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農業者の取組紹介(フェイスブック)

元気な農業者シリーズ(稲垣 宏紀さん(愛知県西尾市 茶農家))

「西尾の抹茶」をもっと世界へ

  平成29年3月3日に地理的表示保護制度(GI)に登録された「西尾の抹茶」を支える愛知県西尾市及び安城市に広がる茶園。その起源は古く鎌倉時代に遡ると言われていますが、明治5年に西尾市の紅樹院住職足立順道師が宇治より茶種と栽培技術を導入し周囲の人に茶栽培を勧めことから本格的に広まっていきました。現在も紅樹院には、順道師が播いた茶の原樹が大切に植えられており、毎年12月には茶祖祭が行われます。

  その西尾市のお茶の生産農家(以下、「茶農家」)稲垣宏紀さんを紹介します。

  稲垣さんは80年以上続く茶農家の5代目で、静岡県金谷市の野菜・茶業試験場(現:農研機構野菜茶業研究所で2年間学んだ後、二十歳で親元就農し、今から約7年前に(有)ヤマフジ製茶の代表となりました。経営する(有)ヤマフジ製茶(認定農業者(法人))は、西尾市「人・農地プラン」の中心経営体として、茶葉の生産者であるとともに、摘み取った茶葉を「三河式てん茶乾燥炉」により、荒茶に加工する製造者でもあります。

  乾燥炉はレンガ造りで、最初に高温の蒸気により発酵酸素の活動を止めて茶葉の変色を防ぎ、鮮やかな濃い緑色の茶葉を5段の網の上で行来させて遠赤外線により乾燥させる方式です。古くからこの地方で使われてきたこの乾燥炉は、「西尾の抹茶」の荒茶てん茶づくりには欠かせないもので、1時間あたりの荒茶製造量は20kg/1時間と少ないのですが、「西尾の抹茶」の原料となる、荒茶てん茶の品質に重要な役割を担っていて、稲垣さんは大切に使い続けたいと考えています。

茶園搬入
右:摘み取られてすぐの瑞々しい生茶が荒茶製造工場へ搬入される
左:棚式寒冷紗で覆われた茶園と摘み取りが終わった手前の茶園
乾燥炉乾燥炉基礎部分
右:三河式てん茶乾燥炉の基礎部分。レンガ造りの趣ある風格
左:「三河式てん茶乾燥炉」の付近は40度を超える熱気。(有)ヤマフジ製茶には二基
荒茶てん茶
鮮やかな緑色を留めたまま乾燥された荒茶てん茶

  代表となった頃、取引先から輸出用抹茶について話があったとき、稲垣さん自身も「国内では抹茶は需要を供給が上回りつつある」という感を持っていました。品質、安全性についてどこにも負けないお茶を作っているという自負があった稲垣さんは、ハードルは高い方がチャレンジしがいがあると考え、国内向けよりさらに使える農薬などが規制される「輸出用」の栽培に取り組むことにしました。

  やはり最初の1~2年、苦労はしましたが、防除のタイミングなどコツを掴んだ今は、より品質と安全性の高いお茶を生産できるようになったため、これからも、もっと高いハードルでもチャレンジして超えていこうという気持ちをお持ちです。

  さらに、輸出用抹茶を考えたときに、これまでは国内の限られたルートにより相対で販売されることが多い抹茶でしたが、「世界へ向けて販売するとなると、自分や取引先とも会うことのない、本当に多種多様な人が手に取ることになる。」と、自らが生産したお茶に誰が見てもわかる公的な認証が欲しいと考え、JGAP取得にも取り組みました。

  2012年に最初のGAP取得以降、2016年9月にJGAPアドバンスを取得し、さらに、現在はJGAP及びその審査・認証のルールについて基準策定を掌る技術委員会の茶部門、てん茶小部門でJGAPの技術員として活躍されています。 

  現在の経営面積は約5㏊。茶園では、「あさひ」から「おくみどり」まで10品種の茶木を栽培し、4月末から6月初めまで一番茶の摘み取りピークをずらすことで、お茶の葉が一番良い時に摘み取りできるように考慮しています。

  農地の集積は茶農家同士の結びつきの中で自然となされてきましたが、現状では、プラス1~2㏊が作業可能な限界だと考えています。農地の集約化が進めば経営面積はもっと広げられる可能性があることから、集約化が今の課題の一つで、近年1筆、中間管理機構事業を利用し集積しました。今後も積極的に農地を集約し、経営面積をさらに広げたいと考えています。

  また、一般社団法人西尾市観光協会と協力し、自身の茶園を観光農園として、この春に延べ700人の茶摘み体験者を受け入れました。一番の繁忙期である時期にも関わらず茶摘み体験者の受入れを行った最大の理由は、煎茶・抹茶に関わらずお茶を好きになって欲しいという思いからです。お茶の木から自分で茶摘みして稲垣さん自作のレシピにより自宅でお茶を楽しんだ体験者は、きっと前よりお茶を知り、好きになったのではないでしょうか。

  今、抹茶は世界に広がり、その原料となるてん茶の需要も順調に伸びています。飲用・加工用に関わらず世界における抹茶の可能性は大いにあり、輸出量・額ともに伸びています。ただし、世界のさまざまな国へ輸出するためには、その国の輸入条件を満たすような商品を送り出すことが必要です。全世界で通用する「西尾の抹茶」を目指して、どこの国でも輸出可能な「一番高いハードルを超えるお茶づくり」を目指す稲垣さんを応援します。

稲垣宏紀さん

稲垣宏紀氏。事務所の壁にヤマフジ製茶の代々の表彰記念写真やGAPの認証の額。

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