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農林水産省

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ライチョウに関する保護増殖事業計画

平成二十四年十月三十一日 文部科学省、農林水産省、環境省告示第一号

文部科学大臣 田中眞紀子
農林水産大臣 郡司 彰
環境大臣 長浜 博行

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四十五条第一項の規定に基づき、ライチョウに関する保護増殖事業計画を定めたので、同条第三項の規定に基づき、その概要を次のとおり公示する。本保護増殖事業計画は、文部科学省、農林水産省、環境省、新潟県庁、富山県庁、石川県庁、山梨県庁、長野県庁、岐阜県庁及び静岡県庁に備え付けて供覧する。

ライチョウに関する保護増殖事業計画(PDF:122KB)

第一 事業の目標

本事業は、山岳ごとに本亜種の生息状況をより詳細に把握し、生息を圧迫する要因を明らかにすることにより、その軽減及び除去を行い、本亜種の生息に必要な環境の維持及び改善を図るとともに、野生個体数の急激な減少も想定して、飼育繁殖技術を確立し、繁殖個体の適切な方法による再導入等を検討すること等により、本亜種が自然状態で安定的に存続できる状態とすることを目標とする。

第二 事業の区域

新潟県、富山県、石川県、山梨県、長野県、岐阜県及び静岡県における本亜種の分布域(かつて分布域であった地域を含む。)並びに第三の三により飼育下における繁殖を行う区域

第三 事業の内容

一 生息状況等の把握

本事業を適切かつ効果的に実施するため、以下の調査を本亜種の生息する山岳ごとに行うことにより、本亜種及び本亜種を取り巻く状況に関する情報の収集及び実態の把握に努める。調査の実施に際しては、研究者のほか、山岳関係者、登山者等からも目撃情報等を収集するよう努める。

(一)生息状況の調査及びモニタリング

本亜種の分布域、個体数、生息密度等の生息状況を把握するための調査及び定期的なモニタリングを行う。なお、本亜種の個体数については、ある程度の年変動があることが確認されていることから、継続的なモニタリングを行う。

(二)山岳ごとの個体群の生態等の把握

本亜種については、最近の調査によって山岳ごとに生態等に違いがあることが指摘されているため、本亜種の山岳ごとの個体群の食性及び採餌行動、繁殖時期及び繁殖生態、繁殖成功率、死亡率、若鳥の移動分散等の本事業を実施するに当たって必要となる基本的な情報を把握する。
また、過去及び現在の分布域における個体から得られる羽や血液等の試料について遺伝子解析を進め、山岳ごとの個体群の遺伝的多様性、その変化等を把握する。

(三)個体群の維持に影響を及ぼす要因の把握

一部の山岳では本亜種の個体数の明らかな減少傾向が確認されていることから、実際に個体数が減少している山岳において、減少要因を解明するための調査等を実施する。
また、本亜種への影響が懸念される感染症の原因菌等について、本亜種における保有状況、本亜種を取り巻く生息環境への侵入状況等を把握する。

(四)生息に適する環境等の把握

(一)から(三)までの調査結果に基づき、本亜種の過去及び現在の分布域における生息に適した環境を山岳ごとに明らかにし、環境収容力の推定を行うとともに、本亜種と本亜種を取り巻く生態系との関係を把握する。
また、本亜種の生息環境として重要な高山植生の分布域と気候変動との関係を把握するため、長期的なモニタリングに努める。

二 生息地における生息環境の維持及び改善

本亜種の自然状態での安定した存続のためには、営巣場所、隠れ場及び餌場として利用されるハイマツその他の高山植生等本亜種を取り巻く生態系全体を良好な状態に保つことが必要である。このため、一で得られた知見等に基づき、本亜種の生息環境の悪化、個体数の減少等を防止するための効果的な対策の検討や、本亜種の生息及び繁殖に適した環境の維持及び改善を図るための取組を進める。

(一)生息地における巡視等

本亜種への不用意な接近、ペットの持込み等、本亜種の生息及び繁殖に悪影響を及ぼすおそれのある行為を防止するために、本亜種の生息地及び周辺地域における巡視、制札の整備等を行う。

(二)従来生息していなかった野生動物等の侵入による影響の防止

高山植生を採食し、本亜種の生息環境に影響を及ぼすおそれのあるニホンジカ等が、本亜種の生息地へと分布を拡大していることについて、その分布状況及び影響を監視するとともに、本亜種の生息地及び周辺地域において、これらの種の侵入防止策について検討を行い、本亜種の生息地として重要な場所からの排除及び侵入防止を図る。
また、生ゴミの放置等の人為的な要因によるキツネ、カラス等の捕食者の本亜種の生息地への侵入防止に努める。
あわせて、山岳環境の維持・改善等を図ることにより、本亜種への影響が懸念される感染症の侵入を防止する。

三 飼育下での繁殖及び再導入等の検討

一部の山岳においては、本亜種の分布域の縮小及び個体数の減少が確認されており、感染症等により、個体数が急激に減少する可能性があることを考慮して対策を講ずる必要がある。具体的には、健全な野生個体群が存在する今の段階から、飼育繁殖技術の確立及び飼育下における生態的知見の把握を行い、一定の個体数の維持を図ることを目的として、繁殖に必要な体制の整備等を行った上で飼育繁殖を実施する。
また、飼育繁殖によって得られた個体は、必要に応じて本亜種の生息地への再導入等を検討する。なお、個体の飼育繁殖、再導入等に当たっては、飼育下における繁殖による行動特性の変化、飼育個体同士又は再導入等した個体から野生個体群への病原体の感染等の飼育個体群及び野生個体群の存続を圧迫するおそれがある要因にも十分留意し、適切な飼育繁殖及び再導入等の方法を確立する。

四 普及啓発等の推進

本亜種の保護増殖事業を実効あるものとするためには、国及び関係地方公共団体、各種事業活動を行う事業者並びに関係地域の住民及び山岳利用者を始めとする国民の理解及び協力が不可欠である。このため、本亜種の生息状況及び保護の必要性、山岳を利用する際の留意事項、本亜種に影響を及ぼす動物の侵入防止策の必要性、本事業の実施状況等に関する普及啓発及び情報発信を、本亜種の生態、飼育繁殖技術等に関する専門的な知識を有する者、地元の保護活動団体、観光関係者等の協力を得ながら進め、本亜種の保全に対する配慮及び協力を働きかけ、地域の自主的な保護活動の展開が図られるよう努める。

五 効果的な事業の推進のための連携の確保

本事業の実施に当たっては、国、関係地方公共団体、本亜種の生態、飼育繁殖技術等に関する専門的な知識を有する者、地元の保護活動団体、観光関係者、地域の住民等関係者間の連携を図り、効果的に事業が推進されるよう努める。

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