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農林水産省

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水産業改良普及事業の運用について

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16水推第1068号
平成17年3月28日

都道府県知事あて

水産庁長官


水産業改良普及事業については、普及活動の効率的な推進を図るため、水産業改良普及事業推進要綱(平成17年3月16日付け16水推第1023号農林水産事務次官依命通知)が制定されたところであるが、その運用については別紙によることとしたので、御了知ありたい。
また、この通知は平成17年4月1日から適用するものとし、これに伴い従前の水産業改良普及事業の運用について(昭和58年10月26日付け58水研第1237号水産庁長官通知)は廃止することとしたので、併せて御了知ありたい。

16水推第1068号
平成17年3月28日
内閣府沖縄総合事務局長 あて
水産庁長官
水産業改良普及事業の運用について
このことについて、別添のとおり沖縄県知事あて通知したので、御了知ありたい。

別紙
第1 趣旨
水産業改良普及事業(以下「普及事業」という。)は、制度発足以来、水産業を取り巻く情勢の変化に応じてその内容を改めながら沿岸漁業等の生産性向上、経営の近代化、漁業後継者の育成等に大きな役割を果たしてきた。
近年、水産業を取りまく環境が、漁業資源水準の低下、魚価の低迷等による漁業経営の悪化、漁業就業者の減少、高齢化の進行等による漁村活力の低下をはじめとして依然として厳しい状況となっている一方で、経営改善に意欲的に取り組む漁業者グループが育ちつつある。
また、平成14年3月に「水産基本計画」が策定される等、水産基本法の下で新たな施策展開が図られるとともに、普及現場をめぐる環境の変化が著しいことから、普及事業の在り方が改めて問われている。
このため、平成15年2月に「水産業改良普及事業の在り方に関する懇談会」が設置された。同懇談会により今後の普及事業運営の基本的方向、具体的方策等、普及事業の在り方全般について幅広い検討が行われ、平成15年5月に「水産業改良普及事業改革の基本方向について」が公表されたところである。
普及事業は、水産業に関する技術・知識についての専門家集団である普及組織が、沿岸漁業者等に直に接しつつ、研究成果や技術開発の成果等を地域の条件・特性に応じた実用的技術として移転を図ることによって、沿岸漁業者等の自主的な活動等の向上を助長することを基本に実施されてきている。
水産業の現状は周辺水域における過剰漁獲や生育環境の悪化もあって、漁獲量の減少が続き、漁業生産は低迷している。また、漁業就業者の減少・高齢化が進行し、景気低迷とも相まって、漁業経営の悪化さらには漁業地域の活力の低下を招いている。
こうした状況の下で沿岸漁業者等に直接指導するという普及事業の手法は、沿岸漁業者等の技術の向上や経営能力の向上を図る最も効果的な手法であり、水産業の担い手を確保・育成、支援していく上で、普及事業の充実強化を図ることが重要となっている。
また、地域における資源管理、漁場環境の保全、つくり育てる漁業の振興については一地域のみならず広域的な取組がよりその効果を発揮できるものであり、漁業者の自主的な活動に対するソフト面からの支援を普及組織により効果的に行うとともに、普及事業による全国的統一的な取組が重要である。
このため、普及事業については今後とも、より効率的、効果的な運営を通じてその役割を充分に果たしていくことが必要である。
第2 普及指導員の設置について
水産業改良普及事業推進要綱(平成17年3月16日付け16水推第1023号農林水産事務次官依命通知。以下「要綱」という。)第2に規定する普及指導員(以下単に「普及指導員」という。)を設置する場合の在職期間が12カ月に満たない場合の取扱いは、次のいずれかに該当するときは、年間に1名設置されたものとする。
(1) 年間を通じ、1人の普及指導員が延べ6力月以上在職する場合
(2) 年間を通じ、前任者の在職期間に加え2人以上の普及指導員の在職期間が延べ6カ月以上に達する場合
第3 運営指針について
要綱第4の1の運営指針は、次のとおりとする。
1 普及指導体制の整備に関する基本的事項
(1) 普及指導員室の設置
ア 普及指導員は、水産業普及指導員室(以下「普及指導員室」という。)に置く。
イ 普及指導員室には、必要に応じて総括者となる普及指導員を置くことができる。
ウ 都道府県は、普及指導員室の担当区域を定めるものとする。
エ 普及指導員室の担当する区域は、行政区域、漁業生産活動の実情及び交通条件からみて適当な範囲を設定するものとする。
オ 漁業生産活動の実情に照らして効率的と判断される場合には、普及指導員室の担当区域を超えた普及指導員の活動を妨げない。
カ 普及指導員室は、試験研究機関等との連携を密にし、普及内容の高度化・合理化を図るとともに、沿岸漁業者等に対して効率的な普及指導を行う体制を整えるものとする。
(2) 普及指導員の設置
ア 都道府県は、近年の沿岸漁業等を取り巻く情勢の変化に対応し、沿岸漁業等の振興を図るため、必要な普及指導水準の確保と効率的な普及活動の推進に支障が生じることのないよう、適当な人数の普及指導員を設置するものとする。
イ 都道府県は、沿岸漁業等の振興を図る上で、普及事業の必要性が高い地域への重点配置を行う等普及指導員の適正配置に留意するものとする。
2 普及活動の効率化に関する基本的事項
(1) 取り組むべき課題の重点化
普及事業の一層の効率的実施のためには、地域の水産業の実情を踏まえて活動内容を整理し、取り組むべき課題の重点化を図ることが必要である。
ア 意欲のある担い手の確保・育成
漁業生産の担い手の育成のためには、漁業者に対する技術の普及及び経営の指導を継続して行うほか今後は地域づくりや人づくりの観点から支援することも必要である。このため、後継者・新規就業者の漁業への就業を容易にするための地域における合意形成や青年・女性層を中心とした漁業者層が新たな取組を行うための支援が必要である。こうしたことから、
(ア) 新規就業者の受入れ、意欲と能力のある担い手の育成に当たっては、地域の合意形成のため、今後、漁業者間の合意形成、市町村、漁協等の連絡調整など漁業者・地域への意識の啓発に積極的に関与することが望ましい。
(イ) また、漁家の経営改善の観点から経営の向上に関する情報の収集・分析や、その具体化に向けた方策の検討を通じた漁家への指導が求められている。これらの指導と併せて、各種水産施策の活用、技術的支援等を行うことが重要である。
(ウ) 漁業士(強い水産業づくり交付金に係るメニューのガイドラインについて(平成17年3月23日付16水港第3246号水産庁長官通知。以下「ガイドライン通知」という。)第4の表のメニューの内容の欄2の(2)に規定する漁業士をいう。以下同じ。)のように、浜のリーダーとなる人材を積極的に育成することが重要である。
イ 消費者に受け入れられる水産物の生産
水産分野においても「食の安全・安心」への配慮が生産者に求められている。また、水産物の一層の高鮮度化・高付加価値化による価格向上が漁家経営を考える上で重要となっており、これにより、少ない漁獲量でそれまでと同様の収入を得ることができるため、ひいては漁獲圧の低減につながり資源管理にも役立つことになる。こうしたことから、
(ア) 養殖生産物を中心に、国民に「安心」と「信頼」として実感される水産物の生産への取組が不可欠である。このため、水産用医薬品をはじめとした養殖用資材の使用のための適切な指導が必要である。また、水産物加工場における衛生管理等に係る指導も重要である。
(イ) 水産物は漁獲物の鮮度保持が第一であり、このための指導が重要である。このためには、漁業者への指導、技術的支援だけでなく、流通業者の協力を得るための取組も行うことが望ましい。
(ウ) 漁獲物の販売単価向上のためには、鮮度向上や産地加工等による付加価値向上の他、漁獲物のブランド化も有効である。このためには、農畜産物等も含めて事例の把握・分析を行い、実現可能な方策を検討・指導することが望ましい。
(エ) 消費者のニーズと漁業生産物との間に乖離がある場合、これを埋めることにより、販路拡大の機会を増大することが可能と考えられる。また、漁獲物の地産地消を推進することにより、地元消費者の支持を得ることも重要と考えられる。このためには、消費者の水産物消費動向や消費形態を注視し、流通業者や加工業者とも情報交換を行い、関係者間の合意形成を図ることが望ましい。
(オ) 魚食の普及も重要な課題であるが、外食・中食の割合が高まる中で、魚食普及の対象を吟味して実施することが重要である。例えば、惣菜加工会社の調理人に食べ方の工夫を普及する等、効果的な実施を心がけることが望ましい。
ウ 資源管理及びつくり育てる漁業のための意識啓発、技術普及
沿岸域の資源管理型漁業を推進するため、普及指導員の指導の下に、漁業者自らが漁場環境調査等を実施する等科学的な資源管理手法についての取組や市町村及び都道府県の範囲を超えた広域的な資源管理についての取組を推進することが望ましい。
エ 漁場環境保全のための意識啓発、技術普及
漁業生産力の維持、発展の観点から環境保全型漁業への取組が一層必要となっていることから、沿岸域の環境保全に寄与するため、漁場環境保全に対する啓発、支援を行うことが望ましい。
(2) 普及活動の対象者の重点化
これまでの担当区域内の漁業者全般に対する普及事業の展開から、今後は地域漁業の中核となる意欲と能力のある漁業者層に普及対象者の重点化を図るものとする。
また、漁業士、中核的漁業者協業体(ガイドライン通知第4の表のメニューの内容の欄2の(5)に規定する中核的漁業者協業体をいう。)、漁村女性等のグループ(ガイドライン通知第4の表のメニューの内容の欄2の(5)に規定する漁村女性等のグループをいう。)等、意欲のある漁業者等の組織化を推進することが、担い手の育成の重点化・効率化の観点から望ましい。
(3) 活動の高度化のための体制・方法の改善
取り組むべき課題や対象者の重点化に対応して、普及事業を効率的及び効果的に実施することができるよう、以下の観点から関係行政機関や民間等との連携や活動体制や活動方法について改善を図ることが望ましい。
ア 試験研究機関との連携強化
(ア) 試験研究機関との連携強化と普及指導員の指導力の強化
・普及指導員室及び試験研究機関における目標の共通化
・普及指導員と試験研究機関との間の新技術や漁業者ニーズの効率的な情報交換
・知識及び経験の豊かな普及指導員の任用
・普及活動に必要な研究成果の共有
(イ) 漁業現場に即応した応用分野へのシフト
・基礎的・先導的研究の評価、推進及び情報提供機能の充実
・試験研究機関による実用型研究の成果の定着
イ 行政機関との連携強化
・普及指導員室、行政(都道府県、市町村)における目標の共通化
・関連水産行政施策への参加
・農山漁村における男女共同参画推進担当職員との連携の強化
ウ 普及指導員の活動の高度化のための支援
・普及指導員室による国の普及情報データーベース、水産研究所の研究情報の利用
・普及指導員による情報集積・提供機能の充実
エ 民間等の役割分担とその活用
(ア) 漁業協同組合との連携
漁業協同組合の役割が発揮できるよう、普及指導員室と漁協との連携による情報の提供及び交換を推進する。特に、漁業者への経営指導等の面では、漁業協同組合との連携が有効と考えられる。この場合において、漁業協同組合に経営指導の担当者がいる場合には、個別漁家の経営指導は漁業協同組合が行い、普及指導員は地域の全体的な経営改善方策を行う等の役割分担が可能である。
(イ) 漁業士との連携
漁業士と普及指導員との連携体制の充実強化を図るとともに、新規就業者や若年漁業者への漁ろう技術等の指導をはじめ、水産業研修教育充実の観点から、学校及び地域における水産業教育に対する支援を行うこととし、その指導を漁業士の役割と位置づけ積極的に活用することが有効である。この場合において、漁業士はこれらの指導等を直接的に行い、普及指導員は関係者間の調整・調和を図る等の役割分担が可能である。
3 普及指導員の資質の向上に関する基本的事項
(1) 普及指導員の年齢、普及活動に対する習熟度等に応じて必要な指導能力を向上させるため、研修を強化し普及事業の技術水準の向上を図るとともに優れた人材の養成に努めるものとする。
(2) 研修の実施に当たっては、国が行う研修との関連に留意しつつ、計画的に実施するものとする。
(3) 試験研究機関の職員等との人事交流についても積極的に取り組み、資質向上に留意するものとする。
4 その他普及事業の運営に関する基本的事項
(1) 各種行政施策・関係機関等との連携の確保
水産業改良普及事業の特長を活かしつつ、さらにその効果が十分に発揮されるよう、沿岸漁業改善資金をはじめとした制度資金や補助事業等の各種行政施策との連携に努めるものとする。
また、協同農業普及事業や林業普及指導事業との密接な連携の確保についても留意するものとする。
(2) 女性漁業者等に対する活動の支援
漁業地域社会の活性化に大きな役割を果たしている女性が意欲と能力を発揮しうる男女共同参画社会の形成に向け、地域社会の意識啓発等の取組の推進を図るほか、女性が漁業に就業しやすい環境づくりや地域活性化に向けた漁村女性の活動に対する支援が重要であり、こうした支援に資する効率的な普及活動を推進するものとする。
(3) 高齢漁業者の役割の明確化
豊富な知識・経験や熟達した技術と漁業に意欲を有する高齢者については、後継者の技術指導をはじめ、生涯現役として生きがいを持って漁業地域の活性化に貢献する活動等を支援する。
(4) 水産業教育の推進
漁業・漁村への理解を醸成するとともに、将来的に漁業の担い手を確保していく観点から、児童、生徒を対象に漁業体験学習等への取組の推進等、漁業に関する教育の機会を提供することを推進する。
第4 事業実施計画について
1 要綱第5に定める水産業改良普及事業実施計画書は、別紙様式のとおりとする。
2 要綱第5の水産業改良普及事業実施計画の変更とは、次に掲げるものをいう。
(1) 普及指導員室の設置場所及び数の変更
(2) 普及指導員の設置数の10%を超える減
第5 水産業改良普及事業交付金の割当について
1 国は、第4の1の水産業改良普及事業実施計画書を審査し、適切であると認める場合には、毎年度予算の範囲内において、都道府県別に交付金の割当を決定する。
2 交付金の都道府県別割当は、次の基準により行う。
(1) 当該予算総額の4割は、都道府県の漁業経営体数に応じて配分する。漁業経営体数は、農林水産省統計部調査による。
(2) 当該予算総額の2割は、各都道府県の海岸線長に応じて配分する。海岸線長は、国土交通省河川局調査による。
(3) 当該予算総額の2割は、各都道府県の沿海市町村数に応じて配分する。沿海市町村数は、見直しを行う年の2月1日時点での実勢値を用いる。
(4) 当該予算総額の2割は、天災のため又は沿岸漁業資源の開発及び管理が不十分なために普及事業を実施することが困難な都道府県及び沿岸漁業発展のために緊急に普及事業を実施する必要のある都道府県に配分する。
(5) 海岸線長及び沿海市町村数には、漁業法(昭和24年法律第267号)第84条第2項に基づき指定された湖沼の湖岸線長及び市町村数を含む。
第6 交付金の対象経費について
交付金の交付の対象となる経費及び経費の内容については、別表のとおりとする。
第7 要綱第13の漁業士は、ガイドライン通知第4の表のメニューの内容の欄2の(2)に規定する漁業士とする。

別表(PDF:75KB)

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