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北陸農政局

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掲載日:平成30年3月16日

クローズアップ北陸農政局長賞

平成28年度に北陸農政局長賞を受賞された方々の取組や現在の様子をご紹介します。

片岡 喜美子(かたおか きみこ)さん(福井県坂井市)


【受賞名】農政功績者表彰(6次産業化・食品産業部門)

【表彰目的】北陸農政局では、管内において農畜産業の発展に功績のあった個人又は団体に対し北陸農政局長賞を授与しています。

1.受賞概要

片岡さん 
元気な笑顔が印象的な片岡さん 

片岡喜美子さんは、昭和40年、専業農家の夫と結婚すると同時に就農し、昭和45年頃には、水稲中心の経営から、野菜苗やすいか、らっきょう、だいこんなどの複合経営に転換し、所得の確保に努めました。

また、当時は、まだ取組の少なかった消費者への直接販売も開始し、平成13年、地域の農業交流拠点「ユリーム春江」の「ユリーム直売市」の開設後は、運営の中心メンバーとして活躍されました。
平成15年、直売商品の充実に向け、農産加工グループ「てまひまグループ」を結成、代表に就任するとともに、農産加工施設を整備し、あられ、沢庵、らっきょう漬け、味噌、惣菜などの加工を開始しました。
加工商品は、ユリーム直売市での販売を始め、消費者へ直接販売するほか、地元ショッピングセンターなどでも販売し、好評を得ています。

一方、平成2年には県内で初めて女性で指導農業士となり、加工技術の指導、技術の継承に努めるとともに、6次産業化の推進に貢献されました。
平成8年には地区専業農家女性グループ「実輪(みわ)の会」を立ち上げ、活動の一つとして、「農家が教える料理講習会」を開催し、地場産農産物を使った料理を消費者に教えるなど食育の推進にも積極的に取り組まれています。

2.農家へ嫁いでから現在に至るまでのご苦労や、印象的な出来事等を教えてください。

  干しているあられを説明
干しているあられを説明する片岡さん
 
加工場での様子
加工場での様子

片岡家へ嫁いで50年余りが経ちましたが、当時の片岡家は、集落の人達から「家が、もうすぐ潰れる。」と言われるほど、生活に困窮している状態でした。

私は、高校を卒業後、小説作家の山岡荘八先生(「徳川家康」ほか著書多数)のお宅(東京都)へ家事手伝いとして5年間、奉公に出ていました。
当時の女性は、20才前後で結婚することが普通だったので、奉公を終えて帰ってきたのが24才の6月で、8月にお見合いをし、11月には、嫁ぎ先の家がどのような状況かよく知らないまま、あっという間に結婚しました。
片岡家は、生活には困窮していましたが、地域の名家で、周囲の目が厳しいものだったので、負けないように頑張りました。

特に、水稲主体の農業経営だったため、年に1回、米収穫後の秋にしか収入がなかったので、年間を通して収入を得られるように、実家で取り組んでいた、すいか、だいこん、らっきょうなどの野菜の栽培を片岡家でも始めて、また、自動車に野菜を積んで近隣の市町村へ売りに出かけました。しかし、当時は、「名家の嫁が、野菜を売りに歩くなんてはしたない。」と評判が立ったものです。

山岡家での奉公は、先生の仕事を邪魔しないように気を遣う厳しいものと聞いていたのですが、私は、自分が楽天的な性格なのか楽しく過ごし、ここでの奉公が「心の財産」となっています。当時の先生は、既に売れっ子の作家で、家も大変裕福なものでした。奉公により家事のほかに、歌舞伎の観劇など格式の高い教養も身に付くように教え込まれ、また、池波正太郎先生や平岩弓枝先生など高名な小説家の方々とのお付き合いもあったので、多少のことには動じない心の強さも身に付き、物事に簡単に挫けなくなったと思っています。

野菜の直接販売は30年続けました。そのうちに、農産物加工に取り組む仲間ができたので、加工品の販売も始めるようになり、今では、農産物加工に一生懸命取り組んでいます。近くの農産物直売所には、私専用のコーナーまで設けられるようになりました。主な商品は、あられ、とぼ(斗棒)餅、漬け物、たくあんの煮たの(※1)や越前名物のはまな味噌(※2)の原料にもなる豆こうじ(県内産大豆使用)などです。あられの評判が良いですが、とっておきは、農業委員を引き受けていたときの全国大会で知り合った三重県の方に教わった「だいこんの柿漬」です。熟した甘柿にだいこんをつけ込んで作るので、この辺では珍しく、売れ行きも良好です。

夫は他界しましたが、今は、息子達が農業を継いでくれており、私は、お手伝い程度です。加えて、孫も農業に興味があるようで、頑張って守ってきた農業が続いていくことに喜んでいます。

3. 受賞に対する思いや今後の目標をお聞かせください。

 
  
直売所での片岡さんのコーナー
直売所での片岡さんのコーナー
 

平成24年度に男女共同参画優良事例表彰(社会参画部門)と28年度農政功績者表彰(6次産業化・食品産業部門)と、2度も局長賞を頂き、大変、恐縮しています。
何も取り柄はないのですが、人から仕事や役職を頼まれるたびに断らずに引き受けてきました。そのことの積み重ねが、今につながってきたと思っています。
先日も、女性が集う会合がありましたが、若い人の参加が少ない状況でした。何事も、継続して取り組んで行くことで、成果が得られるので、嫌がらずに顔を出すように、彼女らの旦那さんにお願いしたところです。

今、一番の楽しみは、やはり農産物加工品の製造販売です。直売所から、商品がなくなったと連絡が入れば、何はなくとも、その注文に応えていくことが楽しく、活力の元となっています。
これからも、楽しみながらこの仕事を続けていきたいと思っています。

 
(※1)たくあんの煮たの…古いたくあんを塩出しして煮付けた郷土料理。
(※2)はまな味噌…米こうじ、豆こうじ、塩漬けしたなすなどで作るおかず味噌。

お問合せ先

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