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第3回 補給金単価算定方式等検討会 議事録

第3回 補給金単価算定方式等検討会 議事録

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1.日時及び場所

平成28年6月15日(水曜日)13時30分~15時45分
農林水産省7階 秘書課研修室

2.出席者

委員:秋山委員、臼井委員、内橋委員、小谷委員、近藤委員、田村委員、前田委員、村上委員 (臨時委員)菅井委員、三好委員、山内委員、渡辺委員、高橋委員
農林水産省生産局:今城生産局長、大野畜産部長、森牛乳乳製品課長、本田乳製品調整官、金澤課長補佐、林課長補佐 統計部:青山課長補佐

3.議事

【今城局長より冒頭挨拶】

 

(今城生産局長)本日はお忙しい中、本検討会にご出席いただき感謝申し上げる。

まず、熊本地震について触れさせていただく。4月に発生した地震について、熊本県は畜産の盛んな地域であるため、畜舎や乳業工場等の施設に大きな被害を受けた。農水省としては、直後より職員を派遣するとともに、復旧に向けて、現場のニーズをくみ取りながら支援を行い、第一初動については緒に着きつつある。全国の酪農家や関係者の皆様が、義援金等様々な支援活動にご尽力いただいていること、この場をお借りして厚く御礼申し上げる。また、農水省としては、第二弾、三弾の対策がさらに必要だと考えているので、農水省として、引き続き、早期復旧に取り組んでいきたい。

次に、指定団体制度については、今月2日に規制改革実施計画が閣議決定され、そこで、「指定団体制度の是非や現行の補給金のあり方を含めた抜本的改革について、平成28年度秋までに検討し、結論を得る」とされた。当初は団体そのものの廃止等、様々な議論がされたが、生産者にとって安定的な生産・経営に資する政策であり、国民の皆様にも牛乳乳製品が届くものとなるよう、様々な意見を聞きながら改革すべき点は改革し、対応していく考えである。

補給金単価算定方式等検討会は、昨年11月に策定された「総合的なTPP関連政策大綱」において、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金制度の対象に追加し、補給金単価を一本化した上で、当該単価を将来的な経済状況の変化を踏まえ適切に見直すこととされたことから設置された。現在、協定の発効に先立って、準備が整い次第実施するとされたことから、本検討を急いでいるという状況である。

本日は、酪農経営の現場に即した検討を行うため、生産者の皆様に直接ご意見を伺い、議論する時間を設けさせていただいた。また、前回いただいた質問事項に関する資料も準備させていただいた。

新たな算定方式等の決定に向けて、本日も忌憚のないご意見をいただきたいと考えており、何卒よろしくお願い申し上げる。

 

【生産者からのヒアリング】

(前田座長)生産者の皆様、本日はご参加いただき感謝申し上げる。

本日は、最初の1時間程度で生産者の皆様に現場からのご意見をお聞きする。次に、それを踏まえたうえで、前回までにご意見をいただいた、補給金単価の算定のスタートとなる生乳生産コスト評価の基礎である牛乳生産費調査について統計部から説明させていただく。最後に第2回までの検討会の議論の振り返りと確認を行う。

では、まず生産者の皆様からのご意見をお聞きするところから始めたい。菅井委員から順によろしくお願い申し上げる。

 

(菅井委員)経営の特色として、粗飼料は100%自給であり、良質な粗飼料を与えることで、濃厚飼料に係る経費削減を図っている。また、放牧を行うことで、同様のコスト削減を図っている。育成牛は100%自家生産であり、F1を含め計画的に個体販売を行っている。労働力の負担軽減として、JAのコントラクター事業を利用しているが、コスト的には上昇している。

経営上の中長期的な課題として、施設の老朽化(40年以上)があげられ、新築もしくは改修が今後必要となる。しかしながら、建築資材価格等の高騰で、莫大な建築費用となることが想定されており、建築コストの軽減が今後の課題となる。

経営上の課題解決の助けになると考えられる支援として、畜産クラスター事業など十分な支援をいただいていると考えているが、適正な家族経営の規模を維持出来るような施設の補改修等に対する国の支援をいただきたい。規模拡大を推進されているが、TPPによる先行きの不透明さを考え、大きな投資に踏み切れない酪農家も多い。家族経営を今以上に重視してもらい、農村維持の観点から新規就農の支援策を行って欲しい。

補給金の算定に対する所感として、少なくとも現行の所得水準は確保した上で、液状乳製品を対象として欲しい。今後、TPPにより脱脂粉乳やバターが輸入品に置き換わることも想定されるので、生クリーム追加はありがたい。一方で、現行の補給金算定に係る算定コストが実態に合っていない部分があると考えている。よって、より現場の実態にあった、誰もが分かるような算定方法となるような仕組みの見直しをお願いしたい。

 

(三好委員)日本の農家の受け取る補助金は、収入のうち20%程度と、欧米と比較すると非常に少ない。補助金が少ない分、乳価をきちんと設定しなければ酪農家は生活していけない。

TPPが決まったが、関税を守れず惨敗したと私は思っている。それでもやるならば、10年、20年後の日本の酪農を守れるのか。海外から安く製品を輸入できることから、国民の約60%がTPPに賛成しているが、海外で製品が余っているから安く輸入できているだけである。

日本の間違っているところは、食を守ることが国民の生活を守るという前提を理解しておらず、農業者を守ることしか考えてない点である。国民の食料を守るために農業があるのに、そのことに気づいていない。また、近年は、海外から地方の農村風景を観光しに来る人も多い。生乳需給のバランスだけを見るだけでなく、国土保全や農村の自然を守ること等を考慮した酪農政策を行うべきである。

先程クラスターの話があったが、企業酪農だけが儲かればいいのか。成功している大手酪農家は皆、企業経営者等であり、企業的な発想に国は支援を行っている。将来が見えないからと、中小酪農家が辞めていくが、これは酪農家の責任ではない。

乳量が5%増加しただけで、需給のバランスはできあがる。そのためには遺伝子の導入をすべき。日本の後代検定を守らなければならないが、これが改良の遅れにつながる。遺伝的レベルが上がれば牛の能力も上がり搾乳量も増加する。

 

(山内委員)経営の特色として、平成19年に4頭同時搾乳のマルチボックスタイプの搾乳ロボットを導入し、80頭から140頭規模に拡大した。しかし、自動搾乳に対応できない規格外の牛の増加による非効率化により、3年前から全頭手動搾乳に切り替え。24時間体制で日中夜問わず働くので、1~2時間の仮眠生活を送っている。今後の経営は、最近の異常気象でグラスの生育が悪いことから、コーンの作付面積を増やしており、嗜好性の高いTMRを目指している。将来的には、増頭せずに乳量を1,350トンから1,500トンに増加したい。

経営上の課題解決の助けになると考えられる支援だが、現在、農家と関連機関のつながりはあっても、全体的なつながりがないと感じる。行政、農協、経営者等、全ての機関で情報が共有され、努力できるような体制になるといい。

補給金の算定方法だが、原油価格や資材価格などの下落もあり、生産コストが下落し酪農家の経営が上向きになりつつあると思われているが、この状況がいつまで続くか分からないというのが現状。そのため、直近の生産コストを用いて算定を行うのは危険ではないか。7~10年といった長期的なコストを平均して算定していただきたい。また、補給金には、酪農家が将来に向けて投資するための応援金としての意味も込めてもらいたい。先行きが不透明であることから、規模拡大には手が出しにくい状況であるので、基盤を固めるためにも長期コストでの算定を願う。

指定団体制度についてだが、機能として条件不利地を含めた一元出荷販売や乳価交渉力の強化など、イコールフッティングが既に果たされている。これらの機能を有さない団体へ補給金を交付することは、国民の理解を得ることは出来ず、制度全体への影響も懸念される。指定団体制度が酪農家の経営基盤の安定につながるものとなるようお願いしたい。

 

(渡辺委員)経営の特色として、規模拡大に取り組んではいるが、実質は地道な施設投資と増頭であり、自家繁殖の中で規模拡大を行ったことが特徴。また、牧草サイレージを中心にTMR給与を行っている。十分な乳量を搾るために、牛の健康管理を中心に取り組み、飼料の品質を見直し、乳房炎発生リスクを低下させたことで、大幅な増頭をしなくても乳量の増加が図れたので、生産者の努力で収益性の増加は可能だと感じた。

経営上の中長期的な課題として、更別村は中央地帯のため畑作がメインで行われていることから、酪農家が土地を確保しにくい環境であることがあげられる。また、増頭したが、先日雇用していた人が辞め、都市部から離れていることもあり、新たな雇用が見つからない。つい昨日には搾乳頭数が103頭と今までになく増加したため、労働力の確保もしくは搾乳頭数の削減を真剣に考えなければならないという厳しい状況にある。他にも北海道全体の課題として経営継承があげられると思っている。

補給金の算定に対する所感としては、液状乳製品の追加と単価・交付対象数量の一本化に期待している。生乳生産で経営を継承していかなければならないので、初年度から魅力のある単価を算出して欲しい。

生産費については、糞尿処理で固液分離スラリーを一槽使用しているが、機械の痛みが激しい。糞尿処理はコストがかかるが収入にはつながらないが、そこの補修金も収入から捻出していることを忘れないで欲しい。ぜひ魅力ある単価で経営継承が続く未来を描けるようになれば良い。

 

(高橋委員)粗飼料は100%自給しており、濃厚飼料も自給するために、現在飼料用米を給餌している。購入している配合飼料は4~5キロ程度なので、飼料コストは県内でも低い方である。6次産業化として、乳製品加工やチーズ工房、ジェラート工房の経営を行っている。端から見ると乳量も搾れているので儲かっているように思われるが、実際のところ経営は厳しい。ここ2年の経営数値は黒字だが、子牛価格高騰の影響が大きいため、牛乳の経営のみで考えると厳しいままである。牧場の周辺は耕作放棄地が多いので、土地利用の努力をしてはいるが、抜本的な解決策を考えていく必要があると思う。以前スイスに行った際、新規就農者が国から貸し出された150年前の牛舎を使用しており、周辺にも耕作放棄地等はひとつも無かった。ヨーロッパにはそういった国が就農者を支援する等の仕組みがあるからこそ経営が続いており、日本にはそれが不足している。当牧場の従業員は新規就農を希望しているが、就農先が見つからないのが現実。非農家出身のやる気のある人が就農できるような環境を整えるのが大事。

 

(前田座長)では、質疑に移る。今の生産者の方々からの話を踏まえ、ご質問等あれば挙手願いたい。

 

(近藤委員)菅井委員から「補給金算定に係る生産コストが実態に合っていない部分がある」とあったが、実感として一番合っていないと感じるのはどのようなところか。

 

(菅井委員)労働評価だと考える。調査の段階でどのような計算をしているか分からないし、農家によって労働時間は大きく変わると思うが、自分のところでは1日最低でも10時間以上働いており、そこが実態に合っていないと感じる。

 

(近藤委員)ヘルパーはどの程度利用しているか。

 

(菅井委員)うちは家族経営協定を結んでおり、毎週1日必ずヘルパーをいれて、家族順番に休みを取るようにしている。酪農家は365日休みがなく、どこにも遊びに行けない。私はサラリーマンを経験してから後を継いだが、やはり休みは必要と考え、両親と相談し、計画的に休みをとることとしている。

 

(田村委員)渡辺委員より「頭数が増えてしまって搾乳する牛が増えて大変だ」との話があった。長命連産を心がけようと、皆が試行錯誤する中で良いことなのではないかと感じるが、どのような取組によりこのような結果になったと考えておられるか。

 

(渡辺委員)病気の中で一番多かったのが産後疾病で、以前は低カルシウム血症の起立不能により廃用となる牛がかなり出ていた。そこで普及センターに相談し、まずは乾乳牛の栄養管理から取組をはじめたところ、産後の疾病を減らすことが出来た。しかし、頭数が増え、飼養密度が高くなったことによる環境の悪化で、乳房炎が多発した。そのため、寝床の清掃とベッドマットの交換に取り組み、さらに、サイレージ調整の際にギ酸を添加する方法で牧草サイレージの変敗を防ぐことにも取り組んだが、これも功を奏し、牛の長命につながったと思っている。

 

(田村委員)お一人ではなく、指導機関といった地域のみなさんと連携することが大事と感じた。このような連携がもっと進んでいけばいいと思う。

 

(臼井委員)同じ生産者として、今後検討会の中で肝になると考えている「労働単価」についてお伺いしたい。調査上における我々の労働単価の評価は、時給1,900円で算定されているが、例えばヘルパーをとると時給換算で2,800円程度かかっている。この時給1,900円をどのように感じるか、みなさんにお聞きしたい。

 

(菅井委員)個人的にやや低いかなという印象。うちは従業員を雇っていないが、雇っているところの従業員と後継者を比較すると後継者の方が低い。時給1,000円いっていないのではないかというところもある。また、我々がコントラクターに手伝いに行くときは時給で2,250円ほど支払われる。1,900円は安いのではないか。

 

(三好委員)難しい質問。そもそも補給金単価よりも大事なものがたくさんあるとの思いが常にあり、酪農という産業が消費者の理解の元に守られるという考えさえあればいいと思っている。ただ、臼井委員には生産者委員としてこれからも頑張って発言していただきたい。答えになっておらず申し訳ない。

 

(山内委員)労働時間に対して、所得が見合ってないと感じることはある。端から見れば、多額の投資をして効率化を図ろうとしてロボットを入れたのに、非効率なことをやっていると思われるかもしれない。しかしそもそも休みはないし、休みを取るならヘルパーを雇わないといけないし、従業員も雇っていることを考えると、1,900円ぐらいじゃ全然安いのではないかと感じる。自信を持って仕事をしているので、時給が5,000円でも10,000円でもいいくらいだと思っている。

 

(渡辺委員)ちょうどアルバイトの募集も考えていたところで、時給をどうするか考えていたところ。自分の地域では、アルバイトは時給1,000円に交通費をのせて設定。自分の給料が1,900円なのは安いのかなという印象。労働時間や休日の観点が違うのではないかと感じる。

 

(高橋委員)コントラクターは時給1,000円、機械の使用料が1,000円。自分の場合は田んぼとか収穫が始まると多いときに一日18時間ぐらい働くこともあり、そうなると時給にすると非常に低くなる。時給1,900円がどうかということはわからないが、気持ちとしては労働賃金は低いなと思う。

 

(臼井委員)実際に働いている金額が評価において置いていかれていると感じる。外に出すお金は上がっているのに、我々の手元にお金が残らないような計算方式になっているとの認識を持つ必要がある。

 

(三好委員)せっかくの機会なので、こちらから農水省に対して要望をさせていただきたい。「農の雇用事業」という国の事業は、担い手をつくるという意味で極めて良い政策だと思うが、現場ではこんな良い事業があるということを意外に知らない人が多い。自分も農業委員だが、地元の農業委員もこれを積極的に活用してくれということはしていなくて、インターネットで見てくれという程度。

それと一番不満なのが以下の点。採用見込みのものは応募できることになっているが、例えば5月に入ってすでに雇用されている人がいたのに、申し込みの時期が遅れると、いつからいつまでが申し込みの時期と決まっているのでダメと言われた。じゃあ次のタイミングに申し込めば良いかというと、事業対象とする時期が決まっているので、次のタイミングでは申し込んでもダメ。これはおかしい。くだらない決まりは改めるべき。現実に働いている人間がいるのだから、それを認定して支援対象とすべきと思う。良い事業なんだから、実態にあわせてうまく活用できるようにすべき。

活用しやすくして、後はきちんとやるという方向を目指してほしい。雇用の実績があるものに対しては支援して欲しい。例えばAさんがB牧場に1年いて、C牧場に移ったら、もう支援はもらえない。同じ人間にはやらないとなっている。事業としては、就農5年以内のものは全て対象となっているが、移ったら対象にしない。つまり、リタイアと同じ扱いになっているのではないか。B牧場に1年いて、2年目に移りたいからと言って移ったら対象にならない。

せっかくの事業なので、精査していいただき、有効に活用できるようにして欲しい。

 

(村上委員)みなさんコントラクターやヘルパー等を活用されているかと思うが、今後人手が不足して、それぞれの利用料金が上がるのではないかとの話も聞くが、どういう状況になっているか。

 

(菅井委員)興部町のコントラクターが始まって10年くらいかと思うが、機械導入により作業時間が短縮出来たり、色々な補助もあることから、料金的には昨年より今年の方が安くなっている。また以前より利用する人も増えているので、金額は抑えられているという印象。

 

(渡辺委員)更別もコントラクターがあるのだが、色んな機械や人件費をまかなうとなると、牧草収穫作業だけでは立ち行かないので、畑作作業も幅広く請け負うことで、なんとか運営している。なぜ牧草収穫作業にお金がかかるかというと、畑から牧場に運搬する際に、外部の運送業者に頼んだり、アルバイトを雇ったりしているため、外部への支出が上がり、結果、利用料が上がっているとの話を聞く。

 

(山内委員)うちは搾乳作業に時間がかかっているので、飼料はすべて農協のコントラクターを利用している。農協がそこまで組合員から儲けてはいけないとの考えがあるようで、料金については、良心的な価格かと思っている。それでもコントラクター利用料金は1,000万円を超えており、楽ではない。また、機械導入時は、補助金等を活用して安く入れられても、その後のメンテナンス代や機械更新も必要になってくるので、利用料金は今後まだ高くなるような気はしている。

 

(前田座長)貴重なご意見をいただき感謝申し上げる。ここで、生産者の方を交えた議論を終えたいと思う。

 

【生産費調査に対する質問等への回答】

 

(前田座長)それでは議事を進める。これからは「牛乳生産費調査」に関して、前回までの議論や、また今回の生産者ヒアリングでも実態と違うといったご意見が出たので、改めてその仕組みや特徴について統計部から説明いただいて、確認や議論をしていきたい。では資料の説明を。

 

(青山課長補佐)資料5に基づきつつ、ご説明させていただく。

まず、大前提としてご理解いただきたいのが、牛乳生産費調査は、生乳の生産コストを明らかにすることを目的として実施しており、育成牛の飼育のためのコストは含まれない。このことをもって実感と合わないという意見については、我々も課題と思っているが、定義がそうなっているということを理解いただきたい。育成牛にかかるコストを含めるとすれば、例えば牛乳生産費調査から酪農生産費調査に変更する等、概念を変更するという大きな見直しとなり、現行の牛乳生産費調査を元に補給金単価を算定していること等から、算定にも影響してくるため、今後、畜産部とも相談しながら、どのような方法がよいのか検討していきたい。ただ、あくまで現状がこのような定義で行っているということはご理解いただきたい。

資料のとおり、牛乳生産費調査は生乳生産のために必要な費用は全て含まれていると思っている。先ほど言ったとおり育成牛の飼育のコストは入ってないが、その分は費目で言えば乳牛償却費を計上しており、見合いとして含まれるものと考えている。前回議論になった牧草等の生産に関する費用も全て含まれている。また、労働費についても、直接労働時間と間接労働時間に分けて把握しているが、直接労働時間で言えば、飼育の労働時間はもとより、生産管理の労働時間、集会への出席や技術習得や専門書を読む時間などについても過不足なく計上している。また、作業本体の時間はもとより、準備のための時間、牛舎への往復の時間、後片付けの時間等も含め計上しているし、待機時間ということで天候の回復を待つための時間なども計上している。

 

牛乳生産費調査の仕組みについては以上の通りで、これを前提に、前回いただいたご質問について、回答させていただく。

 

まず、副産物の取扱について何か工夫を出来ないかとのご意見について。臼井委員から、単年度の子牛価格の乱高下がそのまま生産費に反映される仕組みは問題ではないかといったことや、矢坂委員から、副産物価格の取り方を工夫して、平常時の副産物価格を別途算出することを検討してはどうかといったご意見があった。このことについては、先ほどもご説明したが、牛乳生産費調査は主産物の生乳生産にかかるコストを把握する調査で、酪農全体の生産コストから副産物分を控除したものを生産コストとして算出している。ただ、副産物にどれだけの費用を要したかというのを、厳密に把握することは技術的に困難であるため、生産費調査の取り決めとして、便宜、副産物価額を副産物の生産に要した費用と見なし、費用全体の中から控除して生産費を算出している。この部分の考え方については、牛乳生産費に限らず、全ての生産費調査に共通する仕組みであり、牛乳生産費調査だけ変更することは困難であるが、補給金単価を算定する際に期間の取り方などで対応を工夫するというやり方はあるのではないか。ご意見を踏まえながら、統計部と畜産部とで相談しながら考えていくことになろうかと思う。

 

次に、大規模法人経営について、経営全体に占めるウエイトが高まる中で、調査の対象になっておらず、実態にそぐわない生産費調査になっているのではないかとの指摘があり、特に矢坂委員から現状の農業経営とのすり合わせができているのか疑問とのご意見をいただいたところ。

統計部として、現状を見ると、組織法人ウエイトが高まっていることは承知しており、これらを調査対象とすることは今後の課題として受け止めていることは事実。

今後についてであるが、畜産の中でも特に組織化の進んでいる養豚では法人経営の割合が頭数ベースで70%を超えている状況にあることから、まず養豚で組織法人を対象とした事例調査の実施を検討している。牛乳生産費や肥育牛生産費は今後の課題であるが、組織法人化の進展等を踏まえつつ、調査の実施の可能性について前向きに検討してまいりたい。

 

次に、牛乳生産費の労働費の評価に用いられる「労賃単価」に、過酷な労働を強いられる酪農の労働実態を反映するべきではないかとのご意見について。前回も、近藤委員と村上委員から自給牧草の労働も含め、過酷な労働に見合った労賃単価水準にすべきとのご意見があった。

前回も説明した通り、生産費調査における家族労働は、厚生労働省の毎月勤労統計に基づき算出している。これは、牛乳生産費調査に限らず、米麦などの耕種系、畜産の肥育牛や豚などすべての生産費調査に共通の考え方により設定しており、牛乳と他品目の格差を設けて設定することは調査上は困難と考えている。酪農の労働は長時間の労働が必要で過酷であるというのは一般論として理解できるが、他の品目と質・量の面での違いを客観的に数値化することは困難であり、統計上、客観的な農業労働の区分をすることは困難。ただし、早朝からの長時間に及ぶ酪農の労働時間は漏れなく計上する仕組みとなっており、また労賃単価も、毎月勤労統計においても超過勤務分の賃金も込みの単価となっていることから、超過勤務分も織り込んだものとなっている。生産費調査ではこのような定義で行っているが、補給金単価の算定では、現在、労賃単価の評価替えを行っていることから、利活用の場面に応じた単価を設定していくことも考えられるのではないか。

 

次に、生産費における企画管理労働のあり方についてご質問あった点である。矢坂委員から経営者にあっては、現場での作業よりも管理業務に特化していくが、その時間の取り方はどうなっているのかご指摘があった。

資料5を見ていただきたい。直接労働時間として生産管理の中に、集会出席として組合や集落での集会への出席をカウントしている。また、技術習得ということで、各種講習会で勉強される機会や、専門書を読んで技術習得する時間を計上し、簿記記帳ということで経営分析や経営改善のための簿記記帳も計上しており、直接的な飼育管理だけでなく、企画管理的な労働も計上している。

 

最後に、近藤委員からご指摘のあった牛乳生産費は消費税を含んだ価額となっているが、税抜きで算出することは可能なのかとのご質問についてである。

生産費調査では、消費税込みの生産コストを把握している。これは、経営における資材等の購入の際には、消費税込みで代金を支払っており、酪農家の実感に合う生産コストを算出するために必要という考えに基づいている。

マルキン(肉用牛肥育経営安定特別対策、養豚経営安定対策)の補てん金の算定に当たっては、消費税抜きの生産費が使用されているが、これは税込みで算出された生産費統計を評価替えし、消費税を控除した形で算定されていると承知している。生産費としては実態にあった形で消費税込みで行っていきたいと思っているが、場面場面で利用者が必要に応じて消費税抜きの価格を設定するといった工夫をすることで対応可能だろうと思う。

 

(前田座長)今の説明も含め、生産費調査についてのご質問、ご意見を伺う。なお、評価替えの議論はあるが、今日は評価替えの前提となる生産費調査について確認することとし、評価替え自体の議論は次回以降に行うこととしたい。では、ご質問がある方は挙手をどうぞ。

 

(近藤委員)生産費調査では、北海道の農家約250戸が対象となっている。センサスに基づいて規模別に調査客体を選んでいると思うが、規模別というのは戸数ベースか、乳量ベースか。

 

(青山課長補佐)規模別は戸数で割り振っている。センサスを母集団として、全算入生産費の目標精度を誤差がプラスマイナス1%になるように設定し、必要な戸数を計算していくと、結果的に北海道では約250戸、都府県で約250戸となる。これをセンサスの母集団に基づいて各地に規模別に配置している。

 

(近藤委員)北海道では、メガファームが乳量ベースで1/3を占めているが、戸数では1割強。戸数ベースだとすると、そういった大規模な経営が1割程度しか入ってないということになるが、この考え方で良いか。

 

(青山課長補佐)母集団の規模ごとの全ての階層に一律の抽出率をかけて選定しているのではなく、昨今の大規模化の流れも踏まえ、小規模層よりも大規模層の抽出率を高く設定している。

 

(近藤委員)乳量ベースでなく、戸数ベースか。

 

(青山課長補佐)戸数ベース。

 

(近藤委員)メガファームは乳量ベースで1/3程度を占めているのに、戸数ベースで抽出しているとなると、北海道の真の平均値というのは出ていないのではないかと思ってしまう。

 

(青山課長補佐)たしかに、乳量ベースで見たときの大規模層の抽出率は低いのかもしれないが、統計上、実態を反映していないと言うことではない。

 

(近藤委員)なぜ気にするのかというと、大型経営のほうが経営コストが高いからである。これが評価されていないのではないか。

 

(前田座長)他の作物と共通したルールで生産費調査を行っていると思うが、他の作物はどうなのか。戸数ベースなのか、生産量ベースなのか。その辺りの議論はあるか。

 

(青山課長補佐)全て戸数ベースでやっている。

 

(前田座長)全国で平均を出すときにどのような方法をとっているのか。例えば、乳量や頭数を加味した計算方法をとっているということはないか。

 

(青山課長補佐)頭数規模を加味している。

 

(臼井委員)調査客体になっている酪農家の知り合いが何名かいるが、規模別に抽出された後の調査客体の抽出は無作為なのか。年齢が高めで減価償却が終わった、頼みやすい農家に農政事務所が頼んでいるという話を、調査客体になっている方から聞いた。もし、労働時間が多くて調査に協力できないということで、経営が大変な農家がはじかれているのだとしたら、そのせいで実態とのズレがでてきているのではないか。

 

(青山課長補佐)抽出は無作為。ただ、生産費調査は非常に煩雑なもので、現金出納帳や作業日誌、簡単に言えば、家計簿のようなものをつけてもらうことになる。酪農家の皆様からすれば、非常に負担になるものだと思う。抽出した調査客体に残念ながら断られることになれば、結果として同じ農家さんに継続していただくことになる。ただ、継続してお願いすることになっても、当該農家はそもそも無作為に抽出された方である。

 

(臼井委員)例えば何年連続でやればその方の調査をやめるというルールはあるのか。

 

(青山課長補佐)そういったルールはないが、大原則を言えば、牛乳生産費調査は農業経営統計調査の傘下にある調査で、農業経営統計調査は5年に1回選定替えを行うことになっている。大原則で言えば、5年に1回は見直すことになる。

 

(臼井委員)僕が聞いた人は、実は10年来調査に協力をしている。その人はわりと高齢な方で、「自分は減価償却がほとんどなくて、自分の経営が統計として使われて大丈夫か」という心配をしていた。そういう背景で質問させていただいている。そういった偏りの可能性があるのであれば、改善も含めてもう少し検討いただきたい。

 

(青山課長補佐)選定替えの際には無作為になるよう努力している。今後も引き続き努力していきたい。

 

(臼井委員)生産費調査の調査客体には、これがまさに補給金の算定に使われている重要な調査であることをよくよく周知して、できるだけ実態に合った形でデータが出てくるようにお願いしてほしい。

 

(青山課長補佐)調査にご協力いただく際には、どのような用途に使われるかを丁寧に説明しているところ。今後もよく周知していきたいと思う。

 

(近藤委員)酪農ヘルパーを利用した場合はどういうふうに計上されるのか。

 

(青山課長補佐)雇用労働費に計上している。

 

(近藤委員)実績ベースか。

 

(青山課長補佐)実績ベースで支払料金も計上している。

 

(近藤委員)ヘルパー組合の組合負担金みたいなものも入っているのか。

 

(青山課長補佐)利用料だけでなく、組合負担金も計上している。

 

(内橋委員)先ほど5年に1回は調査客体を見直すという話があったが、連続性は保たれるのか。また、例えば、規模拡大でかつての姿と変わってしまった場合は修正などをするのか。また、途中で廃業した場合などはどうなるのか。

 

(青山課長補佐)調査客体の選定替えごとに段差ができるのではないかという点については、調査は目標精度1%を保つように設計しており、著しい段差ができるということはない。途中で経営を辞めたり、残念ながら調査への協力を辞退される場合は選定替えをする。その際は、無作為ではなくて、経営規模や経営内容が似た酪農家を調査客体として選び直すようにしている。

 

(臼井委員)冬の除雪と、最近僕たちがかなり時間をとられている敷地内の環境整備はどこに入っているのか。

 

(青山課長補佐)除雪は、例えば、飼料庫と畜舎の間の除雪は、飼料を給与するために除雪しないといけないということであれば、飼料給与に付帯する作業として計上する。除雪そのものという項目ではなく、付帯する作業にそれぞれ計上している。環境整備は「その他生産管理」に入っている。

 

(前田座長)せっかくの勉強の機会なので4点ほど確認したい。(1)労賃単価は、毎勤統計の5~29人規模の事業所のデータを擬制的に使っていると思う。業種として製造業、運輸業、郵送業の3業種を昔から使っているが、これは実態にあったものなのか。(2)物件税、公課諸負担について、工業原価計算では含まれている固定資産税の土地の部分が牛乳生産費調査では含まれていないが、考え方を説明してほしい。(3)自己資本利子の計上に当たっての自己資本の内訳、特徴を教えてほしい。(4)自作の場合、賃借料や小作料は、類地の賃借料や小作料を使うとされているが、どういう目安で類地とするのか、評価と申告は誰がどうやって行ったものを使っているのか。

 

(青山課長補佐)(1)労賃単価については、毎勤統計に農業労働があれば、その単価を用いるのが一番良いのだろうが、農業労働がないため、農業と類似性があるだろう3業種を使っている。モノを生産する生産者の側面に注目した製造業、農業生産に当たって農業機械を扱う面に注目した建設業、運輸・郵便業である。(2)土地関係の経費については、地代に計上しているため、物件税や公課諸負担には含めていない。(3)自己資本については、大きく分類すると、流動資本、労賃資本、固定資本の3つを合計して計上している。(4)類地の地代についてだが、元々ご自身でお持ちの土地については地代は発生しないが、生産費の調査上、評価して自分の土地の地代も計上している。同様の地力の農地を借り入れる場合の費用等について、周辺の農業者への聞き取りや、農業委員会への確認等によって総合的に判断して決定している。

 

(近藤委員)酪農ヘルパーの平均利用日数の実績はわかるか。

 

(青山課長補佐)それ単独で集計はしていないため、わからない。ただ、雇用労働時間全体の中には含まれている。

 

(近藤委員)酪農家が何時から何時まで働いているかわかるか。

 

(青山課長補佐)時間帯は調べていない。労働した時間の合計しかわからない。

 

(前田座長)この生産費調査の論点については、臼井委員からも先ほど質問あったが、現場の実態に合っていないのではないかというご意見がある。これに対して生産費の調査上のルールを確認することで、ルール上どこがカバーできていて、どこがカバーできていないかがわかってくる。これがわからないと、その先の評価替えの議論にいくことができない。生産費調査は非常に複雑なので、率直な疑問点などについてご質問いただいて、生産費調査について理解を深めてほしい。

 

(小谷委員)先ほどからお話を伺う中で担い手の後継者や、新しいアルバイトが見つからないという話があった。これを踏まえ、リクルートや人事の部分、それに付随する活動は計上されているか。計上されていないのであれば計上すべきではないか。

 

(前田座長)経営全体のマネジメントにつながる部分だと思うが、どうか。

 

(青山課長補佐)生産費調査はほ場原価主義をとっており、ほ場で生乳を生産するために要した費用を把握している。このため、リクルート活動のようなものは生産コストには含まれていない。ただ、経営管理労働に一般的には位置づけられるものだと思うので、リクルート活動を行っていれば、労働時間は把握されることになる。ただ、生産コストとはしないので労働費にはカウントしない。

 

(臼井委員)経営者の年間労働時間数は何千時間くらいなのか。

 

(青山課長補佐)経営者だけを取り出すことはできない。

 

(臼井委員)では例えば、家族労働で、自分、父、母が働いているとして、母は0.5人とか係数がけはしているか。

 

(青山課長補佐)していない。1人は1人として計上している。

 

(臼井委員)経営当たりの労働時間はどれくらいなのか。

 

(青山課長補佐)経営当たりの労働時間は出していないので、便宜計算することとなる。北海道でいうと、1頭当たり約92時間で、頭数が約72頭なので、ざっくり言うと約7,000時間くらいである。

 

(臼井委員)夫婦2人だと、1人あたり確定申告ベースで年間600万円くらい。3人でそれであれば、相当給与の水準が低い感じがする。やはり実数を入れてみると実態に比べ低い感じがする。現場ではそういう感覚になるのではないか。また計算してみて気づいたところがあれば言う。

 

(青山課長補佐)我々としては、育成牛の飼育以外で想定されるものはすべて計上しているつもりであるが、搾乳に関連する部分で逆に不足していると感じるものはあるか。牛舎までの往復時間や、天候のための待機時間、専門書を読む時間等も計上している。

 

(臼井委員)時間は大丈夫だと思うが、単価が違うと思う。3業種平均が1,500円で、補正かけて1,950円だったと思うが、製造業のみ補正しているところを例えば搾乳は製造業、草地管理を建設業運輸業の補正と、それぞれの労働ごとに単価を分けてやるとどうなるのか。

 

(林課長補佐)今ご指摘の部分は算定に関わる部分だと思う。生産費調査においては、5~29人規模のところを算定では上の制限をとって5人以上としている。生産費調査で対応できる範疇を超える部分については、利用部局である生産局牛乳乳製品課がどう考えるかというところなので、算定に係る議論の中でご意見をお伺いする形になる。

 

(臼井委員)調査では、補正を使わないということか。

 

(林課長補佐)生産費調査においては、品目に依らず、3業種の5~29人規模層の平均を用いている。補給金単価の算定では、そこを評価替えして行っているということ。次回以降その部分を議論できればと思う。

 

(前田座長)生産費調査の部分については色々ご質問ご意見あったが、今後議論する中で、引き続き議論がでてくることはあると思うので、今後も引き続き並行して議論していきたい。組織経営体をどう考えていくかについては、養豚で実験的にやろうという話もあったが、今後畜産全体でも議論になるところだと思う。統計部からはぜひ前向きにご提案いただければと思う。生産費調査の本日の議論はこの程度にしたい。本日の主要な議論はここまでにしたい。

 

【その他の議論】

 

(前田座長)それでは最後に、2回目から若干時間が開いたので、これまでの議論を振り返り、4回目以降の議論につなげたい。事務局から説明願いたい。

 

(本田調整官)参考資料「第1・2回補給金単価算定方式等検討会における意見等(概要)」について説明する。先ほど座長からも説明あったように、第2回が開催されたのが3月末で時間が開いてしまったので、第1・2回でどのような議論があったかというのをまとめさせていただいた。

まず、「1 基本的な考え方」であるが、「需給調整や価格下落対策等他の酪農政策とパッケージで議論をすべき。」という第1回のご意見について、第2回で委員の皆様で「まずは補給金の算定方式等を検討・決定することとし、他の酪農政策のあり方等については、今後継続的に検討していくことを確認」していただいた。また、「初年度単価の設定方法については、生乳の再生産を確保するために「生産コスト-乳製品乳価」を基本として、設定することを確認」していただいた。続いて、「2年目以降の単価設定方法については、初年度単価が適切に設定されること等を前提に、コスト変動率方式で算定することを確認」していただいた。

次に、「2 単価・数量設定、単価の見直し」だが、まず「単価算定に当たっては、算定における年度の取り方、家族労働の評価、副産物価格の取り方等について検討が必要。」ということで、これについて引き続き検討を進めていきたい。「交付対象数量は、需要に応じた量で設定し、用途ごとのミシン目は付けないようにすべき。」というご意見をいただいており、この部分について特段のご異論はなかったかと思う。「単価は『将来的な経済状況の変化を踏まえ適切に見直す』とされているが、その見直す基準を明確にすべき。」というご意見をいただいている。

最後に、「3 その他」だが、今日もずっとご議論いただいている「生産費調査結果と経営の実態に乖離があるのではないか。」というご意見をいただいた。生産者ヒアリングでもご指摘あったが、「補給金制度等の重要性について国民の理解を得るべき」というご意見をいただいている。1回目、2回目の検討会におけるご意見ということでまとめさせていただいた。

 

(前田座長)今後は、今説明いただいた論点を中心に具体的な議論に入ることとしたい。具体的な日程については、また調整をお願いしたい。

本日の議題は以上であるが、全体の議事を通して追加的なご意見はあるか。

 

(内橋委員)参考資料の「基本的な考え方」の、今後、継続的に検討していくとする内容にも関連した課題として、次回以降でも良いので教えていただきたい。今回都府県の高橋委員から、いろいろな取組をして、また飼料自給率が高くとも、生乳生産だけでは経営が厳しいとの話があった。本検討会の議論の範囲ではないと思うが、都府県では飲用牛乳の安定供給に付随してどうしても調整弁としての加工原料乳が発生する。都府県の酪農家にとっては補給金が直接的恩恵として経営所得に占める割合というのは少ない。今回、3用途が一本化され、単価も一本化されることで、北海道の所得は、設定する単価水準にもよるが、全体の380万トンのうち300万トンが固定払いの対象になることで、一定程度安定的に担保されることになる。ただし、液状化を推進したいとの政策意図は理解するが、現行価格は補給金を含まず形成されており、過度にインセンティブになりはしないかと考える。一方で、都府県では、地域によっては一定の加工原料乳が発生し、関東のような飲用乳主体の地域でも、需給によっては加工原料乳が発生する。そうすると、今回の見直しが乳製品の取引にも関係してくる部分があるのではないかということがまず1点目。

2点目は、このことが乳価形成のあり方に与える影響をどう考えているか。この点は、この検討会の直接的なテーマではないと思うが、基本的な考え方の今後継続的に検討していく事項だとすれば、あわせてどういった形で対応を考えられるかについて整理いただきたい。

最後に、都府県でも一定程度の加工原料乳の処理があるところ、余乳処理工場や、一部であるが乳製品工場があるところもある。今回の見直しがこういった地域の取引の酪農経営や取引条件にどのような影響を与えるか、また、あるべき姿としてどのような姿が考えられるか、どう検討していくのか等についても教えてほしい。回答については次回でも構わない。

 

(森課長)都府県における補給金の意味合い、用途単価一本化の中での乳価形成のあり方、余乳処理工場のあるべき姿についてご指摘あったが、いずれもこの検討会の範囲を超える課題であると認識。第1回でも議論あったように、酪農政策のあり方として継続的に議論していくものだと思っているが、この場でも多少説明させていただく。補給金単価は、法律上、加工原料乳地域の再生産を確保する水準として設定することとなっており、現在、加工原料乳が過半を占めている北海道における再生産を可能とする水準はどのような水準かを検討しているもの。その上で、指定団体の機能の中で、都府県の飲用乳価の水準も形成されているので、この部分が補給金の仕組みの中で、どのような役割を果たしていくのかということについては、制度の見直しの議論もあるので、その中で議論されていくものと思っている。

2点目の用途単価一本化に伴う乳価形成のあり方だが、基本的には乳業者と生産者団体との取引の話ではあるが、制度の仕組みを変えていく中には用途間の流動性を高めるという政策的な発想もあるので、われわれとしても一緒に議論していきたい。3つ目の余乳処理工場のあるべき姿については、将来の需給動向をどう見ていくかに関連しており中々難しい点はあるが、酪農の生産基盤強化の中で、乳業の再編・合理化も大きなテーマの一つであるので、そういった中で考えていきたい。

 

(前田座長)制度の周辺の議論は、制度を議論するときにどうしても出てくるものなので、自由にご発言いただきたい。その上で、どこで議論するのかということをメリハリをつけながら整理をしていくことが望ましいと考えているので、委員各位にはよろしくお願いしたい。

 

(村上委員)これからの議論になるのだと思うが、初年度の単価として「生乳の再生産を確保するため」というときの「再生産」をどうとらえるのかが重要ではないか。今回ヒアリングでも生産者の方から、生産費調査が実態と乖離があるのではないかという指摘もあったし、われわれもそういうことをよく聞く。生産コストというのが、お話をうかがった生産費調査を評価替えして、販売経費たる販売手数料や集送乳コストを上乗せしている。通常の高く売れるものであれば、そこに営業利益を乗せて販売価格をつけてというふうになっていくと思うが、農家の方との実感の違いというのは、しっかりと投資できるようにという際の営業利益部分が、販売価格が低いためになくなってしまうというか、生産コストとの差をとったときに外に出ていくということがあるためではないか想定される。再生産というのが、単純再生産というよりも、拡大再生産というとらえ方で、投資が何とかできるような形をいかに作っていくかということをしっかりとまた議論させていただきたい。

 

(臼井委員)第1回のときからお話しさせていただいているが、副産物価格の取り方をよく考える必要。副産物の価格の乱高下が激しい状況で、前年までの数字が当年以降に影響を及ぼしている部分では、副産物の影響度がかなり大きいと思う。今までにも副産物の価格が上がったことで、補給金が必要とされる水準よりも下がってしまうという、実態と逆行するようなことがあったので、そういったところを実態とあわせた補給金の上下の動きとなる仕組みをいかに作れるかにかかってくる。これまでの補給金のあり方でまずかった部分を、いかに改善するかが重要になってくると思う。残り少ないと思うが、この辺をしっかりと議論させていただきたい。

 

(近藤委員)補給金の算定に当たっての年度の取り方をどうするかということがテクニカルな部分で色々とでてくると思う。基本的には生産コストと乳製品価格の恒常的な差をとらえる必要があると思っている。直近の動きにとらわれることがないよう、可能な限り長期にみることが必要と考えているので、今後よろしくお願いしたい。

 

(前田座長)いずれも重要な論点だと思う。次回以降議論していきたい。

 

(本田調整官)まさに今、色々とご意見あったようなことを踏まえて今後議論していくこととなると思う。村上委員からご指摘あって再生産を確保するためのコストが一体どういうものかという点については、今後も議論していただくことと認識しているが、現状の考え方としては、従来より、生乳については集送乳コストをきちんとみるということ、投資については設備投資がかかるということで、生産コストの中に自己資本利子や地代についてもきちんと入れて対応している。今後その点をどう考えていくかという議論をしていくことだと思う。

副産物についても、まさにこれからどう入れていくか議論していくことだと思うが、平成12年から13年にBSEの影響で子牛価格が大きく下がったときは、補給金単価がかつてないくらい上がっている。そういう意味では、水準に対する不満というのはあると思うが、制度としては、副産物価格が下がれば補給金単価が上がり、副産物価格が上がれば補給金単価が下がる制度になっていると思う。今後、こういった制度を踏まえ、どのようにしていくのかをご議論いただきたい。

 

(前田座長)本日の議事は以上とする。それでは事務局にお返しする。

 

(森課長)委員の皆様、生産者の皆様、長時間熱心なご議論に感謝申し上げる。本日のご議論については、議事概要として事務局で作成し、委員の皆様の了解を得て、公表させていただきたい。

次回については、第1回2回の議論並びに本日の議論を踏まえ、事務局が準備をした上で、内容及び日程を調整させていただきたいと考えている。後日事務局から連絡をさせていただくので、よろしくお願い申し上げる。

 

(以上)

お問合せ先

畜産局牛乳乳製品課

担当者:価格調査班
代表:03-3502-8111(内線4934)
ダイヤルイン:03-6744-2129

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