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農林水産省

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令和元年度第2回畜産部会議事概要

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1.日時:令和元年5月30日(木曜日)10時00分12時15分

2.場所:農林水産省本館4階第2特別会議室

3.出席委員:有田委員、前田委員、三輪部会長、石澤委員、小野寺委員、金井委員、小谷委員、須藤委員、藤嶋委員、松永委員、宮原委員(加藤委員、知久委員、大山委員、釼持委員、里井委員、築道委員の6名は欠席)

4.ヒアリング協力者:田村英寛氏(株式会社久慈平岳牧場)、加茂太郎氏(有限会社加茂牧場)、山下益雄氏(農事組合法人ノーザンスカイ)、廣木聖隆氏(有限会社ファム・エイ)

5.概要

【ヒアリング協力者からの発表概要】

(田村氏)

○岩手県洋野町にて乳牛を1,100頭ほど飼養している。昭和50年就農当初の8頭から現在の頭数まで規模拡大を進めてきた。また現在、県内の酪農生産者で組織する岩手県酪農連絡協議会の会長を務めている。

○雇用の確保が課題であり、従業員の住居の整備など環境整備が必要。また、フィリピンから実習生を受け入れているが、改正入管法の施行に伴い、気をつけなければならない点なども整理してほしい。

○酪農ヘルパーが足りていない状況。ヘルパーを利用する理由も、育児や介護など多様化してきている。そもそもヘルパーになりたいという人が少ない。そのため待遇改善や認知度向上のための支援が必要。

○新規就農だけではなく、家族内継承も重要。国の事業によっては、家族内継承では支援できないと言われることもある。後継者が継ぎやすい環境作りのための支援があると嬉しい。

○頭数を増加させた場合、一番の問題となるのは糞尿の還元先であり、草地造成に対して、過去、国の01月02日補助に地方自治体からの上乗せ支援があり、全体で75%の補助があったが、今はないので、草地造成のための支援強化をお願いしたい。

○指定団体以外への出荷により、需給調整、乳価下落への不安などがある。

○酪農家が日々生産する生乳を売りきるには共販の仕組みが重要である。

○畜安法の改正で「いいとこ取り」の生乳が発生し、不満や不安の声も出ている。

○無秩序に指定団体外流通が増加することは、安売り牛乳の助長、ひいては全体の生乳価格の低下につながるのではないかと不安を抱えている。

 

(加茂氏)

○東京のベッドタウンである千葉県八千代市において、乳牛130頭(搾乳牛80頭)規模を家族、従業員併せて5名で経営している。自己所有地は1haであるが借地などにより7.5haで自給飼料を生産するとともに、水稲農家と連携しイネWCSや飼料米を利用している。また、食品残渣(エコフィード)も積極的に活用し、低コストでの経営を実現している。

○自分は教員から酪農家に転身しており、サラリーマンより豊かな生活を目指している。また、酪農家の地位向上を目指して、酪農への理解醸成のため酪農教育ファーム活動を積極的に行っている。

○改正畜産経営安定法の下、出荷先を自由に選べるようになったが、将来、需給に問題が生じたり、外的要因によって販売しにくくなった特に、指定団体の交渉力等が下がらないか漠然とした不安がある。業界全体の団結力が失われることや、不公平が起きないように出荷先を選ぶ際の一定のルールの整備をしてほしい。

○酪農への理解醸成のため教育現場への講師派遣等は重要と思い、積極的に小学校への出前授業を行ってきた。牛を連れていくことも含め、年20回ほど行っている。

○都府県平均の40頭程度搾乳でも、家族労働だけではなく、雇用しなければ休日の確保などが難しい。雇用を確保できるだけの、所得向上への支援が必要。

○エコフィードの供給量が絶対的に足りない。品質の安定したエコフィードの供給のため食品メーカーへの働きかけが必要。

○親子間の継承移譲の時代ではなくなってきている。しかし、酪農経営を第三者に移譲するハードルを下げる政策が必要。たとえば、過去に補助事業を活用していると譲渡しにくい等の問題がある。また、居抜き譲渡の場合には急を要する場合が多いので、貸し付け条件の緩和された低金利の資金調達や、雇用確保への補助をお願いしたい。

 

(山下氏)

○農業や酪農が盛んな北海道大樹町で酪農家と畑作農家合同の協業法人を立ち上げ。従業員16名で経産牛450頭、未経産牛375頭を飼養。畑作出身者のモチベーション維持のため畑作のノウハウが生かせる畑作部門も継続。てん菜、小麦、牧草、デントコーンを計272ha作付け。

○高齢化による将来の労働力不足、設備投資に対する個人の負担軽減等が設立のきっかけ。それぞれの考え方があるので意思統一が大変だが、話し合いで理解を深めた。

JAは協業化に慣れているため手続き上の苦労は無かったが、同時期に町内で同様の協業法人が設立されたため差別化に苦労。

○糞尿の臭気対策のモデルとなれるようにバイオガス発電を検討したが送電線等の問題で実現できていない。地域内では他にも進んでいないところがある。

○法人化後に結婚した者もおり、配偶者は酪農をやっていない。今までは、農家と結婚するとお嫁さんは労働力とみなされていたが、法人化することで、他産業と同様に酪農に従事しないという選択も可能。結婚しやすい環境につながる。

○牧場の先行きが見通せずに後継者が続かないため、労働力や後継者確保のために環境負荷軽減やチーズ関連の事業を残してほしい。

 

(廣木氏)

JA単位でのヘルパー事業では先が見通せないため、ヘルパー事業等を行う会社として平成元年に設立。根室地区の約半数の酪農家(512)をカバー。

○酪農ヘルパーの勤務時間は午前5時~9時及び午後4時~8時と特殊なため人が集まらない。

○ファム・エイと農協が委託契約を結び、農協が組合員の窓口となっている。以前は契約を超えた「特別対応」も行っていたが、現在は人手不足のため契約を超えた対応がほとんどできない。

○課題1は人員確保対策。イベント等にも参加しているが認知度がまだ低い。需要はあるが人が集まらないため、独自の修学資金制度を創設している。

○課題2は働き方の工夫。酪農経験のある主婦から託児所があれば働けるとの声がある。

○課題3は社員の定着化。ヘルパーの給料引き上げには酪農家の理解が必要。また、働き方改革による有休消化が課題。

○課題4は酪農家の基本作業内容の統一。酪農家の作業をある程度統一した方が職員教育も行いやすい。これには組合員の協力が必要。

○ヘルパーは様々な酪農家を見ることができるので就農を考えている人の勉強になる。今後も広く酪農ヘルパーの認知度向上や地位向上が必要。移住者の働く場所の受け皿にもなる。

 

【意見交換】

(有田委員)

○田村氏について、家族内継承に向けた具体的な障害はなにか。

○加茂氏について、エコフィードの品質の安定化とは、認証を受けていない食品残渣を使用しているということか。

○山下氏について、バイオガス発電に関しては、どのように国に動いてもらいたいのか。農事組合法人の中で法人後2名結婚できたのは、法人化したことで結婚相手の方が労働力として働かなくてもいいと思ったのではないか。法人化が良い方向に動いたのでは。

○廣木氏について、ヘルパーについて、女性がパートのような形で何か合間に働いてくれればなんとかなるという考え方なのか。

 

(田村氏)

○農業次世代人材投資事業では、新規就農にとっては扱いやすい事業になっている。親元就農の際も事業対象ではあるが、要件等の縛りもあり、現場で断られるケースもある。親元就農にも使いやすい事業の推進と現場担当者への周知をお願いしたい。親元の場合であっても経営基盤が整うまでの期間は、支援があれば、後継者はもっと牧場に入りやすくなる。

 

(加茂氏)

○エコフィードについては、認証を受けたものを使っているが、企業のCSR活動や産業廃棄物コストを減らしたいといった側面が強く、食品企業側と酪農家側で、品質面等の考え方にずれが生じていると思うことが多々ある。認証を受けたA飼料でも、水分が多いなど品質が安定しないものが多く、利用を断ったものがある。

 

(山下氏)

○バイオガス発電については、北電に申し出ても取り扱ってくれない。何のためにFIT法があるのか。再生可能エネルギーための法律があるにも関わらず、何も対応してくれないのは国のやりたい方向としてうまくいってないのではいかと思っている。

○今までの農業経営は、結婚すれば奥さんも労働力とみられる時代だったが、法人だからないということもないとは思うが、家の家業を一緒に労働しなくてもいいという考え方をもって嫁いでくれるのも一つの考え方だと思う。

 

(廣木氏)

○女性で、牛が好きな人や子供の世話がなんとかなれば働きたいという人からの問い合わせをうけることがある。例えば、酪農家出身の奥さんとか。労働力不足のなか、半日でも働いていただければ、農家のためにもなるのではないか。

 

(須藤委員)

○生産者からみて、後継者の確保のために国でできること、自分たちができることを教えてほしい。

○酪農の理解醸成については、国や団体も行っているが不十分と感じる。日当なしにボランティアで教育ファームを行うことは大変厳しいと思う。生産者から見て、国や自治体にお願いしたいことは何か。

○改正畜産経営安定法によって、自由に出荷先が選べるようになったが、一方で無差別に出荷先が変わり、乳価の低下が起きないか危惧している。ルールを守るということで知恵を絞っていかなければならない。クラスターによる規模拡大、雌子牛の増大など、生産過剰になりつつあるが、2、3年後はどうなるのかわからない。生産者からみて、今の状況をどう考えているか。

○ヘルパーへの待遇改善について、廣木氏の考えを聞きたい。

 

(田村氏)

○農業の中でも酪農は計算のできる産業だと思っていた。それは、指定団体や乳業者の努力があって成し得たものだ。販売の自由化によって、今は売り手市場だからいいが、今後、買い手市場になった場合、牛乳の安売り合戦になり、乳価が下落するのではないかという不安がある。

○指定団体については、引き続き需給調整をしっかりお願いしたい。指定団体は絶対に必要な団体と思っている。

 

(加茂氏)

○教育ファームについては、酪農関係団体から日当をもらっている。学校教育の一環といえば、ボランティアという考えが浸透しているが、無償では長続きしない。食育活動において、学校にゲストティーチャーを呼べる予算配当をお願いしたい。

○後継者については、就農するためにある程度現場で経験を積むと新規就農扱いにならないといった話を聞くが、そういうことのないよう、人材育成牧場などによる認定制度があるといいのではないか。

 

(山下氏)

○本牧場でも本州の修学旅行生を受け入れている。

 

(廣木氏)

○待遇の改善については、なかなか難しい問題。乳価があがった際に、ヘルパーの料金も上げた。少しでも社員の待遇はあがった。国の01月02日補助事業もあるが、ヘルパーになってすぐに働けるわけではなく、3ヵ月間の研修を無償で農家で見習いとして働くことになり、これにも経費が係るため、すぐに待遇を改善するということも難しい。

○ヘルパー要員についても有給取得が必要だが、一方で有給取得が進めば人員不足によって仕事が回らなくなるといった問題もある。

 

(松永委員)

○田村氏について、どのようにして排水の浄化槽を01月02日01月03日にすることができたのか。

○加茂氏について、サラリーマンより豊かな生活とはなにか。

○山下氏について、なぜ協業法人の差別化が必要だったのか。また、畑作と酪農の協業は理想的な組み合わせと思うが、これは完全協業なのか、畑作と酪農を部門別にした協業なのか。

 

(田村氏)

○排水処理については、洋野町は漁業も盛んなことから、漁協ともしっかり話し合いながら対応している。通常であれば大きな浄化装置が必要であるが、タンクで一旦固液分離(リセルベータ処理)を行い、量を減らすことで浄化槽が小さくできる。ある程度の大きさで浄化が可能。

 

(加茂氏)

○サラリーマンと比べ豊かな生活にするためには、仕事としてカッコいいかどうかということが大切だと考えている。やりがいのある仕事で、心は満たされたが、そのほかに、収入、休み、社会的地位が必要であり、特に社会的地位の向上が重要。人にうらやましがられる仕事をしていくことが重要。

 

(山下氏)

○協業法人の差別化を図ったのは、同時期に立ち上げた法人があり、その法人と同じ畜舎、同じ搾乳施設では面白みがないと思ったから。畑作と酪農の完全協業法人となっているが、今後の畑作事情によっては、別組織にするかどうかを検討しなければならないかもしれない。

 

(金井委員)

○都府県の生産基盤について、施設や、堆肥舎、後継牛の確保などの問題があると思うが、基板を強化していくために、どのような支援が必要か教えてほしい。

○改正畜安法について、問題意識は同じであり、今後も共販体制や指定団体の機能維持は重要だと思うが、生産者から見て指定団体に期待することは何か。また、公平性を保つためにどのようなルールがあればよいか。

(田村氏)

○岩手県では自給飼料メインの酪農が主流であるが、規模を拡大するとどうしても購入飼料に頼ることになる。草地の拡大は重要だが、山林を草地化することが難しいなかで、草地基盤を増やしていくための支援が必要。

 

(加茂氏)

○畜安法については、現在、売り手市場であり、売り先を選ぶことができる法改正だと思う。状況が変わった時に、農協に戻れば良いという安易な考えで乳価の高い方に出荷している人がいると聞いている。また、二股で出荷している人のバルク乳は、片方の検査で、もう片方の生乳の安全性を担保しているということも聞いている。そういうことも含め、将来的に指定団体としての機能を失わせないよう、いいとこ取りをさせないような仕組みづくりをしていただきたい。

 

(宮原委員)

○生乳生産基盤の強化と需給安定が課題である。また、都府県の生産減少と北海道の生産のアンバランスも課題。今後の課題と対策について生産者の意見をいただきたい。

○酪農家から乳業に期待することや乳業ができることはあるか。

 

(田村氏)

○家族経営では、いかに収益を上げるかが重要であるが、施設や機械などへの投資が大きく、初妊牛価格が高い中でどのように採算をとるかという課題がある。

○長期的に見れば若手育成や草地基盤整理への投資も必要。

○乳価算定において労働費が20万円以下で計算されているという話を聞くが、そうであれば是正してほしい。

○乳業にはこれまでも乳用牛導入等の基盤整備を支援してもらっているが全ての農家に恩恵が行きわたるわけではない。

○乳業には生乳の安定的な受入や安定販売をお願いしたい。

 

(加茂氏)

○新規で牧場を作るのは難しい時代。牛がいる場所自体が資源であり、幅広い継承、スムーズな継承が必要。

○家族経営で複数人の雇用は難しいため従業員がいても絶対にヘルパーが必要。一方で、首都圏には畜産系の大学が多いがヘルパーを目指す人はいない。団体職員として雇用するなど、ヘルパーの身分の保証が必要。

○都市部ではヘルパーの出役距離が短いため国の補助の対象にならない。実質的に一日2回通勤する現状を考慮してほしい。

○牛乳や酪農の価値を高める活動を酪農家と乳業で協力して行うことが必要。

 

(山下氏)

○生乳生産は増加している一方離農も増えている。現在は投資により大規模化した農場のおかげで乳量は維持しているが、離農が進めば酪農は衰退するのではないか。

○施設の老朽化や高齢化が課題となっている。負債の軽減があれば投資を考えたり、後継者が戻ってきたりするのではないか。

 

(前田委員)

○ファム・エイでは、キャリアプランや研修制度など、やりがいにつながる対策としてどのようなことを行っているか。

 

(廣木氏)

○有限会社のため農協並みの待遇とするのは難しい。

○主任、係長、部長など様々な役職を設定。各職員に役職をつけると励みになる。

○年2回程度面談を実施し、将来の希望等の話を聞いている。しかし、最近は忙しくて十分できていない。

 

(藤嶋委員)

SDGsの観点から飼料工業会でもエコフィードの検討を進めている。

○搾乳ロボットやえさ寄せロボット等の省力化の取組や糞尿処理等の環境対策は生産者と行政が一体で行ってほしい。

 

(小谷委員)

○酪農は家族経営が基本。田村氏のように飼料に見合った飼養管理を行うために草地管理が重要。また、ヘルパーの重要性も再認識したが、名称について一考の余地はないのか。

○酪農教育ファームの取組は、子供のいる家族や牧場周辺の住人に理解してもらうためにも必要。酪農家は減少しているが教育ファームに取り組む酪農家数は減少しておらず、親が教育ファームに取り組むと子供が後を継ぐという話も聞く。生乳を搾るだけでなく酪農を伝えることで酪農家としての誇りも伝わるため後継者がつくのではないか。

(加茂氏)

○酪農教育ファームに取り組む仲間はほぼ100%後継者がいる。地域交流が深まったり外部の人が農場に入ることで、後継者に「かっこいい」ところを見てもらえる上、雇用も集まりやすくなる。

 

(小野寺委員)

○自分のだけではなく、将来の後継者をどのように育てるか考えることが重要。

○生乳の需給安定のためにどうするべきか考えてほしい。

○投資への一歩を踏み出せない家族経営がある。家族経営が生き残るためにも建築基準法等の課題を農水省で考えてほしい。

○雇用やヘルパーの待遇改善が課題。ヘルパーにも農協職員並の待遇が必要ではないか。

○糞尿処理は大規模や都市部で課題となっている。バイオガスのような地元のエネルギーを使った電気を地元が買い取らないという状況は良くない。行政にしっかり考えてほしい。

 

(石澤委員)

○この国の食料をどうするべきか、どのくらい国内基盤をどのように整備するべきかということをふまえた議論をすべき。

○人材育成や労働力確保のためだけの教育だけでなく、誇りを持って農業ができるような教育にも力を入れる必要。

○糞尿によるバイオガス発電は電気を安く使うというだけではなく、地力向上の役割を果たしていけるという認識が必要。

 

(三輪部会長)

○酪農ヘルパーについては名称変更や愛称などの検討が必要。ヘルパーの仕事などについての周知も必要。

○事業継承についてのボトルネック(補助事業による譲渡制限、親元就農では事業が活用できないなど)がある。様々なパターンについて課題の整理が必要。

 

(以上)

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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