「平成七年度漁業白書」の概要

                                農林水産省
                                水 産 庁

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 「平成七年度漁業の動向に関する報告書」(いわゆる漁業白書)は、四月一九日の閣
議で決定され直ちに国会に提出された。
 本白書は、平成六年の国連海洋法条約の発効、さらに七年の国連公海漁業協定の策定
等新しい海洋秩序が形成されるという節目の時期を迎える中で、同条約の批准に向け
て、我が国周辺水域の適切な資源管理の必要性が高まるとともに、漁業経営の悪化、就
業者の減少・高齢化等から経営の改善、担い手の確保、漁村地域の活性化が重要な課題
であるとの認識の下に、新しい海洋秩序の形成について重点を置きつつ、六年以降の我
が国漁業の動向を分析した。
 主な内容は、以下のとおりである。

I 新しい海洋秩序の下での我が国漁業

 一 国連海洋法条約をめぐる状況
  海洋秩序の成文化を目指し五七年に採択された国連海洋法条約は、六年一一月に発
 効した(八年二月一日現在八五カ国が締結)。同条約における水産関係の主要事項
 は、a排他的二百海里経済水域の設定、b同水域内での漁獲可能量(TAC)の設定
 となっている。

 二 我が国二百海里周辺水域の現状
  我が国周辺水域では、漁業水域に関する暫定措置法の規制対象外である韓国・中国
 漁船が活発に操業しており、我が国の漁業者においては、操業の安全性や資源の枯渇
 に対する不安が生じており、外国漁船の操業秩序の確保が重要な課題となっている。
  水産資源の水準は、一部の魚種については高水準を維持しているが、全般的には中
 位又は低位で横這い又は減少傾向にある。特に、漁獲の大半を占めていた太平洋まい
 わしが中位水準で減少傾向にあるほか、日本海及び東シナ海においても減少傾向にあ
 る。

 三 漁業管理の現状
  漁業管理の手法は、欧米諸国等では、TACの設定による漁獲量の直接管理が主流
 となっているが、我が国では、漁船隻数、漁具規制等の漁獲努力量を規制する手法を
 採用している。
  我が国としても海洋法条約の批准に向けて、資源の量的管理への移行という新しい
 海洋秩序に即した管理制度の確立が重要な課題となっている。

欧米諸国等における主たる漁業管理の手法

資料:水産庁

 四 国際漁場における我が国漁業
  資源の保存管理措置の強化の動き等から、公海での漁業生産量は減少傾向にある。
 また、七年八月に「国連公海漁業協定」が採択され、これにより、公海漁業に関する
 水産資源の実行ある資源管理が期待されることとなった。

II 水産物需給の現状

 一 水産物需給
  食用魚介類の需給規模は、近年所得が伸び悩む中で、消費は横這いから減少傾向に
 ある。また、六年の食用魚介類の自給率は六一%(魚介類全体では七三%)となっ
 た。

 二 漁業生産と水産物貿易
  漁業生産は、昭和六三年に一,二七九万トンの史上最高を記録したが、その後、ま
 いわしの減少に伴い減少傾向にある。六年の漁業生産量は、前年比七%減の八一〇万
 トンで元年から六年連続で減少、生産額は、前年比五%減の二兆三,七三八億円と
 なった。

漁業部門別生産量及び生産額の推移

資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」

  一方、水産物貿易は、円高等を背景に輸入が引き続き増加し、六年は史上最高の三
 三〇万トン、一兆七、〇九一億円となった。今後とも国内外の需給に即した秩序ある
 輸入が重要となっている。

 三 水産物消費・価格と水産加工
  水産物消費は、これまで健康志向に支えられて堅調に推移してきたが、六年の魚介
 類の家計消費支出は、所得の伸び悩み等に伴い、名目、実質ともに二年連続で前年を
 下回るなど低調に推移した。
  水産物価格は、産地・消費地ともに横ばい又は低下傾向を示した。価格水準の低下
 の要因としては、輸入水産物の増加に加え、消費者の低価格志向の高まり、家計消費
 支出の減少、肉類との競合の激化等が考えられる。
  また、水産加工業についてみると、生産量は全般的に減少傾向を示しており、経営
 体数も近年減少傾向を示している。このような状況の中で、需要の増大を図るために
 は、コストの削減、付加価値の向上を念頭に置いた商品開発等が課題となっている。

 四 世界の水産物需給
  世界の漁業生産は、昭和六三年に初めて一億トンを超えて以降、横ばいで推移して
 いる。五年の生産量は一億八五九万トン、国別では、前年に引き続いて中国が第一位
 となった。

世界の主要国別漁業生産量の推移

資料:FAO「Yearbook of Fishery Statistics Catches and Landings」
及び農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」

  水産物貿易は拡大傾向にあり、五年の輸入額は四四六億ドルで、二〇年前の約一〇
 倍となっている。国別では、日本が第一位で全体の三二%を占めている。
  食用魚介類の需給規模は拡大傾向で推移しており、年間一人当たりの供給量は一〇
 年前に比べ約二割増加し、一三.三Kgとなっている。しかし、世界の人口増加が予想
 される中で、漁業生産の動向次第では世界的に水産物需給が引き締まることが予想さ
 れる。

III 漁業経営と漁業就業構造

  六年の漁家所得(六五三万円)は、全国勤労世帯の所得と比べると九一%の水準で
 あり、漁家の漁業依存度(漁業所得/漁家所得)は四六%となっている。

漁家所得の推移

資料:農林水産省「漁業経済調査報告(漁家の部)」から作成

  中小漁業は、六〇年以降漁業収支は黒字を維持していたが、四年に八年ぶりに赤字
 に転落、六年は三年連続の赤字になるなど厳しい状況であった。一方、漁業利益段階
 の黒字、赤字の経営体数全体の構成割合は、黒字経営体が前年比五ポイント増の五五
 %であった。
  今後、漁業経営の安定化を図るためには、実現性の高い水揚げ高を前提とした経営
 計画を基に、固定費の削減等により損益分岐点を下げ、経営管理能力を高め近代的な
 漁業経営を確立することが重要であるとともに、漁獲物の付加価値向上や流通・加工
 分野への展開を図るなど、漁業者自身の販売力の強化が重要となっている。
  六年の漁業就業者は、前年比四%減の三一万二千人、部門別では、沿岸漁業就業者
 は五%減の二六万三千人、沖合・遠洋漁業者はほぼ前年並みの四万九千人となった。
 とりわけ、若年齢層を中心に減少傾向が続いており、高齢化の傾向も一層顕著となっ
 ている。
  また、漁船船員が不足する中で、各地で就業者の養成の動きがみられるほか、海外
 基地式漁業においては、外国漁船船員の乗船が増加している。

IV 漁業振興と地域活性化 

 一 水産資源の持続的かつ高度な利用
  我が国周辺水域においては、水産資源が総じて低水準にあり、また、新しい海洋秩
 序に対応した適切な資源管理が必要となっている中で、漁業の振興を図るためには、
 資源の持続的かつ高度な利用を図ることが重要となっている。
  このため、需要の高い魚介類の資源の向上に向け、つくり育てる漁業や沿岸漁場の
 整備を積極的に推進することが重要となっている。
  海面養殖業では、まいわし餌料の不足に対応した代替餌料の確保や配合飼料への転
 換等が求められている。また、近年、一部の魚種では、導入した外国産種苗による魚
 病の発生がみられることから、種苗輸入時の防疫体制の一層の充実が望まれている。
  資源管理については、秋田県のはたはたに関して行われた自主規制措置等の、漁業
 者による広域的な漁業管理を全国的に定着させていくことが重要となっている。

 二 地域の活性化
  漁業者は、漁業に魅力を感じているが、その反面、安定収入が得られないなどの不
 満を持っている。このことから、若年齢層が漁業に参入し漁村に定着する要件とし
 て、安定した収入の確保、将来展望がもてる産業・職場としての確立や定休日の設定
 等が重要である。
  海洋性レクリェーションやいわゆる「ブルーツーリズム」に対する国民の志向の高
 まりに適切に対応することにより、漁家収入の向上・漁村の活性化を図ることが重要
 となっている。
  漁業協同組合は、漁民の協同組織として我が国漁業・漁村を振興する上で重要な役
 割を果たしているが、農協に比べ職員数が約一〇分の一と規模が小さいことから、今
 後とも合併や事業統合等を通じて組織体制の整備と事業基盤の強化を図ることが望ま
 れている。

 三 環境問題と我が国漁業
  環境保全をめぐる国際的な活動が活発化しており、科学的知見に基づく水産資源の
 適切な管理と環境と調和した漁業の実践が求められている。
  水産業を永続的に維持していくためには、海洋環境の保全を図りながら漁業を行う
 「生態系保全型漁業」の構築と、破壊された生態系の修復の必要性が増大している。
 近年では、生態系保全の観点から、漁業者による植林活動の事例が増加するなど、民
 間による活動が活発化している。

むすび
  新たな海洋秩序の確立という変革の時期にあって、我が国漁業が確固たる漁業基盤
 を築き、新たな時代に向けて飛躍するための基本的課題を展望すると、a新たな海洋
 秩序に対応した適正な漁業管理と周辺水域の高度利用、b消費者・実需者ニーズに対
 応した国産水産物の供給体制の確立、c漁業経営の低コスト化及び合理化の推進、d
 漁業を核とした魅力ある定住圏づくりの四点が挙げられる。

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