2 燃油価格高騰の影響 〜省エネ型漁業への転換の取組〜

 原油価格の世界的な高騰が続いています。平成17年8月末には、米国産の「WTI原油*1」の価格が史上最高の69.81ドル/バーレル*2(期近*3終値*4ベース)を記録、概ね30ドル/バーレルで推移していた15年から2年で2倍の水準となっています。

 価格上昇の原因については、(1)中国をはじめとする世界の石油需要の急増、(2)OPECの余剰生産力の低下という構造的要因に加え、(3)米国のハリケーン被害や中東情勢といった供給面の不安定要素、(4)投機という短期的変動要因の4点が挙げられていますが、原油価格は現行水準が今後ある程度継続するものと見込まれています。

 原油価格の高騰は、石油製品全般の価格上昇をもたらしており、様々な分野への影響が懸念されていますが、漁業分野では、これまでの省エネ取組の遅れから他産業に比べて経費に占める燃料費の割合が高いこと、また漁獲物価格への転嫁も困難な状況であることから、漁業経営への深刻な影響が懸念されています。たとえば、中小漁船漁業平均では、燃油価格が17年末の水準で推移し、燃油使用量は15年度当時のままと仮定すると、年間の燃油代は、15年度に比べて約700万円増加することが見込まれます。

図1

 こうした中、漁業者団体においては、現下の原油価格水準でも維持可能な強い漁業経営へと構造改革を進めていくため、漁業者が省エネに取り組むに当たって指標となる「工程表」を、漁業種類や地域ごとに、それぞれの実態に応じて作成しており、今後これに基づき漁業者の省エネの取組を推進していくこととしています。

 原油価格の高騰に対しては、国として関係省庁が連携して取り組むこととしております。

 漁業者や団体の取組を緊急に支援するため、17年度補正予算により造成された「経営体質強化緊急総合対策基金」及び18年度予算において、漁協系統の燃油流通の効率化や漁業者の協業化による省エネ対策など、「工程表」に沿った取組を支援することとし、漁協系統による燃油流通の効率化を図るため、県域で策定する「物流効率化プラン」に基づいた、燃油タンクの集約・再配置や自動管理システムの導入の取組を支援することとしています。このような取組を通じた人件費や施設管理費の削減により漁業者への燃油供給価格の引下げ効果が期待されます。

 さらに、共同漁場探索船による共同操業をはじめとする協業化を促進するとともに、いか釣り漁業等について、従来の集魚灯に比べて電力消費量が約30分の1で済む発光ダイオード式集魚灯への転換を進めることにより、省エネ型漁業への転換をソフト、ハードの両面で支援することとしています。

 また、「エネルギー使用合理化事業者支援事業」を活用して、省エネルギー効果の高い設備・施設を導入することが可能となっています。

 都道府県においても、省エネに取り組む漁業者に対して緊急に低利で資金を融通するための金融機関への利子補給や漁船燃料節減のための啓発等を行っています。

 一方、中期的な取組として、省力化による低コスト経営への転換など、漁船漁業の構造改革についても検討していくこととしています。

 漁業者が、以上のような支援策を活用して省エネや省コストに取り組み、できる限り早く省エネ型漁業への転換を図ることが期待されます。

*1 WTI原油:West Texas Intermediate 西部テキサス原油。アメリカが産出する代表的原油で世界の原油市況の指標となっている。

*2 1バーレル=約159リットル

*3 期近(きぢか):先物取引において、受渡期日がもっとも早く到来する限月(売買約定を最終的に決済しなければならない月)のこと。(反意語は「期先」(きさき))

*4 終値(おわりね):後場立会の最終約定値段