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農林水産省

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漁業経営の改善に関する指針

平成十四年六月二十六日 (農林水産省告示第千二百五号 )

 

漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律(平成十四年法律第七十三号)附則第三条第一項の規定に基づき、漁業経営の改善に関する指針を次のように定めたので、同項の規定に基づき公表する。

一 漁業の経済的諸条件の著しい変動、漁業を取り巻く国際環境の変化等に対処するために行う漁業経営の改善に関する事項

漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法において「漁業経営の改善」とは、「漁業者が、漁船その他の施設の整備、生産方式の合理化、経営管理の合理化その他の措置を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義されている。漁業経営改善制度は、経営改善の意欲のある漁業者及びそのような漁業者を構成員とする漁業協同組合等によるこれらの措置の実施を支援することにより、漁業経営の向上を図り、もって効率的かつ安定的な漁業経営を育成することを目的とするものである。

水産物の需要量は、近年、横ばい傾向で推移しており、平成十一年度の魚介類の需要量は千六十六万トンとなっている。今後の需要量については、水産基本法(平成十三年法律第八十九号)に基づき策定された水産基本計画において、平成二十四年度における望ましい水産物消費の姿を千三十七万トンとしているところである。

また、水産物に対する需要は、中食・外食需要の増大、品質及び安全性に対する関心の高まり等、その高度化、多様化が進行している。

一方、漁業生産については、我が国周辺水域や公海等における資源状況が悪化している中で、我が国が平成八年に批准した国連海洋法条約において、排他的経済水域における資源管理について沿岸国が適切な措置を講ずべきこと、公海における資源管理について国際協力が行われるべきこと等が定められており、今後は、水産資源の持続的な利用が確保される範囲内での生産を行うことが必要である。

このような状況の下、今後、漁業経営の改善を進めようとする意欲ある漁業者には、自らの経営資源の実情、消費者や実需者のニーズ、資源量の動向、生産構造の展望等の諸事情を総合的に勘案して、生産コストの削減、付加価値の向上等に向けた取組を、自らの創意工夫を生かして具体化していくことが期待される。

本制度においては、そのような取組を行おうとする漁業者と、これを支援しようとする漁業協同組合等を、支援することとする。

二 漁業経営の改善の内容に関する事項

我が国の周辺水域はもともと資源の豊かな漁場であり、また、我が国には水産に関する多くの技術や知見がある。漁業者は、これらを最大限に活用できるよう、業種単位の画一的な取組ではなく、創意工夫を生かした多様な取組を具体化していく必要がある。

このような取組の具体化に当たっては、過剰設備の存在が漁業経営の悪化の原因の一つであることを踏まえ、漁業者には、自らの経営環境や新規の設備投資に当たっての費用対効果について十分に見極めることが期待される。

また、水産資源の持続的な利用の確保は、漁業経営の継続の前提となるものであることから、いかに経営改善に対する効果が高くとも、資源状況に照らして過大な設備投資や、地域で定められた資源管理に関する取決めに反する取組等については、本制度による支援の対象としてはふさわしくない。

このような前提の下で、漁業者には、次に例示するような具体的な取組の実施が期待される。

イ 「漁船その他の施設の整備」 老朽化した漁船の代船の導入、高性能冷蔵庫の導入、水産加工施設の設置等

ロ 「生産方式の合理化」 低燃費機関を装備した漁船等省エネルギーの目的に沿った漁船の導入、自動給餌機等の機械の導入、研修の受講を通じた効率的な作業方法の導入等

ハ 「経営管理の合理化」 過剰な設備の処分、内部留保の積立て等による財務内容の改善、定置漁業等における法人経営への移行等

ニ 「その他の措置」 加工、流通分野への進出、異業種との連携、業種の転換、販売先の開拓、団体と共同して行う加工品の開発等

これらの取組の実施に当たっては、類似の漁業種類について、創意工夫を生かして取り組まれてきた優良事例等の情報を得て、咀しゃくすることが有益と考えられる。このため、別途、これらの事例について取りまとめ、公表することとする。

三 漁業経営の改善の実施方法に関する事項

漁業経営の改善の実施に当たっては、漁業者は、経営の現状を客観的に把握するとともに、実施しようとする措置について費用対効果の十分な検証を行う必要がある。また、経営改善を着実に進めていくためには、目標値とこれに対する達成度を常に把握し、その結果を踏まえて対応策を検討することが重要である。

このため、本制度においては、漁業者に対し、具体的な経営向上の目標を数値により示し、定量的な目標の下で「経営の相当程度の向上」のための取組を実施するよう求めているものである。

個々の漁業者が実現しようとする具体的な経営の向上の目標について、行政庁が「経営の相当程度の向上」に該当するか否かを評価する際の指標としては、「付加生産額」又は「従業員一人当たりの付加生産額」を用いることとする。この場合において、「付加生産額」とは、営業利益、人件費及び減価償却費の合計額とする。

この指標を用いることとしたのは、売上高や経常利益等とは異なり、経営の全体像を把握し、漁業者が生産、販売活動等を通じて新たに生み出した価値を総合的に評価することができると考えられるためである。

具体的には、「付加生産額」又は「従業員一人当たりの付加生産額」のいずれかについて、五年間の伸び率が十五%以上であることを「経営の相当程度の向上」とする。

このように評価することとしたのは、五年間で十五%以上の伸び率を実現している漁業者が全体の約三割を占めており、漁業経営の改善に取り組む者にあっては平均以上の目標を掲げるべきであると考えられるためである。

なお、漁業経営の改善は、複数の漁業者が共同して取り組む場合も考えられる。この場合の改善計画の申請については、全体としての指標と、参加者個々の指標のいずれでも用いることができることとする。

四 その他漁業経営の改善に当たって配慮すべき事項

イ 専門家の活用

国及び都道府県は、本制度の運用に当たっては、外部の専門家の知見を活用するよう努めるものとする。

また、漁業協同組合等は、構成員である漁業者が改善計画を作成するに当たっては、適切な指導を行うよう努めるものとする。

ロ 実施状況の報告等

国又は都道府県は、改善計画の認定を受けた漁業者又は漁業協同組合等に対し、改善計画の認定後二年経過後及び計画終了後に、それまでの実施状況の報告を求めるものとする。

また、国及び都道府県は、必要に応じて関係漁業者団体や外部専門家の知見も活用しつつ、漁業者等に経営改善の実施方法や、場合によっては改善計画の変更について助言及び指導を行うものとする。

なお、計画作成者が相応の努力をした場合でも、やむを得ない事由により当初の目標が達成できない場合もあることから、計画どおりに「付加生産額」等が増加していないことのみを理由として、認定の取消しを行うことはしない。

ハ 指針の見直し

改善指針は、漁業経営の改善に関する施策を進めていく上での基本となるものであり、水産業をめぐる情勢の変化、法施行後の運用状況に対する評価等を踏まえ、おおむね五年ごとに見直し、所要の変更を行うこととする。

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