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農林水産省

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目次・前書き

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目次

まえがき   1
1. 日本の伝統的食文化としての和食 熊倉功夫 3
2. 日本食の歴史 原田信男 13
3. 調理と地域性 江原絢子 29
4. 日本人の味覚と嗜好 伏木亨 45
5. 栄養面から見た日本的特質 安本教傳 60
6. 食材の流通と変化 田中耕造 81
7. 京の食文化 高橋英一 104
8. 行事と食文化 田中直美 113
おわりに   120

 

まえがき

日本の食文化とは何か、という問いに対して、その枠組みや特質に正面から答えた議論はまだされたことがない。そもそも食文化とは、人間の食生活における文化的要素という意味ではなく、人類の食に関する一切の事象を含む概念である。こうした食文化は、自然の気候風土、社会的環境によって形成されるので、自ら地域的あるいは、民族的な文化的特徴をもつ。ここに日本特有の食文化が誕生する。

本書はこうした広い食文化の視点から日本的特質をいくつかの要素から追究し、日本の食文化の概念を措定するのが目的である。しかし食文化は生きものである。時々刻々、変容している。どの時点で押さえるのか、とてもむずかしい。また、概念化したからといってそれが守るべき規範であるとか原則であるといった主張をするつもりは毛頭ない。食の規制などできるはずはない。ただ、現代の急激な変化の中にある日本の食文化の特質とは何か。自分の置かれている状況が日本の食文化とどの程度距離があるのかを測るための、いわば測量のための三角点のような役割が本書に期待されるところである。

この本を、一体どういう方々に読んでもらいたいか、著者たちは悩んだ。誕生の契機となったのは、2005年に設置された食文化研究推進懇談会(会長・茂木友三郎氏)での議論である。この懇談会は内閣府の知的財産戦略会議事務局の肝煎りで設けられ、各界の有識者により、世界に発信する日本ブランドのひとつとして日本食文化をとらえ、いかに具体的なアクションを起こすかという議論がなされ、アクションプランを含む研究プロジェクトの概要を述べた『日本食文化の推進-日本ブランドの担い手-』がまとめられた。その課題の一つとして「日本食文化の体系化」が掲げられ、その発展として本書の母体となる「日本食文化テキスト作成共同研究会」(平成20・21年度農林水産物・食品地域ブランド化支援事業)が生まれた。その成果として平成22年3月に出版されたのが本書の原型である。

この経緯からもうかがえるように、本書の初期の目標としては、世界中でとめどもなく拡大する日本料理に対して、日本料理の基礎をなす文化の要素を適確に示すことのできるテキスト、ということがあった。しかし実際には海外で読んでもらう以前に、日本国内の状況が海外と同様に大きな変化の中にあるのだから、国内向けにまとめるべきであろう、という結論に達し、かなり専門的な内容まで盛り込む結果となった。またタイトルや内容も、高級なイメージのある日本料理というかわりに、「和食」という日本人だれもが日常にとっている食文化にふさわしい言葉を用いるにいたった。

本書はなるべくニュートラルな立場で執筆されてはいるが、全体の問題意識としては、「日本の食文化はかつてこのようなものであった」という客観的な叙述に終わらず、そのすぐれたところを今日に生かし、未来につなげたいという研究会全員の思いが強くあることを、付け加えておきたい。

本書の大きな特色は文字だけでなく映像をもって食文化を解説したことである。そのため瀬戸内海の鯛漁を取材し、京野菜の畑を取材した。こうした食材が市場を経由して家庭や料理店に送られ、調理され食卓に並ぶところまでをまとめた。さらに日本料理の粋ともいうべき京料理の献立も収録した。その一つ一つに日本ならではの特質があることが、文字情報以上に生き生きと伝えられたと思う。

2012年7月に、日本の食文化をユネスコの保護条約に無形文化遺産として「和食-日本の伝統的食文化-」の登録を提案する議がおこり、再び本書をリプリントすることとなった。編者が提案書の作成にかかわったことで、本書の性格もより明確にはなったが、その一方、全体の統一といった面では時間をさくことができず、用語の不統一をはじめ、各節のつながりや繁簡のバランスを欠くなど体裁を整えることができていないのは、いつにかかって編者の怠慢で深くお詫びしたい。しかしそれでも各執筆者は個別にもう一度目を通して、場合によっては改稿やデータを新しくするなどして、より内容の精度を高めていただくことができたのは幸いであった。

最後に、共同研究会を推進していただいた財団法人都市農山村漁村交流活性化機構に対し、共同研究を側面より応援して下さった食文化研究推進懇談会会長茂木友三郎氏に、また映像資料の編集と本書の出版を実現していただいた農林水産省にあつく御礼を申し上げる。

 

平成24年3月1日

日本食文化テキスト作成共同研究会

代表 熊倉功夫

お問い合わせ先

食料産業局食文化・市場開拓課和食室
代表:03-3502-8111(内線3085
ダイヤルイン:03-3502-5516
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03-6744-2013