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農薬取締法の一部を改正する法律の施行について(通知)

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14生産第10052号
平成15年3月13日

地方農政局長あて
沖縄総合事務局長あて
各都道府県知事あて

生産局長


今般、無登録農薬の流通及び使用の実態が明らかになったことを契機として、農薬の流通及び使用の各段階における規制を強化し、もって安全かつ適正な農薬の使用を確保するため、農薬取締法の一部を改正する法律(平成14年法律第141号)により農薬取締法(昭和23年法律第82号)が改正され、平成15年3月10日より施行されたところである。これに伴い、農薬取締法施行令の一部を改正する政令(平成15年政令第3号)、農薬取締法施行規則の一部を改正する省令(平成15年農林水産省令第13号)、農薬取締法に基づく農薬の使用の禁止に関する規定の適用を受けない場合を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第1号)、農薬取締法第2条第1項の登録を要しない場合を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第2号)、農薬取締法第13条の規定による報告及び検査に関する省令の一部を改正する省令(平成15年農林水産省・環境省令第3号)、農薬取締法第12条第1項の農林水産省令・環境省令で定める農薬を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第4号)及び農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)が、同日より施行されたところである。
今般の農薬取締法の改正の趣旨を踏まえ、改正後の農薬取締法(以下「新法」という。)の運用及び関係者の指導に当たっては、特に下記の事項に留意し、遺漏なきようにされたい。また、農薬の使用者その他の関係者に対して新法の趣旨及び内容を周知徹底するようお願いする。

第1 本法改正の背景について
平成14年7月、山形県において国内で登録を受けていない農薬(いわゆる無登録農薬)を販売した業者が農薬取締法並びに毒物及び劇物取締法違反の容疑で逮捕され、さらに同年8月には、山形県の業者に販売していた東京の業者が逮捕されたところである。その後の関係業者や他の販売業者、購入農家等への立入検査の結果、これまでに無登録農薬が44都道府県の約270の営業所において販売され、約4千戸の農家で購入されていたことが判明している。
このような、無登録農薬の流通及び使用が、国民の食の安全に対する不安を増大させたことから、全国の産地においては、無登録農薬が使用された農作物の回収及び廃棄が行われ、また、農林水産省としても、この事態を食の安全を脅かす重大な問題と認識し、平成14年8月30日に「農林水産省動植物検疫・農薬問題等食品安全性対策本部」を設置し、農薬の安全かつ適正な使用を確保することを通じて、食の安全・安心に万全を期す観点から、農薬取締法を改正し、流通及び使用の各段階における規制を強化することとした。
こうして、平成14年の臨時国会に農薬取締法の一部を改正する法律案を提出し、国会における審議を経て、同年12月11日に公布されたところである。
第2 農薬の製造、加工及び輸入の規制の見直し
1 業概念の廃止
農薬については、農薬取締法制定当時より、製造業者や輸入業者の製造・輸入を通じた販売を主な流通経路としていたことから、農薬の販売段階において規制することによりその使用段階についても規制することが十分可能であったところである。しかし、近年、農家が輸入代行業者を介して外国から農薬を個人輸入したり、自ら製造した農薬を使用する事例が増加していることから、業を営む者を対象とした規制のみでは無登録農薬の流通及び使用を防止する措置として不十分な状況となっていた。このため、新法においては、業を営む者以外の者にも規制を拡大することとしたところであり、業として反復継続的に行われない個人が行う製造や輸入についても農薬取締法の規制の対象となった。
2 製造、加工及び輸入段階における登録の義務化
(1)農薬の製造、加工及び輸入段階の規制の創設
無登録農薬の流通及び使用を未然に防止する観点から、改正前の農薬取締法(以下「旧法」という。)においては、製造し若しくは加工し、又は輸入した農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを販売してはならないとされていたが、新法第2条第1項では、製造者又は輸入者は、農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを製造し若しくは加工し、又は輸入してはならないこととされ、販売段階のみならず、製造及び輸入の各段階においても規制することとしたところである。このため、登録を受けていない農薬の製造、加工又は輸入については、当該農薬を販売をしなくとも禁止されることとなった。
また、輸入段階での規制については、昨年、全国的に販売及び使用された無登録農薬の多くが、海外から輸入された農薬であったことから、海外からの無登録農薬の流入を未然に防止する観点から、登録を受けていない農薬の輸入を原則禁止することとした。この場合において、無登録農薬については、業としての輸入のみならず、個人が自らの使用のために輸入する場合や携行品又は土産品として国内に持ち込む場合ことも禁止されるが、そのままでは農薬として使用できない有効成分のみの輸入は、農薬の輸入には該当しないことから、農薬取締法では規制されない。
なお、輸入段階での規制の実効性を確保する観点から、財務省の協力を得て、輸入関税分類に農薬特定の分類コードが新設されたほか、税関での確認業務を確実かつ円滑に行うため、税関に対して農薬の登録に関する情報や立入検査等で得られた無登録農薬に関する情報を提供することとしている。さらに、税関での確認業務において何らかの疑義が生じた場合は、農林水産省生産局生産資材課農薬対策室(以下「農薬対策室」という。)を相談窓口として、随時税関からの問い合わせに対応することとしており、税関との連携を図ることとしている。以上のように、輸入段階における規制に当たっては、各都道府県等で実施する使用者や販売者への立入検査の結果得られた無登録農薬の流通や使用に関する情報が有益であることから、当該情報を入手した場合には、速やかに農薬対策室に御連絡願いたい。
3 特定農薬
(1)特定農薬の定義
特定農薬とは、新法第2条第1項において、「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」と定義される。特定農薬については、新法において無登録農薬の製造、輸入及び使用の各段階での規制を強化したが、農作物の防除などに使用する薬剤や天敵で、原材料からみて明らかに安全上問題のないものにまで登録の義務を課すことは過剰規制になるとの判断から、農林水産大臣及び環境大臣が指定したものについては、登録を受けなくても製造、加工、輸入又は販売することを可能としたものである。
特定農薬の指定に当たっては、新法第16条第3項の規定に基づき、農業資材審議会への諮問及び答申を経て、特定農薬を指定する件(平成15年3月4日農林水産省・環境省告示第1号)を定め、食酢、重曹及び使用場所と同一都道府県内で採取された天敵が指定されたところである。
なお、「特定農薬」の名称が、化学合成農薬を連想させるとして、有機栽培農家等から「農薬」以外の名称を用いるべきであるとの要望が強いことから、今後「特定防除資材」の通称を用いることとする。
(2)特定農薬としての指定が保留された資材の取扱い
農林水産省及び環境省において、特定農薬として指定すべき農薬の検討に当たって、平成14年11月から12月にかけて、農業生産現場で使用されている農業資材についての実態調査を実施した結果、全国から約740種、のべ約2900種の資材に関する情報の提供があった。これらの情報について、農業資材審議会において検討を行い、そもそも「農薬」に該当しないアイガモやコイ、防虫シート等を除外し、平成15年1月30日の農業資材審議会において、食酢、重曹及び使用場所の周辺で採取された天敵を特定農薬として指定すべきとの答申がなされた。
一方、各方面から情報の提供があった多くの種類の資材について、特定農薬の指定の可否を検討したが、限られた時間内に得られた各資材の効果及び安全性の情報が十分でないことから、多くの資材は特定農薬としての指定の判断を保留することとされたため、今後、効果や安全性について、デ-タ収集等により、順次評価していくこととしている。なお、判断が保留されたものであっても、農薬としての効果を謳って販売されるものは、従来どおり取締りの対象とするが、使用者自らが農薬と同様の効能があると信じて使用するものは、この限りでない。
(3) 特定農薬の規制
特定農薬については、以下のような規制を行うこととする。
ア. 特定農薬を販売する者は、氏名、住所及び販売所を都道府県知事に届け出なければならない。
イ. 農林水産大臣は、特定農薬の使用に伴って人畜への危害が発生することを防止するため必要があるときは、販売者に対し販売の制限又は禁止をすることができる。
ウ. 製造者、輸入者及び販売者は、帳簿に製造数量や譲渡数量を記入し、少なくとも3年間帳簿を保存しなければならない。
エ. 虚偽の宣伝を禁止する。
4 登録を要しない農薬の製造若しくは加工又は輸入
(1)製造若しくは加工又は輸入に際し、登録を要しない場合
新法第2条第1項においては、農林水産大臣の登録を受けなければ農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入してはならないこととされた一方、農薬取締法第2条第1項の登録を要しない場合を定める省令において、[1]試験研究の目的で農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合、[2]植物防疫法(昭和25年法律第151号)第17条第1項及び第18条第2項の規定による防除を行うために使用する農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合は、登録を要しないこととされたところである。
ア 試験研究の目的で製造し若しくは加工し、又は輸入する場合とは、官公立、民間を問わず研究所、試験場、大学、検査機関等において以下のような試験、研究、開発、検査等を実施する場合をいう。
(ア) 農薬の開発段階において、製品の実用化の検討のために行ういわゆる「テストプラント」で製造する場合
(イ) 農薬取締法第2条第1項に規定する登録又は第6条の2第1項に規定する変更の登録を受けるために必要な試験成績(薬効、薬害、残留性、毒性等)を作成するために農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合
(ウ) 上記以外の場合であって、農薬の成分、効果、毒性、残留性等を判断するための試験を行うために製造し若しくは加工し、又は輸入する場合
(エ) 登録を申請している農薬について、製造プラントの稼働試験や品質試験を行うために製造し若しくは加工し、又は輸入する場合
(オ) 農薬の試験、実験、研究、開発、検査等を実施する者のために、当該農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合
イ 植物防疫法第17条第1項及び第18条第2項の規定による防除を行うために使用する農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合とは、新たに国内に侵入し、若しくは既に国内の一部に存在している有害動物若しくは有害植物がまん延して有用な植物に重大な損害を与えるおそれがある場合、又は有害動物若しくは有害植物により、有用な植物の輸出が阻害されるおそれがある場合において、これを駆除し、又はまん延を防止するため必要があるときに、農林水産大臣が行う防除のために、農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合をいう。
(2)登録を受けないで試験研究の目的で農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合の留意事項
登録を受けないで試験研究の目的で農薬を製造し若しくは加工し、又は輸入する場合には、試験研究に必要な最小限度の製造若しくは加工又は輸入に止めるとともに、当該農薬の保管管理を徹底し、これらが誤って試験研究以外の目的に使用されることのないよう留意し、紛失、盗難等があった場合には、速やかにその旨を農薬対策室に報告するよう指導されたい。
第3 農薬の販売に係る規制の見直し
1 業概念の廃止
第2の1のとおり、新法においては、業を営む者以外の者にも規制を拡大するとともに、販売について、近年、複数農家の代表者が農薬を一括購入し、関係農家に配布する等、新たな流通形態が出現したことから、所有権の移転を伴う無償の譲渡行為である「授与」についても「販売」に含め、規制の対象とすることとした。なお、単に輸送業者や配送業者が行う配送における受渡しは、所有権の移転を伴うものではないので、「販売」には含まれない。
2 販売者の届出
旧法第8条においては、販売業を営む者に氏名、住所等の届出を義務付けていたが、新法第8条においては、業を営む者以外の者にも届出を義務付けるとともに、届出の期限を営業の「開始の日から二週間以内」から、「販売の開始の日まで」に改めることとした。これは、旧法の規定では、販売の開始から最長2週間は何ら届出のない状態での販売が可能であるため、その間、立入検査や適正な販売の指導を実施することが困難であることなど、適正な農薬の流通を確保する観点から望ましくないことから、無登録農薬の流通を未然に防止するための措置として改正されたものである。
なお、「開始の日まで」とは販売を開始した日を含むこと、また、新法第8条第2項に規定する届出事項の変更には販売の廃止も含まれることに留意されたい。
3 登録が失効した農薬の販売
新法第9条第1項においては、「販売者は、容器又は包装に法第7条の規定による表示のある農薬及び特定農薬以外の農薬を販売してはならない」旨規定されていることから、登録が失効した農薬であっても第7条の規定による表示のある農薬であれば、これを販売することは問題がない。しかしながら、登録が失効した農薬の中には、安全性に問題があることが明らかとなったものがあるため、農林水産大臣は、このような農薬について農林水産省令により販売を禁止することができるとされている。
なお、前述のとおり、登録が失効した農薬であっても、第7条の規定による表示があり、かつ、販売を禁止されていない農薬であれば、これを販売することは違法行為ではないが、最終有効年月を超えた農薬については、品質が劣化し農薬としての効果の低下や変質等の問題が生じる可能性があるので、これを販売することは避けるよう指導願いたい。
第4 農薬の輸入を媒介する者に対する虚偽宣伝の禁止
近年、輸入代行業者を介して海外から無登録農薬を個人輸入する事例が増加しているが、旧法では、輸入代行業者が法的に位置付けられておらず、また、個人の輸入を媒介する行為は販売に該当しないことから、輸入代行業者が輸入を媒介する段階で取り締まることが困難であった。
このため、新法第2条において業を営む者以外の個人による輸入についても規制の対象とするとともに、新法第10条の2において「輸入の媒介を行う者」を新たに位置付け、これらの者による「虚偽の宣伝」や「登録を受けていない農薬について登録を受けていると誤認させるような宣伝」を禁止することとし、輸入の媒介を行う者に対する規制措置を講ずることとしたところである。
なお、「登録を受けていない農薬について登録を受けていると誤認させるような宣伝」としては、「既存の登録農薬と同じ有効成分を含む」「既存の登録農薬と同じ効果」等の宣伝や容器・包装に農薬の登録番号と類似の番号を記載し、登録を受けている農薬と誤認させるような宣伝を行うこと等が挙げられる。
第5 農薬の使用に係る規制の強化
1 表示のない農薬の使用の禁止
今回の大きな改正点として、農薬使用者に対する規制が大幅に強化された点が挙げられる。これは、食の安全を確保し、安全な農作物を国民に供給するために、農薬使用者は適切に農薬を使用する責務を有することを明確にしたものである。具体的には、新法第11条において、農薬使用者は、第7条の規定による表示のない農薬や第9条第2項の規定により販売が禁止されている農薬を使用してはならないこととされた。これにより、非農耕地専用と称する除草剤等農薬としての登録を受けておらず、第7条の規定による表示のない薬剤を農作物等の病害虫の防除の目的に使用することは違法行為となる。
なお、農薬取締法に基づく農薬の使用の禁止に関する規定の適用を受けない場合を定める省令において、[1]試験研究の目的で農薬を使用する場合、[2]農薬取締法第2条第1項の登録を受けた者が製造し若しくは加工し、又は輸入したその登録に係る農薬を自己の使用に供する場合、[3]植物防疫法第17条第1項及び第18条第2項の規定による防除を行うために農薬を使用する場合は、新法第11条の規定は適用しないこととされたところである。[1]の試験研究の目的で農薬を使用する場合とは、官公立又は民間を問わず研究所、試験場、大学、検査機関等において以下のような試験、実験、研究、開発、検査等に使用する場合をいう。
ア. 新法第2条第1項に定める登録又は第6条の2第1項に規定する変更の登録を受けるために必要な試験成績(薬効、薬害、残留性、毒性等)を作成するために農薬を使用する場合
イ. 上記以外の場合であって、農薬の成分、効果、毒性、残留性等を判断するための試験を行うために農薬を使用する場合
なお、この場合においては、試験研究に必要な最小限度の量の使用に止めるとともに、当該農薬を使用する地域を適切に管理し、必要に応じて、閉鎖系における使用に限定する等、使用した農薬が当該地域外に飛散及び流出しないよう留意することが必要である。また、当該農薬の保管管理を徹底し、紛失、盗難等があった場合には、速やかにその旨を農薬対策室に報告するよう指導されたい。
2 農薬使用基準の遵守義務化
(1)農薬使用基準を遵守すべき農薬
農薬の使用については、これまで旧法第12条の6の規定により「農薬を使用する者が遵守することが望ましい基準」を定めて公表していたところであるが、今般、無登録農薬が全国的に使用されていた実態を踏まえ、新法第12条第1項の規定により「農薬を使用する者が遵守すべき基準」(以下「農薬使用基準」という。)を定め、農薬使用者は農薬使用基準に違反して、農薬を使用してはならないこととし、農薬の適正な使用を確保することとした。農薬取締法第12条第1項の農林水産省令・環境省令で定める農薬を定める省令においては、現に登録を受けている農薬や登録が失効した農薬が農薬使用基準の対象とされたところである。ただし、[1]新法第9条第2項の規定により販売が禁止されている農薬、[2]試験研究の目的で使用する農薬、[3]植物防疫法第17条第1項、第18条第2項及び第29条第1項の規定による防除を行うために使用する農薬、[4]植物防疫法第10条第1項に規定する輸入国がその輸入につき輸出国の検査証明を必要としている植物及びその容器包装を輸入しようとする者が当該輸入国の要求に応じるため当該植物及びその容器包装に使用する農薬については、農薬使用基準の対象にならないこととされた。[2]の試験研究の目的で使用する農薬とは、官公立又は民間を問わず研究所、試験場、大学、検査機関等において以下のような試験、実験、研究、開発、検査等に使用する農薬をいう。
ア. 新法第2条第1項に定める登録又は第6条の2第1項に規定する変更の登録を受けるために必要な試験成績(薬効、薬害、残留性、毒性等)を作成するために使用する農薬
イ. 上記以外の場合であって、農薬の成分、効果、毒性、残留性等を判断するための試験を行うために使用する農薬
なお、この場合に使用する農薬については、試験研究に必要な最小限度の量の使用に止めるとともに、当該農薬を使用する地域を適切に管理し、必要に応じて、閉鎖系での使用に限定する等、使用した農薬が当該地域外に飛散及び流出しないよう留意することが必要である。また、当該農薬の保管管理を徹底し、紛失、盗難等があった場合には、速やかにその旨を農薬対策室に報告するよう指導されたい。
(2)農薬使用基準
農薬使用基準は、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令において定められ、農薬使用者は、新法第7条の規定により農薬の容器に表示される適用作物や総使用回数、単位面積当たりの使用量、使用時期等を遵守しなければならないとするとともに、住宅地において農薬を使用する際の飛散の防止に必要な措置を講ずることや使用に関する事項の帳簿の記載等に関する規定を設けた。なお、既に登録を受けている農薬について、新法第6条の2第2項、第6条の3第2項又は第6条の4第2項の規定による変更の登録がなされた場合であっても、農薬使用者が、使用する農薬について最新の登録内容に従って当該農薬を使用できるよう、都道府県において、病害虫防除所等の関係機関を活用して農薬使用者その他の関係者に対し情報の周知を図られたい。
また、農薬使用基準においては、航空機を用いて防除する者、ゴルフ場において農薬を使用する者及び倉庫、コンテナ、船倉、天幕その他密閉された施設において農薬をくん蒸に使用する者(自ら栽培する農作物等にくん蒸により農薬を使用する者を除く。)は、あらかじめ氏名、住所、農薬の使用の手法、使用の対象及び使用する農薬の種類を記載した使用計画書を農林水産大臣に提出することとされている。
3 防除業者の届出に関する規定の廃止
旧法第11条においては、防除業者に、氏名、住所、事業の内容等の届出を義務付けていたが、新法において業概念が廃止されたことに伴い、防除業者の届出義務の規定を廃止したところである。なお、立入検査や指導等を効率的に行う観点から、都道府県の条例等により、防除業を営む者に氏名、住所等の届出を求めることを妨げるものではない。
4 作物残留性農薬及び土壌残留性農薬に関する規定の廃止
旧法第12条の2及び第12条の3において、政府は、政令をもって、当該種類の農薬が有する農作物や土壌についての残留性からみて、人畜に被害を生ずるおそれがある種類の農薬を、それぞれ作物残留性農薬及び土壌残留性農薬として指定するとともに、指定があった場合には、環境大臣は当該農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めることとされていた。しかしながら、新法第12条において、作物残留性農薬及び土壌残留性農薬を含めたすべての農薬について農薬使用基準を定め、農薬使用者は農薬使用基準に違反して農薬を使用してはならないとされたことに伴い、作物残留性農薬及び土壌残留性農薬に関する規定を削除することとした。
なお、水質汚濁性農薬に関する規定については、水質汚濁性農薬の規制の方法が、作物残留性農薬又は土壌残留性農薬と異なり、使用する地域の限定やその使用につきあらかじめ都道府県知事の許可を受けることにより、特定地域での使用量の総量規制を行うものであることから、新法においても残存させることとした。
第6 権限の委任
旧法においては、都道府県知事は、第7条の規定による表示のない農薬の販売等を行った販売業者に対して、立入検査や報告聴取を行うことができるものの、その結果を踏まえて当該販売業者に対して販売の制限又は禁止を行うことはできなかった。
しかしながら、都道府県知事は、常に違法農薬の出回り状況等の情報に接し、違法行為を発見することにより迅速かつ機動的な監督処分を行うことが容易であることから、多くの都道府県から、販売段階における規制を万全なものとするため、立入検査等を行う権限と販売制限等の処分を行う権限を一体的に行えるようにする旨の要望が寄せられていた。
このため、都道府県段階で立入検査等を行う権限と販売制限等の処分を行う権限を一体的に行い、販売者の違法行為への対応の機動性を高める観点から、第7条の規定による表示のない農薬の販売等を行った販売者に対し、農薬の販売の制限又は禁止を行う権限についても、政令で定めるところにより都道府県知事が行うことができることとした。
この場合において、著しく大量の違法農薬が都道府県をまたがって販売されている事実が明らかになったときは、都道府県域内での対応だけでは手遅れとなる可能性があるため、農薬の販売により農作物等、人畜又は水産動植物の被害の発生が広域にわたるのを防止するため必要があるときは、農林水産大臣が自らこれらの権限に属する事務を行うことを妨げないこととした。
また、都道府県知事が販売の制限又は禁止をした販売者が、別の都道府県の販売者又は使用者に対し違法農薬を販売していた場合等、違法農薬が当該都道府県を超えて広域に流通することが想定されることから、農林水産大臣が、都道府県知事による監督処分の実施状況等に関する情報を一元的に把握し、関係都道府県に対して即時に情報提供を行うなど迅速な対応ができるようにする必要がある。したがって、都道府県知事が、農薬の販売を制限し、又は禁止した場合には、農林水産省令の定めるところにより、その旨を農林水産大臣に報告しなければならないこととした。
第7 罰則の強化
旧法においては、農薬の販売等の規定に違反した場合、自然人にあっては1年以下の懲役又は5万円以下の罰金、法人にあっては5万円以下の罰金を科することとされていたが、無登録農薬の販売等の違法行為が続発し、旧法における罰則が違法行為に対する抑止力としては不十分であることが明らかとなった。
また、今回新たに、無登録農薬の製造・輸入の禁止、第7条の規定による表示のない農薬の使用の禁止等を規定したことから、これらに違反した者に対する罰則を創設する必要があるため、罰則規定を抜本的に見直すこととしたところである。
具体的には、農薬と同じ生産資材である飼料の安全性の確保を目的とする、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和28年法律第35号)の罰則の水準を考慮し、これと同等とするよう罰則を強化したところである。また、法人については、個人事業者に比べて不当に巨額の利益を得ることが可能であることから、法人の違法行為に対する抑止力を確保する観点から、法人の代表者等が、新法第2条第1項の登録に関する規定や、新法第7条の真実な表示に関する規定、新法第9条第1項の販売の制限又は禁止に関する規定に違反した場合に、法人に科される罰金を最高1億円に引き上げたところである。
さらに、法人の両罰規定に関する旧法第19条ただし書については、最高裁判所の判例の蓄積を通じ、ただし書がなくても同様の趣旨に解することができるため、これを削ることとした。

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