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農林水産省

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平成30年度第2回(現地調査)議事概要

1.日時及び場所

日時:平成30年10月31日(水曜日)~11月1日(木曜日)
場所:島根県下

2.議事

(1)開会
(2)挨拶
(3)意見交換
(4)現地調査全般に関する意見
(5)閉会

3.議事概要

議事概要(PDF : 254KB)

(3)意見交換
(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 ファーム宇賀荘では、平成13年ごろから大区画化のほ場整備を第一・第二地区で実施した。市からは、集落営農を2つに分ける提案をされたが、人材も半分で済むので、大きいが1つでやろうということとなった。
 12a(1反1畝)で耕地整備がされた地域である。用排兼用で、農道についても軽トラックがやっと通れる幅1.8mで大型農作業機の導入が難しい状況であった。兼業化や減反政策を受け、会社員の方がいいという兼業農家も増えたことで営農に携わらず、耕作放棄地が発生したため、大区画化のほ場整備を実施し、今のような姿となった。
 10数年前までは定年が60歳であり、定年を迎えた人がファーム宇賀荘に戻ってくるだろうと思っていたが、国の政策で定年が60歳から65歳、また、さらに延長していくと、定年後に営農に従事してくれる方がいなくなり、人手不足になってしまうと懸念している。
 今年からKSASを導入した。収穫するとほ場ごとに、乾燥重量、水分含量、タンパク質含量をデータとしてパソコンに送信することが可能になった。この取組はITを取り入れた農業ということで、若い方に少しでもファーム宇賀荘に興味を持ってもらおうということで始めた。また、来年は、GPS・KSAS搭載型6条田植機を導入する予定である。

(渡辺臨時委員)
 ほ場整備の農家負担が7.5%とあるが、集積促進費により農家負担はあまりなかったのではないかと思料。実際の農家負担がどれくらいだったか教えていただきたい。
 また、設立までの問題点として、ほ場整備に反対する人の説得ということを挙げているが、主な反対理由について教えていただきたい。
(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 農家負担について、基盤整備をして減歩をしたところは、吉田川や中学校等の公共施設用地として売却し、その売却益を農家負担に充てた。また、集積に当たり協力金も頂いた。
 それから、ほ場整備に反対していた方は、元気があり自分で営農すると言っていた方、ほ場整備に参加すると自分の農地が取られてしまうという感覚を持っている方だった。
 法人の設立に当たっては、出資金を1,500万円とすることを目標とし、7,500円/10a/年で出資金を集めた。すべて利用権設定で行っている。ほ場整備に反対していた人も、高齢化、機械の故障等で農地を手放すことが増えてくるので、農林水産省の準備金制度を利用して積立を行い、農地を購入している。
 地代については15,000円/10aを農家に支払っている。

(柚木委員)
 農地の利用権の設定期間を教えてもらいたい。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 5年だが、5年だと短いので、次回以降は10年としている。

(柚木委員)
 宇賀荘第一・第二地区内でファーム宇賀荘以外の認定農業者は何名いるのか。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 個人で3名。

(柚木委員)
 1年間の積立額はどのくらいか。積立金の用途は、農業機械と農地の購入に充当しているのか。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 2~3,000万円/年であり、それを農業機械と農地の購入に充当している。購入した農地は法人名義にしている。

(西尾臨時委員)
 常時就農者は何名か。
 現在、法人で所有している機械台数と法人の就農者数に鑑みると、経営規模はさらに拡大できそうか。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 組合員は、248名。オペレーターは約35名。
 経営規模の拡大については、ほ場整備を実施した250haの農地であれば、連坦化しているので可能だと思う。
 なかなか若い方が入ってこないのでKSASに挑戦した。KSASはスマートフォンを使用するが、スマートフォンの操作は高齢者には難しい。現在はKSASを利用した営農と従来どおりのほ場管理を並列させながらやっている。

(森臨時委員)
 農業機械倉庫に並べてあった机に、ファーム宇賀荘のほ場の地図が広げてあったが、機械のローテーションを話し合うために実際に使用しているものか。
 また、低農薬を売りにしているエコ大豆を出荷しているが、買い手はどのような評価をしているのか。また、ファーム宇賀荘の収入にどのような影響があるのか教えていただきたい。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 まず地図についてであるが、地図の各筆に番号が振ってあり、ほ場にも番号札を立てている。オペレーターに営農作業を指示するときの確認用のものである。
 エコ大豆は、慣行栽培の大豆に比べて1体当たり約200円高く買ってもらっている。エコ大豆の取組を続けることによって、買い手の信用を得るというのが一番の目的である。エコ大豆はPRして付加価値を高めていきたいと思う。

(柴田臨時委員)
 規模拡大によって、1俵当たり生産費はどれくらい減少したのか。
 どじょう米は、ほ場毎に生産性にばらつきがあるが、その辺も教えていただきたい。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 生産費については、機械の購入経費を戸別で賄う必要がなく、複数戸の組合員で購入することになるので、機械経費が減となり、その分生産費を下げることができている。
 どじょう米については、奨励金をもらっており、買取価格と奨励金と合わせて1万円/俵である。除草は、除草剤を使わずに人の手で行うので赤字になってしまう。
 ファーム宇賀荘で作付けしている作物はすべて販売している。JAに出荷したり、業者に卸したりしている。残ったものは組合員に分配している。植え付けた段階で、物の出荷先が決まっている。

(松田臨時委員)
 平成14年営農組合の設立、平成20年農業生産法人の認定、現在の3段階で組合員数及び集落全体の世帯数はどのように変化したのか。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 集落全体の農家数は減ってきていると思われるが、組合員数は設立当初から248名で変化していない。

(松田臨時委員)
 248名の組合員のうち、全く営農に従事していない方はどれくらいいるのか。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 設立当初から、労働の強制はしなかったため、全く営農に従事していない方は、248名のうち半分程度。営農している方は、定年した方やサラリーマンの方がポツポツ出てきている。

(松田臨時委員)
 オペレーターの年齢層は、平成20年の農業生産法人設立時からどのように変化したか。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 設立した当初の方がそのまま、年を取った形である。若い方は3名いる。

(渡邉部会長)
 私たちの食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会は、農業農村整備事業のあり方を検討し、農水省からの求めに応じて意見を提示する組織である。また、今後は、次期の土地改良長期計画について検討することになる。
 ファーム宇賀荘として、こういうことがしたいけれどもできずに困っている、あるいはこういうことを進めるにはどうしたらいいのか、というような質問や要望があれば、お話いただきたい。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 高収益作物について、消費地から遠いため、近いところに比べるとコストがかかり、また、山陰地方は天候があまり良くない。このように、高収益作物の推進については、地域によって立地条件が様々であることも考慮に入れていただきたい。
 ほ場整備については、生産設備も整備できるような、自由度の高い事業があればいいと思う。
ほ場整備をして10~15年経過し、暗渠の機能不良が発生しているため、暗渠を改良したいと考えている。より管理がしやすい暗渠を施工したいが、何かいい施策はあるか。また、新しい施策を作っていただきたい。

(農村振興局横井整備部長)
 暗渠排水の更新は可能である。事業活用については県や市に相談してもらいたい。
 ファーム宇賀荘は、コップスを早期の段階で導入している地区である。我々は先行的に施工している地区から、どういう不具合が出てきているか、それを踏まえてどういった配慮ができるのかを学ばなければならないと思っている。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 ほ場整備をしたことで100m先の畦畔の管理が非常に大変である。雑草対策が大変であるため、管理がし易いように農道としても利用できるような畦畔をほ場整備の中で整備してもらいたい。

(渡辺臨時委員)
 新潟県では、排水路を管路化して、その上を道路として使用し、所々マンホールを設置して点検口を確保しておくということに実際に取り組んでいる事例がある。最初は、排水路が詰まってしまうのではないかという心配があったが、あまり詰まったという話は出ていない。水田の両サイドを農道として使用でき、効率が良く、農業機械も上でターンができるため非常に効率がよい。ご参考になればよいと思う。

(武山臨時委員)
 大豆の栽培に当たり、収量、品質が安定しない、水田から大豆に転作したとしても徐々に連作障害が発生してしまう等の指摘があると聞いている。ファーム宇賀荘では、今後水田で大豆を作る可能性をどのように考えているのか、今後伸ばしていけると考えているのか教えていただきたい。もし、そうでなければ、どのような整備があれば大豆が作りやすくなるか教えていただきたい。
 ファーム宇賀荘は、上からの灌水だけではなく、地下かんがいを実際にやっているのか。また、地下かんがいの有効性について教えていただきたい。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 水田での大豆栽培であるが、転作畑から水田に戻すことによって、農薬を使用せずに畑地雑草の防除が可能である。
 大豆を作る場合は、全て地下かんがいを行っている。また、暗渠としても利用し、本地内に溝を掘って水を集積させている。また、大豆の花が咲くときに冠水している。
 しかし、年月が経つと不具合が生じ、暗きょ幅を10mとしているが、中々浸透しないといった問題が発生している。

(武山臨時委員)
 今年も大豆栽培は難しかったとお話されていたが、収量が安定しない原因は何か。

(農事組合法人ファーム宇賀荘)
 異常気象が原因である。播種して生育期に入ると、葉に水分がなければ発育不良になる。干ばつで下流まで用水が届かず、必要な時期に冠水ができなかったため、大豆は、発育不良になった。

(4)現地調査全般に関する意見
(渡辺臨時委員)
 平場の地域では、土地改良事業の効果が発揮されている。地域の方々が土地改良事業を実施したフィールドを有効に利用している。見習うところが多かった。
 中山間地域では、農林水産省の基盤整備部局の仕事だけでは十分ではないと改めて感じた。産業政策だけではなく地域政策も含めて、地域を守るにはどうすればよいか真剣に考える時期に来ている。今まであったものを絶対に守らなければならないのかということも一歩足を止めてよく考えて、今後どうしたらよいか地域の方と話をするところから整理をする必要があると感じた。

(森臨時委員)
 あかつきファームのオーナー制度で、ぶどうに関しては1万円/10kgで摘み取ったものを確実に売れるような仕組み作りをしていた。いちごの高設栽培で、車椅子が入れるように間隔を空けて栽培している。認知してもらうために障害者や高齢者に無料で食べてもらう取組を行っており、農村協働力と合わせて社会貢献をしている姿勢を見ることができ勉強となった。
 山王寺棚田では、地域の農地を守る意思をひしひしと感じた。日本中同じような問題を抱えている地域があり、意思を持って前向きに取り組む方がいることは心強く感じた。都市に住んでいる自分達は何ができるか考えさせられる現地調査となった。
 北海道では、大区画ほ場で多くのGPSを搭載したトラクターが使用されており、労働力の削減となっている。これであれば継いでもいいという方を何度も見てきた。例えば、田植機がターンするのに必要な畦畔を整備するようなときは、農林水産省と相談して、若い人が戻り、農業続けられるように、ますます発展していければいいと思う。

(松田臨時委員)
 今回の現地調査で事例を見させていただいたが、平地における効率性と付加価値性、中山間地における効率性と付加価値性は、画一的でないと感じた。地域における居住の永続性と、その地域の組織における営農の永続性の接点をどう結びつけるかが難しいと改めて実感した。どういう手法で地域のリーダーを育成し、地域の後継者を見つけ、地域に住み続けようという動機をどこでクロスさせるか、そうした施策の必要性を改めて考えさせられた。

(長谷川臨時委員)
 大区画ほ場のような進んだ農業をしていたとしても、担い手をどのように確保するのかという問題に直面しているということを実感した。その中で印象に残っているのは、イオンアグリ創造(株)で、若い女性の農場長が働いていることであった。そこで働いている人も若く、農業大学校を卒業した方などが来ていた。
 大企業がやっていることと地域の方がやっていることには様々な違いがあるが、今の若い方は、価値観が多様化している。大学を卒業して、会社員になればいいと思っている人ばかりではないので、色々な支援の形があるのではないかと感じた。

(西尾臨時委員)
 島根県で一生懸命に農業に取り組んでいる方がいて、力強く感じた。
 自分の農園では、無農薬・無化学肥料栽培を信念に取り組んでいるので、ファーム宇賀荘が取り組んでいる環境保全型農業はすばらしいと思った。個人的には環境保全型農業を取り組んでほしいので、環境保全型農業と慣行農業とで収益性の違いが出て、高収益性に結びつくとよいと感じた。
 イオンアグリ創造(株)で若い方が一生懸命に働いているのは、すばらしいと感じた。地域においても若い人が担い手として働いて、地域とつながる形で農業が発展していく形で見いだしていかなければならないと感じた。イオンアグリのような若い方が働いている企業の良いところを取り入れて、若い人が働けるような環境を作っていかなければならない。

(武山臨時委員)
 畑地化の時代に入っていると、強く実感した。水田の汎用化は進んでいるが、あくまで水田、水稲ベースであり、転作の大豆という位置付けとなっている。棚田地域でも話があったが、次のステップとして水田を畑地化していくところまで来ていると思った。水田に戻すという前提ではなく、畑地にしていく。そうすれば、ある程度傾斜を付けて排水性のよい農地も作っていける。突拍子もないことかもしれないが、次の世代向けて考えていく必要がある。

(柚木委員)
 人生百年時代に突入し新たな担い手や農地の問題が生じている。現地調査に行った地域での営農モデルが、定年が60歳から65歳、さらに70歳までの継続雇用となるなかで、崩れそうになってきている。改めて農業農村の人材の確保、労働力の確保の在り方を考えていかなければならないと感じた。安来市から話があった就農定住パッケージは1つのヒントになると思った。
 平場も中山間地も共通して鳥獣被害対策を講じなければならず、農業農村整備からも考えて行く必要があると感じた。
 ファーム宇賀荘では、準備金を活用して離農した方の農地を購入する話があったが、都府県ではあまり例がない。地域の農地の利用を考えていく上でも、農地整備全般を考えて行く上でも参考となった。

(柴田臨時委員)
 2日間かけて、様々なパターンの営農を見ることができてよかった。
 基盤整備がきっかけとなり、農家が農業へのやる気が上がってくるが、地域の方向性や将来ビジョンを描くには、強いリーダーシップが必要であると思った。
 農家や法人には社会的生産単位としての性格と私的な収益を求めていく性格の2つがあり、そこにスマート農業がどのように関わるかが課題である。未来サポートさだで見せてもらった草刈りロボットによる草刈りには衝撃を受けた。草刈りという共通の課題を解決する技術は、社会的生産単位としての農業を支える技術であり、国や県が支えていかなければならないと思う。ファーム宇賀荘で見せてもらったKSASのような収益性を求める技術についても課題が多いように感じた。

(小谷臨時委員)
 ファーム宇賀荘のどじょう米の取組はすばらしいと感じた。農業農村においては、関係人口や交流人口のように多くの方に分かってもらう多様な関わりが重要。一部の農地でもいいからどじょう米のような取組をやっているということで、都市の人にも理解されやすいと思う。
 2日間どこも草刈りが一番大変であるということが共通していた。草刈りで農地が荒れることは、地域が荒れていくことである。草刈り機の国産のものがないということであったが、国産メーカーが草刈り機を作ることは、農業とともに歩む農機具メーカーの使命ではないか、CSR(企業の社会的責任)にもつながると思う。
 島根県は人口減少等課題先進地域として注目していた。今回の現地調査で、深刻な部分とそれでも皆で喜びを見いだしていく姿を多く見ることができた。島根県から発信できることがあると感じた。

(渡邉部会長)
 土地改良区の役割やあり方が様々な営農やと地域の動きの中で変化してきている。法律も改正され、実際の営農の展開に対応していくための土地改良区の役割と具体的な業務についてのガイドラインのような方向性を示すものを作る必要があると思う。
 新技術について、10年後には現在の私たちが想像できないようなシステムができあがると思われる。想像できないようなことを前提とした上で時間を要する基盤整備を計画していかなければならない。考え方そのものをこれまでとは異なる体制で取り組んでいく必要がある。その過程では、これまでの取組の経験を活かしていくことも重要である。


以上

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