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農林水産省

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平成30年度第1回議事録

1.日時及び場所

日時:平成30年8月3日(金曜日)13時00分~15時10分
場所:農林水産省本館4階  第2特別会議室

2.議事

(1)今年度の審議事項について
(2)社会情勢の変化を踏まえた次世代の農業・農村の構築について
(3)農業農村整備の新たなフロンティア
(4)国際かんがい排水委員会(ICID)の活動方向について
(5)その他

3.議事内容

議事録(PDF : 366KB)

石井計画調整室長
  定刻よりも若干早いのですが、皆様お集まりいただいておりますので、ただいまから食料・農業・農村政策審議会平成30年度第1回目農業農村振興整備部会を開催いたします。
  本日は大変お暑い中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
  開会に先立ちまして、室本農村振興局長よりご挨拶申し上げます。

室本農村振興局長
  7月27日付けで農村振興局長を拝命いたしました室本でございます。委員の皆様におかれましては、引き続きよろしくお願い申し上げます。
  まず、委員の皆様方におかれましては、ご多用中にもかかわらず、部会にご出席を賜りました。厚く御礼を申し上げます。また日頃より農業農村振興政策の推進に当たり格別のご理解、ご協力を賜っておりますことにつきましてもお礼申し上げます。
  部会の開催に先立ちまして、まずは平成30年7月豪雨により亡くなられた方々に対して、お見舞いを申し上げたいと思います。この豪雨におきましては、農業水利施設が被災し、特にため池が28カ所決壊しました。ため池の下流にあった民家のお子様が1人亡くなられたということもありましたので、農林水産省といたしましては、この8月末を目処に全国20万カ所あるため池のうちの大方半分を超えるため池について都道府県の協力も得ながら一斉点検を現在やっているところでございます。今回の豪雨災害の状況については、後ほど事務局からご報告をさせていただきたいと思います。
  そして、本年6月に改正土地改良法が成立しました。昨年に引き続き2年連続の改正になりました。今回の法改正では土地持ち非農家の増加、土地改良区の組合員数の減少などの土地改良区の現状を受けて、土地改良区の組合員資格に関する措置と土地改良区の体制に関する措置をとっております。今年1月の部会でもご説明をさせていただきまして、委員の皆様から様々なご意見を頂戴いたしました。この場をお借りして厚く御礼申し上げたいと思います。
  昨年度の部会では、「社会情勢を踏まえた次世代の農業・農村の構築」をテーマにしまして、新技術、農村協働力に着目して、「担い手の推進に資する生産基盤の在り方」と「多様な主体が住み続ける魅力ある農村社会の構築」を検討課題としてご審議をいただきました。今回、これまでご審議いただいた内容を取りまとめたものを後ほど事務局からご説明したいと思います。
  そして、本年度の部会では「農業農村整備の新たなフロンティア」と題しまして、新時代が到来する中で目指すべき農業・農村像、その実現に向けて農業農村整備が果たしていくべき役割についてご説明をさせていただきたいと思います。
  そして、最後に8月にカナダで国際かんがい排水委員会、これは「ICID」と略して呼んでおりますが、この第69回国際執行理事会が開催されます。その会議に当たっての対応方針についてご説明させていただきたいと思います。
  本日の議題は以上の3点でございます。委員の皆様には忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げまして、私からのご挨拶とさせていただきます。本日は、よろしくお願い申し上げます。

石井計画調整室長
  ありがとうございました。
  本年度の本部会の委員、また臨時委員におかれましては、昨年度からお変わりございません。
  なお、小谷委員、平松委員におかれましては、所用によりまして本日ご欠席のご連絡をいただいております。
  また、先日、農林水産省で人事異動がございましたので、新しい局長、部長、審議官をご紹介したいと思います。
  それでは、ただいまご挨拶いたしました室本農村振興局長でございます。

室本農村振興局長
  どうぞよろしくお願いいたします。

石井計画調整室長
  高橋農村政策部長でございます。

高橋農村政策部長
  高橋でございます。よろしくお願いいたします。

石井計画調整室長
  横井整備部長でございます。

横井整備部長
  横井でございます。よろしくお願いいたします。

石井計画調整室長
  木下大臣官房審議官でございます。

木下大臣官房審議官
  木下でございます。よろしくお願いいたします。

石井計画調整室長
  それでは、まず初めに配布資料について確認させていただきます。
  農林水産省では審議会のペーパーレス化を進めておりまして、本日のこの部会では紙での資料説明は行わず、タブレットパソコン上の資料で説明をさせていただきます。
  タブレットパソコン上の資料を画面上でご確認をお願いしたいと思います。
  一番左のほうから資料1、資料2-1、2-2、資料3、資料4、参考資料1という順番で並んでいると思います。
  なお、会議次第、委員名簿、配布資料一覧及びタブレットパソコンの操作説明資料につきましては、お手元のほうに紙の資料として置かせていただいております。
  皆様よろしいでしょうか。
  審議中、タブレットパソコンの操作で不明な点がございましたら、挙手していただけましたら事務局のほうから対応させていただきますので、よろしくお願いいたします。
  また、次に本部会の公表の方法についてご説明いたします。配布資料は既に農林水産省のホームページで公表させていただいております。議事録につきましては内容を確認いただいた上で発言者を明記して、ホームページに公表させていただくこととしておりますので、委員の皆様にはご了承願います。
  それでは、議事に移りたいと思います。
  本日の会議は2時間、15時までを予定しております。
  報道関係者の皆様のカメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。
それでは、以降の議事進行につきましては渡邉部会長にお願いしたいと思います。渡邉部会長、よろしくお願いいたします。

渡邉部会長
  皆さん、こんにちは。お暑い中お集まりいただき、ありがとうございます。
  先ほども室本局長からお話がありましたように、この間、様々なことが起こりました。まず大阪北部地震。その後7月の西日本豪雨、それに続く干天、いわゆる逆走した台風、さらには北陸、新潟などでの厳しい水不足などです。私どもここで担当している農業・農村への被害も大きかったですし、影響もありますし、農業農村整備の役割、責任も大きいということを改めて感じた次第です。
  今日の議題も、先ほど局長からご説明いただきましたが、昨年度の議論のまとめだけではなく、これからの議論をどのように進めるかについて委員の皆様からご意見いただくことになっています。先ほど申しましたような状況を踏まえての議論になろうかと思います。限られた時間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、議事を進めたいと思います。
  議事次第の1番目は「今年度の審議事項」となっておりますが、その前にその他ということになろうかと思いますが、先月発生しました平成30年7月豪雨の被災状況について、後の議論ともかかわるところもあると思いますので、初めに事務局よりご報告していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

加藤災害対策室長
  皆さん、こんにちは。災害対策室長の加藤と申します。本日はよろしくお願いいたします。
  資料でございますが、1番右のタブの参考資料1というところをクリックしていただきたいと思います。タイトルが「平成30年7月豪雨」で、括弧で「(西日本豪雨)」と書いております。「7月豪雨」というのは7月9日に気象庁が命名したものでございます。実はそれ以前から報道機関では「西日本豪雨」という言い方もしておりましたので、両方併記しているところでございます。
  1ページめくっていただくと目次で、1から4つの項目についてご説明したいと考えております。
  3ページ目でございます。6月28日以降、梅雨前線が日本付近に停滞し、また29日には台風7号が南海上に発生。6月29日から代表的な日付だけを4枚ピックアップしておりますが、この中でも台風と梅雨前線の影響が日本全国に影響を与え、各地で甚大な被害が発生したところでございます。
  下のほうに消防庁の発表としまして人的被害が書いていますが、8月1日時点で220名の方が亡くなられております。平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が100人を超えております。また、昭和にさかのぼりましても、昭和57年7月に300人近い死者、行方不明者を出した長崎大水害以来、最悪の被害となりました。
  4ページ目でございます。6月28日0時から7月8日24時の期間降水量でございます。特に四国地方では1,800mm、中部地方で1,200mm、九州地方で900mm、近畿で600mm、中国地方で500mmを超える雨が降っております。これまでの豪雨の事例に比べまして、多くの地点で24時間、48時間、72時間降水量の値が観測史上1位ということで記録的な大雨でございました。大雨特別警報の発表も、7月6日、長崎、福岡、佐賀から、8日までの高知、愛媛まで運用開始後最多となる合計11の府県で発表されたところでございます。
  5ページ目でございます。平成30年発生災害の被災の状況でございます。被害報告額は1日時点で1,226億円でございます。3年連続で1,000億円を超える被害の報告がございました。昨年、平成29年でございますが、6月の梅雨前線豪雨、9月の台風18号、10月の21号、3回の激甚災害が発生しました、今年は今回1回の災害で既に昨年の被害報告額を超えたことになります。今回の災害につきましては、7月24日に激甚災害として閣議決定されています。
  6ページ目でございます。農業用施設などの被害の内訳でございますが、ため池につきましては、2府4県で28カ所のため池が決壊しました。農業用施設については法面の崩壊、機場の上屋の流出などです。あと農業集落排水施設については、71カ所被災。70カ所については、もう既に稼働中でございます。
  右の写真で特徴的な、先ほど局長からも1名亡くなられた話をしたため池でございますが、上の写真が被災前でございます。下が被災後で、下を見ますと、グラウンドの盛土崩壊がございまして、それが原因となりまして下流にあるため池を巻き込みながら人家のほうに土砂が流出したところでございます。それについては、農研機構で見解も出されているところでございます。
  7ページ目に行きます。今回、大きな被害があった岡山、広島、愛媛県の報告をしたいと思います。
  まず岡山県でございます。岡山県では河川の氾濫、堤防の決壊によりまして浸水被害や土砂災害が相次いで発生しております。全半壊、浸水家屋の数は少なくとも1万4,000棟に上りまして、岡山県内の風水害による被害としては戦後最悪となりました。倉敷市真備では、7日朝までに小田川などの堤防が決壊し、広範囲な冠水が発生し、農地も冠水しております。この写真は、倉敷市の真備の写真でございます。
  次のページに行きます。8ページ目は広島県でございます。左上の写真は山腹崩壊から始まって農地への被害が拡大したものでございます。左下のほうにつきましては、決壊まではいきませんでしたが部分的な法崩れがございまして、基本的にこのような変状があればブルーシート、そして水位低下をさせて二次被害の防止、拡大防止といいますか、事前の防止対策をとっているところでございます。右側の写真は先ほどご説明した勝負迫下池の写真でございます。これは下流のほうから見た写真でございまして、もう既に形がなくなっているところでございます。広島県の決壊したため池は、全国28カ所のうち19カ所で、広島県に集中していたことが特徴でございます。
  9ページ目に行きまして、愛媛県の被害報告でございます。愛媛県におきましては、この写真は宇和島市吉田町の山肌がはっきりと見えており、爪でひっかいたような感じで写っています。これら山腹崩壊からみかん樹園地の被害が連続して起きました。特徴的なのは道路、そして、道路の下に埋設されているパイプライン、そして園内のスプリンクラーなどが一連の被害を受けたことでございます。ここで大事なことは、園地にアクセスするためにも道路が必要ですので、まず道路の復旧を先行させて進めることでございます。
  あともう一つ特徴的なのが、ここは国が事業主体となって直轄災害復旧事業を実施するところでございます。大河内支線揚水機場につきましては、この写真でわかるとおり機場の上屋が全部飛んでいましたが、それを国が直轄で行うということで本日から着手しております。早期復旧が必要なので、そこは国で施行することで考えております。
  10ページ目でございます。今般の豪雨災害を踏まえて、ため池は先ほどお話がありましたが、1つには全国のため池緊急点検を行っていること、そしてもう一つは、今回は防災重点ため池ではない中山間部の小さなため池で決壊が多く発生したことを受けまして、7月15日にはため池対策検討チームを設置し、下の1番から4番までの検討を進めているところでございます。
  11ページ目でございます。水土里災害派遣隊。国の技術系職員を中心で構成されます派遣隊でございますが、先ほどの緊急点検の派遣が2,467人日、プラスため池緊急点検以外の施設の早期復旧に向けた派遣隊が延べ575人、既に3,000人近くの人が現場に行き技術指導、あるいは緊急的な調査を行っています。
  あと最後に、査定前着工制度の活用でございますが、査定を受ける前に早期に営農を再開したいのであれば、こういう制度もございますので、全国的にも現在56カ所の地点で査定前着工し、早期の営農再開を目指しているところでございます。
  以上、簡単にお話ししましたが、まだ被害報告も毎日のように増えているところでございます。農林水産省としましては、県や市町村と連携しまして、被害を受けた農地、農業用施設の早期復旧に向けて全力で支援してまいりたいと考えております。
  以上、簡単でございますが、報告を終わります。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  それでは、ただいまのご報告、ご説明につきまして、何かご質問があったら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  ございませんか。よろしいですか。多分これからもいろいろ調査が進み、また次のバージョンの報告をなされると思いますが、引き続き情報を得て、必要があれば、この部会でも検討させていただいたり、報告を伺ったりということになると思います。ご説明ありがとうございました。
  それでは、議事次第に従いまして進めたいと思います。
  まず初めに1番目「今年度の審議事項について」、これにつきまして事務局より、ご報告いただきたいと思います。

石井計画調整室長
  それでは、皆さん、資料1をクリックしていただきたいと思います。
  こちらは平成30年度、本年度の本部会における審議事項でございます。
  本年度の部会では、以下の事項の審議を予定しております。
  まず1つ目でございます。1の「社会情勢の変化を踏まえた次世代の農業・農村の構築について」、こちらは昨年度の部会でご審議をいただいたものでございます。部会では、2つの検討事項についてご審議いただきました。1つ目が1)にありますが、担い手政策を推進していくため、農村協働力の補完・向上の観点も含めつつ、情報通信技術を活用するなど地域に応じた生産基盤のあり方でございます。アンダーラインを付しておりますが、これは昨年度、当初にはなかったものでございます。昨年度の部会で委員の皆様からいただいたご意見を踏まえてつけ加えたものでございます。
  2つ目が2)農村協働力を活かし、多様な主体が農村に住み続けるような、強くしなやかで魅力ある農村社会の構築に向けた方策でございます。本日は、昨年度の審議を踏まえて整理いたしました資料を説明させていただきます。
  2つ目が、その下、「農業農村整備の新たなフロンティア」でございます。こちらは、本年度本部会でご審議いただきたいと考えているものでございます。次期土地改良長期計画の策定に向けて、新しい時代が到来する中での農業農村整備の課題を整理するために、目指すべき農業・農村像とはどういったものか、また、その実現に向けて農業農村整備が果たすべき役割は何かということを、農村の多様性を考慮しながらご審議いただきたいと考えております。そして、この農業農村整備が果たすべき役割を「農業農村整備の新たなフロンティア」と位置付けたいと考えております。また、審議におきましては、昨年度の部会でのご議論をさらに深掘りする形でお願いできればと思っております。
  3つ目が「国際かんがい排水委員会(ICID)の活動方向について」でございます。新たな農業用水を巡る世界の情勢を踏まえまして、8月にカナダで開催されますICIDの理事会における我が国の対応方針についてご審議をいただきます。
  4つ目、「土地改良事業計画設計基準の改定」でございます。これは既に技術小委員会に付託いただいておりますので、今回は特にご審議ございません。
  最後に開催スケジュールでございますが、この農業農村振興整備部会につきましては、今年度、現地調査を含めて4回程度開催したいと考えております。また、技術小委員会につきましては10月ごろに第1回目を開催し、年度内に計2回開催する予定でございます。
  以上でございます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。ただいまの「今年度の審議事項について」についてのご説明ですが、ご質問、ご意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
  私のほうで1つ、もうご案内があったかと思いますが確認させていただきますと、1番目は昨年度この課題で議論してきたものを今年度にまとめるということで今年度の審議事項になっていて、2番目のほうは、さらに先を見据えた検討をするという二段階の整理です。両方密接に関わってくると思います。そういう整理になっているという理解でよろしいですね。
  委員の皆様はよろしいでしょうか。
  では、このような事項について今年度審議を行うということにさせていただきます。
  それでは、議事の2、「社会情勢の変化を踏まえた次世代の農業・農村の構築について」です。これは今申し上げましたように昨年度のとりまとめとなるところですが、今年度の審議事項として扱うということで事務局よりご説明をお願いいたします。

石井計画調整室長
  それでは、1つ目の審議事項でございますが、「社会情勢の変化を踏まえた次世代の農業・農村の構築について」、説明させていただきます。
  関係する資料といたしましては、資料2-1と資料2-2でございます。2-1は縦長の資料で、2-2のほうがパワーポイント、横長の資料でございます。2つの資料は、記載内容は同じでございます。資料2-2の各ページで四角で囲んでいる文章につきましては、資料2-1にも記載されております。このため、委員の皆様には資料2-2、横長のパワーポイントで説明させていただきます。よろしいでしょうか。
  それでは、左のほうに目次の1がございます。そちらをクリックいただきたいと思います。
  まず資料の構成でございます。
  まず第1章で「農業・農村構造の変化」について説明させていただきます。その次、第2章では「農業農村整備に関する近年の政府の動向」について紹介いたします。第3章、こちらは昨年度ご審議いただきました2つの項目、「担い手政策の推進に資する生産基盤の在り方」「多様な主体が住み続ける農村社会の構築」、この2つについて改めて説明いたします。
  続いて目次の2でございますが、第4章では、先ほどの2つの項目の1つ目、担い手政策の推進に関する事項、第5章では2つ目の農村社会の構築という内容について具体的に説明をさせていただきます。この内容は、昨年度の部会で事務局からご説明した内容、また委員の皆様からいただいたご意見を踏まえて作成しております。
  最後の6章は、これまでのご審議をまとめて整理させていただいたものでございます。
  それでは、早速内容について説明いたします。
  2ページをお願いいたします。「農業・農村構造の変化」のうち、まず「農村地域の人口減少と高齢化、混住化の進行」でございます。左側のグラフ、農村では昭和45年以降、一貫して人口が減少しております。また、農村は都市に比べて20年ほど早く高齢化が進行している様子がわかります。また、右のグラフ、地域類型ごとに農村の混住化具合を表したものでございます。平地、中山間地域を問わず、集落に占める非農家が占める割合、グラフの青い部分でございますが、これが増加しております。平成22年の時点で農家が占める割合は緑の部分、約2割ということになっております。
  続いて3ページ、「農家数の変遷と担い手への農地集積の状況」でございます。左のグラフ、点線がございますが、農家人口が減少しているということでございます。また、赤い実線、黒い実線が右肩上がりになっておりますが、これは農家の高齢化、特に基幹的農業従事者の高齢化が進行している様子を示しております。次に右のグラフ、担い手が利用する農地面積は全体の5割となっております。そして、少数の担い手が農地の大宗を耕作する構造に変わってきております。
  続いて4ページ、「大規模経営体と小規模農家への二極分化、土地持ち非農家の増加」でございます。担い手への農地集積が進む一方、左上のグラフでございます。左上のグラフの一番右、平成27年の数字ですが、小規模農家が依然として多く存在することがここに示されております。また、右上のグラフでは大規模経営体と小規模農家の二極分化が進んでいる様子が示されております。
  さらに右下のグラフでは、緑の農家が減少し、赤い部分の土地持ち非農家が伸びている様子がおわかりいただけるかと思います。
  こういった中で5ページでございますが、「農業・農村構造の変化に伴う課題」ということで、このような変化によりまして、農村の人的資本の減少、また農村協働力の低下が見込まれます。左のグラフでは寄り合いが減少するなど、集落での活動が低下している様子がわかります。また、右のグラフでは、農地や水路の管理が行き届かなくなっているということでございます。このようなことから担い手の農作業の負担が増え、またコミュニティの維持、農地等の保全管理に支障が生じるおそれがございます。
  次に、第2章に入りたいと思います。
  まず7ページ、最初に土地改良長期計画の策定でございます。ご案内のとおり、平成28年8月に土地改良長期計画が策定されました。この長期計画では、担い手の農作業の負担軽減・安全確保、また営農形態の変化に対応した水利用の高度化を図るために、大区画化などに伴う施設の合理化、除草ロボット、ICTの導入等による新たな水利システムの構築、こういったことを新技術の導入を含めて積極的に推進することになっております。
  続いて8ページ、土地改良法の改正でございます。土地改良法の改正は、平成29年、30年と2年連続で行われております。この8ページは、29年の改正でございます。昨年の改正では、農地中間管理機構による農地集積を促進するための措置、農業水利施設の耐震化の推進、突発事故の増加に対応するための措置などの制度の見直しが行われております。
  続いて、9ページでございます。これが30年、今年の改正でございます。内容は、組合員の離農、また土地持ち非農家の増加によりまして施設の維持管理、更新などが適切に行えなくなるおそれがある中で、耕作者の意見が適切に事業運営体制に反映されていくように移行していくことが必要であることなどから、土地改良区の組合員の資格に関する措置、また土地改良区の体制改善に関する措置などの法改正が行われております。
  続いて、政府全体の動きでございまして、10ページ、いわゆる骨太の方針でございます。今年6月に閣議決定されましたこの骨太の方針においては、インフラの維持管理・更新などの課題解決に資する研究開発を推進することとしております。また、人口減少・高齢化といった社会的な課題を解決するSociety5.0を実現することとしております。さらに農業分野においては、新技術を活用してスマート農業を実現することによりまして、農業の競争力強化をさらに加速することとしております。
  このSociety5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の新しい社会であるということで、仮想空間、いわゆるサイバー空間と現実空間を高度に融合させたシステムを構築して経済発展と社会的課題の解決を両立する、そのような社会を示しております。
  続いて11ページ、未来投資戦略でございます。こちらでは人手不足の対応、生産性の向上、こういったものを図るためにICTを活用したスマート農業を促進することとしております。未来投資戦略2018では、農業農村整備に関しまして自動走行農機等の導入・利用に対応した土地改良事業の推進、ICT技術を活用した農業用水の利用の効率化、農業データ連携基盤の活用などが示されております。
  続きまして、第3章でございます。こちらでは、昨年ご審議いただいた2つの検討事項を改めてご説明いたします。
  13ページ、1つ目の「担い手政策の推進に資する生産基盤の在り方」でございます。少数の担い手が競争力のある農業を展開するには、担い手の農作業の負担軽減、安全確保、また水利用の高度化などを図っていく必要がございます。この実現にICTなどの新技術の活用が期待されております。担い手政策を推進していくために農村協働力の補完・向上の観点も含めて、ICTを活用した生産基盤のあり方について検討するというものでございます。
  続いて14ページ、2つ目の「多様な主体が住み続ける農村社会の構築」でございます。農村協働力の低下が見込まれる中、農村協働力の深化、これを積極的に図ることが重要であるということです。地縁的な農村協働力の充実を図るとともに、集落を越えた地域等との新たな関係を導入した開かれた農村協働力を発揮している事例も見られます。このような先進事例を踏まえながら新たな農村協働力を形成して、多様な主体が農村に住み続ける、強くてしなやかで魅力ある農村社会の構築について検討するというものでございます。
  続いて第4章、15ページ、ここから1つ目の課題について説明をさせていただきます。
  16ページでございます。「農業農村整備における新技術活用の意義」でございまして、先ほどご説明いたしましたSociety5.0を実現し、ロボットなどの新技術を活用することによりまして少子高齢化、過疎化などの現代社会が抱える課題の克服を目指すこととしております。農業分野についても、いろいろと課題の克服を目指すということです。
  17ページでございますが、「新技術に期待される効果」ということで、少数の担い手が競争力のある農業を展開するには、新技術を農業分野に活用して担い手の負担軽減、安全確保、水利用の高度化などを図ることが必要でございます。一方、新技術の多くは、まだ研究段階、実証段階にございます。農家の皆様方の関心を高めていくために、その効果を積極的に発信していくことが必要と考えております。
  続いて18ページ、農業農村整備と技術開発の関係でございます。我が国では、古くから鉄器、また牛馬の力を導入して農地の拡大等を図ってまいりました。近世以降も、その時々の先端技術を取り入れる形で基盤整備を進めてきたという状況がございます。次世代に向けて、農業農村整備におきましては、進展著しい新技術を導入・応用する基盤を構築していく必要があると考えております。
  続いて19ページでございますが、基幹レベルとほ場レベルにおける新技術でございます。農業用水は、ダム、頭首工などから幹線水路、支線水路を通じてほ場まで送水されております。その間、土地改良区や農家などが重層的に役割分担しています。ただ、現在の管理においては、管理担当者の経験、また勘に頼るところがございます。
  続いて20ページでございます。そういった中で規模拡大を進める担い手のニーズに応えるために、スマートフォンなどによる遠方監視、自動化など、ほ場レベルでのICTの活用を進めていき、ほ場の水位、水温などを確認、給排水口の操作などを自動で行って水管理労力を軽減していく、また農産物の品質や収量の向上につなげていくということが必要と考えております。さらには、基幹水利施設とほ場レベルの一体的な水管理システムを構築して、ほ場レベルの水需要に応じたきめ細かな水利用を実現することが必要だと考えております。
  続いて21ページ、「地域特性に応じた新技術の開発導入」でございます。自動走行農機、またUAV、いわゆるドローンなどの新技術の多くは平地農業を主な対象として研究開発等が進められているということでございますが、一方で中山間地域を対象として、重労働である草刈り、また鳥獣被害、このような現場が抱える様々な課題に対応した研究開発も進められております。新技術のユーザーの方々、多様なニーズをお持ちですので、そういったニーズにしっかり応えていく、多様な新技術の研究開発が重要と考えております。また、その新技術を普及するに当たっては、農家が導入しやすいような低コストで身の丈に合った研究開発が必要と考えております。
  続いて22ページ、「開発段階にある新技術、また実用段階にある新技術」でございます。開発段階にある新技術につきましては、新技術に対応する仕様の検討などを通じて農業農村整備への導入・応用を図ることが重要でございます。一方、実用段階にある新技術につきましては、営農、施設の維持管理などに導入・応用するための技術などを体系化して技術指針などに反映させて普及を図ることが必要と考えております。
  続いて23ページ、ここから新技術の活用方策を説明いたします。まず初めに、いわゆる農業農村整備の施工時における新技術である情報化施工でございます。ICTを活用した情報化施工の導入によりまして、「測量」、「設計」、「施工」において省力化が可能となっております。これによりまして、技術者の不足を補って、現場の生産性向上が期待されます。情報化施工の推進に当たりましては、情報化施工の実態把握調査を行い、基準などの整備、研修会などを通じて普及促進を図ることが必要だと思います。またもう一つ、さらに情報化施工で得られた3次元データを自動走行農機等に活用していくなど、営農面への活用を図っていくことも必要と考えております。
  続いて24ページ、ストックマネジメントの高度化への活用でございます。これは骨太の方針でもテーマとなっております。農業水利施設の機能診断、機能保全技術などを高度化することによって、施設の維持管理の省力化・効率化を図ることが必要でございます。具体的にドローンなどのロボット、またICTを活用した機能診断などの技術開発を進めていくことが重要と考えております。
  続いて、防災情報の共有でございます。豪雨・地震などの施設の情報をリアルタイムで予測し、また表示する情報システムについて研究機関、施設管理者などと共同で研究開発、実用化を進めていく。そのようなことで関係者間の迅速な情報共有を図って、住民の早期退避、また破堤時の二次被害の防止とこういったものに役立てることが重要と考えております。
  26ページでございます。GISを活用した保全管理体制の構築でございまして、農業水利施設の持続的な保全管理を推進するために、事例の中で紹介しておりますが、モバイル端末を活用して農業水利施設に関する情報を可視化して、関係者間の情報共有を図って、皆様が一体となって保全管理体制の構築を図ることが重要と考えております。
  続いて27ページ、GIS活用による合意形成の促進でございまして、GISを活用することで情報が共有されるということです。そういう中でほ場整備事業の計画作りなどで地域の皆様の合意形成が促進されると期待されます。
  そして、最後に28ページ、「農業データ連携基盤」でございます。農業の課題を解決して担い手の皆様が農業関連データを使って生産性向上、また経営改善に挑戦できる環境を生み出すために、農業データ連携基盤を構築することとしております。農林水産省は、このデータ連携基盤に農地情報などを提供しておりまして、取組を後押ししているところでございます。
  続いて29ページ、第5章、2つ目の課題の説明でございます。
  30ページ、農村協働力を醸成する契機としての農業農村整備でございます。真中にポンチ絵がございますが、農村協働力の低下が見込まれる中で、農村協働力の深化を積極的に図ることが重要。農村内部の地縁的な内部結束型の農村協働力の充実。今後はさらに集落を越えた地域、都市の方々など、新たな社会的関係を導入した開かれた橋渡し型、結合型の農村協働力の拡大も必要と考えております。
  次に31ページ、農村協働力を醸成させる契機としての農業農村整備でございます。農村協働力は機能させるほど強固になるということです。機能させるには最初のきっかけが重要であり、農業農村整備はそのきっかけづくりの役割を果たし得ると考えております。また、基盤整備、また美しい農村環境の創造というものは、地域の方々に地域の魅力を再認識していただいて地域活動に取り組んでいただく契機になると考えております。
  32ページ、「条件不利地域における多様な主体が連携した地域づくり」でございます。こちらは、昨年現地調査の対象となりました岐阜県恵那市の事例でございます。条件に恵まれない地域においても、地域の課題に向き合う体制を整えることで農村協働力を深めながら農村振興を図っているという取組でございます。
  続いて33ページ、担い手以外の方々が引き続き住み続けるための方策でございます。 担い手に農地を集積させる一方で、担い手以外の方が農業にかかわる仕組みを作って、農村協働力の発揮に不可欠な人材が地域に関わり続ける受け皿を構築していくことが重要と考えております。
  続いて34ページ、こちらは防災活動でございます。防災活動は、非農家の方々も含めて多くの住民が関係しますので、防災体制の構築を通じて農村協働力の強化を図っていくということです。また、農村の防災・減災力の強化を図ることが必要です。
  35ページ、「農村への愛着の醸成」でございまして、農村に人が住み続けていくためには農業関係者以外にも地域の魅力を再認識してもらう、地域に愛着を持ってもらうことが必要と考えております。「美しい農村」の創出・維持がその愛着の醸成に重要な要素であると考えております。このため、農業農村整備においては景観配慮技術を用いながら地域の方々に愛され、誇りとされるような施設を整備していくことが必要と考えております。
  36ページ、地域のあゆみ・特徴というものを理解することは、地域への愛着を深めることに寄与すると考えております。こういったことから、農業水利施設の歴史、またその役割を若い世代に伝えていくことも重要と考えております。また、世界農業遺産や世界かんがい施設遺産などと連携して、あらゆる広報手法を用いて住民の方々の理解の促進を図ることも重要と考えております。
  続いて37ページ、「安全で人に優しい基盤整備」でございます。高齢化、また混住化の進行に伴いまして、ため池、水路などへの落下事故が課題となっております。このため、安全柵の設置、また安全教育などを組み合わせた対策を強化していく必要があると考えております。また、右下のポンチ絵をご覧いただきたいのですが、例えば排水機場は豪雨時には農地のみならず市街地などの排水も担っております。地域全体の安全を確保する役割を果たしているということでございます。こういった役割を地域の方々に広く発信していくことも重要と考えております。
  38ページ、「ユーザーフレンドリーな整備」でございます。農家の方々にも施設に愛着を持ってもらうためには、使いやすくて安全に使える施設を構築することが必要と考えております。このため、バリアフリー、またユニバーサルデザインにも配慮しながら、ユーザーフレンドリーな、すなわち人に優しい整備を推進していくことが重要と考えております。
  最後に第6章、まとめでございます。40ページをお願いいたします。こちらは第4章でご説明した1つ目の課題についてのまとめでございます。担い手政策の関係でございますが、まず初めに地域やユーザーのニーズに応じた多様な新技術の実証・普及でございます。新技術の多くは主に平地農業を対象として研究開発等が進められています。一方、中山間地域では労働力不足、また鳥獣被害の増加などの現場の課題に対応して研究開発が進められております。新技術のユーザーは多様なニーズを有しているということで、それにしっかり応えていくことが大事だということ。また、新技術を普及する際には、農家が導入しやすいように、低コストで身の丈に合った新技術の研究開発などが必要であるということでございます。最後に、国営事業などを通じて、新技術の現場実証を進めて、効果、課題を共有しながら普及を図っていくことが重要であるということでございます。
  もう一つ、スマート農業に対応した基盤整備としまして、自動走行農機などに対応した土地改良事業を推進するために仕様を検討し、マニュアル等を整備していくことが必要であるということでございます。また、ICTを活用して用水利用を効率化するということで、現場実証、普及を加速化することが重要であると考えております。また、データ連携基盤の構築も重要であります。さらに、新技術の研究開発は、それぞれ個別に進められているということで、そういった技術を最大限に活かすインフラ整備をいかに進めるか。また、その新技術を生産から消費までのフードバリューチェーンにどう組み込んでいくか。また、新技術からの情報をいかに統合していくか、活用していくかを検討する必要があると考えております。
  続いて41ページ、第5章で説明した2つ目の課題、農村社会の構築についてのまとめでございます。まず1つ目が「農村協働力を醸成する契機としての農業農村整備の役割」。地縁的な農村協働力の充実と集落を越えた地域の方々などとの開かれた農村協働力の拡大が必要であるということ。農村協働力を機能させるには、最初のきっかけが重要であり、農業農村整備はその役割を果たし得ること。担い手に農地を集積する一方で、担い手以外の方々が農業に関われる仕組みをつくって、地域にかかわり続ける受け皿を構築することが重要であるということ。
  続きまして、「農村への愛着の醸成」としまして、農村に人が住み続けていくには、農業に関わっていない方に地域の魅力を再認識してもらって、愛着を持ってもらうことが必要であるということ。そのためには景観配慮技術を用いて愛され、誇りとなる施設の整備が重要だということでございます。また、地域の魅力、また施設の歴史、役割を若い世代に伝えていくことも重要であると考えております。
  最後に、「安全で人に優しい農業農村整備」として安全柵の設置などの対策をしっかり強化していくことが必要であるということ。また、農家にとってユーザーフレンドリーな施設整備の推進が重要であると考えております。
  そして、最後42ページでございますが、こちらは「横断的留意事項」といたしまして2点、農業・農村に求められる人材、そして技術の継承を挙げております。まず最初の「次世代の農業・農村に求められる人材」としまして、水管理、営農等のノウハウを知る担い手。また、担い手を支える地域資源保全組織。技術的サポートができる技術者。また、地域を総合的にサポートするコーディネーター、またプランナー。農村以外の多様な主体と橋渡しをする方々。こういった方々を確保することが重要であるということ。
  もう一つ、「技術の継承」といたしまして、用水の配水管理など、管理者の経験に基づく水利施設の操作方法の技術などについて後継者をしっかり確保して確実に継承していくことが必要であるということでございます。
  以上、長くなりましたが、説明を終わります。ありがとうございました。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  確認ですが、昨年度に委員の皆様からいただいた意見を中心に取りまとめて、その案を事務局で取りまとめていただいたということだったと思います。資料2-1は文章、今ご説明いただいた資料2-2が、ポイントを整理したものであります。これは多分今日ご意見をいただいて、部会の中間取りまとめ、今期の中間取りまとめというような形の資料になると思います。そういう位置付けをご認識いただいて、ご意見いただきたいと思います。
  独立して扱われる資料になる可能性があるので、不足や誤解がないか、を中心にご意見いただけたらいいと思います。余分な注文になったかもしれませんが、そのようなことで2時35分ぐらいまでの非常に限られた時間ですが、ご意見、ご質問を受けていきたいと思います。どなたからでも、またどこからでも結構です。いかがでしょうか。
  では、渡辺委員、よろしくお願いします。

渡辺臨時委員
  新潟県土連の渡辺と申します。
  地域の農業生産基盤の下支えをする土地改良区の運営支援の仕事をしている立場から少し意見を述べさせていただきたいと思います。
  1つは、平成30年度の土地改良法の改正で、土地改良区の体制・組織の在り方について1つの方向性を出されたことについては大変ありがたく思っています。ただし、地域の土地改良区の実態を見ますと、土地改良区そのものの体制を維持していくこと自体が相当厳しい状況にあると思っています。先ほどの農業構造のご説明の中で土地持ち非農家が増えていっているということで、組合員になるべき人が農業に対する意識が低くなってきて、土地改良区の構成員であるということすらわからない方が増えてきています。土地改良区の事業運営は、組合員の賦課金という収入で賄っていますが、その賦課金を集めることに今相当エネルギーを要している現状にあるということで、ぜひ今後の土地改良区の事業運営に関する課題を補足していただけるとありがたいということです。
  それからもう1点は、42ページに次世代に求められる人材ということでいくつか例示があるんですが、地方の大学、私の出身大学を含めて、大学のいわゆる講座の中で農業・農村を学ぶ学問が減ってきているような気がいたします。例えば「土地改良」という言葉を直接使わないにしても、もう少し農業・農村を支えるような人材を輩出する学問分野が継承されていってほしいなというふうに感じております。
  大学だけではなくて、農業高校も農業生産部分には大分力が入っているようですが、いわゆる土地改良という下支えをするような分野が減ってきておりまして、私どもも人材確保に苦慮しているという実態があるものですから、その辺を含めて少しご議論をいただければなと思い提案をさせていただきます。
以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。委員の方から少しご意見をいただいてから事務局からご回答をいただくようにしたいと思います。
  では、長谷川委員、どうぞよろしくお願いします。

長谷川臨時委員
  少し漠然とした感想めいたところもありますが、生産基盤、担い手政策の推進に資する生産基盤のあり方として、新しい新技術を積極的に活用していくという、今まで議論してきたことは、非常に重要なことだと思っています。
  ただ、ここで少し考えておかなければいけないと思うのが、この種の新しい技術というのは、動きがものすごく激しくて、ほんの数年たったら状況がもうがらっと変わってしまうことが往々にしてあるという傾向が強いと思います。
  そのような中でいかに新しい技術を徹底的に活用していくかを考えたときに、もちろん、日本の農業ですから、日本の農業に資する技術を開発していくということは極めて重要なわけですけれども、それと同時に、では海外でどういう成功事例があるのか。そこについて日本にも積極的にうまく適用できるようなものがあるのであれば、それをうまく導入していくという視点がどうしても必要になってくるのではないかと思います。
  その辺のことを考えながら新技術を活用していけばいいと思います。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、もう一方伺いましょうか。柴田委員、お願いいたします。

柴田臨時委員 
ありがとうございます。
  まずは、データの確認から、あと私の質問というか、意見を申し上げたいのですが、農家戸数なんですけれども、資料2-1の3ページでは、希望で5ha以上の農家が6万2,000、まあ6万戸。それから0.3~1.5ha未満の農家が30万1,000戸という数字があります。それと資料2-2の4ページです。4つあるグラフのうちの左の上の部分が、これは規模に応じた農家数です。これで見ると、5ha以上の農家が6万戸としても、1.5ha未満と、あと5ha未満は、これは5ha未満も入れますと、それぞれ80~90万あって、全体で200万近くあると、この数字からは読み取れますが、まずこの確認を1つお願いしたいのです。

石井計画調整室長
  今のは、4ページの資料の右上のほうでしょうか。

柴田臨時委員
  左。これの赤いグラフに、80万戸ぐらいありますね。

石井計画調整室長
  そうですね、自給的農家です。

柴田臨時委員
  その次の5ha未満で、これ90万戸ぐらいですね。これは170。そしてもう一つ入れると、200万ぐらいあると思いますが。
  何が言いたいかといいますと、担い手農家の数というのは、5ha以上の数は6万戸ぐらいであって、200万近くは中小規模の農家で成り立っているというような構図が見えてきます。全体の報告書のまとめ方を見ると、どうもICTの活用も含めて平地の担い手農家の生産性や収益性をいかに上げていくのかというようなトーンが強いと思います。
  それで、言われている中山間地の中小農家、ここについても農村協働力等で強調はされていますが、全体の状況として担い手農家のウエートがこれから高まってくるにしても、面積の関係でいくと、圧倒的に中山間地の中小農家の規模、面積等が多い形になる中で、農村協働力というのは、果たしてこの延長線上で高めていける、醸成できるのか、創生していくことができるのかという疑問を抱きます。
  というのは、担い手、農業経営というのは2つの性格があって、1つは私的な収益性を求めていくという収益単位としての性格と、それから収益性を求めつつも、多数存在することによって社会的な生産単位としての性格と2つあると思います。農家の数、面積から言うと、圧倒的に社会的な生産単位としての性格が強いと思います。この中で農村協働力を求めるといっても、いわゆる担い手農家にICTを活用して生産性を高めて収益性を高めていくという、その方向が果たして農村協働力の醸成につながるのかという疑問ですが、やはり共通して何か参加できるようなビジネス的なものが農村内に、これは担い手農家、土地持ち非農家、自給的農家、その地域住民含めた共通単位が、共通的な事業みたいなものが、昨年度の恵那のようなところで皆が事業に参加して収益を上げていくという、そういうものがある程度必要というのが1つ。
  それから、農村協働力といった場合には、適正規模というのはまずあるのか。要するに、2,000戸とか3,000戸ぐらいの村であれば、危機感から農村協働力のような、そういうふうな昔の協働意識というものが強まる可能性が高いと思います。中途半端に何万人とかというような地域ですと、なかなか難しい気がします。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  先ほどのデータについては、もし今確認できるのでしたらしていただき、その間にもう一方ご意見を伺います。それぞれの委員からとくにご指摘なければ、今回の報告の記述のどこに該当するかということを踏まえて事務局からご回答いただけたらいいと思いますが、時間的に難しいかもしれません。それを申し上げておいて、もう一方、では松田委員伺います。

松田臨時委員
  「多様な主体が住み続ける農村社会の構築」、やはり農村協働力と直結するテーマであろうと思います。ほ場整備を契機に、担い手に集約した結果として、それを契機に農業から離れるという現実もあるわけです。先ほどのご発言と重なりますが、そこの段階でいかに非農家にならないような手だてを講ずるほ場整備のありようがあるのかということの議論がこれからは必要ではないだろうかというふうに思っています。
  といいますのも、今完全に農村地域は過疎化です。それに歯どめがかからない状況にある中において、必然的に農村協働力は小さくなっていっているように思います。維持するためには、いかに農村に住み続けてもらえるかというところが非常に大きいテーマであろうと思いますので、ほ場整備を契機にして担い手の集約で農業で生計を立てる一定の者を確保することは非常に重要なことではありますが、と同時に、そこに住み続けるためのほ場整備のありよう、何か別の視点での組み合わせといいますか、そこも将来においては非常に重要になるように思います。その点を今回の第5章の中に何らかの形で─幸い秋田県の事例を載せてもらっていますが、園芸メガ団地という切り口だけではない切り口も多分まだあろうと思いますので、何らかの形でそこの記述を触れておくことが将来に向けて大切ではないかという意見です。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  今の4委員のご指摘について事務局のほうでご回答、あるいはご説明いただくことがあればお願いいたします。
  私の理解ですが、渡辺委員、それから柴田委員、松田委員、それぞれご発言のポイントは、平地の大規模農家のICT活用という大きな柱とともに、そもそもの農村協働力を維持したり、改良区の組織を維持したりすることの両方が必要だということだと伺いました。また、それぞれいろいろなところに書いてあると思いますが、それをどのようにまとめて書くか、わかりやすく書くか、というご指摘だったと思います。事務局、よろしくお願いいたします。

石井計画調整室長
  4人の委員からご指摘いただきました。私たちの整理が不十分だったのかもしれません。新技術が平地農業、大規模な担い手に焦点を当てたものであると受け止められたのかもしれません。資料の21ページ、「地域特性に応じた新技術の開発導入」では、平地で自動走行農機などの新技術がいろいろと検討されていますが、一方で中山間地域を対象とした新技術もございます。
前回の部会でも、平地だけではなく、中山間地域を対象とした新技術もあり、そういうものにもしっかり配慮して整理すべきというご指摘もあったと認識しております。平地でも中山間地域でも、テーマに応じて労働力不足、また鳥獣被害の増加への対策などのテーマに即した新技術についてもしっかり対応していかなければならないと考えております。平地に焦点が当たり過ぎているというご指摘であれば、私たちの整理や書きぶりが不十分なのだろうと思います。
  また、複数の委員からご指摘いただきましたが、担い手に農地を集約していく一方で農地を手放す方、離農される、土地持ち非農家になられる方が担い手と同じ集落の中に出てくることにつきまして、その方々に引き続き農村に、集落に住み続けていただくにはどうするかということだと思います。これについては、委員の皆様が本当におっしゃるとおりであり、私たちもしっかり考えていかなければならない課題だと受け止めております。
  1つの考え方としては、担い手に農地を集約していくことにより、農業から離れていく方も出てくるということであり、そのような方々に、例えば、現場を見ずして無理な話をしていると思われるかもしれませんが、担い手の方々と一緒になって6次産業化、すなわち、農産物を地域で加工して販売していくといった6次産業化に余った労働力を振り向けていくことができないか。また、高収益作物の導入もあちらこちらで積極的に進められております。米もしくは畑作以外の高収益作物を育てるには多くの労働力が必要です。このように地域の中で担い手が担う農業と、担い手以外の方々が担っていく農業、また担い手以外の方々が担っていく6次産業化といったものの中で役割を分担していただき、うまく集落や地域の中で、農業の最前線から離れていく方がそこに住み続けていく理由をしっかりと確保していかなければならないのではないかと考えます。
  また、私は以前、島根県で仕事をした経験がございます。島根県では集落営農が非常に盛んです。島根県はその多くが中山間地域でございますので、1人の担い手に農地を集めていくということは、現実的ではありません。1人で農業をやっていく方がなかなか現れません。そこで、集落の方々が自分の農地を差し出して1つの集落組織を作る。その中で60代の方々が中心になってその地域の農業を引っ張っていくということです。また、その方々のご兄弟もしくは子供がまだ若くして地域に残っていますので、そのような方が1人で担い手になるのではなくて、複数でその地域の農業を担っていくという形で、集落営農がうまく機能しています。そのようなことも参考になるのではないかと考えます。
  今申し上げたようなことを、第5章のところで、どのように反映させるか、事務局として検討させていただきたいと考えます。
  また、渡辺委員からございましたけれども、土地改良区の基盤が非常に脆弱になってきているということです。その背景として、土地持ち非農家の方が離農され、土地改良区の組合員であるという意識がどんどん薄れてきているということがあるということです。そのような方々を前提とした中で、どのように土地改良区を運営していくか。これは非常に大変なことであることは、私たちも認識しているところでございます。これは今後しっかり議論していかなければならないと思います。土地改良区の体制をどのように強化していくかということは大きな課題であって、我々としてもしっかり受け止めていきたいと考えております。今回の資料にどのように位置付けていくか、考えさせていただきたいと思います。
  もう1つ、渡辺委員からございました人材育成の観点ですが、大学、高校でしっかり人材輩出の基盤を作っていくべきであるということでした。土地改良を扱う講座をしっかり残していくこと、継承していくことが必要だということについては、私たちも同じ考えでございます。最後の42ページにこの点をどう書き込んでいけるか。これも事務局で検討させていただきたいと思います。
  そして、順番が前後して恐縮ですが、長谷川委員からのご意見でございます。新技術の導入に関して、新技術のうちどの技術が最終的に選ばれていくか、残っていくかということをしっかり見極めていかなければならないと考えております。私たちとしてもいろいろな技術を勉強して、農業農村整備で活用できないか検討していく中で、使えるもの、使えないものを取捨選択していくことが必要だと思います。また、日本の技術以外に海外の技術もしっかり勉強して、海外の技術を取り入れることが有益かどうかということもしっかり見極めていきたいとに考えております。
  以上、雑駁ではございますけれども、回答とさせていただきます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。後の扱いについては、また最後に改めてご相談したいと思います。
  よろしいでしょうか。
  では、引き続き安藤委員お願いします。

安藤臨時委員
  ありがとうございました。
  私からは2点あります。1つ目が社会情勢の変化を踏まえたということで、農業・農村構造の変化を整理されていますが、社会情勢の変化をもう少し踏み込んでもいいと思います。何に注目する必要があるかということですが、人口減少社会について、もう少し厳しく認識したほうがいいと思っております。
  農村地域の人口はもっと減ってくるでしょうし、十分な数の住民を確保することができなくなります。そのことを前提に考えなければいけないと思っております。そのことは次の(3)の「農業農村整備の新たなフロンティア」に関わってくる内容かと思います。これまでの延長線上に現状維持をできるような仕組みというよりも、大きく何か飛躍が生じる必要性があるだろうということなのですが、それを言うのであれば、社会情勢の変化については、もう少し踏み込む必要があると思っています。
  人口減少社会という視点から、「農村地域では本当にこれぐらいの人口になってしまいますよ。この人数でこれだけの農地を維持・管理することができますか」、こういう問いかけがあってもいいと思います。そういうところから検討していくほうが、より切迫感があるものができると思っております。
  特に人口減少社会で一番大きい問題は、中山間地域の資源管理をどうするかということになるかと思います。つまり、集落協定を締結して、村で守っていくという仕組みがほころび始めているというのが現状だと認識しています。つまり、村が村として機能し得なくなってくるぐらい人が減ってきている。一定程度の頭数が確保できなくなっている村が増えてきているということです。集落営農も中山間地域では随分作られてきておりますし、その法人化も進んでいますが、後継者が確保できずに次につながらないという問題に直面しています。法人化したとしてもそれで終わりではないということです。これは経営局の問題かと思いますが、そうした問題状況があります。そうすると、頭数がそろえられなくても地域資源管理ができるような仕組み、そのための技術開発が必要になってくるということになるかと思います。
  村がなくても、もちろん村はあったほうがいいと私は考えていますが、村がなくてもできるような、実現可能な地域資源管理のあり方とそのための基盤整備、あるいは農村整備を考えていく必要があるのではないかというのが私の1点目のコメントになります。
  それから2点目ですが、これは土地持ち非農家の増加という問題として議論されていたと思います。これはもう少し言い方を変えると、担い手への農地集積が進んだ地域でどのような課題が生じているかということになります。担い手への農地集積率が8割を超えるような地域がかなり出てきているのは事実です。全体として見ると担い手への農地集積率はまだ5割ですが、そういう地域も出てきています。そういうところで何が問題となっているかです。そうした地域の大規模な担い手の農家の方々に話を伺いますと、畦草刈りが大変な負担になっていて、これを何とかしてほしいということでした。全くお金を生まない作業を夏の暑い時期にやらなければいけないのは非常に大変だということです。これについて何らかの技術革新があるとありがたいという話をよく聞きます。
  それから、これは農村協働力の限界と言ったほうがいいのかもしれませんが、地域住民の農業に対する無理解が非常に大きな問題になっているということのようです。農作業をすれば農道に泥が落ちますが、それに対する住民からのクレームが非常に多く、これが非常に負担になっているということです。それから犬の散歩ができないと怒られるため防除ができないといった状況が生まれているようです。
  あるいは農道に車を停めておいて草を刈っていたところ、駐車に対するクレームが警察に寄せられて、駐車禁止で持っていかれてしまったという笑えないような話もありました。そういう話を伺っていると、担い手への農地集積が進んだ地域でどのように農村協働力、多分私は取り戻すことはほとんど不可能だという感じがいたします。農村協働力をイメージしているのは、これは先ほど柴田委員からのご発言にありましたように、それほど人数が多くない農村集落を多分イメージされているのだと思います。都市近郊の水田地帯で大規模経営が展開しているようなところでは、そうしたものはなかなかうまく機能しなくなってきているのではないかと思います。しかし、そうした地域ほど、まさに土地持ち非農家が大量に形成されて担い手への農地集積が進んでいる。だが、そういうところの担い手の方々は、そうした問題に悩まされているということなのです。これを解決するための技術革新というか、何らかの対策が講じられるといいと思うのですが、現実問題としては難しいかもしれません。
  両極端の話をしたかと思います。中山間地域では地域資源管理を行うだけの頭数がいないなかで、これまでのように集落に依拠できないとすれば、どうしましょうかという論点と、もう1つは、構造再編が完全に終了している地域で、農業に対する理解を失った圧倒的多数の土地持ち非農家に囲まれた担い手の負担をどうやって減らすかという論点です。この2つの問題が、中山間地域と都市近郊ではより極端な形で顕在化しているということです。そのことをもう少し強烈に意識的に表現し、それを(3)の新たなフロンティアにつなげていくといった書き方をしてはどうでしょうか。
  以上、私からのコメントになります。

渡邉部会長
  コメント、ご提案もいただきました。
  では、森委員伺います。

森臨時委員
北海道から来ておりますので、皆様と違う視点で申し上げます。13ページにあります「担い手政策の推進に資する生産基盤の在り方」のような事例を今年視察でたくさん見て、現地の方々にお話を伺いましたので、述べさせていただきたいと思います。
  国営基盤整備の大区画化による大型ほ場で、1枚の田んぼが2haになっているような農家で、いずれも20代の担い手が戻ってきてくれて、初め農業を継ぐつもりはなかったけれどもやる気になったという大変いい事例がありました。中山間地域のご苦労の話とはまた別の話ですが、実際にこういうことで農地を減らさないで済んでいる地域がありますので、聞いていただけたらと思います。
  地下かんがいシステムを使い、水管理が非常に楽になったという声もたくさん聞きました。乾田直播をやっているところが多い、北海道の空知地方の平野部の農業地帯での話ですが、そのかんがいシステムが入ったおかげで、高収益作物に一部転換できて、経営が非常によくなり、1度違う仕事についていた子供が戻ってきたという事例を続けて2件聞きました。13ページを見たときに、実は、そんなにうまくいくものだろうかと感じていました。実際にそういう声を聞き、効果があるとよくわかりました。生産性が上がり、収益も上がり、そして新しい方々がこれだったらやりたいという空気ができてきているということは非常にいいことです。ICTの活用により、労働力を少なくできることによって、ほかに余裕ができる若者が増えて、農業を楽しめるようになったという声を聞けたのは非常によかったです。現在23haぐらいやっている水田農家ですが、もっと広げたいぐらいだというお話も伺うことができました。
  GPSを使った生産効率の良い大型トラクターが入れることによって、収益性の高い農業ができることになり、確実に強い農業に向けて動いているところもあることを、もう少しアピールしていただけたらと思います。
  というのは、以前も話したかもしれませんが、ICTと、無人のトラクター等を言うときに、人がいなくてもいいような農業に感じてしまいます。農村に人が住み続けるためにこういうICT化した農業をやっているんだという、一番大切なことが案外伝わらないような気がしています。事例を発信するときに、この大切さを伝えていただきたいと思います。
  一方で、これも北海道の中ですが、山間部にある排水機場などを見学したときのことです。地域の人たちに「農業水利施設の大切さをわかるような活動をしていますか」と聞きましたら、管理しているのは自治体の第三セクターが多いのですが、熊が出るから、このあたりを見学させることができないと。地域の住民や子供たちに、農業水利施設の役割を知らせる機会がない現状が見えました。農作物の被害とはまた別の鳥獣害が、管理の作業のしづらさを招いていることもありましたし、その地域住民に農業の基盤整備をする大切さを伝える機会を失っているという問題も見まして、大変考えるところがありました。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、お二人順番に伺います。では、柚木委員お願いします。

柚木委員
  ありがとうございます。
  資料のほうの14ページのところですが、先ほどから議論になっています農村協働力の関係であります。
  2つ目の丸のところに地縁的な農村協働力の充実という話と、なかなかそういうことが難しくて、集落を越えて、開かれた農村協働力を発揮することが記述されているわけですが、先ほどからお話がありますように、農村現場へ行きますと、地縁的な農村協働力の体制が非常に難しくなってきているというのが実態だと思っています。
  では、開かれた農村協働力はどうするんだと。その地域に住んでいる農業者以外の方々でというのは当然あるとは思いますが、今回の土地改良法の改正でもそうですが、所有者から耕作者に組合員資格も移していくという中で、一方で准組合員の制度で所有者の方々にも入ってもらうと。その所有者の方々がその地域にもう住んでいない。いわゆる不在村の農地所有者がどんどん増えてくる。これは集落を越えてというよりも、県を越えて東京都や大阪のほうにいらっしゃるという状態が、かなりの地域で増えてくるというふうに思っております。そういう方々に出身の地域、農地を持っている地域とのつながりをつけていただくということから言えば、今回の土地改良区の准組合員の制度で、そこに農地を持っていらっしゃる方、ただ、居住しているのは全然別のところだという方々にも准組合員になっていただくことも進めていかなければならないのではないかなというふうに個人的には思うわけであります。開かれた農村協働力という観点に立ったときに、そういう視点が必要ではないかなというのが1点であります。
  それからもう一つは、農業生産からどんどん撤退する地域が増えてきています。これは鳥獣害等もあってなっている。今回の災害もそうでありますが、そういうところにため池等があるわけです。従来はその近くに水田があって、そのため池が利用されていた。当然それを管理する方々もその地域に住んでいらっしゃった。しかし、その水田が耕作放棄なり生産しないとなれば、当然そのため池は誰も管理も、あまり気にもかけなくなるというようなため池も大分あるのではないかと思うわけであります。今回、その辺は全てチェックをされるということなので、チェックした後、ではそれをどういうふうに管理をしていくのか。災害を想定すると、ため池を潰していくのか。それとも残すとすれば、どういう形で残していくのかといったことも含めて、新しい意味での農業・農村の基盤を考える上では必要なことになってくるのではないかと思っております。
  これは次の新たなフロンティアの検討課題でもあろうかと思いますが、今回のこの部分のおまとめの中では、我々これまで意見等を述べさせていただいたものもかなり具体的にまとめていただいておりますので、この内容としては議論の内容が相当入っているとは思うわけでありますが、今申し上げたような視点も次につなげる議論としてはあっていいのではないかと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、続いて染谷委員、お願いいたします。

染谷委員
  農業をしていて、よく聞きますが、基幹的農業従事者は65歳以上が66.4%と言われています。ということは3分の2がもう65歳以上。そうしたら、もう10年、15年たったら、その3分の2は引退してしまいます。そういう中で、これから農業を支えていく若い人たちが、もっと増えていかなければ今の食料の供給はできなくなるのではないかと心配するところもあります。これは人口の減少等様々な問題があります。そういう中で農業を続けていますが、農場で農地を借りている農家が300戸を超えています。そうしますと、300戸の農家が米作りを辞めたその農場で米作りをしています。それでは、その300戸が農村協働力ということで、水田の維持に協力してくれているのかというと、全くありません。これは自分たちでやるしかありません。今まで皆でやってきたものがどんどん変わってきてしまった。過去においていいことは本当は残していきたかったのですが、それがなくなってしまった。
また1つは、農地にはいろいろな外敵もあります。先ほどからありますように鳥獣害。一番自分が危惧しているのは、イノシシが周辺で出始めていることです。そうすると、イノシシどう自分たちで防いだらいいのか。そういうことはまだまだできていません。柏市の隣に印西市がありますが、そこには既にイノシシが出て、田んぼでもどこでも悪さをしている。筑波山によく行きますが、筑波山でも、たまたま水路が土で埋まっていて、その法面がかなり崩れていたので、「ここはどうしたんですか」近くの人に聞きましたら、「これは全部イノシシがやっているんだよ」。要するに、それだけいろいろなところでイノシシの害が出ている。そういうものをこれから少ない農家数で守ることができるのかどうかを心配しています。自分たちでここで米を作る、畑を耕す、それだけではなくて、いろいろな形で鳥獣から守っていかなければならない、やり切れません。その辺のところもぜひ考えていただけたらと思います。
  染谷農場では、今まで全然農業をやっていない者が6~7人います。そういう中で米を作っています。厳しいことも、過去から伝わるいいこともたくさんありますが、そういうことも教えながら育てていかなくてはいけません。これからは農業者を育てていくことが一番大事な時期ではないかと感じています。
  先ほども言いましたように、自分たちは、これから何年もできない。だからこそ、多くの数の若い人たちが農業に入ってきてもらわなければなりません。先ほど北海道では若い人が戻ってきているってうれしい報告もありましたが、そういうことが全国各地で起こるようにお願いしたいと思います。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  複数の委員からは、次の議題とも関わる内容のご指摘もいただいておりますけれども、今の4人の方のご意見に対して事務局からご回答いただくことがあれば、お願いします。

石井計画調整室長
  ありがとうございます。
  まず安藤委員からのご指摘です。1点目、地域や集落に人が本当にいなくなるということを真剣に受け止めて、今後の方向性を考えていくべきであるということでございました。委員がおっしゃるとおりだと思います。この人口減少社会というのが一体どういうものなのかということを真剣に考えて、今後の農業・農村を考えていかなければならないと思っております。このことは、委員からもお話しいただきましたが、後ほどご説明させていただく30年度の審議の中で、まさに農業農村整備のフロンティアの審議の中でしっかり検討できればと考えております。
  そして2点目ですが、既に担い手に農地が8割程度集積した地域も出てきているということです。全国だと平均して5割だということで、ほかの委員からも同じようなご指摘をいただきましたが、大規模な担い手が自力で畦畔の草刈りなどをやらなければならない。これをどうするかということでございます。1つは、今の状況として難しい地域もあるかもしれませんが、多面的機能支払制度の活用ができないだろうかと思います。地域の中で農家を中心として、周辺で農地を持っていらっしゃる方々、また地域の方々が協力して地域の農地や農業用水を守っていくといった取組ができないかというのが1つでございます。
  もう1つ、21ページで紹介させていただいていますが、自動草刈り機が使えないかということです。今は農家の方々がカッターで草刈りをしていらっしゃいますが、これを自動化できないかということです。これは平場のほ場の畦畔、また中山間地域の傾斜のある法、いずれにおいても有効だと思います。農家の方々にとって一番の重労働が草刈りであるというのはよくお聞きする話でございます。これを何とか機械化、自動化できないかということが新技術の導入における大きな課題だろうと考えます。
  続いてもう1つが農村協働力の話です。住民の方々が担い手の方々の営農を理解しない、いろいろとクレームが来て自由に営農ができないということでございます。これも言うは易し、行うは難しのところがあるのかもしれませんが、集落または行政などを巻き込んで担い手の方々をいろいろと周りが支援していくということができないか。そのような担い手の営農に対して温かい目でサポートすることも含めて、地域として担い手をサポートする仕組みができないだろうかと思います。確かに農村協働力というのは資料の中にもございますが、低下することが今後見込まれるところですが、それを再度立て直していくにはどうしていくべきかということ、これも30年度のフロンティアの中でご議論いただければと思います。私たちとしても重要な課題だと考えております。
  続いて、森委員からエールをいただきました。ありがとうございます。その中で我々の施策である大規模化やICT導入を進めていくことが、その地域で営農する人がしっかりそこで住み続けていくために役立っているところもあるというお話だったと思います。他方、委員からご指摘いただきましたのは、私たちの情報発信の仕方です。ポイントをしっかり押さえた情報発信をしていくべきだということです。このことについてはしっかり考えていきたいと思います。重要なご指摘、ありがとうございます。
  続いて柚木委員からいただきました話の中で、もともと農家の方で土地は持っているけれども、外部に出られて不在地主になっている方もいらっしゃるということです。地域と地域から外に出られた方のつながりをもう一度強化していかなければならないということです。このようなことも「開かれた農村協働力」というキーワードの中で取り組んでいくべきではないかといったご指摘ではなかったかと思います。この開かれた農村協働力について、ここで使われている事例といたしましては、地域の中の営農活動や地域活動を外部の方々と協力して、より大きなもの、より強いものにしていくという文脈で書かれているものでございます。今お話しいただきました地域から出ていかれた方々とのつながりをもう一度構築していくことも重要な視点だと思います。このようなことを第5章、または、最後のまとめのところでどう反映できるか検討させていただきたいと思います。
  ため池の話もいただきました。水田が耕作されなくなるとため池も十分管理されなくなる。これをどうするかというのは、現在、まさに西日本豪雨を受けて全国的な課題となっております。これにつきましては、先ほど室本局長の挨拶の中でありましたが、現在、ため池の対策検討チームを構築して、ため池の安全確保のために何をすべきかということを農水省として検討しているところでございます。その結果について、いずれまたご報告できればと考えます。
  続いて、染谷委員からのご意見は、ほかの委員とも重なる部分があろうかと思います。中心となる担い手以外の農地の出し手の方々が担い手の方々の営農活動になかなか協力してくれないということです。農業をしたことがない従業員の方を含めて自分の法人組織で何とか対応されているということだと思います。これについても、言うは易しの話でしょうが、多面的機能支払制度を地域で取り入れて、皆で農地や農業水利施設を管理していくのは難しい状況なのだろうと思います。そういうところに私たち我々どのように対応していけるかということについては、現在答えを持ち合わせておりませんが、今後の検討の課題とさせていただければと思います。
  いずれにしましても、担い手に農地を集約するのは私たちの政策でございます。その集めた農地を持続的に利用できるようにするためには、どのように維持管理したらいいかということは、当然併せて考えなければいけないと思いますので、このことについても私たちの課題とさせていただければと思っております。
  以上、事務局からの回答とさせていただきます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  実はこの事項の審議の予定の時間は既に超過しているのですが、大事なポイントですので進め方を整理させていただきたいと思います。先ほども申し上げましたように、この1点目は、昨年度に議論した2つの柱についてまとめたもので、それは前回の土地改良長期計画の議論の中から出てきたことで、ICTを活用した基盤整備と、それから農村協働力です。それについて議論しましたが、昨年度の議論の中でも、この2つの柱だけではきちんと全部をカバーできないというご意見は既にあったところで、今日も改めてそのご意見が出てきていることかと思います。ですが、ここでは、昨年度の議論を中心に、この2点について今年度においてまとめておきたいということです。
  それで、すでに多くのご意見をいただいたので、事務局でも検討されるということですが、まずはそれを中心に修文しまして取りまとめ、昨年度のまとめとすることで進めたいと思います。そういう進め方でよろしいでしょうか。つきましては、ご意見いただいたところについての修正を事務局に提案いただいて、よろしければ最後の取りまとめは私にご一任いただきたいと思います。
  そのプロセスで、個別にご指摘いただいた委員とは、さらに個別にご相談いただくということにしたいと思います。既に安藤委員や柚木委員からもご指摘ありましたが、ではそれを踏まえてもう少し広く展開するにはどうしたらいいかというのが次の議題です。そのご説明をいただいた上で全般的な議論について、これまでご意見いただいていない方に先ほどのまとめも含めてご意見いただくことにしたいと思います。このような審議の進め方にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  では、そのようにさせていただきます。
  それでは、一応議題としては次に移ることにさせていただき、「農業農村整備の新たなフロンティア」について、まず事務局からご説明ください。

石井計画調整室長
  それでは、資料3、農業農村整備の新たなフロンティアでございます。
  3ページに横長のポンチ絵がついておりますので、それをご覧いただきながら話をお聞きいただければと思います。
  まず、審議の目的でございますが、ポンチ絵の左側のほうに「農業・農村を巡る状況」として、それぞれ「農業」、「農村」、「国土」、また「人(価値観の変化)」を整理させていただいております。
  そしてもう1つ、ポンチ絵の下側でございますが、「政府全体の動き」として、先ほども紹介させていただきましたが、骨太の方針、未来投資戦略を初めとして、国土強靱化、農林水産業・地域の活力創造プラン、また一番右には世界的に取り組まれているSDGs、持続可能な開発目標なども記載させていただいております。
  こういった状況を踏まえて、真ん中のあたりをご覧いただきたいのですが、「AI」、また「IoT」などの言葉に代表されますが、新技術の進展は非常に著しいものがございます。政府は未来投資戦略でSociety5.0を提唱しておりまして、農業分野においてはスマート農業を推進するということです。
  また、農業生産法人などの大規模農家の台頭が非常に目覚ましく、高収益作物の導入など新しい農業が各地で展開しています。さらに、田園回帰などの農業・農村に対する国民の価値観もいい意味で大きく変化しているというふうに受け止めております。
  一方で、農村は激減する人口、超高齢化、頻発化・激甚化する災害、深刻な鳥獣被害など、課題が山積しています。
  こういった形で農業・農村を巡る状況は、ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも大きく変化しているということでございまして、こういったいわば新しい時代が到来する中、目指すべき農業・農村像というのはどういうものなのか、また、その農業・農村像を実現するために農業農村整備が果たすべき役割は何か。この果たすべき役割を「農業農村整備の新たなフロンティア」と位置付けたいと思いますが、この役割について農村の多様性を考慮しながらご審議いただきたいと考えております。
  審議の進め方につきましては、まず新しい時代の到来に関しまして、新技術の著しい進展、新しい農業の展開、課題が山積する農村などについて、それぞれの内容を調査、ご議論いただきたいと考えております。また、必要に応じてそれぞれの事項に関する専門家の方を部会にお招きして議論を深められればと考えております。
  こういった議論を踏まえ、新しい時代が到来する中での目指すべき農業・農村像を明らかにして、農業農村整備が果たすべき役割、いわゆる新たなフロンティアをご審議いただきたいと考えております。
  そして、その審議を通じて得られました農業農村整備が果たすべき役割を新しい時代が到来する中での我々農業農村整備の課題と位置付けて、その内容を最終的に整理させていただきたいと考えております。
    雑駁でございますが、審議の進め方については以上でございます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  今のご説明のように、昨年度までの議論を踏まえて、今日も既に話題になったことを取り込んだ形で議論の方向性の案をお示しいただいたということだと思います。
  これから皆様に、先ほど特に発言いただいていない方を中心にご発言いただきたいと思います。このままでいくと、どうしても終了予定時刻の3時には終わりそうになくて、15分少々超過して審議いただくことになろうかと思いますが、そのようにさせていただいてもよろしいでしょうか。ご迷惑をおかけするかもしれません。また、ご発言もなるべく簡潔にお願いしたいと思います。
  それでは、先ほどのことを含めてでも結構ですので、委員の方に、今のご説明に対してご意見、ご質問いただきたいと思います。
  では、西村委員からお願いします。

西村臨時委員
  特に中山間地についてですが、背景はもう先ほど安藤先生を初め、皆様から話があったとおりで割愛しますが、圧倒的に人が減ってしまうということは、かなり真剣に考えないといけないように思います。
  先ほどから出ていた多面的機能支払についても、人がいなければ農村環境維持に機能しないということで、新技術を生産基盤のために活用するというのはずっと出てきていますが、これからはそれに加えて新技術を農村整備という意味で農村環境を維持するためにも使うというような考え方も置かないと、担い手がいるから農村環境整備は大丈夫だろうということにはならないような気がします。一言で言うと、IoT等の新技術を農村環境整備といいますか、人が住むための環境整備をできるだけ少ない人数で達成するための道具としても使うというのを少し考えていただけないかということです。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  続いて、西尾委員に先に伺います。

西尾臨時委員
  この会議では農業農村整備が果たすべき役割ということで議論することになるので、農業農村整備をしない、例えば、この資料にもありましたように大多数の零細の農家があるわけですが、そのような零細農家が農業農村整備をしないときに、どのようになっていくのかということにすごく不安を感じます。新しい時代の到来で新技術を導入した平地の農業や、それから中山間地であっても農村協働力を発揮してできるところというのもあると思いますが、それ以外の、例えば兼業農家でやっているところが、今まで土日に自分の時間を割いて、自分の給料をそれに投入してやってきていたような農家が土地を守るという気持ちでやってきた人たちだと思うんです。そういう人たちが世代交代をして、そういう意識がなくなったときに、そこは必然的に荒れていくのではないかと思うので、そういったところを農村協働力だけで解決しようと思うのは、やはり無理があると思います。
  そうした中で、先ほどのご意見にもあったように、農業農村整備がそういったところに対してどのようにアプローチしていけるのかということが今後、この新たなフロンティアを考える上では大変重要なことではないかと思っています。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、浅野委員、続けて伺います。

浅野臨時委員
  京都大学の浅野でございます。
  最近農水省でめっきり聞かなくなったなという言葉が1つあるのですが、皆様、何か思い当たるでしょうか。「地域政策」という話。
  実は今日いろいろ出てきた話は、安藤委員もそうですし、柴田委員もそうですし、皆さんおっしゃったことというのは地域の持っている資源をどうやって有効に使うかということについてNN事業は何かできませんかという、それに対して対応をきちんと考えていますかということなので、実際問題としては地域政策のコンテンツをもっときちんと考えなければいけないのに、今までのまとめとしてはそこまで至っていませんよねという、そういうことに尽きるのだと私は思います。
  特に1番目の「担い手の」というふうにまず限定があった上でのこの部分ってやっぱり産業政策の話です。だから、産業政策としてはこれでいい。今までのまとめとしては、それプラスアルファということで地域政策を非常に大きくとって、次のような表現の2つ目の目標になっていた。だけど、そこを超えて進んでいかないと、今後の農村における人口減少であるとか、いろいろな苦難というのは乗り越えられないし、私は社会が求めているものは、実は農村でお金をたくさん稼いでほしいというよりも、農村でもっと豊かに生活できるような環境条件をきちんと整備して、農地、あるいは国土をきちんと守ってほしいというのが本来の国民の意見ではないか。そういうことを考えたら、今後ますます日本型直接支払は国民の理解を得るような説明をし、拡充していくことが1つの方策になるでしょうし、やはり地域政策をここできちんと議論しないとだめだなということを今日改めて思いました。
  その地域政策に関して言うならば、私は今日のICTの話で1つ問題だなと思っているのは、市場ができることは政府は本当はもう考えなくていいのです。市場ができないことをやるから政策、政府があって政策を立てる必要がある。まさにそれが地域政策なんだということをもう一度ぜひ思い返していただきたいということです。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  では、横田委員伺いましょう。

横田臨時委員
  言いたいことはいろいろありますが時間も少ないので、ポイントだけにします。
  このフロンティアの話で言うと、インフラ、農村整備どうするかということと、先ほどの議論の中でも出ていましたが、新しい技術もどんどん変わっていくので、そのインフラをどう整備していくかという話と、それをどう使っていくかという話を同時並行で進めていかなければならないということでした。お金と時間のかかる長期的なインフラ整備もあるでしょうが、例えばさらなる技術の進展が見込まれるGPSの活用みたいなものだったら、比較的簡単に、今のインフラを少し変えるだけで済む。そういう簡単なインフラ整備もあわせて、使って、それを活用し、実際どう使えるか、農業現場で使えるから、では、またそういうインフラをこういう方向でやっていきましょうみたいなことに、何か小さい繰り返しをやっていく必要があると感じました。
  あと、この前の説明のときにもWAGRIのようなデータ連携基盤の話も出ていましたが、これは活用が農業生産現場で、その中で政府の目標でも、データ駆動型農業なんか、かなりの部分やるという話もありますが、農業者みんながデータ駆動型農業をやるのは結構大変と思う一方で、むしろ、インフラの話や、前の説明の中にもそういう説明がありましたが、例えば水の利用の話のほうが、よりデータを活用してやるべきことはすごく大きいと感じています。だから、先ほどの説明ではどちらかというと土地改良区やユーザー側で持っている情報をWAGRI側に提供するという話でしたが、逆にWAGRI側から情報をもらって、水の有効利用、ほ場整備、基盤整備等、そういうところで逆に土地改良区が活用する場面のほうがすごく大きいと思います。そうすると、データ駆動型の農業を農家それぞれがやっていなくても、実は農業基盤としては活用しているというふうになると感じました。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。何か発言を制限したみたいで申しわけありません。
  では、武山委員伺います。

武山臨時委員
  もう議論は出尽くしたと思いますが、一言だけ発言させていただければと思います。
  フロンティアということですけれども、とかくフロンティアといいますと未知、我々が今まで手を出していない農業農村整備、今まで扱わなかった外のことに目が向きがちです。しかし、今日の議論をお聞きしている中では、例えば中山間地域こそフロンティアだと思われます。つまり、我々農業農村整備の世界では、業としての農業の効率性を上げていくというところが、いろいろなご意見はあると思いますが、本流だったと思います。中山間地域というのは、その本流に乗れないところです。例えば、ため池も江戸時代に作られたものをそのまま使っているとか、基盤整備も手が入っていないという、そのまま据え置かれた中で協働力で何とかしてくださいという方針が今までのベースにあったのではないかと思われます。
  しかし、ここを開発することで新しい日本の展開が見えてくる可能性があるわけです。ですので、中のフロンティアですね。今まで我々の農業農村整備の中に、今まで未開の部分があったというところにもぜひ目を向けていただきまして、果敢に挑んでいただきたいということが強く思うところです。
  土地改良区の話も出ました。これも大変危機的な状況にあると思います。今回、愛媛県から参っておりますが、ため池が大変大きな被害を受けています。一方で被害を受けなかったため池というのは、水を農業以外に転用して被災地の清掃の水に使ったり、はたまた飲料水や何かに転用されているケースもあります。ため池とはいえ、農業用水とはいえ、地域の水として、ため池というのはインフラとして十分価値のあるものだと言えるかと思いますので、土地改良区だけにお任せしていいのかということもそろそろ議論しなければいけないのではないかと思っています。これだけ混住化ということが進んできて、農村であっても2割、1割しか農家がいらっしゃらないと。その農家にだけお任せをして頑張ってくださいという体制がいいのかどうか、そろそろ議論を始めてもいいのではないかと思います。
  以上です。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  一通り委員の皆様からご発言いただきましたが、最後に特に何かご発言があったらお受けしたいと思いますが。
  今事務局からご説明いただいて、ご意見いただいた新たなフロンティアは、今後の議論のベースであり、これについてさらに具体的に議論していくという位置付けだと思います。今の5名の方の委員踏まえて、事務局で何かご説明いただくことがあったらお願いします。

石井計画調整室長
  ありがとうございます。
  最初に、西村委員からご指摘いただいたことですが、中山間地域を中心に圧倒的に人が減っていくということでございます。その認識は先ほど安藤委員からもご指摘いただきましたが、我々はそのことを十分に踏まえて、この新時代のフロンティアの中でしっかり議論していきたいと考えております。
  また、新技術について、農村環境整備に活用していくべきだというご指摘だったと思いますが、これにつきましては、今後農業と農村について議論していく中で反映できればと思います。
  また、西尾委員からいただきました農業農村整備を行わない大多数の地域では、また農家がどうなるのかというご懸念の話だったと思います。中山間地域であっても、そこで営農がなされていれば、何らかの形で農地や農業水利施設が使われています。特に農業水利施設につきましては、時間がたてば老朽化していくということです。このような中で、農業農村整備が果たしていく役割はもちろんあるのではないかと考えております。私たちは、決して大きな担い手の方のみを対象にしているわけではなく、中山間地域の小規模営農している方々も議論の中にしっかり位置付けて議論させていただきたいと考えております。そういった意味で、今回は、農村の多様性、すなわち、平地農業のみならず中山間地域にもしっかり焦点を当てて議論していきたいと考えております。
  また、浅野委員から、大変重要なご指摘をいただいたところでございます。地域政策をここでしっかり議論すべきであるということです。今日、委員からご指摘いただいたことは、まさに地域政策の視点でしっかり考えていかなければならないということだったと思います。昨年度の議論を今回取りまとめることとしていますが、まだ十分ではないというご指摘をいただきましたので、本年度の議論の中でしっかり取り組んでいきたいと考えております。
  また、横田委員のご指摘でございますが、特に最後のWAGRIの関係です。これにつきましては、資料の2-2の28ページでWAGRIについて触れております。農業関連データについて、農村振興局もデータをWAGRIに提供しておりまして、それを農家の方々にご利用いただくということです。特に28ページの右側、農地に関するデータとして、農地ナビというものもございますし、ほ区単位の農地の情報、「ほ区ポリゴン」と呼んでおりますが、これを重ね合わせてご利用いただきたいと考えております。WAGRIから我々がいろいろとデータを引っ張ってきて利用することもあると思いますが、我々が提供するものを農家の方々の営農に役立てていただければという思いもございます。
  そして、最後に、武山委員の話でございますが、中山間地域を真正面からしっかり受け止めて議論すべきだということです。先ほど話したことの繰り返しになりますが、私たちとしては、農村の多様性、特に中山間地域にしっかり焦点を見据えて、このフロンティアの議論を深めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  以上、簡単ですが、事務局からのコメントとさせていただきます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  ご説明にもありましたように、今回お示しいただいたものをベースに、次回以降、またさらに議論を進める、深めていくということになろうかと思います。
  時間がないのですが、私も最後に一言、感想と覚悟を申し上げたいと思います。今日いろいろご意見いただいたものを最後に、浅野委員がうまくまとめていただきましたが、前回の土地改良長期計画をまとめるときは、農業政策と地域政策を車の両輪として進めるという中に位置付けていくことにし、地域の政策のキーワードに「農村協働力」を入れて、それを中心にして組み立てたと思います。今回のまとめも農村協働力ありきからスタートしているので、それがないところをどうするか、それを整えるにはどうするかというのが具体的な政策として次にきちんと議論すべきだということを、私も改めて認識し直したところです。
  それから、フロンティアについてで武山委員もおっしゃいましたが、農業と農村も、気候変動、あるいはそれに関連する部分などでは、本当に新しいフェーズに入ったのではないかと思います。その中で農業農村整備の果たす役割は非常に大きく、今回も災害への対応の議論の中で国土強靱化が改めて強調されているようです。国土強靱化は比較的受け入れられやすい感じですが、国土というと、やはり何となく国土交通省が直接に管轄されているような対象を意識しがちですが、それだけではないと思います。国の本当の礎の強靭化が必要と思います。「国礎」という言葉もあるようですけれども、そこをきちんと仕立て直すという新しいフェーズに入ってきているように私も思います。そこで農業農村整備が果たす役割と、国礎の再整備は農業農村整備だけではできませんけれども、国礎の再整備のフロンティアを農業農村整備が担うというようなぐらいの気概で本格的な位置付けから議論していかないといけないのではないかなと思います。最後に私見を申し上げさせていただいて、この議題の議論はここまでにさせていただきます。
  振り返りまして、先ほどの取りまとめにつきましては、先ほど申し上げましたように委員の意見を踏まえて、案を事務局で取りまとめていただいて、最後のまとめは私にご一任いただきたいと思います。よろしいでしょうか。
  では、そのように進めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、最後の議題4「国際かんがい排水委員会(ICID)の活動方向について」、事務局からご説明いただきます。

石島海外土地改良技術室長
  設計課海外土地改良技術室の石島でございます。よろしくお願いします。
  資料4をクリック願います。
  1ページ目は国際かんがい排水委員会(ICID)の概要の説明です。これは省略をさせていただきまして、2ページ目、対応方針の案ですが、8月にカナダにおいて第69回国際執行理事会が開催されます。近年、世界の水使用量が増加する中で持続可能なかんがいの実現が不可欠になっておりまして、水田かんがいが有します高度な生産性と持続性に関する日本の知見を各国に提供していくことは日本の責務となっております。特に限りある水資源の有効利用、かんがい効率の向上等への貢献を目指していくこととしております。
  そのため、具体的には、「気候変動と農業用水管理部会」において、渡邉部会長にそこに記載のテーマで発表をしていただきますし、「かんがい施設計画の近代化と再活性化部会」では、福田委員に日本のケーススタディについて発表していただくなど、日本国内委員会の委員のメンバーの方に議論を主導していただくこととしております。
  それから、例年、この執行理事会の中で副会長の選挙が行われます。今年は3名の改選に対して3名の立候補ということで落ちる方のいない選挙ですので、今回の資料からは外しておりますが、副会長の優先順位をつける投票があります。日本としては地域バランスを考えて、イタリアを1番目、2番目にイラン、3番目にモロッコということで投票をする予定としております。
  資料の3ページは世界かんがい施設遺産でございます。これは報告でございますが、毎年この執行理事会の中で世界かんがい施設遺産の登録が発表されます。その申請を日本から今年は4地区行っておりまして、そこに示されている4地区が今申請されております。
  以上でございます。

渡邉部会長
  ありがとうございました。
  ただいまのご説明に何かご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
  今のご説明の資料の右肩のページの1と2が対応方針ですが、この対応方針はここでご承認いただくということを前提にしております。もしご意見なければ、これを了承するということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
  では、そのようにさせていただきます。特にご意見、ほかございませんでしょうか。
  ありがとうございました。
  それでは、以上をもちまして本日予定した審議は終了したと思います。進行がまずくて予定の時間に終了できませんでしたことをおわび申し上げます。
  それでは、進行を事務局にお返しします。

石井計画調整室長
  ありがとうございます。
  本日は本当に長い時間、委員の皆様にご議論いただき、また渡邉部会長にうまく進行していただき、まことにありがとうございました。
  それでは、以上をもちまして本日の部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。


お問合せ先

農村振興局整備部設計課計画調整室

代表:03-3502-8111(内線5514)
ダイヤルイン:03-6744-2201
FAX番号:03-5511-8251

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