ホーム > 食育地域レポート > 食を学ぼう!なるほど講座(第5回)
農林水産省北海道農政事務所では、消費者が日々の生活の中で感じた食に対する不安や疑問に対して、科学的な見地からの情報提供を推進するため「食を学ぼう!なるほど講座」を札幌市消費者センターと共同で開催しています。
本年度5回目の講座は、11月1日、札幌エルプラザにおいて、「食品安全の過去・現在・未来」をテーマに開催し、30人の参加をいただきました。
今回は、北海道大学大学院水産科学研究院教授 一色 賢司 氏をお招きし、食品安全確保の基礎的な考え方やフードチェーンアプローチの重要性などについてご説明いただきました。

〔講演概要〕
【食品の安全性】
食品が安全であるという状態は、その食品を食べた後、体調が悪くならないということ。安全な食品の安定調達は人類の発達、人口増加に密接に関わっている。人類は、生物の可食部を選抜し、そのままでは食べられない部位も調理加工して食べてきた。食品関連技術の発展、特に火の利用は、微生物や寄生虫の活動防止、食料の保存性・消化性向上など食料調達や安全性の確保に大きく影響した。
摂取される食品成分の量と健康に及ぼす影響は摂取量の多少によって違いが出る。毒性が強くても、摂取する量が少なければ健康には影響を及ぼさないことがある。毒性が弱くても多く摂取すれば生体への影響が大きく出る場合もある。また、体に必要な栄養素も摂取する量によっては健康に影響を及ぼす場合がある。例えばビタミンAは、不足すると夜盲症を発症するが、サプリメントなどで過剰に摂取するとビタミンA過剰症(軽度な場合下痢などの食中毒症状、重篤な場合倦怠感、皮膚障害など)になる。
食品の安全性は「高い・低い」で表される。リスクは「大きい・小さい」で表現される。そのままではリスクが大きく安全性が低い食品も、何らかの対策を取ることでリスクが小さくなり、安全性を高めて摂取する事が可能になる。ふぐには毒があるが、免許を有する者が調理することにより、安全に食べることができる。
食品を食べることにより体調が悪くなることを食性病害という。その原因は食品がもともと持つ有毒成分や寄生虫、調理に使用する水の汚染、不適切な扱いによる食中毒菌の繁殖など、一次生産過程から最終消費まで、全ての過程に潜んでいる。しかし、原因が分かれば、対策を取って安全を確保することができる。
【フードチェーンアプローチ】
食品衛生は食生活の安全性確保を達成する手段である。日本のフードチェーン(食料調達網)は地球全体に伸びている。その全ての過程での連続した衛生管理(フードチェーンアプローチ)が重要である。フードチェーンに関わる全ての人が最善を尽くし「できることはやる・やってはならないことはやらない・うそをつかない」という基本的な姿勢が食品の安全管理には必要である。さらに、フードチェーンの流れを透明化し、消費者が知ることのできる仕組みを作ることが安全性確保につながる。
食品の安全確保は生産者・加工者だけでなく小売業者や消費者にも求められている。消費者も食品の安全性に関する知識及び理解を深めることが必要である。スーパーで消費者が商品について質問し、店員が答えることもリスクコミュニケーションである。発信される多くの情報の中から情報を賢く選択し、信頼できる相談相手を増やすことも安全性確保の一手段である。

【未来について】
世界の人口は年々増加している。2050年には91億人に達するとの国連予想もある。食料の安定的な供給には、未利用資源の活用や超高圧利用など新技術開発とそれに伴う安全性の確保が必要である。また、これまで問題なく食べてきた食品にもリスクはあり、食べ方や摂取量次第では毒性を示すことも忘れてはならない。
人間は従属栄養生物であり、原始の時代から動植物を食べてきた。これからも生物を食べ続けるのだから、いろいろな体験を通じ、「食の大切さ」や「いただきます」の意味を次世代に伝えていきたい。
〔質疑及び意見交換〕
参加者からは日本の食品安全の水準や食性病害について質問がありました。
また、「食中毒は、一般家庭でも起こりうることがあるので、意識をもって注意しながら安全性(衛生)には気をつけていきたいと思う」や「透明性を高め、他人に見せることにより、安全に供給する意識が高まるし、消費者側にも確認できると思う」などの感想が寄せられました。