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第1回 補給金単価算定方式等検討会 議事録

第1回 補給金単価算定方式等検討会 議事録

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1.日時及び場所

日時:平成28年3月1日(火曜日)13時30分~15時30分
場所:三番町共用会議所2階大会議室

2.出席者

委員:秋山委員、小谷委員、近藤委員、清水池委員、白川委員、前田委員、村上委員、矢坂委員
農林水産省:大野畜産部長、森牛乳乳製品課長、本田乳製品調整官、金澤課長補佐、林課長補佐

3.議事 


【大野部長より冒頭挨拶】

(大野部長)

委員の皆様方におかれては、日頃から農林水産業行政、とりわけ畜産・酪農行政の推進に当たり、格段のご理解とご協力をいただき、深く感謝。

加工原料乳生産者補給金制度は、昭和40年に制定された「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法」のもと、加工原料乳地域の生乳の再生産確保や生乳の需給安定を目的として実施してきたところ、さらに、平成13年には、市場評価が生産者の手取りに的確に反映されるよう、暫定措置法を改正するとともに、制度の大幅な見直しを行い、現行の生産費変動率方式による算定に移行した。

そのような中、昨年のTPP大筋合意に伴い、11月に策定された「総合的なTPP関連政策大綱」において、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金制度の対象に追加し、補給金単価を一本化した上で、当該単価を将来的な経済状況の変化を踏まえ適切に見直すこととした。また、加工原料乳生産者補給金制度の充実については、乳製品需要に応じた柔軟な生乳供給が促進されるよう措置する等の構造改革を進める必要があることから、準備が整い次第、協定の発効に先立って実施することとされた。

このため、29年度からの実施を目指し、液状乳製品追加後の補給金単価の算定方式等について検討するため、本検討会を、農林水産省に設置することとなった。

本日は、新たな算定方式等の決定に向けて、1回目のご議論をいただく場である。今回の見直しは、平成13年度の見直し以降、初めてとなる大幅な見直しとなることから、委員の皆様方から、忌憚のないご意見をいただきたい。

 

【林課長補佐から検討会の設置要領について説明し、了承いただいた。】

 

【座長選任:前田委員が互選された。】

(前田座長)

ご指名により、座長をつとめさせていただく。今後何回かにわたって検討会が開催されるが、最後に皆さんが満足できる適切な結果が出せるよう、円滑な議事進行にご協力をよろしくお願いしたい。 

 

【本田調整官から資料4を説明。】

 (前田座長)

それでは各委員からご意見やご質問を述べてもらうのと併せて、今後の検討会の進め方についてもご要望やアイディアがあればあげていただきたい。では矢坂委員から。

 

(矢坂委員)

実施要領の趣旨に「相対的に高い乳価で販売でき、今後も需要の伸びが期待できる生クリーム等への生産転換を早期に促すことが望ましい」とあるが、この考え方についてご教示いただきたい。確かに生クリーム向け生乳に奨励金がついた頃は、より高い乳価での販売が可能なので少額の奨励金でも生産者にメリットがあり、市場が拡大するという考えであったと思うが、実際は脱脂濃縮乳と脱脂粉乳の取引単価が同じであり、生クリーム向け生乳の取引価格もそれほど高くなっていない。それにもかかわらず、「趣旨」での認識が奨励金を実施していた当時と同じということに違和感がある。脱脂濃縮乳は特定乳製品向けの原料と同じ取引実態なので、加工原料乳の中に入れるのが妥当であると認識しているが、「趣旨」では相対的に高い乳価の生クリーム等への生産に転換を図ることが強調されている。これはどういった意図を踏まえているのか。

次に、この補給金単価の算定方式は、生乳取引や酪農経営のあり方などの状況に応じて変化させていく暫定的・弾力的なものなのか、あるいはそれらには関係なく固定的なものなのかということについてお聞きしたい。補給金単価の算定方式は、生産構造が質的に変われば、それに合わせて見直す必要があり、その際、生乳取引価格が現状のように需給実勢や生乳生産環境の変化を逐次反映しない場合、補給金単価そのものが需給調整や生産基盤強化につながるよう配慮せざるを得なくなると考える。とくに最近では、肉用牛の価格が非常に高くなり、酪農経営の中で酪農部門から肉用牛部門に生産がシフトしており、生乳の手取乳価が上昇して、肉用牛の収益に対抗できるほど酪農部門の収益拡大が見込まれなければ、生乳生産は拡大しないだろうと考える。生産費に基づいて算定される補給金単価では、こういった状況に対応することは難しい。取引乳価も需給実勢などをあまり反映しないとき、その時々の需給状況等に応じて、単価の算定方式を弾力的に決めていくということがあり得るのかどうか。この検討会において、単に算定方式というテクニカルな議論に終始するのか、もう少し幅広な議論をするのかということについてお聞きしたい。

最後に、これまでお話ししたことと関連して、補給金制度の位置づけについて伺いたい。補給金制度だけを取り出して、これが合理的であるかどうかを議論していくことには限界があると考えている。補給金制度は、取引乳価の決まり方や、その他の酪農支援策と一体となって酪農経営に影響を及ぼしており、これらとの関係性も考えながら議論をしていく必要がある。

一例を挙げれば、平成13年に行われた補給金算定方式の固定払い方式への転換を評価する必要がある。これは加工原料乳の取引実態を見誤った政策判断であったと思っている。ウルグアイラウンド合意でのAMSを減らすためには、政策価格の廃止が求められ、ソフトランディングのために直近の実績額を補給金単価とする固定払い方式への転換がなされた。固定払い方式は「需給実態を反映した取引乳価が実現する」ことが前提とされていたが、生乳取引の市場構造は政策的には変えられないので、乳価はほとんどフラットのまま推移し、需給実勢を反映した価格変動はみられなかった。乳価が固定的だったのは、政策乳価が固定的だったからではなく、加工原料乳取引の構造が変わらなかったからであろう。取引乳価は安定性が重視され、需給実勢や生産費の変化を端的に反映せず、一方で、補給金が固定払い方式に変更になったため、生産者手取乳価は、需給実勢などとのずれが大きくなった。補給金は平成12年の実績値がほぼそのまま継続されるだけであったため、平成19、20年の飼料などの生産資材の高騰時には、大きな問題となった。

このようなことを踏まえると、乳価形成や生乳取引のあり方を無視するわけにはいかない。昨年行われた生乳取引のあり方検討会とも関係することなので、本検討会での直接的な議題にはならないかもしれないが、加工原料乳の取引乳価が需給実勢などを的確に反映するようになるのかどうかということの裏腹の関係として、補給金単価のあり方を考えなければならない。

関連して、加工原料乳向け乳価や補給金単価を、生産費をベースとして算定することの妥当性についても問い直す機会ではないか。長期的な視点で見た時に生産費が乳価と対応していなければ、生産は維持されない。こうした趨勢値として意味のある生産費を、短期的な乳価や補給金単価の算定にそのまま活用するのは、需給実勢などを反映した乳価とのズレを拡大させてしまうおそれがある。そこでそのズレを5年ごとといった一定の期間ごとにリセットする必要が出てくる。日本の農産物価格政策では、伝統的に生産費を算定に用いてきたが、それは米の政策でも大きく見直されてきた。加工原料乳の補給金単価でも、生産費データをどう位置づけていくかを議論すべきではないか。

需給状況や生産資材価格の動向を反映しなければ、固定払い方式の名称どおり、乳価は横ばいになる。しかし、飼料高騰などによって短期的に酪農経営にダメージを与える問題が起こった場合、この補給金制度はこのような事態に対応できるのかというと、かなり限界があると思う。年に何回も生産できる野菜や、年1回生産の米と異なって、畜産、特に大家畜を扱う酪農では、長期的な視野に立って生産していくことから、短期的な取引乳価の変動で生産基盤が揺らぐと、すぐにリカバーできないので、価格変動をなだらかにするための措置も必要となる。実際には、乳価はタイムラグをもってゆっくりと変化しており、補給金に緊急措置を求めることになるのではないかと考えられる。補給金を、乳価体系や生乳取引のあり方と関わらせて位置づけておく必要がある。この検討会では、補給金制度と関連する論点も視野に入れて、幅広に議論をしていくべきではないかと考えている。

 

(前田座長)

幅広なご意見及びご質問をいただいたので整理する。1つめは、生クリーム等液状乳製品に早期転換していくことについて、従来の制度を踏まえつつ、この意図は何なのかということについてのご質問。2つめは、補給金単価は弾力性を持つものにするのか、固定的にするのか、というご質問。3つめは、酪農乳業政策全体の中で、補給金制度がどのような役割を果たすのかということについてのご意見及びご質問。では事務局から。

 

(本田調整官)

生クリーム等を補給金制度の対象に加えることに対する考え方については、資料の4ページにより説明したい。現行制度において、生クリーム等は補給金制度の対象になっていないことから、補給金の対象にするかしないかで当然生産者の手取りが変わってくる。また、生クリーム等の液状乳製品が補給金の対象でないことで、本来需要のあるところに適切に生乳が回らないという話も聞くところ。生クリーム等の液状乳製品については、今後国境措置がなくなったとしても需要が引き続きあると考えており、補給金の対象にしないことによるデメリットの方が大きいのではないかと考えている。確かに脱脂濃縮乳についてはほとんど脱脂粉乳と用途や価格が変わらないという実態はあるかと思うが、その一方で生クリームについては、付加価値があることから相対的に高い乳価で販売出来ていると考えている。そのため、補給金のあるなしで生乳の仕向けに対してバイアスがかかるようなことを今後避けるようにとの趣旨で、実施要領に「今後需要の伸びが期待出来る生クリーム等への生産転換を早期に促す」と書かせていただいた次第。

補給金単価が弾力的か固定的かというご質問について。まず平成13年の議論の際に、基本的には市場実勢を反映するため、生産費で動かしていこうということになったが、最初の算定方式を変えていくのかということについては議論がなされなかったのが実態。今回の議論については、TPP大綱の中で「当該単価を将来的な経済状況の変化を踏まえ適切に見直す」となされたところであり、今後関税が20年かけて撤廃され、大きく生乳取引の構造が変わることが想定される中で、法律の目的である「加工原料乳地域の再生産確保」が出来ないということになれば、当然単価の見直しを行うこととなる。そのため、単価についてはある程度は固定しつつ、ガチガチに固めるものではないと考えている。ただ、ある程度は生産費の変動で動かしていくことが望ましいのではないかと現時点では考えている。

また、平成20年度の飼料高騰の際には補給金単価も期中改定を行っており、現在の枠組みの中でも対応できたものと考えている。こういう状況の際に、どういう形で対応していくのかということは、他の制度も含めて引き続き議論していくものではあるものの、補給金制度については、期中改定というやり方で対応していくものと考えている。

 

(前田座長)

それでは村上委員。

 

(村上委員)

生乳生産量は平成8年をピークに20年間減少し、農家戸数も大幅に減少を続けている中、TPP大筋合意という話が出てきた。生産現場では、後継者の確保対策や、所得向上によって将来に備えた投資を実現させる畜産クラスターの需要も高まっていることからも、酪農経営は良い方向に向きつつあるということを踏まえ、今回の液状乳製品を補給金の対象に加えるという方向性については感謝申し上げたい。その中で思うことは、不足払い方式から変動率方式になった際、国の関与が7分の1になり、生産者及び乳業者間での生乳取引になったが、生産者団体としては、生産者の生産性向上努力を変動率方式にしっかり還元させてほしいと要望してきた結果、大きく変動しないような方向に働いたようにも思う。そのような中で、今回この算定方式を見直すという話になってきたということについても非常に歓迎すべきことと考えている。

その上で、さきほど矢坂委員からもご意見があったが、この検討会については、補給金単価のみの議論ではなく、補給金ではまかなえない部分であるとか、生乳全体の需給調整のあり方など、もっと幅広に議論をすべきでないかと考えている。北海道は一昨年の11月から増産基調となっているが、需給緩和時のことを考えると非常に心配。ナラシの問題や需給緩和時のリスクヘッジも含めながら、補給金制度そのものについて議論していくのがいいのではないか。

また、生産現場の意見で一番多いのは、補給金単価の算定に用いている生産費において労賃単価に問題があるということ。労働時間の反映の仕方や時間外の労働など、労賃評価には疑問があるという意見が常に生産現場から出てくる。酪農家が意欲を持って取り組めるような仕組みをこの検討の場で作り上げていければと思う。

 

(前田座長)

では事務局から。

 

(本田調整官)

生産費や労働時間の考え方については、次回ご説明したい。

また、需給調整については、増産もしくは減産のシグナルを含めて交付対象数量を設定していることから、今後どのように交付対象数量を設定していくのかということを検討会の中で議論していただければと思う。

 

(前田座長)

それでは白川委員。

 

(白川委員)

今回は生産者の皆様への補給金単価の算定方式を検討していくということで、乳業者としては一義的には部外者だが、今回の見直しは、生乳生産基盤の強化や生乳増産に関連すること、またそれぞれの乳製品の需要にも影響を与える改定でもあることから、今後乳業者の意見を取りまとめた上で、次回以降ご報告することとしたい。

 

(前田座長)

それでは清水池委員。

 

(清水池委員)

3点ほど申し上げたい。まず重要なのは、生産者の所得をいかに安定的に確保していくかということである。所得補償機能を充実させていくことが重要であり、補給金制度はその手段の一つと理解している。

その上で、1点目として、平成20年以降の急激な生産費の上昇が生産者の所得に大きく影響したが、今回の見直しではこうしたことを加味し、制度の中身として、急激な生産費上昇による所得減少に対応できるようなものにしていく必要があると考える。

2点目として、補給金制度を支える各種制度があって初めて生産者の所得を確保できるものであるが、制度の一つであるナラシをどう扱っていくこととしているのかについてお聞きしたい。とりわけナラシについては、補給金制度の中身によっては、現在3ヵ年平均としている算定方法を変える必要等があるのではないかと考えている。補給金制度の中身と直接的に関連するものであるため、本検討会内で扱うべきと考える。また、補給金制度に直結しないかもしれないが、需給調整について、現在、乳業者と生産者で需給調整に係るコストを負担しているが、国もある程度コストを負担するという仕組みがあってもいいのではないかと考える。例えば在庫料補助のように、補給金制度を外側から支える仕組みが必要であり、現在の生乳減産という状況が生産者の負担となっていることから、乳価や生乳生産ではない部分からの支援も重要と考える。

3点目として、酪農にとって補給金制度は重要であるという国民の認知度が低いことがある。補給金制度による社会的意義を国民に理解していただけるような取組みが重要である。補給金制度によって生産者の所得が確保され、地域間の過当な競争が抑制されることにより、日本国内の均衡ある酪農生産構造が維持されるという側面があるということを、国民に理解してもらうよう努力する必要があると考える。

 

(前田座長)

ナラシ等の他の酪農政策についてもここで取扱うのかという質問について、事務局から回答いただきたい。

 

(本田調整官)

ナラシについては、重要な政策ツールであると認識しているが、TPPの政策大綱にも「早期に」と記載してあることから、まずは補給金単価の算定や交付対象数量の設定方法について優先的に議論する必要がある。その上で、さまざまな意見や要望については出していただきたい。1点目のご指摘については、平成18年の飼料高騰前に比べれば補給金単価は2円強上昇しているが、プール乳価の7分の1である補給金単価の変動とその7倍となる乳価本体との関係をどう評価していくのかということについて、この場で議論していくことも一つと考える。3点目の国民の認知度が低いというご指摘については、バター不足があったこともあり、非常に重要な部分と認識している。いただいた意見を踏まえ、国民の皆様に本制度の意義をしっかり伝えていけるようにしていきたい。

 

(前田座長)

それでは近藤委員。

 

(近藤委員)

現行制度については、旧不足払いの制度から改善されて評価される部分は多々あるが、その一方の改善すべきところについて指摘したい。北海道の酪農生産については、今年は上向きだが、近年は停滞しており、その背景として、平成15年からの脱脂粉乳の過剰による乳価低迷及び所得低下や、20年頃の畜産危機での所得低下があり、その結果として設備投資は減少してきた。こうしたことに対する危機感もあり、乳価の上昇や国による畜産クラスター事業等の施策により所得向上へと努めているところであるが、今回の算定方式見直しにおいては、この所得向上を果たすという視点で検討していくべき。その上で1点目として、現行制度には良い点悪い点それぞれあるが、急激な生産費の上昇に対する補給金単価の上昇は限定的となっている。取引乳価で全て対応しようとすれば、乳価上昇による乳製品価格の上昇により需要は大きく低下し、また需給の悪化により次年度への乳価上昇にもつながらず、結局、生産基盤を棄損する結果となっている。生産基盤を棄損せずに安定的な生産をしていくための仕組みとして、補給金制度単体でそれを維持できるのかどうかである。補給金単価及び交付対象数量の設定だけで議論するには限界があり、乳価下落への対応や、短期的な需給緩和時の需給調整対策等、パッケージで議論していく必要があると考える。また2点目として、酪農家が過酷な条件で行っている労働への評価について、労賃単価や労働時間は実態に即したものとなるよう見直してほしいと考える。

 

(前田座長)

ご意見の部分は次回以降の議論としたいが、事務局から何かあれば。

 

(大野部長)

先ほどから、補給金制度だけでは酪農を支えられない、生産基盤が弱体化しているというご意見をいただいているが、ごもっともである。だからこそ、大幅強化した畜産クラスター事業やエサ高騰時に補塡する配合飼料価格安定制度、飼料生産型酪農経営支援事業、酪農ヘルパー事業等、さまざまな対策を措置しているが、これらに対するご意見はキャラバン等において賜り、施策に反映しているところである。この検討会は、補給金単価及び交付対象数量の算定方式について検討する場であり、各種施策を含めたパッケージを検討するには大きすぎる内容である。「別途検討すべき」等のリマークをつけるのは良いが、ナラシを含めた全てを議論するのは難しい。いただいたご意見は真摯に受け止める。

 

(前田座長)

それでは小谷委員。

 

(小谷委員)

補給金単価だけでなく全体的な酪農の生産基盤の強化が大切と感じている。

元々乳価を国が定めていることを知っている消費者は少ないと思うので、その仕組みの見える化やわかりやすい説明を求めたい。

昨年のバター不足に関しては、消費者が不安を感じたのと同時に、国産の牛乳乳製品に対する不信感や諦めのようなものを感じるきっかけをつくってしまったと考えている。今回の見直しが国民の皆様に安心してもらうとともに、理解につながるものになれば良いと思う。

また、今回は北海道の酪農を中心に話をしているように伺っているが、今回の見直しは、都府県についてもお互いに手を携えていけるようなものであると考えて良いのか。全体的に国が推奨しているのはメガファームというイメージがあるが、都市近郊に家族経営の小さな牧場があるということが、消費者の理解や親しみにつながるものと考えており、補給金単価だけでなく、酪農全体の生産基盤の強化や後継者に対する希望となる政策につなげる方法はないのかと思っている。

国産チーズのブームは、乳製品の中でも明るい兆しを感じており、そういった時代背景や需要を細やかに見極めていただきたい。

 

(前田座長)

ご意見が中心だったかと思うが、事務局から何かあれば。

 

(本田調整官)

消費者の不信感を払拭できるように、しっかりと情報提供をやっていかないといけないと考えている。

北海道と都府県の考え方だが、都府県酪農も我が国の生乳生産の重要な位置にあり、ここに対する対策をしっかりやる必要があるというのは、我々も同じ思い。しかし、補給金の単価については「加工原料乳地帯の生乳の再生産の確保を図る」と法律で定められており、現時点で加工原料地帯は北海道のみとなっているため、単価は北海道の生産費を基に議論していくこととなる。一方、交付対象数量については、都府県の脱脂粉乳・バターやチーズ、液状乳製品も全て対象になるので、数量については都府県も含めてどの程度の需要があるのか議論を進めていきたい。

国産チーズについては、色々なところで需要拡大を捉えることが必要であるので、今後も考えていきたい。

 

(林課長補佐)

都府県と北海道の位置付けについて、参考でお配りした畜産をめぐる情勢の4ページによりご説明する。低い乳価の乳製品向けはほとんどが北海道のものであることから、北海道が加工原料乳地帯に位置づけられているところ。この生クリーム等、チーズ、脱脂粉乳・バター等の低い取引乳価を補給金により支えることで、飲用牛乳の需給の安定が図られ、その分北海道より高い生産コストの都府県でも生産が可能な仕組みとなっている。新たに生クリーム分を加工原料生産者補給金でしっかり手当てすることにより、都府県の家族経営の方であっても経営が継続できるようになることから、ここのところをしっかりと説明してまいりたい。

 

(前田座長)

では秋山委員。

 

(秋山委員)

この10年間、生産費が急激に上昇する中で、飲用乳の価格交渉を行っているが、時期的に遅れたことはあったが、生産費部分は確保できていると考えているところ。しかし、それによって都府県酪農を必ずしも守れているわけではなく、廃業が進み、生産基盤が弱体化している部分もある。生産費以上の所得について、業界としても検討しなければならないし、一部消費者にご理解いただかなければならないことが出てくるかと思う。そういった中で、生産基盤対策といった様々な助成事業が組まれているが、必ずしもそれが全体を網羅する事業にはなっていないので、所得確保の観点から別の角度での議論があってもいいのではないかと考える。その中の一つとして、今回のTPP合意結果では飲用乳市場に影響はないとしているが、ホエイの関税撤廃について、少なからず乳飲料市場に影響を与え、ひいては飲用乳全体に影響が出る可能性はあると私自身は考えているので、今一度検討して欲しい。

 

(前田座長)

以上で一巡したが、それぞれの委員の方々の問題意識が明らかになったことが大きな成果だったと思う。次回以降、皆様のそれぞれの意見を踏まえつつも、まずはしっかりと単価と数量の設定をどうするかを決めることが重要。

併せて多くの方々から意見のあった、補給金制度そのものが全体の酪農政策のパッケージと非常に関連性が強いということだが、畜産部長からも答弁があったように、あくまでも検討会の意見としてリマークして、今後の政策運営等に役立ててもらうという位置づけにせざるをえないと思う。

では、本日欠席の臼井委員から意見をいただいているので、事務局からご紹介いただきたい。

 

【森課長より臼井委員の意見書を読み上げ】

 

本日悪天候により欠席のため、現行制度および新制度に向けての意見を生産者の立場から文書にて述べさせていただく。

 

1.現行制度の問題点

(ア) 生産費を削減する努力や生産効率を上げることが補給金の減額につながり、結果として生産者の所得を向上させることにつながっていない。

(イ) 農水省の生産費調査による労働費と実情の生産費に差がある。

(ウ) 特に労働時間の統計値は実態より少なく、さらに基準となる製造業の労働時間を超過した時間分も基準単価で算出されている。

また、育成牛を管理する労働時間が含まれておらず、搾乳牛とは別に飼育する現場の状況が反映されていない。
(エ) 単価設定に副産物価格が含まれるため、前年の副産物価格の上下による変動が翌年に影響し、上下幅が大きいほど当年の実態にそぐわない実情となっている。

(オ) おもに補給金の対象となる生乳を生産する地域は自給飼料地帯であり、自給飼料を生産する機械や設備にかかる大きなコストが実態として勘案されていない。
 

2.新制度へ向けての要望

現行制度の問題を解決した上で、新制度はTPPの影響への対策でもあることから、発効後から最終年まで段階的に影響が大きくなることに対応できる制度とすることが望まれる。

また、発効から7年後にTPPの見直しがあるなど流動的な部分が多く、TPPの動きに合わせた制度の見直しが必要と思われる。

 

(前田座長)

では、時間があるので追加の意見があれば。

 

(矢坂委員)

さきの意見を補足させていただく。補給金の算定方式だけに論点を絞って議論をしていくのは妥当ではないと申し上げたのは、生乳取引のあり方や他の支援策のあり方を現状のままとした場合、現行の補給金制度に、需給調整機能などこれまで期待されていなかった機能も入れ込まざるを得なくなるおそれがあるからだ。補給金単価を議論する場合は、他の施策や生乳取引などの方向性も視野に入れないと、平成20年頃の経験をいかせないことになるという趣旨で申し上げた。

また、補給金の交付対象を生クリーム等向け原料乳に広げる措置をTPP対策として位置づけることには違和感がある。生クリーム等向け生乳への奨励金交付が廃止されて、乳製品向け生乳の取引乳価と生産者の手取乳価の関係のバランスが崩れていたので、それを以前の状態に戻すということではないか。補給金の交付対象数量が倍増するので、その分は生産者の所得が増えるという意味はあるが、それがTPPが発効した場合の対策になりえるのか。TPP対策は乳製品市場の連鎖的な影響をふまえた体系的な政策を準備しなければならないのではないか。

 

(前田座長)

では事務局から。

 

(本田調整官)

TPP対策として補給金だけでは足りないのではないかということは、おっしゃるとおりかと思う。今回のTPP政策大綱においては、経営安定としての補給金制度の見直しと併せて、生産農家の体質強化もパッケージとされていることからも、併せて実行していく必要があると考えている。その中で、畜産部長からも申し上げたように、検討会の中では補給金単価と交付対象数量をどのように設定するかという、まさに経営安定の中の一番の柱を早急に決めていきたいと考えている。

 

(前田座長)

先程もお話ししたが、幅広い議論を行うことについては意味があると思う。今後2回目以降、事務局にご協力いただきながらしっかりとした議論をしていきたい。

 

(森課長)

本日は第1回目の議論ということで、私どもの説明が中心であったが、先生方から様々なご意見を頂戴できた。本日のご意見、ご議論を踏まえて、生産費の取り方など詳しく説明できるような資料を次回ご用意したい。また、それを踏まえてこの会でどのようなことを検討し、そして算定方式をどのように考えていけば良いか議論してまいりたい。

次回の日程であるが、3月24日(木曜日)の午後でセットしてまいりたいと考えており、詳細については、後日事務局の方から連絡させていただく。また、本日の議事概要については、事務局の方で作成後、委員の皆様のご了解を得た上で公表させていただくこととなるので、よろしくお願い申し上げる。


  • (以上)

お問合せ先

畜産局牛乳乳製品課

担当者:価格調査班
代表:03-3502-8111(内線4934)
ダイヤルイン:03-6744-2129

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