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農山漁村の男女共同参画社会の形成に関する総合的な推進について

平成11年11月1日11農産第6825号
農林水産省経済局長、農林水産省統計情報部長、農林水産省構造改善局長、
農林水産省農産園芸局長、農林水産省畜産局長、農林水産省食品流通局長、
農林水産省農林水産技術会議事務局長、食糧庁長官、林野庁長官、
水産庁長官から都道府県知事、地方農政局長等あて通知

農業就業人口の6割を占める女性は、農業経営における重要な担い手であり、農家生活の運営や農村地域社会の維持・活性化に大きく貢献しているにもかかわらず、その役割や貢献に見合った適正な評価がなされていない。このため、農山漁村の担い手として、女性の地位の向上を図り、男性と共に参画していくことのできる男女共同参画社会の形成が求められている。

農山漁村における女性に関する施策については、これまで「農村の女性に関する施策の推進について」(平成5年3月23日付け4農蚕第7399号農林水産事務次官通達)により、女性対策の推進方向を明らかにするとともに、平成10年12月には、女性が農村に定着するための具体的な施策の展開方向(アグリウェルカムプラン)をとりまとめ、公表してきたところである。

今般、「男女共同参画社会基本法」(平成11年法律第78号)及び「食料・農業・農村基本法」(平成11年法律第106号)が制定されたことを踏まえ、農林水産業・農山漁村の担い手としての女性の役割を適正に評価し、かつ女性が自らの意思によって経営等に参画するための環境整備を進めるため、女性の参画の促進を図る新たな総合的取組として、別紙のとおり、「農山漁村男女共同参画推進指針」(以下「指針」という。)を定めたので、貴職におかれても、この趣旨を御理解の上、その円滑な推進について御協力をお願いする。

なお、この指針のうち、3のイ「原則として国が助成措置を講じる全ての事業において、女性の参画目標の達成に向けた取組等農山漁村における男女共同参画社会の形成に向けた取組みを事業採択又は事業実施に当たっての留意事項、若しくは採択基準とすること等別紙に示す具体的な取組」については、12年度の事業実施から適用するものとし、11年度の補正予算についても可能な限り適用することとする。


(別紙)

1  農山漁村における男女共同参画社会形成のための基本的考え方

第145回通常国会において制定された「男女共同参画社会基本法」(平成11年法律第78号)においては、我が国の社会経済情勢の急速な変化に対応していく上で、男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現が緊要な課題として位置づけられている。

また、同じく第145回通常国会において制定された「食料・農業・農村基本法」(平成11年法律第106号)においても、第26条で、女性の参画の促進が明記され、男女が社会の対等な構成員としてあらゆる活動に参画する機会を確保することが重要であると位置づけられている。

これらによって、男女共同参画社会の形成という国家的課題に対する国の責務が明確にされたところである。

農山漁村において、その持続的な発展を図っていくためには、男女を問わず、「個」としての主体性を確立し、農林水産業及び農山漁村社会の担い手として、その持てる能力を十分に発揮するとともに、適切に評価され、経営や地域社会の方針決定に参画できる男女共同参画社会の形成が必要である。

しかしながら、現実には、農山漁村社会に依然として根強く残っている「男性優位、家中心」の考え方のため、様々な場面において女性の参画が阻害されているという問題が存在している。

このため、今後は、2つの基本法の趣旨に即して、農山漁村における男女共同参画社会を実現していくための施策の展開に努めていくこととする。

2  男女共同参画社会のための法律・制度、施策の展開

2-1  男女共同参画社会の形成のための支援

農山漁村社会に未だ残る男女間の固定的な役割分担の意識の変革は、個人の努力のみに委ねていたのでは、解決が極めて困難であることから、これらが是正されるよう農山漁村社会全体の仕組みづくりの必要性についての啓発を行うなどの環境整備が重要である。

このため、全ての都道府県において策定される女性の参画目標を踏まえ、普及センターをはじめとする関係機関との連携の下、策定された参画目標の達成に向けたシステムの形成、啓発活動の推進等施策の充実強化を推進する。

また、国の審議会等委員に占める女性の登用目標の達成に向けた取組の強化に努める。

2-1-1  農山漁村における社会参画の目標策定・達成について
各都道府県において策定した農山漁村における女性の参画目標に基づき、市町村等各地域レベルにおいても参画目標の策定を行い、その目標の達成に向けて積極的に取り組んでいくことが重要である。さらに、これら地域レベルにおける参画目標の策定、目標の達成に向けた支援策の充実を図る。

2-1-2  地域社会における男女共同参画の促進のための具体的取組について
地域全体における女性の社会参画を促進するためには、女性の参画に関する各種行事、研修、情報提供等を通じて地域社会における男女共同参画に関する意識の醸成を図ることが必要不可欠である。
また、地域計画の策定、合意形成の場などの会議を開催する場合には、女性の意見が適切に反映されるよう、例えば女性グループの代表としての参加や夫婦での参加を募るなど女性が実際に意思決定の場に参画できるような配慮を行う。

2-1-3  国の審議会等への女性の登用の促進について
農林水産省の審議会において、国の審議会等委員に占める女性の登用目標(国際的な目標である30%(ナイロビ将来戦略勧告(平成2年5月国際連合経済社会理事会採択))の達成をめざし努力を傾注する。)の達成に向け、取組の強化に努める。

2-2  女性の能力開発と経営参画

農林水産業は、仕事としての自律性が高く(自己裁量の範囲が大きい)、職住近接となっていること等家庭生活における活動と他の活動の両立が可能な、男女共同参画を実現しやすい魅力ある職業と考えられる。

一方で、女性は経営における役割の高さに比して、それに見合った報酬・給与を受け取っておらず、また家事、育児、介護等の労働の大宗を担っているなど、男性に比し、相当な労働過重となっている。また、農地等の所有名義は圧倒的に男性が多く生活全般にわたり世帯主義の色彩が濃い社会環境にある。

さらに、農山漁村では介護は家族が行うべきものとの意識が強いことから、今後においては、高齢化の進行に伴い、女性の労働負担は今後益々大きくなることが懸念される。

このため、女性が農林水産業の担い手であり、また、経営者であるという位置付けを明確にするため、家族経営協定の締結を促進するとともに、経営の複合化・多角化を促進するほか、女性の過重労働の軽減等を図るための労働環境整備を推進する。

また、法律等の制度においても、実質的に女性の参画機会を阻害するものとなっているかどうか点検を行い、女性の参画を促進するようその見直しに努める。

2-2-1  経営参画の促進のための総合的取組について
女性が、農林水産業の担い手として、自らの意思によって経営に参画する機会を確保するための環境整備の支援策を充実する。特に、女性の行う部門経営や起業活動への支援のための施策を充実するとともに、女性の過重労働の実態を踏まえ、女性にとって働きやすい労働環境の整備のための施策の充実を図ることが必要である。

このため具体的な例としては、

ア    女性を主対象とした、活動支援のための資金の充実、経営に係る知識・技術、マーケッテイング等に係る研修・セミナーの充実、各種情報提供のための体制整備

イ     女性の労働に対する適正な報酬の支払いや経営方針の決定への女性の参画促進を図る「家族経営協定」の締結の一層の促進
(なお、締結に向けた取組には、地域的なばらつきが見られることから、地域や家族における理解の促進とその活動の一層の強化を促進するため、研修、夫婦セミナー、情報提供等の啓発活動やモデル事例の紹介等を積極的に実施。)

ウ     労働負担の軽減を主眼とした総合的な労働力調整システムの整備や快適な農作業環境の実現のためのマニュアルの策定、労働負担軽減のための施設整備
等を施策のメニューに盛り込むよう配慮するとともに、これらの研修・セミナー等の実施に当たっては、多数の女性が参加できるよう、内容、対象、レベル、期間、保育施設併設の会場の設営など、女性が積極的に参加できるような配慮に努める。

2-2-2  交流、ネットワークの形成等の促進
男女共同参画社会の形成に向けては、都市との交流を進めることが、開かれた社会づくりに有効である。 このため、農山漁村における地域資源を活かした農産物加工等の農業関連起業活動や自然環境等とのふれあいのためのグリーン・ツーリズム等の活動を通じて、消費者、都市住民や地域内外の女性たちとの交流を促進するとともに、ネットワークの形成の促進を図る。
また、農山漁村における郷土料理等の農山漁村食文化・伝統的加工品づくり・地域文化等の維持・伝承等においても、女性は重要な役割を果たしていることから、これらの女性の活動を支援する。

2-2-3  高齢化に対応する取組について
高齢者介護に対する女性の負担軽減のため、高齢者ができるだけ健康で、かつ、経済的にも自立し、社会の一員として活躍できるような環境整備等の地域における取組が不可欠である。
このため、「農山漁村高齢者ビジョン」に即して、農村の高齢者が元気で生き甲斐をもって活躍できるような支援施策の一層の充実とともに、高齢者の自立を支援する社会的基盤の整備に積極的に取り組む。

2-3  調査研究・研修・統計等における取組の充実

(1)調査研究・技術開発等に関する取組について

「男女共同参画社会基本法」第18条(調査研究)において、国は、男女共同参画社会の形成に関する調査研究の推進に努めることとされており、これを踏まえ、農林水産業に従事する女性に関する調査・研究、女性の労働の軽減・快適化等のための調査研究・技術開発を促進する。

また、農山漁村の男女共同参画社会の形成に向けた農山漁村の慣習や男性優位、家中心意識の変化、男女共同参画の進展状況等の研究・調査を進める。

(2)研修教育における取組について

行政関係者、農山漁村社会を構成するあらゆる世代の者に対して、男女共同参画社会の有する意義・重要性を認識させることが重要である。

このため、農林水産関係行政機関職員等に対する研修においてもこの課題を取り入れることにより、職員の意識の醸成に努める。

また、農業者大学校等の研修教育機関においては、男女共同参画社会を形成することの意義を認識することが重要であることから、このことについての理解を深めるためのカリキュラムについての配慮やこれに基づく研修教育の実施に努める。

さらに、子供から青壮年男女、高齢者など各世代を対象とした研修を設けるなどにより男女共同参画社会の形成の一層の促進に資する。

(3)農林水産統計等の充実について

女性の置かれた状況を客観的に把握できる統計情報の収集・整備・提供に努めるものとし、統計調査等の設計、結果の表し方等についても必要に応じて適宜見直しを行い、その改善に努める。

(4)先進的取組事例の情報提供

農山漁村における男女共同参画社会の形成に対する理解や取組の体制は、地域毎に異なっていることから、取組のより一層の進展に向けて先進的取組事例の情報提供が重要である。

このため、

  • 農林水産業団体における女性理事や女性委員の活動事例
  • 部門経営や朝市等の起業活動に取り組む女性の活動事例
  • 家族経営協定締結推進のモデル事例

等先進的・モデル的な地域に関する情報を収集し、これを広く全国的に提供する。 

3  男女共同参画社会形成のための施策の展開に対する取組の強化

男女共同参画社会の形成を図るため、

ア    担い手育成に最も効果的な手法の1つである改良普及事業及びこれに関連する事業においては、男女共同参画社会の形成の趣旨を踏まえた活動の一層の促進

イ     原則として国が助成措置を講じる全ての事業において、女性の参画目標の達成に向けた取組等農山漁村における男女共同参画社会の形成に向けた取組を事業採択又は事業実施に当たっての留意事項、若しくは採択基準とすること等別紙に示す具体的な取組

ウ     この他、男女共同参画の推進に向けた法律等制度の整備・充実

等総合的な取組を推進する。

4  今後の施策の一層の推進に向けて

農山漁村における男女共同参画社会の形成に向けての取組が施策においてどのように位置付けられ、これが実効あるものとなっているか否かについて、モニタリングを行い、施策の効果を分析、検証、評価し、その結果を具体的に反映させていくことが重要である。

具体的には、農林水産省本省及び地方農政局において委員会を設置し、該当事業の実施状況の聞き取りを行うとともに課題を摘出し、評価をしながら効果的な施策の方向等について検討を行う。

また、あらかじめ省内に設置する委員会等で男女共同参画の推進に関する法律、制度等であると合意された、法律、制度等の見直しを行う場合は、事前に男女共同参画関係主務課に連絡の上、必要に応じ協議を行うものとする。


(別紙)

<具体的な措置について>

1)優先採択(担い手対策等の事業における採択基準への明記)
施策の目的に担い手としての女性の位置付けを重視している事業において、家族経営協定の締結促進、市町村の審議会等への女性登用に関する目標がおおむね達成されていること、又は達成されることが確実と見込まれること、男女共同参画社会の形成に向けた体制の整備が行われていること等の要件を採択基準に設ける。

2)留意事項(「別記事業」以外の全ての事業における事業採択又は実施に当たっての女性の参画促進のための配慮について実施要領等への明記等)

別記事業以外の全ての事業において、事業の採択又は事業の実施に当たり男女共同参画社会の着実な形成を図ることに配慮するという内容を実施要領等に明記するなど男女共同参画社会の形成の着実な推進に資するものとする。

参考  農業経営対策等の基本的な実施方針における女性対策の位置付けの明確化

12年度から、各都道府県、全市町村において策定されることとなる農業経営対策等の基本的な実施方針の中に、女性の参画の促進、農山漁村における男女共同参画社会の形成のための具体的活動目標を地域の実情に即して設定する。

(別記)

今回の措置の対象から除かれる事業

  1. 考え方
    今回の措置は、農林水産業・農山漁村におけるあらゆる場面において、女性の位置付けの明確化と参画の促進を進め、農山漁村における男女共同参画社会の形成を図るために、農林水産業・農山漁村に直接的・間接的に係わる事業において、女性の参画促進のための措置を講ずることにしたものである。
    しかしながら、災害復旧、災害防止等人命や安全の確保に関するもの等は、今回の措置になじまないものと考えるところから、これを除くものとして以下のものを設定する。
  2. 除く内容
    下記内容を含む事業は今回の措置の対象から除くものとする。
  • 災害の防止等地域の安全性の確保に関するもの
  • 環境汚染の防止に関するもの
  • 農林水産業関係の作業安全に関するもの
  • 病害虫等の防除・家畜の衛生・畜産物の安全性に関するもの
  • 技術の開発・実用化(家畜の改良に関するものも含む)に関するもの
  • 消費者のみを対象としたもの
  • 既存施設の管理に関するもの
  • 農業生産の基盤の整備(農地・農業用水等に関するもの)、森林の整備、水産業の生産の基盤の整備(漁港、漁場に関するもの)に関するもの
  • 委託、国もしくは特定の団体に限定して実施されるもの及びこれに準じて行うもの(需給調整・価格安定・直接支払いなど)

お問い合わせ先

経営局就農・女性課女性・高齢者活動推進室
担当者:共同参画推進班
代表:03-3502-8111(内線5194)
ダイヤルイン:03-3502-6600
FAX:03-3593-2612

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