ホーム > 組織・政策 > 基本政策 > 食料・農業・農村基本計画の策定経過 > 新たな食料・農業・農村基本計画 > 新しい「食料・農業・農村基本計画」の素案
21世紀における農政の基本指針である食料・農業・農村基本法(以下「基本法」という。)が平成11年7月に制定されてから10年が経過した。この間、基本法が掲げた基本理念を具体化するため、食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という。)が2度にわたり策定され、これに基づき、食料・農業・農村施策が推進されてきた。
これまでの様々な取組により、新鮮な農産物や多彩で高品質な食料品が手頃な価格で食卓に並ぶようになり、また、こうした消費者のニーズに応えようとする農業者、事業者の努力も徐々にではあるが広がりつつある。反面、農業・農村は、総じて農業所得の大幅な減少、担い手不足の深刻化、非効率な農地利用、農山漁村の活力の低下といった厳しい状況に直面している。過去40年余り続いてきた米の生産調整は、結果として、生産者の間に不公平感と、麦や大豆への生産転換が円滑に進まない状況をもたらしており、また、国内農業は消費者や食品産業のニーズに十分に対応できておらず、食料自給率は低迷している。
一方、食料・農業・農村をめぐる情勢は大きく変化している。途上国の発展に伴う資源や食料の消費増加やバイオ燃料の増産などにより、農産物や肥料の国際需給がひっ迫し、輸出国は輸出規制を導入する一方、最貧国などでは飢餓や暴動が深刻化した。熱量ベースで食料の6割を輸入に依存する我が国にとって「経済力さえあれば自由に食料が輸入できる」ことは当たり前とはいえない状況となっている。これらに加え、新興国の経済成長や地球環境問題の進行、我が国経済社会の成熟化に伴う人々の価値感・ライフスタイルの多様化や環境意識の高まりなどの新たな潮流が生まれている。
我が国の農業・農村には、こうした情勢の変化に対応し、大きな役割を果たすことができる十分な潜在力がある。農地を最大限に活用すれば、食料自給率を向上させられるのみならず、世界的な食料事情の安定化にもつながる。地域に豊富に存在する未利用資源を用いて、農業や食品産業が培ってきた付加価値を高める生産技術、バイオマスや環境などの先進技術を適切に活用すれば、農村を新たな成長産業の育成の場として雇用と所得を生み出すとともに、環境面でも温室効果ガスの排出抑制などに積極的な役割を果たすことが可能となる。
さらに、良質な水・空気や多様な生物相の維持、水源のかん養、美しい景観・伝統文化の継承、国土保全への貢献など、農村で農業が営まれることにより発揮される多面的機能の恩恵は、都市住民を含め、すべての国民が広く享受していることについて、改めて思いを致す必要がある。特に、我が国は、急峻で狭い国土条件の下、外国と比べて農業の効率化に一定の限界がある中で、安価な輸入農産物の浸透や需要を上回る生産などにより農産物価格が低迷している。こうした状況は、個々の農業者の努力のみでは克服しがたいものであり、これを放置すれば、食料自給率の向上や多面的機能の発揮が脅かされ、国民全体が不利益を被るおそれがある。
我々は、このようなお金で買うことのできない固有の価値を有する農業・農村を、国民全体で支える社会を作り上げ、将来の世代に確実に継承していかなければならない。
以上の認識に立ち、今後は、国民の視点に立って、既存の思考や手法の問題点を強い決意で改善し、意欲ある者の創意工夫を引き出し、農業・農村が秘める力が最大限に発揮され、国民が将来に向けて明るい展望を描くことができるよう、農政を大転換させ、「食」と「地域」の早急な再生を図る政策体系を再構築する必要がある。
食料・農業・農村に関する施策は、国民生活や我が国の経済社会のあり方と深く結びいている。政府は、本基本計画をすべての国民の行動指針として位置付け、食料・農業・農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。なお、本基本計画は、食料・農業・農村に関する各種施策の基本となるという性格を踏まえ、今後10年程度を見通して定めるものとするが、食料・農業・農村をめぐる情勢の変化並びに施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね5年ごとに見直し、所要の変更を行うこととする。
本基本計画に基づき政策体系を再構築するに当たり、食料・農業・農村の状況を踏まえて、過去の施策がどのように機能してきたのか、また、政策の実効を期す上でどのような課題があるのかといった点を明らかにするとともに、今後取り組むべき施策の基本的な方針を整理することとする。
最近15年間に、販売農家数が3分の2に減少する中で、農業所得(農業純生産)はほぼ半減しており、農業の再生産の確保が困難となっている。
例えば、基幹作物である米は、需要が減少していく中で、生産が需要を上回り、しばしば供給過剰が生じたことや、経済低迷の影響を受けてデフレ基調となったことから、価格形成に下落圧力が加わって推移した。これが生産サイドのコスト削減努力を相殺し、所得は総じて恒常的な赤字状態に陥っている。
野菜は、食の外部化の進展に伴い、市場が青果用から加工・業務用へと変質してきたにもかかわらず、生産面での対応が遅れたことから、輸入量が増加し、販売額も減少している。また、 酪農は、飲用牛乳やバター・脱脂粉乳などの消費が減少する一方、消費が拡大しているチーズは、内外価格差が大きい中で、国産品を上回るペースで輸入品が増加している。
このような事態に至った背景としては、
[1] これまでの施策においては、主食用や生食用など、昔から続く用途の需要を満たすことに生産の重点が 置かれる中で、その用途の需要が減少したり、短期に出荷が集中する場合は、価格安定が図られるよう生産や出荷が抑制されてきたことから、加工用・業務用など新たに拡大する用途・需要に対応するための農業者による取組が十分に促進されなかったこと
[2] 農産物などの用途に応じて、求められる量、品質、規格なども様々である中で、価格、生産量、コスト、付加価値を体系的に結び付けて市場を通じて所得を最大化させる観点からの分析や検討が十分に行われず、こうした取組に対する促進策が効果的に行われなかったこと
が挙げられる。この結果、年々、主食用・生食用などの需要減少に対応して、当該品目の生産を縮小せざるを得ない状況が繰り返され、全体の所得減少につながった。
このため、農産物を用途・需要別に必要な量・仕様に従って供給することにより、農業所得を総合的かつ体系的に増大させる主体的な取組を後押しする政策が必要となっている。すなわち、農業経営の体質強化を図りつつ、「限られた用途・需要の下で生産を抑制する」政策から「多様な用途・需要に対応した生産拡大の取組を後押しする」政策への転換を図っていく必要がある。
農業者の減少や高齢化が進み、近い将来には、昭和一桁世代と呼ばれる高齢農業者の大量リタイアが見込まれている。一方、農業の将来を担うべき効率的かつ安定的な農業経営の育成は遅れており、新規就農者数にも伸び悩みの傾向がみられる中で、後継者の確保は極めて不十分な状況にある。
こうした状況に対し、これまでの施策においては、認定農業者や集落営農の育成、水田・畑作経営所得安定対策の導入等が講じられてきた。これらの施策は、対象を一部の農業者に重点化して集中的に実施することにより、我が国農業の体質強化を図ることを目的としている。
しかしながら、経済低迷と農産物価格のデフレ傾向の中で、一部の農業者に施策を集中するだけでは、生産現場において意欲ある多様な農業者を幅広く確保することができず、地域農業の担い手を育成するという目的に対する施策効果が限定的なものとなった。
このため、担い手不足が更に深刻化する前に、現場の実態に即した形で施策対象の裾野を広げ、意欲ある多様な農業者が営農を継続し、経営発展をできるようにする政策に転換していく必要がある。
また、このような施策の展開に当たっては、
[1] 地域農業の担い手を育成するための認定農業者制度において、米の生産数量目標に従って生産していることを要件に加えてきたこと
[2] 農業関係団体を経由又は活用した施策を多くの場面で採用してきたことにより、当該団体との関わりが薄い担い手に対し、施策に対するアクセス機会が十分に確保されないといった結果を招いてきたこと
など、多様な農業者を育成・確保する上での制約要因についても適切に見直していく必要がある。
さらに、農業参入に対して厳格な規制を設けていた農地制度については、平成21年に農地法等を改正し、地域と調和した適正な農地の利用を図りながら、多様な農業者が農地を利用できるようにしたところであり、これを適切に推進していく必要がある。
農地面積の減少が続き、農業生産が行われない耕作放棄地や不作付地が増加している。また、耕地利用率が低下するとともに、担い手に対する農地のまとまった利用集積が進まないなど、農地の有効利用は進んでいない状況にある。
こうした状況に対し、これまでは農地転用許可制度、耕作放棄地の解消に向けた施策や担い手に対する農地の利用集積の促進などの施策が講じられてきた。
しかしながら、農地の価格は、近隣の住宅地や商工業地などと比較すると著しく低く、常に転用圧力にさらされてきた。こうした中で、農振農用地区域など農地利用を確保すべき農地であっても、制度上、転用できないわけではなく、特に学校や病院などの公共目的の転用は許可が不要とされてきた。
このことが背景となり、農地転用の収入を期待する農家と、事業者、さらに施設用地などを確保したい行政などの利害が一致する形で、平地部などの農地転用が行われ、それが 周辺部の連鎖的な転用や農用地区域の縁辺部における区域除外を誘発した。これらは、農業所得の減少や農業者の減少と相まって、優良農地の無秩序なかい廃をもたらす要因となった。
また、遊休農地の発生については、引き受け手がいない、土地条件が悪い、十分な所得が得られる作物がないなどの様々な要因があり、従来講じられてきた対策や制度では、その解消が進まない状況にある。さらに、農地の利用については、担い手への利用集積が徐々に進んできたものの、経営する農地が分散してしまい、効率的な利用を阻む結果につながっている。
このため、農地転用規制の厳格化、耕作放棄地の解消に向けた対策の推進などにより優良農地を確保するとともに、農地を耕作する多様な農業者の確保と作付拡大を通じて、不作付地の解消、耕地利用率の向上を図る施策を整合性をもって講じ、農地の有効利用を図る必要がある。
我が国の農山漁村では、過疎化、高齢化が進む中、農林水産業が停滞するとともに、就業機会の減少が進行し、都市部よりも厳しい雇用状況が続いている。また、日常生活に必要な買物、医療、交通などの確保が不十分な地域や、集落の維持が困難になっている地域も広範に出現し、地域の活力が一層低下している。
こうした状況に対して、これまでの政策においては、農林水産業及び関連産業の振興をはじめ、都市と農山漁村の交流促進、中山間地域等における農業生産条件の不利を補正するための措置等が講じられてきた。
しかしながら、農山漁村対策は、本来、農林水産業のみならず、第2次・第3次産業、各種インフラといった関係府省の所管分野を含む施策を、地域の主体的な努力とともに体系的に組み合わせ、関係府省の連携の下に総合的に講じられるべきであるにもかかわらず、このような取組が徹底されなかったために十分な成果が挙げられていない。この点において、農山漁村及び中山間地域等の振興に関する総合的な政策の企画・立案及び推進を所掌する農林水産省が、その任務を十分果たせてこなかった点も否めない。
このため、農山漁村のあるべき姿を描き、これを関係者が共有した上で、地域資源を活用した新産業の育成、観光業との連携による交流促進、農村コミュニティの維持・再生といった施策を、政府一体となって整合のとれた形で総合的に講じることにより、農山漁村や中山間地域等の豊かさと活力を取り戻していく必要がある。
米の消費減少などの国民の食生活の変化と国内農業生産の減少により、食料自給率の低迷が続いている中で、前基本計画では、平成27年度の供給熱量ベースの食料自給率を45%に設定するなどの目標を掲げ、消費面・生産面のそれぞれから重点的な取組が行われてきた。
このうち、生産面の取組として、自給率向上を直接的な目的に掲げた生産拡大対策については、米の生産調整との関連において麦・大豆などの生産振興が進められることとなった。しかしながら、その際、生産調整の達成者のみに助成金や経営所得安定措置を講じるという手法を採用したために、麦や大豆などへの作付転換が円滑に行われず、需要に応じた生産拡大を抑制する方向に一定程度作用する側面があったと考えられる。
一方、消費面の取組として、食育運動が推進される中、近年では、朝ごはん摂取や食料自給率向上の国民運動が積極的に展開され、食料自給率を上げるべきとの国民理解も着実に浸透している。しかしながら、ご飯を食べる際に、お米を育てた農業者に感謝しながら、お茶碗についた最後の一粒までいただくといった、食についての日本人共通の価値観を広く共有し、具体的な行動を喚起したり、それを世代間で継承するための取組を促すまでには至っていない。
また、食の安全と消費者の信頼を確保するための取組が推進されてきた一方で、近年の食品に関する不祥事・事件の発生もあって、企業コンプライアンスの強化や、食品の安全性向上を含む生産・製造行程の管理の徹底が食品産業事業者に求められている。
このため、食料自給率向上に直接的な効果のある施策の優先度を高め、これを的確に推進するとともに、輸入食料の安定確保のための取組の強化、食品産業の持続的な発展、「後始末より未然防止」の考え方を基本とした食品の生産から消費に至る供給行程管理の徹底などを通じて、食料の安定供給と食品の安全の確保を図っていく必要がある。
21世紀に入り、新興国が著しい経済成長を続ける一方で、先進国では経済低迷が長期化し、資源・エネルギー、食料の世界的な争奪などの様々な問題が生じている。また、地球環境問題、新型インフルエンザといった人類共通の新たな課題が顕在化している。
国内では、賃金の伸び悩み、雇用の減少などの厳しい状況が続いている一方、人々の価値感・ライフスタイルが環境への配慮や余暇活動の重視などの形で多様化しており、我が国の農業・農村に求められる役割も大きく変化している。
今後、このような内外の経済社会の新たな潮流を的確にとらえ、農業・農村がさらに発展し、そのことが我が国全体の繁栄に結び付くよう、積極的な取組を展開していく必要がある。
近年、中国、インド、ASEAN諸国など、アジアを中心とする新興国が著しい経済成長を続けている。グローバル化、IT化がこれらの動きを一層加速させている中で、上述のような様々な問題が顕在化しており、将来的に不足することが懸念される資源・エネルギー、食料をどのように確保していくかが国際的な課題となっている。 こうした状況を踏まえ、我が国としても、これらの物資の安定確保に努めるとともに、貧困国の食料問題についても積極的に貢献していく必要がある。
また、人口減少・少子高齢化の下で、国内市場が縮小する傾向がみられる一方、アジア諸国など新興国の市場は、量的にも質的にも拡大・向上することが見込まれる。 このため、長期的にこれらの国との連携を深め、その発展を促すためにも、食料、バイオ・環境などの先進技術などの分野の施策を適切に推進していく必要がある。 特に、食品については、我が国の食品市場が縮小していくことが見込まれる中で、アジア諸国と気候風土、生活様式、食習慣などについて立場を共有できるメリットを十分活かしながら、相互に発展する環境を形成していく必要がある。
20世紀における資源浪費を伴う大量生産、大量消費、大量廃棄型の経済成長は、温室効果ガスの排出、森林の減少・劣化、環境汚染などを通じて、地球温暖化、異常気象、地下水減少、砂漠化、大気・土壌汚染、生物種の減少といった様々な問題を生み出している。21世紀は、こうした地球的課題に対応し、環境に配慮した持続可能な経済社会への転換を図り、資源の循環利用と環境負荷の低減などを目指していくことが国際社会における喫緊の課題となっており、 我が国も主導的な役割を果たしていく必要がある。
農業、農村、食品産業分野においても、環境に配慮した生産活動を適切に推進するとともに、農地土壌の二酸化炭素の吸収、農山漁村に豊富に存在するバイオマスや太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーとしての利用などの新たな取組を進める必要がある。
また、農林水産業を通じて、多くの生物に貴重な生息・生育環境を提供していることを踏まえ、農林水産分野における生物多様性の保全に向けた活動を促進する必要がある。さらに、こうした分野における我が国の技術・知見を国際協力等を通じて普及するなど、国際的な課題の解決に積極的に貢献していくことも重要である。
経済社会のグローバル化に伴い、世界の地域や国境を越えて、労働力、資源・製品、資金などが大規模かつ活発に移動する「ボーダーレス化」が急速に進行している 中で、近年の途上国の発展に伴う資源や食料の消費増加、バイオ燃料の増産などにより、農産物や肥料の国際需給がひっ迫し、国際価格は史上最高を記録した。
これを背景として、食料輸出国では自国民の食料確保のため輸出規制を導入する一方、最貧国などでは栄養不足人口が増加し、暴動の発生に至るケースもみられるなど、熱量ベースで食料の6割を輸入に依存する我が国にとっての新たな不安材料となっている。
こうした状況の中、我が国としては、穀物を中心に、自国で供給可能な食料はできるだけ自国で賄うという考え方の下で、その可能性を最大限追求しながら食料自給率の向上を図るとともに、不測時のみならず、平時から肥料、種子などの生産資材、エネルギーなどの確保も含めた総合的な食料安全保障を確立する必要がある。
さらに、食品の安全性の確保に関しては、農林水産物の国境を越えた移動の拡大に伴い、国際社会が足並みを揃えて対処する必要性が高まっている。既に多くの国の積極的な参画の下、国際機関において国際基準・規範の策定が進められており、我が国もこれらの作業に一層積極的に参画し、科学的知見・データなどの提供を通じて、これらの国際基準の策定などに貢献することが求められている。
併せて、国内においては、科学的知見・データなどを積極的に集積し、これらに基づいた食品の安全性向上のための取組を推進する必要がある。また、こうした措置を食品供給行程において生産者・食品産業事業者が確実に実施できるよう、取組を拡大する必要がある。
平成20年秋のリーマン・ショックを発端とした世界同時不況の影響から、新興国が着実に立ち直りつつある一方、欧米諸国や我が国は総じて回復が遅れており、賃金は伸び悩み、雇用が減少している。さらに、近年の資源・エネルギーコストの高騰は、回復の足取りを一層重くしている。
こうした状況を踏まえ、我が国としては、農林水産業・農山漁村が食料供給のみならず、環境、雇用、福祉、文化、コミュニティなどの多角的な観点から、21世紀の経済社会において、どのような役割が求められているのか、また、これにどう応えるべきかを真剣に考えていく必要がある。
特に、近年、農林水産業は企業などを離職した者の新たな挑戦の場として、また、農山漁村は教育・医療の場としての期待が高まっている。また、農業や食品産業が培ってきた付加価値を高める生産技術、バイオマスや環境などの先進技術は、農山漁村の多様な資源を活用した新たな成長産業となる潜在力を有している。このような視点も含め、農山漁村を起点として、我が国経済社会の発展、地域の自立を促す中長期的な道筋を明らかにしていく必要がある。
経済の回復の遅れや少子化、地域や家族のつながりの希薄化などにより、我が国経済社会の将来に対する不透明感が高まっている中で、日本人の平均寿命が80歳程度まで延び、定年後に過ごす時間も、もはや「余生」とは呼べない長さとなっている。また、人々の価値感・ライフスタイルが余暇活動の重視や環境への配慮といった形で多様化しており、UIJターン、定年帰農や都市と農村の二地域居住など、都市住民を含む様々な人々が農業・農村に積極的に関わる動きが広がっている。
このような動きの広がりとともに、美しい景観、特色ある伝統文化、希少種を含む生物の多様性など、農村で農業が脈々と営まれることで発揮される恩恵を都市住民も受けていることに対する理解が広がり始めている。さらに、高齢者の方々が農業にいそしみながら、活き活きと健康に暮らし、地域全体に活力を与えている地域もみられる。
こうした状況を踏まえ、農業・農村が人々の期待に応え、その役割が適切に発揮されきるよう、農を取り巻く多様な人々が、我が国農業・農村の果たす役割を共有した上で、「農」との絆を回復・強化する取組を促進し、国民全体が農業・農村を応援する関係を構築していく必要がある。
以上を踏まえ、本基本計画においては、これまでの農政が抱えていた既存の思考や手法の問題点を強い決意で改善し、新たな発想から農政を大転換させ、「食」と「地域」の早急な再生を図る政策体系を再構築するとともに、農業・農村の果たす多様な役割に対する国民全体の理解と協力の下、その潜在力を最大限引き出していく必要がある。
このような考え方に立ち、また、基本計画が食料・農業・農村に関する各種施策の基本となる計画であるとの性格を踏まえ、今後10年程度を見通して計画を策定し、計画期間中に取り組むべき政策改革の方向と内容、さらにはその実現に向けた取組を明らかにして、各種施策を推進する必要がある。
その際、以下の視点を踏まえ、政策手段の総合的な検証やその整合的な組み合わせを図りつつ、既存の施策の見直しや新たな施策の導入を進めていく必要がある。
新たな政策改革に当たっては、過去のしがらみや前例にとらわれず、旧来の農政手法を抜本的に転換し、関係府省間の適切な連携を図りつつ、真に効果のある施策を重点的に講じる必要がある。
このため、政策目的と政策手法の対応関係を明確化するなど、複雑な政策体系は見直し、シンプルで分かりやすいものに改善していく。また、農業関係団体を経由又は活用した施策は、これまで施策の推進の円滑化に寄与してきた一方で、政策的なメッセージ性を低下させたり、当該団体と関わりが薄い者に対する政策効果の発現を限定させる場合もあったことから、可能な限り施策対象に直接作用するものに改善する。
さらに、農山漁村の活性化や食の将来のあり方など、関係府省間での連携を要する施策や官民で課題を共有して役割分担をすべき施策については、明確な将来ビジョンを描き、これを関係者が共有した上で、総合的な政策体系を構築し、整合性のある施策を講じる。
限られた予算の中で、官と民、地方と国の役割を明確にしつつ、農業者や地域が主体性を持って経営発展や地域活性化に取り組むことができる政策を講じる必要がある。
このため、地域農業の担い手を育成するための認定農業者制度において、米の生産数量目標に従って生産していることを要件化してきた仕組みや、農業参入について農地制度が設けていた規制など、施策対象者の主体性の発揮を阻んでいる制度については、地域の多様な関係者の声や地域の実情を踏まえながら、適切な見直しを行うとともに、既に見直しが行われているものについては、その定着を促進する。こうした取組を通じて、国として最小限の条件整備を行いながら、意欲ある者が主体性と創意工夫を発揮することを促す「個々の取組を大切にする施策」に転換する。
また、生産基盤や施設などの整備においては、機能性や安全性を確保した上で、地域の実態に見合った、より低コストな整備がなされるよう改善を図る。
農業・農村は、産業としての役割だけでなく、都市と共存しながら、国民の多様な価値観やライフスタイルを受け止める場となることが期待されている。一方、こうした役割の発揮は、農業・農村の健全な発展が、地方の経済や文化、都市の食や暮らし、国土・環境などの様々な安心につながるという国民の理解と具体的行動が前提となる。
このため、各種メディアやITなどを活用し、また、関係者の主体的取組を引き出しながら、農業・農村の価値や役割についての認識を国民全体で共有する取組を強化し、食料自給率の向上や地域活性化につながる取組を広範に展開する。
その際、それぞれの取組が持続性を発揮しつつ実効あるものとなるよう、地域の消費者、生産者、事業者などが、農業・農村を軸として相互に連携し発展する、「農」を支える多様な連携軸の構築を図る。
世界の食料需給はひっ迫基調にあり、食料輸入国が世界各地の農地を買い集める動きさえ起こっている。多くの国民を抱える我が国にとって、中長期的な食料の確保に不安を抱えていると言わざるを得ない。このため、今後の農政にとって、特にひっ迫が予想される穀物を中心として最大限食料自給率の向上を目指すことが必要となっている。
一方、食料生産を支える我が国の農村は、極めて厳しい状況にある。過疎化、高齢化が止まらず、これに兼業機会の減少も重なり、地域の活力がますます低下している。このため、水田をはじめとした我が国の貴重な農地資源が十分活用されず、耕作放棄地の増加さえ起こっている。基幹的な農業従事者の平均年齢が年々高まり、65歳を越えている現在、世界の食料需給のひっ迫に対応して食料自給率の向上のための戦略を描くことは、既に極めて困難な課題である。
しかしながら、我が国には、農地・農業用水等の資源や、高度な農業技術、人的資源がなお現存する。食料自給率向上に向けて、生産者、食品産業事業者、消費者等すべての関係者が最大限努力し、様々なブレイクスルーを実現し、克服すべき課題が解決されれば、今なら食料自給率向上のための戦略を描くことは可能である。
このためには、まずは、上述のような状況を国民全体の共通認識とし、農業を立て直すことを旨として、戸別所得補償制度の創設や農業・農村の6次産業化等により意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整えることが必要である。また、生産された国産農産物が消費者や食品産業事業者によって選択されるよう農業者が需要に応じた生産に取り組む必要がある。
平成32年度の総合食料自給率目標は、以上のような国際情勢、農業・農村の状況、課題克服のための関係者の最大限の努力を前提として、我が国の持てる資源を全て投入した時に初めて可能となる高い目標として供給熱量ベースで50%とする。また、野菜・果実や畜産物等の生産活動をより適切に反映する生産額ベースの総合食料自給率目標は、70%とする。
食料自給率向上に向け、生産面では、まず、水田をはじめとした生産資源を最大限活用することが必要である。特に、小麦の二毛作を飛躍的に拡大するとともに、作付けられていない水田や有効利用が図られていない畑地を有効に活用した米粉用米・飼料用米、大豆等の作付の大幅拡大、技術開発とその普及を通じた単収・品質の向上、耕作放棄地の解消等を通じた農地の確保を推進する必要がある。
なお、飼料用米については、主食米への転換が容易であることから、実質上不測時の食料安全保障にも資するものである。
また、消費面からは、人口減少社会・高齢化社会の一層の進展が見込まれる中で、従来以上に消費者理解を得ながら、潜在的需要の掘り起こし等を進め消費者や食品産業事業者に国産農産物が選択されるような環境をつくることが必要である。特に、我が国総人口の1割強に相当する約1,700万人にも及ぶ朝食欠食の改善による米の消費拡大や、健康志向の高まりを受けた脂質の摂取抑制などに取り組む必要がある。また、大豆加工食品について国産大豆の使用割合の大幅引き上げに取り組む必要がある。
更に、単に和食への回帰を狙うだけでなく、技術開発の進捗等を踏まえ、欧風化した現在の食生活を前提とした国産化に戦略的に取り組む必要がある。特に、現在浸透しているパン食、めん食についての国産小麦・米粉の利用拡大、畜産物についての飼料自給率の向上に取り組む必要がある。
なお、主要品目毎の生産数量目標及び克服すべき課題は表1のとおりである。
政府としては、これら関係者の取組を下支えするとともに、適切な情報提供を行う必要がある。他方、農業者には需要をつかみ、品質を向上し、コスト縮減に取り組む徹底した努力が求められる。
また、上記のとおり食料自給率の向上は関係者の努力の上に成り立つものであり、国民の理解なしには達成できないものである。このため、国際的な食料事情や我が国の食料事情(食料自給率が変動した要因を含む)及び農業の多面的機能について、国民に対し分かりやすく情報提供していくことが重要である。加えて、供給熱量と摂取熱量との差が拡大している現状にかんがみ、食料安全保障の観点から食べ残しの縮減に日頃から取り組むことが必要である。
更に、個々の施策についても、前記のとおり潜在的需要の掘り起こし等需要に応じた生産を前提に、個々の施策の有効性を毎年検証し、食料自給率向上に向けた施策の重点的、効率的執行に努めていくことが重要である。
国民の食生活を支える農林水産物や食品の生産から消費に至るフードチェーン全体において、様々な問題が生じてきている中、安全な食料を安定供給し、国民が安心を実感できる食生活の実現に向けた政策を確立する必要がある。
このため、国産農林水産物や食品の安全性の向上のため科学的知見に基づく施策・措置の提示や、これらを活用した国内の食品供給行程における取組の拡大を進め、食の安全や消費者の食に対する信頼を確保する。また、食品産業の持続的な発展を図ることにより、消費者の多様なニーズに適応した食料の安定供給を図る。さらに、不測時のみならず平素からの対策も含めた総合的な食料安全保障を確立する。
[1] 食品の安全性の向上
「後始末より未然防止」の考え方を基本とし、国産農林水産物や食品の安全性を向上させる。このため、食品中の危害要因の含有実態調査を実施するとともに、科学的根拠に基づく安全性向上のための取組を指針等として提示する。
これらの食品の安全性向上に加え、安全な生産資材の確保や動植物防疫の推進等幅広い分野において、安全性向上に活用するための調査研究とその結果の科学的解析を組み合わせ、それに基づく施策・措置とその企画や立案を推進する。
また、科学的知見・データ等の積極的な提供等を通じ国際基準・規範の策定に貢献する。
[2] 食品供給行程における取組の拡大
国産農林水産物や食品の安全性の向上のため、生産者・食品産業事業者が、食品供給行程において、科学的知見に基づく取組を確実に実施できるような体系を構築する。
ア 生産段階における取組
農業生産工程管理(GAP)については、生産者の主体的な取組が進んだが、未だ産地の導入状況は限定的なものにとどまっている。また、国内に様々なGAPが存在するとともに、科学的知見や消費者・実需者のニーズを踏まえた取組への対応も十分に進んでいない状況にある。このような実態を踏まえ、食品安全に加え、環境保全、労働安全のように幅広い分野を対象とする高度な取組内容を含むGAPの共通基盤づくりを進めるとともに、産地における更なる取組の拡大と取組内容の高度化を推進する。
また、安全な食品の安定供給のために、安全な生産資材(農薬・動物用医薬品・飼料・肥料)の確保を図るとともに、その適正な使用を推進する。
イ 製造段階における取組
危害分析・重要管理点(HACCP)については、導入費用がかさみ、中小規模層において取組が進んでいない実態を踏まえ、「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」に基づく長期低利融資に加え、食品の製造実態に応じた低コストで導入できる手法を構築し普及するとともに、現場責任者などの養成のための取組を強化する。
また、HACCP手法の導入が困難な零細規模層に対して、HACCP手法の前提となる一般的衛生管理を徹底する。
ウ 流通段階における取組
食品に係るトレーサビリティについては、「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」に基づき、米穀等の取引等の記録の作成・保存の義務化を内容とするトレーサビリティ制度の導入を円滑に進める。さらに、国民の健康保護、適正な表示、流通の確保を図る観点から、米穀等以外の飲食料品についても、米穀等に係る制度の実施状況を踏まえ、入出荷記録の作成・保存の義務付け等について検討し、その結果に基づいて制度的な対応措置を講じる。また、対応の遅れている農林漁業者や中小食品産業事業者における取組の拡大を図る。
エ 輸入に関する取組
輸出国政府との二国間協議や現地調査等の実施、情報等の入手のための関係府省との連携の推進、監視体制の強化などにより、輸入食品の安全性の確保を図る。
[3] 食品に対する消費者の信頼の確保
米穀等以外の飲食料品についてのトレーサビリティ制度の検討等に加え、消費者にとって分かりやすい食品表示のあり方について検討を進めるとともに、加工食品等における原材料の原産地表示の義務付けを拡大する。
また、JAS規格の策定と見直しの手続の透明化を積極的に推進するとともに、インターネット通信販売等における食品情報の標準的な提供方法など新たな規格について検討し、可能なものからJAS規格化する。
さらに、食への信頼向上に向けた食品事業者の主体的な活動を促すため、食品の品質管理や消費者対応等の取組に関する情報の積極的な提供を働きかけるとともに、この取組が取引先や消費者により適正に評価される機会を増大させる。
[1] 国民との結び付きの強化
国産農作物の潜在的な需要の掘り起こしや栄養バランスの改善を通じて、農業と国民の結び付きを強化する。特に、朝ごはんの摂取促進や米飯学校給食の推進等を通じた米の消費拡大を図るとともに、パン食やめん食を前提とした国産小麦・米粉の利用拡大、輸入原料・飼料の利用割合が高い大豆加工食品や畜産物への国産大豆・飼料の利用増加、健康面からの野菜や果実の摂取増加などについて、食品産業事業者、農業団体等の主体的な取組を促す。また、食生活の改善や食の安全を確保するためには、国民が自ら食のあり方を学ぶことも重要であることから、引き続き食育を推進する。
こうした考え方を踏まえ、食育推進基本計画の見直しを検討する。
[2] 地産地消の推進
地産地消の取組の成功事例や新たな取組等の情報を収集・紹介しつつ、幅広い者の主体的な取組を促すとともに、取組の核となる直売所において、取り扱う地場農産物の品目・数量の拡大や直売所間の連携を通じた周年的な品揃えの充実など、運営・販売力の強化を図る。
また、生産者・農業団体と実需者である学校給食や社員食堂、外食・中食事業者などとの連携を通じた地場農産物の利用を拡大するため、交流機会の拡大やマッチングの促進、安定した納入体制の構築を推進する。
国民への食料の安定供給や国産農産物の最大の需要先として重要な役割を果たしている食品産業が、国内外の原料の調達リスクの高まりや人口減少・高齢化等による国内市場の構造変化等の課題に対応することで、引き続きその役割を果たしていくことが必要である。 このことが食料自給率向上や農業・農村の6次産業化にも資する。
このため、食品産業全体の将来展望や課題について官民で共有した上で、それぞれの役割分担を踏まえた対応方向を明らかにする「食品産業の将来方向(仮称)」を平成22年度に策定する。また、これを踏まえて、必要に応じて、麦関連産業など個別分野ごとにそれぞれの課題への対応方向等を明確化する。
[1] フードチェーンにおける連携した取組の推進
フードチェーンの適切な機能の発揮を図るため、食品産業による国内農業との連携強化や農業への参入促進、海外からの原料調達の安定化に加え、食品流通の効率化・高度化に係るフードチェーンの各段階で連携した取組を推進する。また、取引情報の標準化など、フードチェーンの関係者間で伝達が必要な事項の共通化の取組を推進する。
卸売市場については、コールドチェーンシステムの確立など生産・消費ニーズへの的確な対応や公正かつ効率的な取引の推進等により、その機能強化を図る。併せて、卸売市場の機能強化を支えるため、戦略性のある市場運営の確保、市場の再編や卸・仲卸業者の経営体質の強化を推進する。
さらに、高齢化の進展等に対応し、民間事業者による多様な配達サービスが健全に展開されること等により、消費者への食料品の円滑な提供を図る。
[2] 国内市場の活性化
食品産業の基盤となる国内市場について、地域資源を活用する農商工連携、地域ブランドの活用等を促進するとともに、高齢者が飲食しやすい食品など消費者のニーズに合った新商品・メニューの開発を進めることなど、新たな価値を創造し、質が高く多様性に富んだ国内市場の維持・回復を進める。
また、企業としての社会的責任を果たすため、環境配慮への要請等を踏まえ、温室効果ガスの排出削減、食品廃棄物の削減と資源の有効利用を促進するとともに、消費者とのコミュニケーションの強化等の自主的な取組やコンプライアンスの徹底を推進する。
[3] 海外展開による事業基盤の強化
アジア等における日本の食文化の発信の強化と連携した形で食品製造・流通業の現地生産・販売の取組や外食産業の進出を促進することにより、その事業基盤を強化し、我が国の食料の安定供給の確保等を図る。
国民に食料を安定的に供給するためには、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせることにより確保することとしている。
他方、グローバル化の進展、食料品の生産流通過程の複雑化等により、フードチェーンの各段階において食料の安定供給を不安とする様々な要因が生じている。
こうした不安要因に的確に対応するためには、不測時のみならず平素から、食料の供給面、需要面、食料の物理的な入手可能性を考慮するアクセス面等を総合的に考慮し、関係府省との連携も検討しつつ、総合的な食料安全保障を確立していくことが必要である。
[1] 生産資材の確保等生産面における不安要因への対応
農業生産に不可欠な生産資材の安定供給に向け、使用量抑制対策に加え、海外から輸入する肥料原料の安定確保対策等を講じる。
特に、肥料については、 土壌診断に基づく施肥設計の見直し等により適正施肥の徹底を図るとともに、耕畜連携によるたい肥の有効活用等により、総合的な対策を推進する。加えて、ほとんどを海外から輸入する化学肥料の原料について、新たな輸入相手国の探索による原料輸入国の多角化等を通じて、その安定確保に向けた取組を戦略的に推進する。
また、農産物の品種改良に不可欠な遺伝資源を確保するため、効果的な遺伝資源の収集・保存・提供機能を強化し、地球温暖化への対応等食料の安定供給に資する品種の育成・改良に貢献する。
輸入検疫や国内防除・防疫措置の強化については、植物の病害虫や家畜等の伝染性疾病の海外からの侵入や国内のまん延の防止を徹底するため、リスク評価に基づく的確なリスク管理措置を実施する。
[2] 流通、消費面における不安要因への対応
新型感染症等に起因する大規模な流通の混乱等に備えた食料供給の確保の方策を、民間事業者の能力を活用しつつ推進することにより、食のライフラインの確保を図る。
また、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」において、米・麦の供給が不足する事態に備えるための措置として米・麦の備蓄が位置付けられていることを十分に踏まえ、消費者への安定的な供給を確保することを旨として、その適切かつ効率的な運営を行う。
[3] 国際的な食料の供給不安要因への対応
ア 国際食料需給・価格動向分析
世界の食料需給の不安定化に伴い、中長期の様々な変化に対応したシナリオで予測を行うこと等により、国際需給の分析能力を強化する。
また、各国規制当局と連携した商品先物市場の監視等により、穀物市場の公正な価格形成機能等の発揮に努め、食料品の安定的な価格での提供に貢献する。
イ 国際協力の推進
世界の食料安全保障に貢献するため、アフリカ諸国をはじめとする開発途上国の農業・農村の振興や食の安全に関する技術協力、資金協力やこれらの地域に対する食料援助を実施する。また、東アジア地域における大規模災害等の緊急時に備えるアセアン+3(アセアン諸国+日中韓)緊急米備蓄の実現に向けた取組を行う。
ウ 海外農業投資の支援
世界の食料安全保障への貢献及び我が国の農産物輸入の安定化・多角化を図る観点から、官民連携して海外農業投資を支援する。併せて、国際的な行動原則の策定を推進し、責任ある国際農業投資を促進する。
WTOドーハ・ラウンド農業交渉については、今後とも「多様な農業の共存」という基本理念の下で主張を展開し、各国の農業が相互に発展することができる貿易ルールの確立を目指して、食料輸入国としての我が国の立場を最大限反映すべく、取組を継続する。また、東アジア等における地域連携の推進に当たっては、我が国を含む関係国の食料の安定供給に資する取組を進めるとともに、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)について、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わないことを基本に取り組む。
農業が、国民が求める食料の安定供給などの役割を持続的に果たしていくためには、農業者が、希望を持って農業を継続できる環境を整えていくことが必要不可欠である。このため、意欲あるすべての農業者が農業生産活動を通じて所得を確保できるよう措置するとともに、農業を通じた新たな付加価値の創出、多様な農業者の育成確保、農業生産の基盤となる優良農地の確保と有効利用などの取組を進める。
我が国農業の産業としての持続性を速やかに回復させ、食料自給率の向上と多面的機能の維持を図るためには、農業生産のコスト割れを防ぎ、兼業農家や小規模経営を含む意欲あるすべての農業者が将来にわたって農業を継続し、経営発展に取り組むことができる環境を整備する必要がある。このため、販売農家を対象に、農産物の販売価格と生産費の差額を国から直接交付金として支払うことを基本とする「戸別所得補償制度」を導入する。
併せて、作目別に講じられてきた生産関係施策を再整理し、政策目的と政策手法の対応関係を明確化するとともに、多様な用途・需要に対応した生産拡大の取組を後押しする政策への転換を図る。
[1] 戸別所得補償のモデル対策と米の需給調整
ア 水田におけるモデル対策の実施
平成22年度から、我が国の農地面積の過半を占め、農業の中心的な役割を果たしてきた水田農業を対象として、 米を「生産数量目標」に即して生産した販売農家・集落営農に対して、標準的な生産に要する費用と標準的な販売価格の差額分を交付する 。併せて、米の「生産数量目標」の達成にかかわらず、自給率の向上を図るために、麦・大豆・米粉用米・飼料用米等の戦略作物の生産に対して、主食用米並みの所得を確保し得る額を交付する。 これらの助成については、農業関係団体を経由した間接的な手法によるのではなく、施策対象者である農業者に対して直接交付する手法で実施する。
イ 米の需給調整の推進
主食用米の需要は、人口の減少や高齢化の進展等により今後も減少していくことが見込まれるため、引き続き需給調整を図ることが必要である。このため、年度ごとに需要実績等に基づき「生産数量目標」を策定・配分し、需要に応じた米の供給を推進する。
その際、「生産数量目標」に即した生産を行った農家等が戸別所得補償制度の対象となることから、できるだけ多くの農業者が需給調整に参加するよう、目標の未達成分を翌年の目標から控除する等のペナルティ的措置は平成22年産からは実施しないこととし、需給調整に伴う強制感を払拭するとともに、農業者の不公平感、閉塞感を一掃する。
[2] 戸別所得補償制度の本格実施
平成23年度からは、平成22年度に実施するモデル対策の実施状況を踏まえて、戸別所得補償制度を本格実施に向けて検討する。
この場合、まずは恒常的に販売価格が生産費を下回っている米、麦、大豆等の土地利用型作物を対象に制度設計を行うこととするが、具体的な対象品目については、生産費等のデータの充実を図りつつ、更に検討を進める。また、規模、品質、環境保全の取組等に応じた加算について、他の生産・経営関係施策や地域資源・環境の保全のための施策等との関係を整理しつつ、制度上の位置づけを検討する。
畜産・酪農については、現在講じている畜種ごとの畜産経営安定対策の実施状況等を踏まえ、畜産・酪農所得補償制度のあり方や導入時期を検討する。
また、野菜・果樹については、恒常的に販売価格が生産費を下回っている状況にないため、戸別所得補償制度の仕組みがそのまま適用されることにはならないが、消費者ニーズに即した商品の安定的な供給や経営安定の確保等を図る観点から、新たな支援策を検討する。
なお、制度の円滑な実施に必要なデータを把握するため、所要の統計を整備する。
[3] 生産・経営関係施策の再整理
戸別所得補償制度の導入に併せて、既存の水田・畑作経営所得安定対策、品目ごとに実施されている経営安定対策との関係を整理し、簡素で分かりやすい政策体系に整理するとともに、米の生産調整の達成が、認定農業者制度の要件になっていることについて、政策目的と政策手法の対応関係を明確化する観点から見直しを行う。
また、これまで品目別に実施されてきた各種生産振興施策について、品目ごとに克服すべき課題については解決に向けた対策を講じつつ、品目を問わず必要とされる施策についてはメニュー化・統合化を進めるなど、国民にとってより分かりやすく、使いやすい施策にしていくための改善を図る。
農業が産業としての持続性を確保するためには、農業者や産地が経営戦略に沿ってニーズに対応した供給を行い、生産の維持・拡大や多角化等の経営発展につなげ、農業・農村の6次産業化等による売れる農業・儲かる農業を実現することで、農業者の所得を増大させる必要がある。
このため、食生活の変化や地域の実情、品目ごとの特性を踏まえ、加工や直接販売等による付加価値の向上、農産物の品質向上やブランド化の推進等による販売価格の向上、 増加しつつある加工・業務用需要への供給増や輸出等による販売量の拡大、作業規模の拡大、基盤整備の推進や資材価格・使用量の低減等によるコストの縮減を体系的に実施する取組を重点的に推進する。
これを通じ、農業を起点として新たな付加価値を地域内で創出し、雇用と所得を確保し、若者や子供も農村に定住できる地域社会を実現することを目指す。
[1]生産・加工・販売の一体化
農業者が、加工、販売などに主体的に進出し、経営を多角化・高度化する取組を支援することにより、生産・加工・販売の一体化を推進する。また、食の外部化に伴い、生鮮品から加工食品へ需要がシフトする中で、加工食品や外食等も含めた多様なニーズにきめ細かく迅速に対応できるよう、加工・流通(販売)や外食・中食と農業サイドの連携を強化し、実需者との契約による加工用農産物の生産・販売や、産地における一次加工の取組などを推進する。また、食品産業事業者などの農業参入を推進する。
[2] 産地の戦略的取組の推進
農業者の所得の増大を図る上では、産地単位の取組が効果的であることから、生産・販売戦略を策定し、その下で、基幹施設の整備、商品開発や販路開拓、産地間連携や耕畜連携、地域ブランドの確立といった生産体制と販売企画力の一体的な強化を通じて収益力を高める取組を促進する。その際、 普及指導員等と新技術、経営、販売、加工等の多様な外部専門家が連携して指導を行う体制を構築する。
[3] 収益性の高い部門の育成・強化
農業所得の増大、農地の有効利用を図る観点から、非食用作物についても育成・強化を図る。特に、産出額世界第3位の花きについても、生販連携を通じて輸入品に対する競争力の強化を目指す。
また、農産物の機能性成分に着目し、新たな食品素材や工業・製薬原料になり得る農産物について、有効性確認及び安全性確保に配慮し開発・発掘を行うとともに、製品化に向けた産地と企業のマッチングなどを進める。
さらに、周年・計画生産が可能な植物工場等の高度な施設園芸について、低コスト化技術、高付加価値化技術の開発・実用化等を推進する。
[4] 農林水産物・食品の総合的な輸出促進
世界的な日本食の広がりやアジア諸国等における経済発展に対応し、高品質な我が国の農林水産物・食品の海外販路を維持・拡大することにより、輸出額を、平成32年までに1兆円水準とすることを目指す。このため、輸出環境の整備をはじめとする総合的な輸出戦略を策定する。また、輸出促進を図る品目及び国・地域を重点化し、工程表を策定した上で、日本食・日本食材等の海外における需要拡大、日本の食文化の発信など、輸出を目指す農林漁業者・食品産業事業者の取組を促す各種の施策を実施する。
[5] 農業生産資材費の縮減
生産資材のコスト縮減に向け、単肥や単肥を混合した配合肥料、エコフィード等の低コスト飼料、大型包装農薬やジェネリック農薬、中古農業機械等の低コスト資材の活用を推進する。 また、 土壌やたい肥中に含まれる肥料成分を踏まえた施肥等による肥料利用効率の向上、総合的病害虫・雑草管理(IPM)を通じた農薬使用量の抑制等により、資材の効率的利用を促進する。
さらに、これらの取組の推進に向け、都道府県や資材の製造、流通、販売事業者の団体が策定している資材費低減のための行動計画の見直しを促進する。
なお、農作業の安全対策を強化するため、都道府県や農業機械販売店などの関係者の協力の下、農業者の意識の向上を促進するとともに、農業機械の安全性の向上を進める。
戸別所得補償制度の導入により、兼業農家や小規模経営を含む意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整備するとともに、新規就農者を幅広く確保し、農業経営の多角化・複合化など6次産業化による付加価値の向上分を経営に取り入れる取組を後押しすること等により、競争力ある経営体を育成・確保する。このような経営体が地域農業の担い手として、継続的に発展を遂げた姿である効率的かつ安定的な農業経営をより多く確保することを目指す。 このため、地域の関係機関が一体となって支援を行う体制により、技術や経営能力の向上などの取組を促進する。
[1] 意欲ある多様な農業者による農業経営の育成・確保
ア 家族農業経営の育成・確保
戸別所得補償制度の実施に併せ、地域農業の担い手の中心となる家族農業経営について、経営規模の拡大や農業経営の多角化・複合化等の取組による経営改善を促す。その際、農業者の自主的な申請に基づき市町村など地域の関係機関が協力して地域農業の担い手を育成・確保する仕組みとして定着・普及している、認定農業者制度の活用を推進する。活用に当たっては、年齢や経営規模による制限や兼業農家は認めないといった制度に対する誤解の解消に努めるとともに、各地域での効果的な制度運用を推進する。
イ 集落営農の育成・確保
地域農業の生産性向上、経営規模が零細で後継者が不足している地域における農業生産活動の維持等を図るため、小規模な農家や兼業農家も参加した集落営農の育成・確保を推進する。このため、地域における新たな組織づくりに必要な合意形成を促進するとともに、地域の実情を勘案し、集落営農の法人化や地域農業・農地の維持等の取組を推進する。
ウ 法人経営の育成・確保
法人経営は、地域における雇用創出や農業生産活動により、地域の所得向上や活性化に寄与していることから、その育成・確保を図るため、法人化を目指す農業者や農業への参入を希望する会社、NPO(非営利団体)等に対する情報提供等の取組を推進する。 また、経営の多角化・複合化などの6次産業化を促進するため、人材の育成、施設・機械の整備、資金の調達等を推進する。
[2] 人材の育成・確保
ア 新たな人材の育成・確保
意欲ある多様な農業経営が展開されるよう、幅広い人材の育成・確保を推進する。その際、農業者子弟の後継者としての就農、雇用の形での就農、非農家出身者の参入、中高年齢層の帰農など、就農形態や経路が多様化していることに対応し、それぞれの就農形態・経路に即した各種情報提供、農業高校や農業大学校等における人材育成、農業法人や海外等での実践的な研修等を支援する。また、経営開始に当たっての農地の確保や機械・施設等の整備への支援を講じることにより、新たな人材の育成・確保を推進する。
イ 農村を支える女性への支援と高齢農業者の活動の促進
農業人口の過半を占め、農業や地域の活性化で重要な役割を果たしている農村女性の農業経営への参画や、地域資源を活用した加工や販売等に進出する女性の起業活動を促進する。また、女性の地域社会への一層の参画を図るため、家族経営協定の締結の促進等を通じ、農村における仕事と生活のバランスに配慮した働き方を推進するとともに、政府の男女共同参画に関する目標の達成に向け、農協の女性役員や女性農業委員等の登用増などの目標を設定し、その実現のための普及啓発等を実施する。
また、農村の高齢者が農業生産活動を継続していけるよう、ヘルパー制度を含む地域内外での助け合い活動の促進や労力低減に向けた技術開発などを進めるとともに、その有する豊富な知識や経験を新たな農村資源としてとらえ、高齢者がそれを活用して生涯現役で農業や地域活動に取り組めるよう、世代間交流や地域文化の伝承活動を促進する。
[3] 作業を受託する組織の育成・確保
農作業の外部化により、高齢化や担い手不足が進行している生産現場の労働負担の軽減を図るとともに、規模拡大や主要部門への経営資源集中等を通じた経営発展を促進する観点から、地域の実情を踏まえつつ、生産受託組織や酪農などのヘルパー組織の育成・確保を推進する。
[4] 多様な農業経営の特性に応じた資金調達の円滑化
意欲ある農業者が、それぞれの経営の発展段階に応じ、自らの創意工夫を活かした農業経営の発展を目指すことができるよう、資金調達の支援を図る。この一環として、農業者の資金借入れの際の負担軽減や民間資金の有効活用等を通じて、経営の特性に応じた資金調達の円滑化や多様化などを推進する。
農地制度については、平成21年に農地の確保や有効利用を図る観点から農地法等を改正したところであり、この新たな農地制度を確実に運用していく。
[1] 計画的な土地利用の推進、転用規制の厳格化
新たな農地制度に基づく農地の転用規制の厳格化及び農業振興地域制度の拡充と、これらの適切な運用を通じ、優良農地の確保を実効あるものとする。
[2] 意欲ある農業者への農地集積の推進
土地利用型農業において、意欲ある農業者に対して地域の実情に応じて農地の利用集積を進めることにより、農地の有効利用を促進する。その際、農地保有合理化事業、農用地利用改善事業や基盤整備の活用などによる農地集積に加え、市町村、市町村公社、農業協同組合等が、農地の所有者の委任を受けて、その者を代理して農地の貸付けを行うこと等を内容とする農地利用集積円滑化事業の取組を推進する。
[3] 耕作放棄地対策の推進
耕作放棄地の解消に向けて、再生利用の取組に対する支援を実施するとともに、関連施策を必要に応じて活用する。これと併せて、農地制度の見直しによる農業委員会の役割強化等の遊休農地解消に向けた措置を適切に運用する。これらの取組を主体として、農用地区域を中心に再生・有効利用を目指す。
[4] 農地情報の利活用の推進
農地の整備や利用の状況等を集約する農地情報(地図情報)の整備を促進し、今後、戸別所得補償制度をはじめ、耕作放棄地の発生抑制・再生利用対策、農業生産基盤の保全管理や整備などの各般の農業施策等における利活用を推進する。
農業災害の発生時における損失の合理的な補てんにより、農業経営の安定を図るため、農業災害補償制度の更なる合理化及び効率的運営に取り組む。
農業生産基盤の保全管理と整備については、生産性の向上や作物選択性の拡大を通じて、我が国の食料供給力を支える役割を担っているところであるが、昨今の厳しい財政事情や食料自給率の低迷の下、より効果的・効率的に実施することが求められている。このため、施策体系や事業の仕組み等の抜本的な見直しを進めることにより、国民の理解を得て、農業生産基盤の保全管理と整備の新たな展開を図る。
[1] 国民の食料を支える基本インフラの戦略的な保全管理
基幹的水利施設は、我が国の食料生産に不可欠な基本インフラであるが、国や地方自治体、管理者の財政のひっ迫等により、これらの機能の将来にわたる安定的な発揮に不安が生じている。このため、国と地方の適切な役割分担の下で、リスク管理を行いつつ、施設のライフサイクルコストを低減し、施設機能の監視・診断・補修・更新等を機動的かつ確実に行う新しい戦略的な保全管理を推進する。
[2] 地域の裁量を活かした制度の推進
従来の施設ごとに国が一部を補助する施策体系を改革し、地域の創意工夫を活かした新たな交付金を導入する。その際、地域の裁量で実施内容などを選択できる、地域のニーズに即した柔軟な対応を可能とする仕組みとし、地域特性を反映した整備を促進する。
[3] 食料自給率の向上等に資する基盤整備の推進
食料自給率向上を図る上で必要となる、農作物の作付面積の拡大、単収・耕地利用率の向上には、生産基盤の整備により、生産性の高い優良農地を確保することが不可欠である。このため、水田の有効活用による麦・大豆の生産拡大を実現する農地の排水対策を重点的に推進するとともに、地下水位制御システムなどの新たな技術の導入を推進する。また、米粉用米・飼料用米の生産拡大等に応じて、地域で必要な農業用水を確保できるよう、ハード・ソフト施策の両面からきめ細かな対策を講じる。
化学肥料・化学合成農薬の使用低減のみならず、農地での炭素貯留量の増加につながる土壌管理、水田生態系の向上につながる冬期湛水管理や地域に土着する天敵昆虫等の生物機能を活用した農法など、環境保全効果の高い営農活動の導入を促進する。また、当該営農活動についての環境保全効果や農業経営への影響を把握するための調査を実施する。さらに、こうした取組を行う農業者のネットワーク化を進め、活動の拡大を図る。
また、有機農業については、いまだ点的な取組に過ぎないという実態を踏まえ、有機農業技術の確立・普及、産地規模の拡大や産地間の連携による安定供給の確保、有機農業に対する消費者理解の促進等に向けた取組を推進する。
なお、農業生産活動による環境保全機能の維持・向上に関する直接的な助成手法のあり方については、他の生産・経営関係施策や地域資源・環境の保全のための施策等との関係を整理しつつ、戸別所得補償制度の加算制度の検討と併せて、適切な施策の推進方向について検討する。
我が国の農村は、多様な農業の担い手が営農にいそしむことで、地域経済の活力を支えつつ、地域の環境や伝統文化の保全に貢献する一方、都市部に対しては、食料を安定的に供給することはもちろん、青壮年の労働力の提供や経済不況時における雇用の受皿としての役割も担うなど、多面的な機能を備えている。こうした多面的機能は、国民全体が享受するものであることから、農業・農村を支える取組は、都市を含む国民全体の安心をもたらすものと考えられる。このような認識の下、農村の有する機能を今後とも十分に発揮していくためには、国と地方の適切な役割分担の下、農業・農村の6次産業化により農村経済の活性化を進めつつ、これらの地域が抱える不利な農業生産条件を補正し、生活条件の整備を含めた集落機能の維持と生態系や景観を含む農村環境の保全等を支援していくことが必要であり、これらの施策を、現場で効果が実感されるものとなるよう再構築する。
農業者による生産・加工・販売の一体化や、農業と第2次・第3次産業の融合等により、農山漁村に由来する農林水産物、バイオマスや農山漁村の風景、そこに住む人の経験・知恵に至るあらゆる「資源」と、食品産業、観光産業、IT産業等の「産業」とを結びつけ、地域ビジネスの展開と新たな業態の創出を促す農業・農村の6次産業化を推進する。
これらの取組により、新たな付加価値を地域内で創出し、雇用と所得を確保するとともに、若者や子供も農山漁村に定住できる地域社会を構築する。
[1] 「地域資源」を活用した「産業」の創造
農林水産業及び農山漁村に由来する農林水産物、副産物等の地域資源を最大限活用するため、農林水産業を軸とした地場産業を活性化するとともに、技術革新や農商工連携等を通じ、様々な資源活用の可能性を追求する。その際、潜在的な需要を開拓して新たな素材や新商品を開発するとともに、他産業における革新的な活用方法の創出と新たなビジネスモデルの創造を推進する。特に、緑と水の環境技術革命として、素材・エネルギー・医薬品などの分野で先端技術を活用した新産業を創出するため、戦略を策定し、これに基づいて各種施策を展開する。また、地域資源を活用した産業の創出に携わる人材を育成する取組を推進する。こうした取組を通じ、農林水産業や農山漁村に関連する資源を活用した産業を新たな成長産業とすることにより、6兆円規模の新産業を農山漁村地域に創出する。
[2] バイオマスを基軸とする新たな産業の振興
農村地域に豊富に存在する稲わら、剪定枝等の未利用資源、食品残さ等の廃棄物といったバイオマスを活用して、エネルギーやプラスチック等の様々な製品を生産する地域拠点の整備を進め、そのためのビジネスモデルの構築を行うとともに、これらの取組に必要とされる技術の開発・実証等に取り組む。また、生産されたバイオマス製品を石油代替資源として積極的に地域で利活用する取組を推進する。
[3] 農村における再生可能エネルギーの生産・利用の推進
農村には、バイオマスの他にも、未だ十分な活用が図られていない太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーが豊富に存在している。このため、これらの生産拡大と地域における利用の促進を図り、農業者の経営安定・発展につなげるなど、農村地域において新たな利益を生むシステムを育成する。このため、関係府省間の連携を図りつつ、地域における再生可能エネルギー供給施設の整備やスマートグリッドの構築を促進するとともに、電力の固定価格買取制度の適用拡大など、農村における再生可能エネルギーの生産・利用の拡大に向けた技術的・制度的な環境整備を推進する。
[1] 新たな交流需要の創造
訪日外国人や、観光・行楽部門の消費が多い高齢者など、農村への旅行者として十分に開拓されていないターゲットに対し、戦略的かつ積極的にアプローチし、新たな交流需要を創出することが必要である。このため、ビジット・ジャパン・キャンペーンとの連携や、多様な主体の連携による都市と農村の共生・対流の推進に加え、体験コンテンツの開発など観光関係者と農村地域が連携して行う取組を促進する。
[2] 人材の確保・育成、都市と農村の協働
農村が人材不足などの構造的な問題を抱える一方で、都市においては農村に関心をもつ者が多く存在することに着目し、都市と農村地域をつなぎ、都市部の人材等を活用する取組を推進する。
また、都市のNPO、企業、大学等多様な主体との協働により、それらの者がもつ新たな視点、手法で農村の地域資源の発掘・活用を推進する。
[3] 教育、医療・介護の場としての農山漁村の活用
農山漁村における安らぎ、癒しの機能や、農作業等の体験を通じた教育的効果、心身機能の回復・向上や健康の維持・増進等、農林水産業・農山漁村が有する教育、保健・休養等の多面的機能に注目し、都市と農山漁村、関係府省が連携して、農山漁村を教育、医療・介護の場として活用するための施策を推進する。その際、これらの機能の効果を調査・検証し、具体的な施策の実施につなげる。
また、子どもを農山漁村に滞在させ、農業体験等を行わせる取組については、農山漁村への経済効果のほか、子どもの生きる力を育むなど、教育的な効果を得られていることを踏まえ、関係府省間で連携し、受入体制の整備等を促進する。
新鮮で安全な農産物の都市住民への供給、身近な農業体験の場の提供、災害に備えたオープンスペースの確保、ヒートアイランド現象の緩和、心安らぐ緑地空間の提供、食料・農業への理解の醸成といった都市農業の機能や効果が十分発揮できるよう、都市農業を守り、振興していくための取組を推進する。このため、市民農園、農産物直売所等の整備を推進するとともに、都市住民のニーズを踏まえた市民農園、体験農園等における農業体験や交流活動など都市農業振興のための取組を推進する。
農村では、人口減少や高齢化の進行などにより、行政サービスや民間の生活サービス機能が低下し、農村コミュニティが失われつつあるが、これを放置すれば、共同作業等を前提として成り立っている農業生産が維持できなくなるだけでなく、これが有する多面的機能の発揮にも重大な支障が生じる。そこで、都市住民も利益を享受するこれらの多面的機能を適切に保全するため、以下の取組を推進する。
[1] 農村コミュニティの維持・再生
農村コミュニティを維持・再生するため、生活支援・環境保全・資源活用の活動を複合的に実施する取組がみられるが、このような地域住民主体の取組に着目し、広げていくことが、多面的機能を維持する上で必要とされている。このため、今後の農村コミュニティの維持・再生について、国と地方の役割分担も踏まえた上で、政府一体となってこれらへの対応方策を検討する。
[2] 中山間地域等直接支払制度
耕作放棄地の発生防止・解消を図り、適切な農業生産活動の維持を通じ多面的機能を確保する観点から、農業生産条件の不利を補正するための中山間地域等直接支払制度を引き続き実施する。その際、高齢化の進行を踏まえ、高齢者へのサポート体制や集落間の連携など安定的な受皿を作ることにより、耕作等の維持を図っていく。なお、本制度については、戸別所得補償制度の検討と併せて、今後の施策のあり方を検討する。
また、担い手の育成や生産性の向上等を引き続き推進するなどにより、中山間地域等における自律的かつ安定的な農業生産活動を促進する。
[3] 農地・水・環境保全向上対策
農地・水・環境保全向上対策については、農地、農業用水等の資源や環境の適切な保全管理等を促進してきたところであるが、共同活動の強化や環境保全型農業の推進等を図るため、中間評価を平成22年度に実施し、これまでの実績や現場の意見も踏まえ、効果と課題を明確化する。
その上で、中山間地域等直接支払制度も含め、直接支払制度の今後の施策のあり方について検討する。
[4] 鳥獣被害対策の推進
鳥獣被害については、中山間地域を中心に深刻化・広域化する中で、効果的な対策が求められていることを踏まえ、「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」に基づく市町村による被害防止計画の作成により地域一体で取り組む体制づくりを進め、被害防止のための地域ぐるみの取組を推進する。
また、捕獲した鳥獣の食肉としての有効活用を促進するとともに、地域における対策の指導者や捕獲の担い手の育成・確保を図る。
[5] 快適で安全・安心な農村の暮らしの実現
豪雨、地震、地すべりなど自然災害が増大する状況等を踏まえ、快適で安全・安心な農村生活を実現するため、地域の創意工夫を活かしながら、集落基盤の計画的な整備や、ハード・ソフト施策一体となった災害に強い農村づくりを、関係府省が連携して推進する。また、水田生態系や里地里山の保全を重視した農村環境の保全の取組を推進する。
農山漁村の再生・活性化に向けた地域の主体的な取組を促進し、その効果的な展開を期するため、「農山漁村活性化ビジョン」を新たに策定する。「農山漁村活性化ビジョン」では、農山漁村の将来像・目標を明確化し、地方と国との役割分担による活性化施策の推進方向を提示する。また、この将来像を目指して、関係府省が連携して関連施策に取り組む仕組みを構築する。
中長期的な視点から、農山漁村において、技術革新を起点として、農林水産業及び関連産業の高度化や新産業の創出等を推進することにより、新たな価値を生み出すとともに、低炭素型の産業構造への転換を促し、持続的な社会づくりをリードする。こうした農林水産分野の変革を実現するための包括的な戦略を平成22年中に策定し、これに基づき技術・環境政策を総合的に推進する。併せて、知的財産の保護や活用に向けた取組を進める。
[1] 革新的な技術開発の推進
様々な農政課題に技術面で的確に対応するため、農林水産研究基本計画に基づき、新品種や革新的な生産技術の開発、新需要を創出する付加価値の高い農産物、食品、農林水産生物の機能を利用した新素材、医薬品等の開発、温室効果ガス発生抑制技術等の地球温暖化への対応技術の開発等について、計画的、効率的に推進し、普及実用化につなげる。
[2] 研究開発から普及・産業化までの一貫支援
研究成果を確実に普及・実用化につなげていくため、民間等の幅広い分野の人材、情報等を活用し、研究マネジメント機能を強化するとともに、研究段階に応じて人材、知財・成果、研究資金を機動的かつ一体的に運用する体制を整備する。
また、研究開発から産業化までを一貫して支援する視点を導入し、市場のニーズ等を探りつつ実用化、産業化を進める流れを強化するとともに、産学官連携の枠組みを構築する。産地においては、普及指導センターと大学、企業、試験研究機関等が連携しつつ、技術指導を核に総合的な支援を展開するなど、研究成果の普及・実用化体制を強化する。
[3] 地球環境問題への貢献
ア 地球温暖化対策への貢献
政府の温室効果ガス排出削減目標の達成に貢献するため、農業及び食品産業において、省エネ施設・機械の導入や施肥の適正化、農地の炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動を普及推進する。併せて、更なる排出削減のため、排出削減量(クレジット)の取引制度、排出削減効果や農地土壌の炭素貯留効果の見える化、農村地域におけるバイオマス等再生可能エネルギーの利用を推進する。
また、地球温暖化への適応策について、研究開発等を推進するとともに、高温障害等を回避するための栽培法や施設の導入、高温耐性品種への転換等を進める。
さらに、世界的な温室効果ガスの排出の削減や気候変動による影響への適応を進めるため、国際的な研究・技術協力を積極的に実施し、地球規模の環境問題に貢献する。
イ 循環型社会形成への貢献
循環型社会の形成に向け、農村が有する豊富なバイオマスについて、利活用の促進、効率的な収集システムの構築、効率的かつ有用に変換する技術の開発・実証、地域における活用推進計画の策定、利用の円滑化に向けた地域での施設整備等を総合的に推進する。
ウ 生物多様性保全への貢献
農業の持続的な営みを通じて形成され、多くの生物に生息環境を提供する田園地域・里地里山を保全していくため、地域において策定される計画の下で、農業生産の維持や生産基盤の管理といった生産関連活動と生物多様性の保全を両立させる取組を促進する。併せて、冬期湛水管理など生物多様性保全に効果の高い農業生産活動等を推進する。このほか、農業の営みが生物多様性に与える効果を定量的に把握・評価する指標の開発、生態系の機能を活用した新たな技術の開発、生態系に配慮した水田や水路等の整備技術の開発・普及、取組事例の情報提供等を進めるとともに、生物多様性に対する国民理解の増進を図る。
[4] 知的財産の保護・活用
農林水産分野における知的財産の保護・活用を進めるため、 新技術、新品種の知的財産としての権利取得と活用を推進する。これに加えて、地域の農林水産物を核とした食文化を活かした活性化の取組や地域ブランド化を目指す取組を支援するとともに、食文化の普及等に係る顕彰を実施する。
また、東アジア地域における植物品種保護制度の高位平準化に向けて支援・協力するとともに、海外の商標出願状況等を監視する体制を整備する。
さらに、篤農家の暗黙知であるノウハウを、農業者等が活用可能な形に置き換える世界最先端のAI(アグリインフォマティクス)システムを開発し、提供する体制を整備する。その際、知的財産としての管理手法等の検討を行う。
加えて、決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示である地理的表示を支える仕組みについて検討する。
農業が有する食料の安定供給機能や多面的機能は、直接的・間接的に国民が利益を享受している一方、こうした機能は、様々な主体が農産物の購入や農村との交流といった形で農業・農村を支えることにより、はじめて発揮される関係にある。
このため、消費者、生産者、事業者等が主体的に農業・農村を支える「絆」の形成と強化を図るため、農業を取り巻く多様な分野の関係者が、我が国農業・農村の価値や意義を共有した上で、相互に協力し合い発展する結び付きの構築を促進し、農業・農村の6次産業化、更なる販路の開拓、地域活性化の実現に資する。
[1] 連携軸に関する理解の促進と既存施策の重点化
「農」を支える連携軸の基礎となる、農業・農村の価値や役割、我が国の食文化、健全な食生活といった食と農の結び付きに関する様々な情報を消費者等に対して分かりやすく発信する取組を強化する。
また、米粉用米・飼料用米の生産拡大に対応した利用促進、国産農産物の消費拡大、農商工連携、都市と農村の交流など、複数の者の連携に着目した施策については、情報発信の強化、コーディネーターによるマッチングの充実、関係者間のネットワークの強化等を図り、連携軸として発展させる。
[2] 関係者のマッチング等の充実と人材の確保
連携軸を構築しようとする消費者、農業者、事業者、NPO、大学、研究機関が適切な相手先を円滑に確保できるよう、知識・技術等に関するコーディネートや交流会の開催、ITの活用等を通じて、関係者間のマッチング機会の拡充を進める。また、このようなコーディネーターや仲介機関の育成を推進する。
その際、地方支分部局を含め、国の職員も連携のベースとなる人材ネットワークづくりや各種相談機会の拡充を通じ、連携軸の構築・強化に努める。
[3] 連携軸に関する国民理解の促進と具体的行動の喚起
消費者が生産者と農産物取引の事前契約を行う農業である「地域支援型農業」(CSA:Community Supported Agriculture)や、行政、市民、企業、NPO等が連携して地域の課題を事業により解決する取組である「コミュニティビジネス」を含め、連携軸につながる新たな取組について、先導的な取組や成功例を収集・分析するとともに、これを広く発信し国民各層への理解と具体的行動を喚起する。
食料、農業及び農村に関する団体(農業協同組合、農業委員会系統組織、農業共済団体、土地改良区等)については、国民に対する食料の安定的な供給や国内の農業生産の増大などの食料・農業・農村基本計画の基本理念の実現に向けた責務を果たしていくため、食料、農業及び農村に関する諸制度のあり方の見直しと併せて、その機能や役割が効率的・効果的に発揮できるよう、効率的な再編整備につき必要な施策を講じる。
食料・農業・農村に関する施策は、国民生活や経済社会のあり方と深く結び付いていることから、その推進に当たっては、国はもとより地方公共団体、農業者、消費者、事業者及びそれぞれの関係団体等の適切な役割分担のもと、十分なコミュニケーションを行いながら、施策を総合的かつ計画的に推進する。
その際、新たな施策の導入や推進に当たっては、IT等も活用しつつ、現場担当者への説明や推進状況の報告などの円滑な情報交換を充実させる。
新たな農政の推進に併せて、行政ニーズの変化等に迅速に対応した施策の推進体制の見直しを行う。また、新たな施策を農業・農村の現場の最前線まで浸透させ、施策対象者の理解と具体的な行動を促すため、農業団体のみならず、農業・農村の現場で施策情報の提供等に主体的に取り組む事業者、消費者団体、研究機関、NPO等を新たな政策推進パートナーとして位置付け、これらの者と連携しながら利便性の高い多様なサービスを提供する。
政策の企画・立案段階から、ホームページ等を通じた情報提供や意見募集を行うとともに、全国各地での国民との意見交換を積極的に行うことにより、政策決定プロセスへの国民の参画機会を増やし、現場の声を施策に反映させていく。
また、こうした国民との対話をはじめとしたあらゆる機会を通じて、国民が望む情報を適時適切に提供し、透明性が高く分かりやすい広報活動の実現を図る。
施策の立案から決定に至るまでの検討過程において、できる限り客観的なデータに基づいた計量経済分析等の科学的な手法を幅広く導入したり、国民に分かりやすい指標を開発するなど、施策を科学的・客観的に分析し、その必要性や有効性を明らかにする。
また、こうした施策の決定や推進に必要となる統計調査については、新たな施策ニーズを踏まえ的確に実施する。
施策の実施に当たっては、その手順、時期、手法及び目的を明らかにしつつ、進捗状況の管理を行う。
また、成果志向の目標設定を推進することなどにより、政策評価を積極的に活用し、政策・施策の効果、問題点等を検証するとともに、政策評価に関する情報の公開を進める。
これらにより、必要に応じて政策・施策内容を見直すなど、国民のニーズに沿うように戦略的に対応する。
厳しい財政事情の下で限られた予算を最大限有効に活用する観点から、施策ニーズに応じて従来の予算構造を見直し、目的に応じた施策の選択と集中的実施を行うとともに、様々な観点からのコスト縮減に取り組み、効果的な施策の実施を図る。また、施策の実施に伴う国民負担について、必要な情報を分かりやすく提示することなどにより、積極的に国民の理解と納得を得ていく。
表1 生産数量目標と克服すべき課題
|
平成32年度消費 (kg/年) |
平成20年度生産 (万トン) |
平成32年度生産 (万トン) |
克服すべき課題 |
||
| 米 |
‐ |
882 |
975 |
||
|
米 (米粉用米・飼料用米を除く) |
62 |
881 |
855 |
○ 消費者、外食・中食事業者、卸・小売業者等の多様なニーズに対応した米の供給 | |
| ○ 消費者の健康志向等に対応したごはん食の普及、ごはん食関連商品の開発促進など米の消費拡大 | |||||
| 米粉用米 |
3.3 |
0.1 |
50 |
○ 実需者ニーズに対応した原料の安定供給体制の構築、多収米品種・栽培技術の普及による単収向上とこれに伴う肥料費等の生産コスト増大の抑制 | |
| ○ 乾燥調製・貯蔵施設、加工施設の整備等の供給体制の確立 | |||||
| ○ 多様な用途に対応した製法技術の革新、米粉の特徴を生かした商品開発、生産者と加工事業者のマッチング等による消費の拡大 | |||||
| 飼料用米 |
‐ |
0.9 |
70 |
○ 実需者ニーズに対応した安定供給体制の構築、多収米品種・栽培技術の普及による単収向上とこれに伴う肥料費等の生産コスト増大の抑制 | |
| ○ 飼料用米の産地と畜産農家、配合飼料メーカー等とのマッチングや効率的な流通体制の確立 | |||||
| ○ 乾燥調製・貯蔵施設の整備等の供給体制の確立 | |||||
| 小麦 |
28 |
88 |
180 |
○ パン・中華めん用小麦の生産拡大(収量性に優れた良質なパン・中華めん用品種の育成・普及及び単収向上技術の普及) | |
| ○ 良質な水稲晩生品種の育成による広範な水田二毛作の普及と、作業効率や排水性の向上のための水田の団地的な利用と汎用化 | |||||
| ○ 加工技術の確立等による国産日本めん用小麦のパン、菓子用への利用拡大 | |||||
| 大麦・はだか麦 |
0.2 |
22 |
35 |
○ 実需者ニーズに対応した安定供給体制の確立(焼酎用途の供給拡大、排水対策の徹底などによる作柄の安定化、収量性に優れた良質な新品種の育成・普及等) | |
| ○ 良質な水稲晩生品種の育成による広範な水田二毛作の普及と、作業効率や排水性の向上のための水田の団地的な利用と汎用化 | |||||
| そば |
0.7 |
2.7 |
5.9 |
○ 排水性の向上のための水田の団地的な利用と汎用化、麦等の後作としての作付拡大 | |
| ○ 機械化適性を有する多収品種の育成・普及 | |||||
| 甘しょ |
4.5 |
101 |
103 |
○ 生食、焼酎、でん粉原料等の用途に応じた原料かんしょの安定供給体制の構築 | |
| ○ 機械化一貫体系の普及等効率的な生産体制の確立 | |||||
| ○ 新品種等を活用した加工食品用途や国産かんしょでん粉の需要開拓 | |||||
| 馬鈴しょ |
15 |
274 |
290 |
○ 生食、加工食品用、でん粉原料等の用途に応じた原料ばれいしょの安定供給体制の構築 | |
| ○ 省力的な機械化栽培体系(ソイルコンディショニング栽培体系等)の普及 | |||||
| ○ 加工食品用途(フライドポテト等)への供給拡大、国産ばれいしょでん粉の需要開拓 | |||||
| 大豆 |
6.7 |
26 |
60 |
○ 作業効率や排水性の向上のための水田の団地的な利用と汎用化や機械化適性を有する多収品種の育成・普及 | |
| ○ 単収向上・安定化に資する栽培技術の普及、契約栽培による安定的な取引関係の構築による、安定供給体制の確立 | |||||
| ○ 国産大豆の特徴を引き出した製品開発等による需要開拓 | |||||
| なたね |
‐ |
0.1 |
1 |
○ 良質で高単収なたね品種の育成 | |
| ○ 国産なたねを取り扱う搾油事業者と農業者の連携 | |||||
| 野菜 |
98 |
1,265 |
1,308 |
○ 外食、中食や加工向けの国産野菜の安定供給体制の確立 | |
| ○ 産地の生産技術、販売、人材育成等の能力の強化による産地の収益力の向上 | |||||
| ○ 外食、中食における野菜摂取量の拡大等、野菜の消費拡大 | |||||
| 果実 |
41 |
341 |
340 |
○ 産地の販売戦略に即した優良品目・品種への転換の加速化と安定供給体制の確立 | |
| ○ 計画生産・出荷措置と需給調整措置の的確な実施 | |||||
| ○ 加工・輸出用の果実など新たな需要の創出を含め、消費者の多様なニーズに対応した消費拡大 | |||||
| 畜産物 | ○ 国産飼料(飼料作物、エコフィード等)の利用拡大 | ||||
| 生乳 |
89 |
795 |
800 |
○ チーズ向け生乳の供給拡大による輸入チーズから国産チーズへ置き換えと付加価値の高い国産ナチュラルチーズの生産体制の整備 | |
| ○ 乳牛の生涯生産性や繁殖能力の向上、支援組織の育成・活用の推進等を基本に、飼料基盤を活用した資源循環型の経営や、加工・販売に取り組む経営など多様な経営体の育成 | |||||
| ○ 消費者の多様なニーズに対応した牛乳乳製品の普及及び商品開発による消費拡大 | |||||
| 牛肉 |
5.8 |
52 |
52 |
○ 産肉能力・繁殖能力の向上、支援組織の育成・活用の推進 | |
| ○ 消費者の多様なニーズに対応した特色ある牛肉生産による消費拡大 | |||||
| 豚肉 |
12 |
126 |
126 |
○ 産肉・繁殖能力の向上、飼養管理技術の高度化 | |
| ○ 国産豚肉の加工・業務用仕向け量の拡大 | |||||
| 鶏肉 |
11 |
138 |
138 |
○ 産肉能力の向上、飼養管理技術の高度化 | |
| ○ 国産鶏肉の加工・業務用仕向け量の拡大 | |||||
| 鶏卵 |
17 |
255 |
245 |
○ 産卵能力の向上、飼養管理技術の高度化 | |
| ○ 需要に見合った生産への取組の推進による鶏卵価格と養鶏経営の安定 | |||||
| 砂糖 |
19 |
94 |
84 |
||
|
てん菜 (精糖換算) |
‐ |
425 (74) |
380 (64) |
○ 肥料、農薬等に過度に依存しない効率的かつ持続的な生産体制の確立(直播栽培の普及、緑肥等の導入による輪作体系の見直し及び家畜排せつ物等の未利用資源の活用) | |
| ○ 肥料、農薬等の生産資材コストの低減 | |||||
| ○ てん菜の効率的な集荷体制の確立 | |||||
|
さとうきび (〃) |
‐ |
160 (19) |
161 (20) |
○ 効率的かつ安定的な生産体制の確立(2年1作の夏植栽培から毎年収穫できる春植・株出栽培への移行、土壌害虫の防除技術の確立・普及及びかん水設備の整備) | |
| ○ 作業受託組織や共同利用組織の育成 | |||||
| ○ 作業効率向上のための機械化一貫体系の確立・普及 | |||||
| 茶 |
0.8 |
9.6 |
9.5 |
○ 需要拡大のための高付加価値品種・茶種転換の加速化、有機茶・無農薬茶の生産拡大 | |
| ○ リーフ茶の消費拡大、簡便な飲料需要への対応のための茶機能性の活用と新商品開発 | |||||
| 飼料作物 |
‐ |
435万 |
527万 |
○ 二毛作等の推進及びこれを可能とする品種・作付体系技術の開発・普及 | |
| ○ 飼料生産組織の育成、粗飼料の広域流通体制の構築 | |||||
| ○ 優良品種の開発・普及や飼料生産基盤の確保による生産性の向上 | |||||
注1:戸別所得補償制度の創設や農業・農村の6次産業化等の横断的事項については、個別に記述していない。
2:消費については1人当たり年間消費量(kg)である。
(参考)
|
平成32年度消費 (kg/年) |
平成20年度生産 (万トン) |
平成32年度生産 (万トン) |
克服すべき課題 |
||
| 魚介類 |
34 |
503 |
568 |
○ 水産資源の回復・管理の推進により、水産資源を増大 | |
| 海藻類 |
1.3 |
11 |
13 |
○ 事業の協業化等により、経営基盤を強化 | |
| きのこ |
3.3 |
45 |
49 |
○ 業務加工向けを含む需要動向に対応した安定供給体制の整備 | |
| ○ 生産コスト低減、品質管理の高度化等の施設整備 | |||||
| ○ 機能性等の情報提供や消費者の安全・信頼の確保等による消費拡大 | |||||
表2 延べ作付面積、農地面積、耕地利用率
|
|
平成20年 |
平成32年 |
|
延べ作付面積 |
426 |
495 |
|
農地面積 |
463 |
461 |
|
耕地利用率 |
92 |
108 |
表3 食料自給率の目標
(単位:%)
|
|
平成20年度 |
平成32年度 |
|
供給熱量ベースの |
41 |
50 |
|
生産額ベースの |
65 |
70 |
|
飼料自給率 |
26 |
38 |
注1:生産額ベースの総合食料自給率は、平成32年度における各品目の単価が現状(平成20年度)と同水準として試算したものである。
2:飼料自給率は、飼料用穀物、牧草等を可消化養分総量(TDN)に換算して算出したものである。
![]()
大臣官房政策課調整・総括・企画・計画
代表:03-3502-8111(内線3086)
FAX:03-3508-4080