価格との関係が大きく異なっています(表I−1−1ダウンロード)。

(求められる付加価値向上の努力)

 最近の変動をみると、17年は小型魚を中心として生産量が大幅に増えた結果、産地価格(全用途平均)は40円/kg近くにまで下落しています。消費地卸売価格(生鮮、ほとんどが国産)が300円/kg前後で推移しているのに対し、一般に国産品よりも大きなサイズである輸入品(冷凍)の価格は、世界的な需要増や輸出国の漁場の資源の悪化に伴って上昇しており、国産の生鮮品と同水準となっています(図I−1−28右)。

 生産者は、用途によって産地価格が大きく異なっていることを踏まえ、産地価格の高い生鮮・冷凍向けの魚を中心に漁獲したり、サイズが小さく飼料・餌料向けとされる魚を養殖して食用サイズにまで大きくしてから出荷するといった付加価値を高めるための創意工夫が課題となっています。

(6)産地による販売力強化の必要性

 消費者ニーズは鮮度、利便性、そして低価格と多岐にわたり、年齢層によっても優先順位が変わっています。鮮度では劣っても大口需要者が求める四定条件を満足することができる輸入水産物や水産物以外の食品との競争の中で、水産業の経営の安定と発展を図るためには、鮮度や多様性・季節性といった国産水産物の持つ特長を活かして、変化する消費者ニーズにどのように応えていくかが重要となっています。

 また、水産物の購入先が変化し、流通ルートが多様化する中で、産地による販売力強化が必要となっています。次節でみるように、既に各地では、生産者や流通関係者の創意工夫に基づいて様々な取組が始まっています。

(産地市場の構造改革)

 産地の販売力強化を図る上では、産地市場の構造改革を進めることが重要です。水産物に特有な産地市場は全国に約900ありますが、多くは地元漁協が開設・運営する零細なもので、水揚量の減少により取扱商品が質・量ともに不安定なため、大口需要に対応できない、売買参加者も多くは零細で競争が停滞しているといった問題があり、その結果、価格形成力が低下し価格も不安定になっています。

 このため、零細な産地市場の統合により、市場機能を回復するとともに、産地市場の営業力を向上させる必要があります。物理的な統合だけでなく、北部九州3県が取り組んでいる「おさかなマーケット」のように、共通のホームページで3県の複数の産地の生産情報を一元的に量販店や外食業者に提供することで、機能的に統合を図った事例もあります。

 産地市場を運営する漁協の中には、自ら買参権を取得し流通に参入したり、産地市場毎に異なっていた買受人を県域で共通化して県域内全市場での買い受けを認めることにより、開かれた産地市場づくりに努めている事例も見られます。全国漁業協同組合連合会もこうした産地市場の運営改革を推進しています。漁協による積極的な販売への取組や産地市場の活性化は、産地の販売力を強化する上で重要な鍵を握っています。

魚をたくさん食べる人ほど心筋梗塞になりにくい −厚生労働省研究班−

 魚の脂質に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)には、血管を詰まりにくくすることによる生活習慣病の予防や脳の発育に効果があることが知られています。これまでも、少しでも(週1、2回)魚を食べることが心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患*1の予防につながるという、海外の研究報告がいくつかありましたが、週1、2回以上、たくさん魚を食べるとさらに虚血性心疾患の予防効果が高くなるかどうかを示す研究結果は、これまで報告されていませんでした。そこで、厚生労働省研究班は、平成2年から約11年間にわたり、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県に住む男女約4万人について、食事を含む生活習慣と虚血性心疾患発症との関連を追跡しました。

 追跡期間中に虚血性心疾患を発症した男性207人、女性51人、合計258人について、高齢や喫煙など他の要因の影響を除いた上で魚の摂取量との関係を分析したところ、摂取量が最も多い(週8回に相当)グループの全虚血性心疾患のリスクは、最も少ない(週1回に相当)グループの63%になりました。心電図、血液検査などで心筋梗塞と確定診断されたものに限ると44%と、リスクの低下傾向がよりはっきり示されました()。日本人の一人当たりの魚介類の消費量は世界でもトップレベルです。今回の調査によって、魚による虚血性心疾患予防効果は、週1、2回程度でも期待できるけれども、それ以上に食べるとさらに高くなることがわかりました。

*1 虚血性心疾患:心臓に栄養を送る血管(冠動脈)が狭くなったり閉塞したりする病気。一時的に血液の流れが悪くなるものを狭心症、冠動脈が詰まり心筋が壊死してしまうものを心筋梗塞という。