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農林水産省

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水産業協同組合法等の一部を改正する法律の施行について

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19水漁第3944号
平成20年4月1日

都道府県知事あて

農林水産事務次官

 

 水産業協同組合法及び中小漁業融資保証法の一部を改正する法律(平成19年法律第78号。以下「改正法」という。)は、第166回通常国会において成立し、平成19年6月8日に公布され、平成20年4月1日から施行されることとなった。
 また、これに伴い、水産業協同組合法施行令及び中小漁業融資保証法施行令の一部を改正する政令(平成19年政令第295号。以下「改正令」という。)のほか、関係命令、関係告示が同日付けで施行されることとなった。
 改正後の水産業協同組合法(昭和23年法律第242号。以下「法」という。)、水産業協同組合法施行令(平成5年政令第328号。以下「施行令」という。)その他関係法令の運用に当たっては、下記の点に留意し、改正の趣旨の実現に努めるとともに、併せて水産業協同組合(以下「組合」という。)が法の趣旨に即して、本来の使命を果たしていけるよう、特段の御指導を願いたい。
 以上、命により通知する。

第一 改正の趣旨

 水産業協同組合(以下「組合」という。)は、これまで、漁業者の経済的社会的地位の向上と漁業生産力の増進を図るための漁業者の協同組織として、販売事業、購買事業のほか、信用事業、共済事業等を行うことにより、漁業者の漁業活動の継続・安定に寄与する役割を果たしてきたところである。
 一方、近年の水産資源の減少や魚価の低迷等に伴う販売事業の不振、燃油価格の急騰等に伴う購買事業の不振等により、各組合の収支状況が悪化している中で、組合が組合員の漁業活動の継続・安定に寄与していくためには、その経営の健全化を図り、事業運営の適正を図ることが急務となっているところである。 
 また、共済事業については、従来、共済規程の策定等に係る行政庁による認可制等必要最小限の規定しか設けられていなかったところであるが、近年、契約者のニーズの多様化・高度化に伴う共済の種類・事故の範囲等の拡大、組合間の合併の進展に伴う共済事業の普及の拡大、共済事業における組合員以外の利用の増加など、共済事業の重要性が増大しており、当該事業の運営の健全化を図ることが極めて重要となっているところである。
 今回の改正は、このような状況を踏まえ、事業別損益を明らかにした書面や業務報告書の作成等を原則として全組合に義務付けるなど、事業運営全般の健全性の向上を図るための措置を講ずるとともに、今後、組合経営におけるウェイトが増加していくと考えられる共済事業に関し、その運営状況の早期改善を容易にする仕組みやクーリング・オフ制度の導入等により、その健全性の確保や契約者の保護を図るための措置を講ずることとしたものである。

第二 組合の事業運営の健全性の向上を図るための措置

1 組合の事業運営全般の健全性の向上を図るための措置

(1) 事業別損益を明らかにした書面の作成等

 漁業を取り巻く状況が厳しさを増す中で、概して不振事業の赤字を他の事業の黒字により補てんするという経営が行われているが、これらの事業運営や財務内容に問題のある組合が、各事業の見直しにより収支改善を図るためには、経営に参加する組合員に各事業の損益状況を明らかにすることがその前提となる。このため、組合に事業別の収支状況を明らかにさせることにより、その自助努力による早期改善を容易にするため、これまで信用事業を行う組合についてのみ対象となっていた信用事業、購買事業、販売事業、共済事業、その他の事業の区分ごとの事業別損益を明らかにした書面の作成及び通常総会への提出の義務付けを原則としてすべての組合に拡大することとされた。(法第41条第1項(法第92条第3項、第96条第3項及び第100条第3項において準用する場合を含む。)及び改正後の水産業協同組合法施行規則(平成20年農林水産省令第10号。以下「規則」という。)第158条)
 なお、事業別損益を明らかにした書面の作成の義務付けの措置は、改正法の施行の際現に存する漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会については、施行日以後に開始する事業年度から適用することとされた。(改正法附則第19条)

(2) 業務報告書の作成・提出

 各組合の収支状況が悪化する中で、各事業の適正化・効率化の要請が高まっていることから、行政庁がすべての組合について定期的に業務状況の報告を受けることにより、適正かつ効率的な指導・監督を行えるようにする必要がある。
 このため、業務報告書の作成及び行政庁への提出が義務付けられる組合の範囲を、信用事業を行う組合からすべての組合に拡大することとされた。(法第58条の2第1項(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。)
 また、これまでも義務付けの対象であった信用事業を行う組合については、今回新たに義務付けの対象となった一定規模以上の組合と同様に業務報告書の記載事項としてキャッシュ・フロー計算書が追加されたので留意されたい。(規則第205条)
 なお、すべての組合に対する業務報告書の作成・提出の義務付けの措置は、改正法の施行の際現に存する漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合又は水産加工業協同組合連合会については、施行日以後に開始する事業年度から適用することとされた。(改正法附則第21条)

(3) 組合員の資格審査の方法の定款への記載の義務付け

 漁業協同組合(以下「漁協」という。)の組合員たる資格は、漁業従事日数が1年を通じて一定の日数を超えることが必要とされている(第18条第1項第1号)が、当該資格に関する審査手続等については、漁協自治の観点から漁協自身に委ねられているところである。
 しかしながら、近年、漁業補償金の配分が利権化したこと等を背景に、配分を行う理事と法定の要件を満たさない正組合員との癒着が生じ、資格審査が適切に行われないため、漁協自治に支障が生じているケースがみられるところである。
 このため、資格審査の方法を定款の記載事項として明定し、これを行政庁が認可することにより、資格審査が公正かつ適正に行われ、漁協自治が適正に機能するよう促すこととされた(法第32条第2項)。
 なお、組合員の資格審査の方法の定款への記載の義務付けの措置は、改正法の施行の際組合員の資格審査の方法を定款に記載していない組合については、施行日以後一年を経過する日までの間は、適用しないこととされた。(改正法附則第16条)

(4) 役員の欠格事由への暴力団員等の追加等

 近年、公共事業等の実施に伴う漁業補償金の支払に関する利権に着目して、暴力団員等が漁業協同組合又は漁業協同組合連合会(以下「漁協等」という。)の役員となり、漁協等の目的を逸脱する行為を行う事例が少なからず見受けられる。こうした事態を放置した場合には、漁協系統組織の社会的信用の失墜はもとより、暴力団への資金の流入を助長することにもなりかねないことから、漁協等の経営に参画する役員の欠格事由として、暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を追加することとされた(法第34条の4第1項第5号(法第92条第3項において準用する場合を含む。))。
 また、行政庁が組合の役員について上記の欠格事由に該当する疑いがあると認めるときは、警察庁長官等の意見を聴くことができることとするとともに、警察庁長官等からも意見を述べることができることとされた。(法第127条の5及び第127条の6)

2  共済事業の健全性の確保を図るための措置

(1) 共済事業に係る健全性の基準の設定及び早期改善命令の導入

 現在、共済事業を行う組合については、行政庁は、その事業の健全な運営を確保し、又は組合員を保護するため、必要に応じ、監督上必要な命令を発することができる(法第123条の2第3項)が、事業運営に問題が生じ、支払能力が低下するような場合には、このような事後的な改善措置にとどまらず、こうした状況をできる限り早期に把握し、改善措置を講ずることが重要である。
 このため、主務大臣が共済金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうか等の基準を定め、これに基づき、上記の状況にある組合に対し、当該状況の早期改善を図るための業務改善命令を発することができることとされた。(法第15条の3(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。)及び第123条の2)
 なお、共同事業組合(他の共済事業を行う組合との契約により連帯して共済契約による共済責任を負担し、かつ、当該共済責任について負担部分を有しない共済事業を行う組合をいう。以下同じ。)については、当該制度に係る規定は適用されないので留意されたい。(規則第14条、第15条、第217条及び第218条)

(2)  最低出資金制度の導入

 近年、組合の共済事業が契約者の漁業経営・生活の安定を図る上で重要な役割を果たすようになっている一方で、共済事業の経営不振により契約者が受ける影響が深化している。
 特に、共済事業を行う組合は、多数の共済契約者に対し、長期にわたる多額の支払責任を負うことから、経済・社会情勢の急激な変化があった場合であっても、支払責任を果たせるよう、共済金の支払の最終的な担保となる出資金について、その維持・充実を図る必要性が大きいものである。
 このため、信用事業を行う組合と同様に、共済事業を行う組合においても、共済金の支払の最終的な担保となる出資金の最低限度を定めることとし、他業態とのバランス、組織整備への取組の状況等を踏まえ、その出資金の最低限度を漁業協同組合及び水産加工業協同組合にあっては千万円、共済水産業協同組合連合会にあっては十億円とされた。(法第11条の3(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 なお、最低出資金制度の導入の措置は、改正法の施行の際現に共済事業を行う漁業協同組合及び水産加工業協同組合(信用事業を併せ行うものを除く。)であって、その出資の総額が千万円に満たないものについては、その自己資本の増強等のためには一定の期間を要することから、平成23年3月31日までの間は適用しないこととされた。(改正法附則第2条)

(3)  役員の欠格事由への破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者の追加

 近年、組合の共済事業は、共済契約者のニーズの多様化・高度化に伴い、共済の種類、そのカバーする共済事故の範囲、共済金額等が拡大しており、今後より一層の経営規模の拡大が見込まれるところである。
 このような状況の中で、今後、共済掛金の受入れ等共済契約者の金銭を取り扱う規模も大きくなると見込まれることから、共済事業を行う組合の経営に参画する役員の欠格事由として、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者を追加することとされた。(法第34条の4第2項第1号(法第96条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。))
 なお、共済事業を行う組合の役員等の欠格事由について破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者の追加の措置は、改正法の施行の際現に在任する役員等については、施行日以後に当該事由に該当することになったものを除き、施行日以後最初に招集される通常総会の終了の時までは適用しないこととされた。(改正法附則第18条)

(4)  業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧

 近年、組合の共済事業は、組合員以外の利用が増加しており、また、保険会社の破綻などにより、保険のみならず、共済に対しても国民の不安が高まっている状況にあるところである。このような状況の中で、組合員のみならず、国民全般の生活と密接な関係を持つ国民の監視の下で一層の経営の健全性を確保していく観点から、組合員や組合の債権者にとどまらず、共済契約者やこれから契約関係に入ろうとしている者を含む公衆一般に対して業務及び財産の状況を記載した説明書類を広く開示していく必要がある。
 また、今回の法改正により、信用事業と同様に、共済事業を行う組合については、その共済金等の支払能力の充実の状況が適当であるかどうか等の基準を導入することとしており、支払余力比率に対する関心が高まることが予想されることから、同比率に関する情報も含めた説明書類の開示が必要となる。
 このため、次のとおり、業務及び財産の状況に関する説明書類の縦覧の義務付けられる組合の範囲について、これまでの信用事業を行う組合のほか、共済事業を行う組合にまで拡大することとされた。(法第58条の3(法第96条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。))

 ア 信用事業を行う組合

 信用事業を行う漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合及び水産加工業協同組合連合会については、共済事業の実施の如何にかかわらず、従前どおり、信用事業に係る業務及び財産の状況に関する説明書類を縦覧する。

イ 共済事業を行う組合

 共済事業を行う漁業協同組合及び水産加工業協同組合であって信用事業を行わないものは、漁業協同組合等の信用事業等に関する命令(平成5年大蔵省令・農林水産省令第2号。以下「命令」という。)第48条及び第49条に掲げる共済事業に係る業務及び財産の状況に関する説明書類を縦覧する。
 なお、共同事業組合の場合は、当該共済責任の全部を負担部分とする共済事業を行う組合が作成する共済事業に係る業務及び財産の状況に関する説明書類を縦覧する。
 共済水産業協同組合連合会については、規則第207条から第209条までに掲げる共済事業に係る業務及び財産の状況に関する説明書類を縦覧する。
 なお、共済事業を行う組合に対する業務及び財産の状況に関する説明資料の縦覧の義務付けの措置は、この法律の施行の際現に共済事業を行う組合については、施行日以後に開始する事業年度から適用し、施行日前に開始した事業年度についてはなお従前の例によることとされた。(改正法附則第22条)

(5)  準備金に関する規定の整備

共済事業の健全な運営のために必要となる各種準備金(責任準備金、支払備金、価格変動準備金、割戻準備金及び利益準備金)について、次のとおり各準備金の趣旨を明確にしつつ、積立てを義務付けることとされた。

ア 責任準備金

 共済事業を行う組合は、毎事業年度末において、共済契約者と締結した共済契約に基づき、共済契約者から共済掛金を受領する一方で、将来の共済事故の発生の際に共済金等を支払う債務を負うことから、将来における債務の履行に備えるため、規則で定めるところにより、責任準備金を積み立てなければならないものとして法上その趣旨について明確化された。(法第15条の10(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 また、共同事業組合にあっては、責任準備金のうち未経過共済掛金のみ積み立てることとされたので留意されたい。(規則第58条)
 なお、責任準備金の積立ての義務付けの措置は、施行日以後に開始する事業年度から適用し、施行日前に開始する事業年度については、なお従前の例によることとされた。また、従前の責任準備金については、改正後の法により積み立てられた責任準備金とみなすこととされた。(改正法附則第6条)

イ 支払備金

 共済事業を行う組合は、毎事業年度末において、まだ、支出として計上していないものがある場合に、当該支払のために必要な金額を積み立てる等、共済金等で共済契約に基づいて支払義務が発生したものその他これに準ずるものとして規則で定めるものがある場合において、共済金等の支払として計上していないものがあるときは、規則で定めるところにより、支払備金を積み立てなければならないこととされた。(法第15条の11(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 なお、支払備金の積立ての義務付けの措置は、施行日以後に開始する事業年度から適用することとされた。(改正法附則第7条)

ウ 価格変動準備金

 共済事業を行う組合は、毎事業年度末において、所有する資産(債権・株式等)の価格変動リスクに備えるために、漁業協同組合及び水産加工業協同組合にあってはその所有する資産で共済事業に係る会計に属するもの、共済水産業協同組合連合会にあってはその所有する資産のうちに、価格変動による損失が生じ得るものとして規則で定める資産があるときは、規則で定めるところにより、価格変動準備金を積み立てなければならないものとされた。(法第15条の12(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
  価格変動準備金の積立ての義務付けの措置は、施行日以後に開始する事業年度から適用することとされた。また、改正法の施行の際現に共済事業を行う組合が、改正法の施行日前に、所有する資産(債権・株式等)の価格変動リスクに備えるために、漁業協同組合及び水産加工業協同組合にあってはその所有する資産で共済事業に係る会計に属するもの、共済水産業協同組合連合会にあってはその所有する資産のうち、価格変動による損失が生じ得るものとして準備金を積み立てていた場合には、当該準備金は、改正後の法により積み立てられた価格変動準備金とみなすこととされた(改正法附則第8条)

エ 契約者割戻し

 共済事業を行う組合は、共済事業による剰余が出た場合に共済契約者に対し、契約者割戻し(共済掛金及び共済掛金の運用益のうち、共済金の支払、事業費の支出その他の費用に充て、その剰余の全部又は一部を分配すること)を行う場合は、公正かつ衡平な分配をするための基準として規則で定める基準に従い、行われなければならないものとされた。(法第15条の13(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))      
 なお、契約者割戻しの方法についての措置は、施行日以後に開始する事業年度から適用することとされた。(改正法附則第9条)

オ 利益準備金

 利益準備金は、内部留保として利益を積み立て、損失が発生した場合にのみ取り崩すことができるものであり、出資組合は、毎事業年度の剰余金の十分の一以上を、出資総額の二分の一を下回らない範囲内で定款で定める額に達するまで、利益準備金として積み立てなければならないものとされているが、信用事業を行う組合に加え、共済事業を行う組合についても、内部留保による自己資本を充実し、組合員や共済契約者の利益の保護を図るために、毎事業年度の剰余金の五分の一以上を、出資総額を下回らない範囲内で定款で定める額に達するまで、利益準備金として積み立てなければならないものとされた。(法第55条第1項(法第96条第3項及び第100条第3項において準用する場合を含む。))
 なお、共済事業を行う組合に対する利益準備金の積立ての義務付けの措置は、施行日以後に開始する事業年度から適用することとされた。(改正法附則第20条)

(6) 共済計理人の選任等

 共済事業の必要性の高まり、事業の複雑化の中で、共済事業の健全な運営の確保を通じて、共済契約者の保護を図るためには、共済掛金や責任準備金の算出等について、共済の数理に関する事項についての高度の専門的知識及び実務経験を有する者を関与させることがますます重要となっているところである。こうしたことから、一定規模の共済事業を行う組合は、共済掛金等の数理的な適正さをチェックする共済計理人を選任しなければならないこととするほか、共済計理人の資格要件、選任・解任の届出、共済計理人の解任命令等について定めることとされた。(法第15条の17から第15条の19まで及び第47条(これらの規定を法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。)並びに第126条の2第2号)
 共済計理人の資格要件は、社団法人日本アクチュアリー会の正会員(又は准会員)であり、かつ、共済又は保険の数理に関する業務に五年以上(又は十年以上)従事した者とされた。(規則第73条)
 なお、共済計理人の選任の義務付けの措置は、改正法の施行の際現に共済事業を行う組合については、当該共済計理人の選任に一定の期間を要することから、改正法の施行後三月を経過する日までの間は適用しないこととされた。また、共済計理人の職務については、施行日以後に開始する事業年度に係るものについて適用することとされた。(改正法附則第11条及び第12条)

(7) 子会社等に関する規制の導入

 信用事業を行う組合と同様に、共済事業を行う組合についても、事業の健全性の確保の観点から、子会社の保有の制限、子会社等の議決権の保有の制限等に関する規定を整備された。(法第17条の14及び第17条の15(これらの規定を法第96条第1項において準用する場合を含む。)並びに第100条の3及び第100条の4)
 なお、共済事業を行う組合に対する子会社の保有制限に関する措置は、改正法の施行の際現に子会社対象会社以外の共済事業会社を子会社としている漁業協同組合及び水産加工業協同組合については、施行日から三月を経過する日までに行政庁にその旨を届け出た場合には、施行日から一年を経過する日までの間は適用しないこととされた。
 なお、この場合において、当該漁業協同組合及び水産加工業協同組合は、当該届出に係る子会社対象会社以外の共済事業会社が子会社でなくなったとき又は共済事業会社以外の子会社となったときは、遅滞なく、行政庁に届け出なければならないこととされた。(改正法附則第13条)
 また、共済事業を行う組合の子会社等の議決権の保有の制限に関する措置は、改正法の施行の際現に共済事業会社である国内の会社の議決権を合算して基準議決権数を超えて保有している漁業協同組合及び水産加工業協同組合については、施行日から三月を経過する日までに行政庁にその旨を届け出た場合には、施行日から一年を経過する日までの間は適用しないこととされた。この場合において、施行日から一年を経過する日後は、改正後の法による主務省令で定める事由により当該国内の会社の議決権を合算して基準議決権数を超えて取得したものとみなして、改正後の法の規定を適用することとされた。(改正法附則第14条)

第三 共済事業の契約者の保護等を図るための措置

1 契約者の保護を図るための措置

(1) クーリング・オフ制度の導入

 共済の販売形態には、種々のものがあるが、共済の特性上、組合の職員が組合員宅などを訪問して販売するケースが主となっている。こうした販売形態の下では、組合員は受動的な立場に置かれたり、販売が不意打ち的であったりすることがあり、そのような場合には、組合員の契約意思が不確定なままで、共済契約の申込み又は契約の締結が行われ、事後のトラブルが発生するおそれがある。
 このような中で、共済契約が多様化・複雑化しているため、契約締結までの一定の熟慮期間を保障することにより、契約者の保護を図る必要性が高まっていることから、契約者による共済契約の申込みの撤回又は解除(クーリング・オフ)に関する規定が整備された。(法第15条の4(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 なお、クーリング・オフ制度の導入の措置は、改正法の施行日以後に共済事業を行う組合が受ける共済契約の申込み又は施行日以後に締結される共済契約(施行日前にその申込みを受けたものを除く。)について適用することとされた。(改正法附則第5条)

(2) 共済契約の締結等に関する禁止行為等

 共済事業を行う組合は、契約者に対する不当な推進行為を防止する観点から、共済契約の勧誘・締結に際し、契約者等に対して虚偽のことを告げる等の行為をしてはならないこととするとともに、共済事業に係る重要事項の利用者への説明、内部規則の制定、研修の実施等共済事業の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならないこととされた。(第15条の5及び第15条の9(これらの規定を法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))

(3) 特定共済に関する規定の整備及び特別勘定の設置

 近年の共済契約の多様化・複雑化に対応するため、投資性が強く、リスクが高い変額共済等の特定共済について、利用者保護の観点から、組合が特定共済契約を締結する際における禁止行為等(金融商品取引法(昭和23年法律第25号)の準用)を定めるとともに、特定共済を始め、運用の成果が将来の共済金等の多寡に反映されるタイプの共済契約について、当該契約に係る責任準備金の金額に対応する財産    を他の財産と区別して経理するための特別の勘定を設けることとされた。(法第15条の7及び第15条の15(これらの規定を法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 なお、改正法の施行の際現に共済事業を行う組合が、特定共済に関する特別の勘定を設けていた場合には、改正後の法による特別勘定とみなすこととされた。(改正法附則第10条)

(4) 契約条件の変更の手続

 近年、超低金利が続く中で、共済契約に係る資産運用の利回りが、過去の高金利時代に契約者に約束した予定利率を下回るいわゆる「逆ざや」の状態が続いており、このまま放置すると、共済事業の継続が困難となり、契約者の利益が損なわれるおそれもあることから、組合と多数に及ぶ契約者との間で、一定の手続を経る場合には、個々の契約者の同意によることなく、契約条件を変更することができることとされた。(法第17条の2から第17条の13まで(これらの規定を法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))

2 効率的かつ効果的な事業運営の確保を図るための措置

(1) 保険会社等の業務の代理等

 組合が開発する共済の種類だけでなく、民間の保険会社が開発した商品も取り扱うことにより、契約者の多様なニーズに適時に応えることができるようにするため、共済事業を行う組合は、保険会社等の業務の代理又は事務の代行を行えることとされた。(法第11条第7項、第93条第6項及び第100条の2第2項)

(2) 共済代理店に関する規定の整備

 組合の合併の進展後も、組合員へのサービスの質を維持したままで、共済事業の効率化を図っていけるようにするため、新たに届出制により共済代理店の設置を可能とするとともに、組合が自ら行う場合と同様に、クーリング・オフ制度等の対象とするなど、共済代理店に関する規定が整備された。(法第15条の4から第15条の7(これらの規定を法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。)、第122条、第123条及び第126条の2)

3 その他

(1) 特定関係者との間の取引等の規制の導入

 近年、組合の共済事業は、組合員及び組合の事業運営に与える影響が大きくなっており、契約者の漁業経営・漁村生活の安定に、共済事業の健全性の確保が重要な課題となっているところである。
  また、今回の法改正で、共済事業を行う組合が子会社等を保有することを前提に子会社保有規制等を講ずることとされたところである。
  このような状況の中で、組合において他の者よりも密接な子会社等との利益相反行為が行われ、事業の健全性を損われることを防止することを目的として、特定関係者との間の取引等の規制の対象となる組合の範囲について、信用事業を行う組合に加え、共済事業を行う組合にまで拡大することとされた。(法第11条の12(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む))
 なお、共済事業を行う組合に対する特定関係者との間の取引等の規制の導入の措置は、当該組合が施行日以後にする取引又は行為について適用し、施行日前にした取引又は行為についてはなお従前の例によることとされた。(改正法附則第3条)

(2) 軽微な事項等に係る共済規程の変更についての認可制から届出制への変更

 共済事業を実施しようとする組合は、事業の実施方法等を記載した共済規程を定めることとされており、その制定・改廃にあたっては、これまで、事業の実施方法など、共済事業の健全な運営、組合員の利便性等に大きな影響を及ぼすことのない事項(地名の変更による名称の変更の場合)に係る変更についても行政庁の認可が必要とされていたところである。
 一方で、共済事業の機動的な運営を確保するためには、組合の事業活動を制約する規制は、極力緩和するのが望ましいことに加え、共済規程の変更の審査を行う行政庁の事務の簡素化・負担の軽減にも配慮する必要がある。
 このため、軽微な事項等に係る共済規程の変更については、行政庁の認可制から届出制へ変更された。(法第15条の2(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 なお、改正法の施行前において軽微な事項に係る共済規程の変更について行われた認可の申請は、改正法の施行後における届出とみなすこととされた。(改正法附則第4条)

(3) 員外監事及び常勤監事の必置規制の導入

 近年、組合の共済事業の重要性が高まってきたことを踏まえ、事業の健全な運営の確保を通じて、共済契約者の保護を図っていくためには、共済事業においても、員外監事の設置による第三者的・客観的な立場からの監査体制の整備、常勤監事の設置による日常的な監査を行う体制の整備がますます重要となっているところである。
 このため、員外監事及び常勤監事の必置規制について、信用事業を行う組合に加え、次の一定基準以上の共済事業を行う組合にまで拡大することとされた。(法第34条第11項及び第12項(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))
 また、事業年度の開始時に基準を新たに下回った組合については、その事業年度の終了後最初に招集される通常総会までは員外監事を置く必要があり、また、事業年度の開始時に基準を新たに上回った組合については、その事業年度の開始後最初に招集される通常総会において員外監事又は常勤監事を選出する必要があるので留意されたい。

    ア 信用事業及び共済事業を併せ行う組合については、事業年度の開始の時における貯金等合計額又は責任準備金合計額が員外監事にあっては五十億円、常勤監事にあっては二百億円であること(施行令第12条第1項第1号及び第13条第1項第1号)

イ 信用事業を行う組合(共済事業を併せ行う組合を除く。)については、事業年度の開始の時における貯金等合計額が員外監事にあっては五十億円、常勤監事にあっては二百億円であること(施行令第12条第1項第2号及び第13条第1項第2号)

ウ 共済事業を行う組合(信用事業を併せ行う組合を除く。)については、事業年度の開始の時における責任準備金合計額が員外監事にあっては五十億円、常勤監事にあっては二百億円であること(施行令第12条第1項第3号及び第13条第1項第3号)
  なお、員外監事及び常勤監事の必置規制の導入の措置は、共済事業を行う漁業協同組合及び水産加工業協同組合(信用事業を併せ行うものを除く。)については、施行日以後最初に招集される通常総会の終了の時までは適用しないこととされた。(改正法附則第17条並びに改正令附則第2条及び第3条)

(4) 共済規程の変更のうち総会の議決を不要とする場合の拡大

 近年の共済事業をめぐる厳しい経営環境の下で、組合の共済事業が効率的に行われるためには、機動的な事業運営の確保が重要となっているが、個別の共済制度設計等といった詳細かつ専門的な事項についてまで、原則として年一度しか開かれない総会への付議を義務付けていたのでは、多様化する共済ニーズに即応し、機動的に共済制度を提供していくことは困難である。
 このような状況の中で、今回の法改正により、早期是正措置、各種準備金等の諸規定について、共済事業の健全性確保の観点から整備が行われ、共済規程の変更による組合への影響をチェックする仕組みが整うことから、共済規程の変更のうち、軽微な事項等に係るものについては、定款で、総会の議決を経ることを要しないものとすることができるものとされた。(法第48条(法第96条第1項及び第100条の8第1項において準用する場合を含む。))

(5) 合併認可申請手続の変更

 これまで、共済事業を行う組合が合併するに際しては、行政庁の認可を受けなければ効力を生じないこととするとともに、当該認可の申請があったときは、申請者の利益を保護する観点から、合併申請日から二月以内に認可・不認可をしないときは認可があったものとみなすこととされていたところである(以下「認可拘束」という。)。
 しかしながら、近年、契約者のニーズの多様化・高度化に伴う共済の種類・事故の範囲等の拡大、組合間の合併の進展に伴う共済事業の普及の拡大、共済事業における組合員以外の利用の増加など、共済事業の重要性が増大しており、行政庁においても合併の認可にあたっては個別具体的に慎重な審査が必要となる。
 このため、共済事業を行う組合の合併については、認可拘束を外すこととされた。(法第69条第3項(法第96条第5項及び第100条の8第5項において準用する場合を含む。))
 なお、共済事業を行う組合が合併する場合における合併認可申請手続の変更の措置は、施行日以後に行われた合併認可申請について適用し、施行日前に行われた合併認可申請についてはなお従前の例によることとされた。(改正法附則第23条)

(6) 公告の方法の制限

 近年、契約者のニーズの多様化・高度化に伴う共済の種類・事故の範囲等の拡大、組合間の合併の進展に伴う共済事業の普及の拡大、共済事業における組合員以外の利用の増加など、共済事業の重要性の増大を踏まえ、共済事業を行う組合については、公告の方法として事務所の掲示場に掲示する方法のほか、新たに、日刊新聞紙に掲載する方法又は電子公告のいずれかの方法を定款で定めなければならないこととされた。(法第121第2項)
 なお、組合の公告方法の定款への記載の義務付けの措置は、改正法の施行の際現に共済事業を行う組合については、施行日から起算して一年を経過する日までの間は、適用しないこととされた。(改正法附則第26条)

第四 その他

1 組合員の持分の譲渡先への組合の追加

 近年、組合員の高齢化等により、組合からの脱退者が増加しているが、脱退時においては出資持分の引き受け手がすぐに見付からない場合もある。こうした場合でも、組合の財務基盤を損なうことなく、脱退することができるようにするため、脱退する組合員の持分について、一定の期間内に処分することを条件に組合も譲渡を受けられることとし、所要の規定が整備された。(法第26条、第28条、第28条の2、第30条、第31条及び第58条(これらの規定を法第92条、第96条、第100条及び第100条の8において準用する場合を含む。))
 なお、組合員の持分の譲渡先への組合の追加の措置は、施行日の属する事業年度の次の事業年度以後における組合員の脱退から適用し、施行日の属する事業年度以前の組合員の脱退については、なお従前の例によることとされた。(改正法附則第15条)

2 一時監事の職を行うべき者の選任等

 組合において、役員のリコールの成立等により役員がいなくなった場合に、組合運営に空白が生じることで、組合やその相手方に損害を及ぼすことを防止するため、行政庁による一時理事又は代表理事の職務を行うべき者を選任の制度が導入されているところである。
 しかしながら、行政庁による選任は、一時理事又は代表理事の職務を行うべき者に限られており、監事については、選任された一時理事の職務を行うべき者により、監事選出のための総会を招集することが必要となり、相当の期間、監事不在の状況が生じることとなる。
 このため、行政庁が選任できる役員として、現行の一時理事及び一時代表理事に加え、一時監事が追加された。(法第43条(法第86条第2項、第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の8第3項において準用する場合を含む。))

3 罰則の整備

 今回の法改正においては、共済事業の組合経営全体に占めるウェイトの高まりやそれに伴う共済契約者等の保護の必要性の要請に応えるため、共済事業を行う組合等に対する規制の新設等が行われたところである。これらの規定の実効性を担保するため、既にその他の事業を行う組合よりも重い刑罰・過料が科されている信用事業を行う組合に対する罰則とのバランス等を考慮しつつ、新たな罰則が整備された。(法第128条から第130条まで)

第五 廃止

 次に掲げる告示については、水産業協同組合法施行規程(平成20年2月28日農林水産省告示第316号)の制定に伴い、平成20年3月31日を限り廃止することとした。

1 平成10年6月18日農林水産省告示第966号(水産業協同組合法施行令第6条第1号の規定に基づき、主務大臣の定める事業を定める件)

2 平成14年12月27日農林水産省告示第1926号(水産業協同組合法施行令第19条第1項第2号及び第22条第1項第1号の規定に基づき、農林水産大臣の指定する払込済出資金等を定める件)

3 平成14年12月27日農林水産省告示第1927号(水産業協同組合法施行規則の規定に基づき、農林水産大臣の定める再保険契約の内容の条件等を定める件)