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WTO農業交渉日本提案(全文)

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平成12年12月8日

前文

我が国は、これまでWTO協定に基づきウルグァイ・ラウンド合意を誠実に実施してきており、農業協定第20条に基づく継続交渉においても、誠実な対応を期している。

この交渉に当たり、我が国は、農業生産者、食品産業、消費者、市民団体等国民各層から意見を募った。また、同時に農業交渉に臨むに当たって公式の世論調査を実施し、農業生産と農産物貿易に関する国民の認識を調査した。この提案は、これらの意見や認識を踏まえたものであり、農業者のみならず消費者を含む幅広い国民各層の支持を得ているものである。

我が国の提案は、交渉に際しての基本的重要事項、市場アクセス、国内支持、輸出規律のあり方、国家貿易、開発途上国への配慮及び消費者・市民社会の関心への対応のそれぞれに関する提案で構成される。

そして、その根底に存在する基本的哲学は、「多様な農業の共存」である。

日本国民は、21世紀が、様々な国家、地域がそれぞれの歴史、文化等を背景にした価値観を互いに認め合い、平和と尊厳に満ちた国際社会において共存すべき時代でなければならないと確信する。

農業は、各国の社会の基盤となり、社会にとって様々な有益な機能を提供するものであり、各国にとって自然的条件、歴史的背景等が異なる中で、多様性と共存が確保され続けなければならない。このためには、生産条件の相違を克服することの必要性を互いに認め合うことこそ重要である。

我が国の提案は、以上の基本的な哲学に立つものである。そして、この共存の哲学の下、

  1. 農業の多面的機能への配慮
  2. 各国の社会の基盤となる食料安全保障の確保
  3. 農産物輸出国と輸入国に適用されるルールの不均衡の是正
  4. 開発途上国への配慮
  5. 消費者・市民社会の関心への配慮

の5点を追求する内容となっている。

これらは、7,500万人分に相当する食料を輸入する最大の食料純輸入国である我が国国民の総意に基づくものである。
効率を重視した画一的な農業のみが生き残り得る貿易ルールは、我が国のみならず各国にとっても拒絶されるものである。
また、我が国は、競争力のある一部の輸出国のみが国際市場において利益を得るような交渉結果を認めない。
我が国は、この交渉により、各国の農業が破壊されることなく共存していけるような公平で公正なルールの実現を心から望むものである。

1  交渉に際しての基本的重要事項

提案
今次WTO農業交渉は、21世紀の世界の農政全体を方向付ける極めて重要な交渉であり、ウルグァイ・ラウンド(UR)合意の結果を十分検証するとともに、今後の世界的な農政上の課題に応え得るものでなければならない。

(1)UR合意の実施状況の検証

URにおける農業合意は、農産物に関する貿易ルールの面において、新たな一歩を踏み出すものであった。
しかし、UR合意以降、国際的な食料需給の不安定性は依然として解消しておらず、また、一部の国では追加的な農業保護政策の実施を余儀なくされているなど、農業が市場の機能のみでは律しきれないことをより一層配慮すべき状況となっている。
さらに、遺伝子組換え食品等の技術の進展による消費生活上の新たな課題が発生している。
そのため、今次農業交渉に際しては、まずUR合意の実施状況等について十分な検証を行い、解決すべき各国の食料政策・農業政策上の困難を踏まえ、その解決に資するような交渉を行っていくことが必要である。

(2)世界的な農政上の課題としての農業の多面的機能、食料安全保障の追求

21世紀は、様々な国や地域における多様な農業が共存できる時代であるべきである。
そのためには、各国が自然的条件や歴史的背景の違いを踏まえた多様な農業の存在を認め合い、その持続的な生産活動を通じて農業の多面的機能が十分に発揮できるようにしていくとともに、人類の生存にとって不可欠である食料の安定供給を確保していくことが基本となる。そのため、これらの課題を世界的な農政上の課題として認識した上で交渉を行っていくことが必要である。

背景

(1)UR合意の実施状況の検証

  1. URにおける農業合意は、全ての関税以外の国境措置を原則として関税に置き換えるとともに、国境措置だけでなく、輸出補助金、国内支持にわたる幅広い分野において交渉を行った結果であり、農産物に関する貿易ルールの面において、新たな一歩を踏み出すものであった。
  2. UR合意以降の世界の農業・農政の状況を見てみると、農業自体はもとより農業の持つ公益性・公共性が市場の機能のみでは律しきれないことへの配慮がより一層重要であることが明らかになってきている。
  3. 例えば、世界の農産物貿易が全体として増加する中で、恩恵を受けているのは一部の国に過ぎない。先進国においては、生産が拡大し、過剰の問題を引き起こしており、開発途上国においては、食料の不足は拡大するなど、食料安全保障の面においても、その状況は一段と厳しさを増してきている。
    また、各国は、UR合意を受け、農政の市場への介入度合いの削減や経営に着目した政策への転換等の改革を進めてきているが、ここ数年の農産物価格の低下に対し、追加的な支援を余儀なくされるなど、新たな問題を抱えている。
    さらに、輸出国・輸入国を含め各国の農業経営は輸入の増加や需給の不安定等による困難に直面しており、また、遺伝子組換え食品等の技術の進展による消費生活上の新たな課題が発生している。
  4. 以上を踏まえ、今次農業交渉に際しては、まずUR合意後の世界的な食料・農業・農村をめぐる事情及び各国の実施状況についての十分な検証を行い、それを踏まえた上で、各国の抱える困難を解決することができ、人類全体が地球上の有限な資源を長い将来にわたって持続的に利用していくことが可能となるような交渉を行っていくことが必要であると考える。

(2)世界的な農政上の課題としての農業の多面的機能、食料安全保障の追求

  1. 農業の有する多面的機能の重要性

ア     農業は、貿易の対象となる農産物のみを生産しているわけではなく、その持続的な生産活動により、市場を持たず、価格に反映することのできない多面的で公益的な価値を生産している。

イ     農業の有する多面的機能とは、農業が農業生産活動に伴って農産物以外の種々の有形・無形の価値を創り出す経済活動であることを表した概念である。この価値は、地形、気候、歴史的経緯等により国によって多様な形で発現されるものであるが、一般的に以下の性格を有する。
(a)農業生産活動と密接不可分に創り出される(結合生産)。
(b)対価を支払わずに享受することを排除できない(公共財)。
(c)農産物市場における価格形成に反映することが困難である(外部経済)。

ウ     以上の多面的機能の概念や内容については、OECDにおいても共通の認識が形成されている。

エ     多面的機能は貿易によって獲得することは不可能であり、それぞれの国において持続的農業が営まれることによってのみ発揮され得るものである。このため、国内農業生産を食料供給の基本に位置付け、これにより多面的機能の発揮を図るためには、何らかの政策的介入を行うことは不可欠である。

オ     この場合、政策的介入の手法として、貿易歪曲的でない手法を用いることについては、非貿易歪曲性の概念についての認識が必ずしも一致していない。
現在、多面的機能に関する概念整理のための努力が行われている一方で、非貿易歪曲性に関する概念整理のための努力が行われていないことは憂慮すべき事態である。

カ     貿易交渉において最も重要であり、かつ最も困難となるのは、貿易歪曲的であってはならないということと各国の様々な農業が共存するという理想の調和点を探し出すことである。
農業の多面的機能の性格等を踏まえて貿易ルールや施策のあり方を検討することにより、この調和点を探し出すことが可能となる。

  1. 食料安全保障の重要性

ア     生命と健康な生活の基礎である食料の安定供給を確保していくことは国民に対する国の基本的な責務であり、国民の生存権にかかわる重要な問題である。

イ     特に、食料安全保障は開発途上国にとって最優先の政策課題である。また、輸出国には輸出する自由や輸出しない自由が存在するが、輸入国にはこのような自由は認められていない。このため、世界最大の食料純輸入国である我が国の消費者にとっても食料安全保障は最大の関心事項の一つである。

ウ     一方、世界の食料需給は、輸出国が特定の国・地域へ集中していること、異常気象の影響を受けやすいこと等の農産物貿易の特殊性等から、そもそも不安定な側面が強いものとなっている。さらに、今後の世界の食料需給は、エルニーニョ現象等の異常気象により短期的な不安定性が増大するとともに、開発途上国を中心とした人口の大幅な増加や経済成長に伴う飼料用穀物需要の増大等により中長期的にはひっ迫する可能性がある。

エ     また、少数の特定の国・地域が主要な農産物の輸出に大きな割合を占める傾向がますます高まっていることや、8億人を超える栄養不足人口を2015年までに半減しようとする世界食料サミットにおける目標はその達成が15年遅れるというFAOの予測がなされたことなど、世界的な食料安全保障への懸念は一層高まりつつある。

オ     このような状況を踏まえ、今次農業交渉は、飢餓・栄養不足等の問題を抱える開発途上国への援助も含め、各国が世界的な食料安全保障の確保の重要性を十分に認識した上で、FAO等の取組とも十分に連携を取りながら交渉を進めていくことが必要であると考える。

2  市場アクセスに関する提案

提案
農産物の市場アクセスについては、根本的改革をもたらすように助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減するという長期目標が進行中であることを認識し、非貿易的関心事項に配慮するという農業協定の規定に従って交渉を行う。その際に、協定実施後に生じた各国の食料政策・農業政策上の困難が解決され、多様な農業が共存し得るようなバランスのとれたものとする。

(1)関税水準

  1. 関税水準は、改革過程が継続中であることを認識し、各国の生産・消費の実情、国際需給等を踏まえた品目毎の柔軟性を確保して適切に設定する。
  2. UR合意による関税化品目については、特に農業の多面的機能の発揮や食料安全保障の確保の観点も踏まえながら、内外価格差や農政改革の進捗状況等に十分配慮して枠外税率を設定する。
    また、枠内税率については、各品目の国際需給の動向、国内消費の実態等を踏まえて設定する。
  3. 加工農産物の関税水準は、農業と一体的に発展してきた食品産業の重要性に十分に配慮して設定する。

(2)アクセス数量

  1. 一定量のアクセス機会の提供を義務付けるシステムは、輸出入国間の権利義務バランスの面で均衡を欠くという基本的な問題があるため、それを改善する。
  2. アクセス数量は、農業の多面的機能の発揮や食料安全保障の確保等に配慮し、各国の農業の現状や構造改革の進展を踏まえたものとする。その場合、品目毎の国際需給の相違を考慮し、柔軟性を確保して適切に設定する。
  3. 以上の他にも、一定量のアクセス機会の提供を義務付けるシステムは、次のような問題を有しており、これを踏まえた改善を行う。

ア     国内消費量を基準として一定割合のアクセス機会を保証することとした経緯にかんがみ、公平を期する観点から最新の消費量を勘案した見直しを行う。

イ     関税化の特例措置を適用した品目にあっては、実施期間中に関税化された場合にも、それまで加重されていたアクセス数量が将来にわたり継続されるという問題があり、その改善を行う。

(3)関税割当制度

  1. 関税割当の制度・運用は、上記の基本方針の下で、各国の実情に応じた方法を採用する。
  2. 関税割当制度の運用に当たり、透明性、公平性を確保する。

(4)セーフガード

  1. 季節性があり、腐敗しやすい等の特性を持った農産物については、輸入急増等の事態に機動的、効果的に発動できる特別の発動基準を設け、運用の透明性を高める。
  2. 特別セーフガードについては、UR交渉における関税化とパッケージで合意された経緯にかんがみ、維持する。

(5)分野別イニシアティブ

一般的な関税水準の削減約束等に加え、分野別に更なる削減等を求めるイニシアティブの考え方は支持しない。

背景

(1)関税水準

  1. UR交渉以前にあっては、農産物の国境措置としては、関税以外に輸入数量制限、可変輸入課徴金、最低輸入価格、裁量的輸入許可、国家貿易企業を通じて維持される非関税措置、輸出自主規制その他これらに類する通常の関税以外の国境措置が存在し、それらについては貿易交渉の対象外とされてきた。このことは農業の多面的機能や食料安全保障に自動的に配慮した上で農産物貿易に係る交渉が行われてきたことを示すものである。しかしながら、UR合意において、本格的な農産物貿易の規律化が初めて行われ、全ての国境措置は関税に置き換えられた。
    このことを踏まえ、今次交渉では、UR合意による関税化品目については、農業の多面的機能や食料安全保障に特に意識的に配慮した上で関税水準を検討することが必要である。
  2. 関税は、農産物貿易に関する自然的・経済的諸条件の差異を調整する唯一正当な手段となったことから、その機能が十分に確保されることが必要である。
    このような状況の下で、各国が農業の助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減するという改革過程を継続するためにも、各品目の事情やこれまでの貿易交渉の経緯等を踏まえ、関税水準につき品目毎の柔軟性を確保して適切に設定することが不可欠となる。
  3. 今次交渉では、各国の農業において経済的、社会的な重要性が格段に異なる種々の品目が交渉対象となる。特にUR交渉において関税化された品目に係る枠外税率は、内外価格差や農政改革の進捗状況等に十分配慮して設定されることが必要である。
    また、枠内税率については、当該品目の国際需給の動向、国内消費の実態等に配慮し、個別品目毎に設定されることが必要であり、画一的な取扱いを行うことは不適切である。
  4. 加工農産物の関税の設定に当たっては、国民への良質かつ安定的な食品供給に重要な役割を果たしている各国の食品産業の健全な発展に十分に配慮することが必要である。

(2)アクセス数量

  1. 農産物輸出国は、輸出制限を機動的に講じ得る一方、農産物輸入国は、関税以外の国境措置が原則禁じられた上で、一定のアクセス機会の提供を義務付けられている。いわば、輸出国には輸出する自由も輸出しない自由も存在する一方で、輸入国にはこのような自由は認められていない。
    このような基本的な問題があるため、その改善が必要である。
  2. また、一定量のアクセス機会の提供を義務付けるシステムは、次のような基本的な問題を有しており、これを踏まえた改善が必要である。

ア     アクセス数量は、農業の多面的機能の発揮や食料安全保障の確保等に配慮し、各国の農業の現状や構造改革の進展を踏まえたものとすべきである。

イ     一定量のアクセス機会の提供を義務付けるシステムは、その運用によっては国際需給に大きな影響を与える可能性があり、慎重な対応が必要である。例えば、貿易量が生産量に対して相対的に小さく、その国際市場が限定されたものについては、他の貿易率の大きい品目とは異なった配慮が必要である。このような貿易構造を有する品目について一律のアクセス数量を設定することは、非現実的であるばかりでなく、開発途上国の食料調達に困難を生じさせるおそれもある。したがって、国際的な貿易構造や各国における多面的機能、食料安全保障等に配慮した適切で柔軟な設定を可能とすべきである。

  1. さらに、以上の他にも、一定量のアクセス機会の提供を義務付けるシステムは、次のような問題を有しており、これを踏まえた改善が必要である。

ア     アクセス数量の設定に際しては、基準年の国内消費量の一定割合のアクセス機会を保証することとした経緯にかんがみ、公平を期する観点から各国の食料消費量の変化に対応して基準年の見直しを行うべきである。

イ     UR合意に当たり関税化の特例措置をとった品目については、アクセス数量の加重が行われた。このような品目について、関税化した後も加重されたアクセス数量を将来にわたり提供し続けることは、関税化の数年の遅れの代償措置としては極めて過重なものであり、公平性を欠くことから、その改善を行うべきである。

(3)関税割当制度

  1. 関税割当は、長期目標に向けた改革過程が継続中であることを認識しつつ、その具体的な制度・運用は各国の実情に応じた方法を採用することが必要である。品目毎の特性や流通実態を十分に踏まえた個別具体的な対応が必要であり、これを無視した画一的な運用ルールは不適切である。
  2. 関税割当の運用については、その手続の透明性を図るとともに、公平性を確保することが重要である。

(4)セーフガード

  1. 季節性があり、腐敗しやすい等の特性を持った農産物は、在庫調整が困難であり、消費の価格弾力性が低いこと等から、輸入の増加により大幅な価格の下落が起きやすく、鉱工業品と異なり、短期間に生産者が大きな打撃を受けやすいという特徴がある。
    このことを踏まえ、季節性があり、腐敗しやすい等の特性を持った農産物について、単純で基本的な基準により自動的かつ迅速に短期・軽微な措置を発動できる新たなセーフガードを創設する必要がある。
  2. かかる新たなセーフガードは、特別セーフガードと同様に発動要件を明確なものとすることにより、セーフガードの発動基準を透明化する意義を有する。あわせて、この制度はセーフガードの濫用防止にも資することとなる。
  3. 特別セーフガードは、UR交渉において関税化とパッケージで合意されたものであり、その存続は当然である。農業協定においても改革継続中は特別セーフガードは有効であると規定されている。
    なお、特別セーフガードは発動要件や発動後の関税水準が明確であることから予見性、透明性が高く、貿易の円滑な実施を妨げるものとはなっていない。

(5)分野別イニシアティブ

一般的な関税水準の削減約束等に加え、分野別に更なる削減等(関税相互撤廃(ゼロゼロ)等)を求めるイニシアティブの考え方は、食料輸出国、輸入国双方の立場を反映したものとは言えず、支持できない。

3  国内支持に関する提案

提案
今後の国内支持の枠組み・水準の設定については、各国における農業の多面的機能、食料・農業をめぐる事情等に十分な配慮を行う。さらに、農政改革の継続を図るため、これまでの農業協定の実施の経験を踏まえ、施策の重点化や情勢の変化に対する柔軟な対応により効率的な政策を推進する。

(1)国内支持に関する規律

  1. 現行の国内支持に関する規律の基本的な枠組みについては、農政改革を安定的に推進するために維持する。
  2. これまでのUR合意の実施の経験にかんがみ、農業実態を踏まえた農政改革を推進する観点から、「緑」の政策において次のような改善を行う。

ア     各国における農政改革の方向と現行協定との乖離を是正する観点から、「生産に関連しない収入支持」の要件について、生産要素をはじめ生産の現状をより反映させるよう改善を行う。

イ     市場指向的な政策転換を進める上で必要とされるセーフティネット政策を円滑に導入する観点から、「収入保険・収入保証」等について発動要件、補填割合の制限を緩和する。

  1. 削減対象外としての「青」の政策は存続させる。

(2)国内支持水準

  1. AMSの約束水準については、各国における農業の多面的機能の発現を損なうことのないように、農政改革の進捗状況に合わせて現実的なものとする。
  2. AMSの基準値は、農政改革過程の連続性を確保する観点から、UR合意時に定めた2000年度の約束水準(上限値)とする。

背景

(1)国内支持に関する規律

  1. 現行の基本的な国内支持の枠組みについては、貿易や生産への影響の度合いに応じて「緑」「青」「黄」の三種類に区分されている。我が国をはじめ各国が取り組んでいる農政改革は、この現行の枠組みを前提に行われているものであり、この枠組みを抜本的に見直し、「緑」の対象範囲を狭めることは、各国の農政改革の円滑な実施を阻害するものである。
  2. また、具体的に「緑」の政策の要件については、これまでの実施の経験を踏まえ、以下のア~ウの点について改善が必要である。
    なお、これらの改善は、
        (a)農業の実態に即した農政改革の方向と現行協定との乖離の是正 
        (b)市場指向的な政策転換を進める上で必要とされるセーフティネット政策の円滑な導入
    等を通じて農政改革の推進に資することを目的としている。

ア     「生産に関連しない収入支持」(附属書二第6項)
(a)農業の多面的機能は、農業生産と密接不可分に結び付き、地域社会、環境に公益的な貢献を果たしている。各国において農業への財政支出が容認されているのは、主としてこのような農業の生産と密接に結び付いた公益性に基づくものである。
(b)しかしながら、現行の要件は、支払額と現在の生産との関連性を完全に切り離し、農業生産に伴う公益性を考慮していないために、農業の実態からみて不適切なものとなっている。このため、現行の要件に合致した政策を採用した一部の国においては、生産をめぐる情勢の変化に即応できず、追加的な支援を余儀なくされている。
(c)農業の多面的機能の発揮、財政の効率性の観点から、支払額については、現在の生産量と切り離しつつも、生産要素をはじめ生産の現状をできる限り反映させることが必要である。

イ     「収入保険・収入保証」(附属書二第7項)
(a)発動要件である収入の喪失に制限をかけるのは、政策の発動前後において保証額に不連続が生じることになるため不合理である。また、実施の経験にかんがみれば、3割以内の収入の喪失の時でもこれを補償する措置がなければ、農業経営の安定を図ることが困難である。
(b)また、農業経営は、需給変動や自然災害の影響を受けやすく、多くの場合、収入の激減に対して営農の継続を図るためには7割の補填割合では不十分である。このため、各国のセーフティネット政策においても7割以上の補填割合としている例が多い。
(c)このような農業の実態に即して当該発動要件、補填割合の制限を緩和することが必要である。ただし、この改善が生産者の経営感覚の醸成を阻害するものであってはならない。

ウ     「自然災害に係る救済」(附属書二第8項)
発動要件である生産の損失に制限をかけるのは、政策の発動前後において保証額に不連続が生じるという点において、上記の「収入保険・収入保証」と同様の問題を有することから、同様の改善を図るべきである。

  1. 市場指向的な政策転換を図る場合、「黄」から「緑」への円滑な政策転換を図るための中間点として「青」の政策が必要である。また、「青」の政策は貿易歪曲性や生産刺激性等の効果が「黄」の政策に比べて少ない。これらを踏まえ、削減対象外としての「青」の政策は引き続き存続させ、その存在意義を積極的に評価すべきである。

(2)国内支持水準

  1. 農業の多面的機能を十分に発揮させるためには、一定の政策的介入(国内支持)は不可欠であり、各国の農業政策もこのことに配慮しつつ、着実な改革過程を継続しているところである。
    AMSの約束水準については、このような農業の実態を踏まえ、各国における農業の多面的機能の発現を損なうことのないように、農政改革の進捗状況に合わせて現実的なものとすべきである。
  2. 各国のAMSの水準は、それぞれの国で農業生産を維持する必要性から、生産条件の相違、他産業との生産性格差等によって設定されてきたものであり、これを農業生産額に対する一律の割合に限定することは不合理である。
    したがって、農政改革過程の連続性を確保する観点から、AMSの基準値はUR合意時に定めた2000年度の約束水準(上限値)とすべきである。 

4  輸出規律のあり方に関する提案

提案
輸出入国間の権利義務バランスの回復及び食料輸入国の食料安全保障の観点から、輸出奨励措置や輸出制限措置について、例えば以下のような規律を確立する。

なお、輸出規律については、輸出国、輸入国双方が納得し得る公平で公正な合意を形成するためにも、輸入規律に関する合意内容とのバランスに配慮しつつ交渉を行う。

(1)輸出補助金

  1. 輸出補助金の額、補助金付き輸出量について、更なる削減を行う。
  2. 約束実施期間における輸出補助金のロールオーバー等に対する規律を強化する。
  3. 輸出補助金単価の譲許を行い、約束実施期間中段階的に削減する。
  4. 開発途上国の関心のある品目・市場に対する輸出補助金の規律を強化する。
  5. OECDでの議論を踏まえ、輸出信用に対する規律の強化を行う。
  6. 国内支持のうち、輸出補助の性格のあるものにつき、輸出規律の対象とするよう規律を強化する。

(2) 輸出禁止・制限、輸出税

  1. 輸出禁止・制限を全て関税化(輸出税化)する。
  2. 今後想定される輸出税の設定を含め、全ての輸出税を予め譲許する。また、輸出税が適用される品目の一定量につき輸出税を非課税とする枠の設定を行う。
  3. 緊急に輸出量の調整を行うべき場合において、輸出税の設定までの間に臨時的かつ短期間に輸出制限を講じなければならない場合に備えて、予め規律の明確化を行う。
    (a.) 厳格な発動条件の設定
    (b.) 導入に至る手続としての加盟国間の協議の実施と協議が整わない場合の措置の明確化
    (c.) 導入に当たり、輸入国が必要量を確保する観点から、過去X年間の国内生産量に対する輸出量の割合の維持の義務付け等
    (d.) 導入期間の期限の設定

背景
UR合意において、輸入については、関税以外の国境措置を原則として全て関税に置き換え、譲許した上で削減することとなった。これに比べ、輸出禁止・制限措置や輸出補助金といった輸出に関する措置に対する規律は緩やかなものとなっている。こうした背景にかんがみても、輸入に関する規律を更に強化するのであれば、これに合わせて輸出に関する規律も輸入に関する規律を強化する以上に一層強化しなければ、輸出入規律の不公平が増幅されることとなる。

輸出に関する規律の強化は、輸入国の食料安全保障の観点からも重要である。少数の輸出国に輸出が集中する農産物貿易の特徴を踏まえれば、輸出国の行動が輸入国の食料安全保障を脅かすことのないよう、貿易に安定性、予見性を増す規律が必要である。

(1)輸出補助金

  1. 公正で市場指向型の農業貿易体制の確立に向け、輸出補助金の更なる削減が必要である。
  2. 現行の輸出補助金削減約束は、ロールオーバー等が可能な点で国境措置・国内支持の約束に比して緩やかなものとなっている。ロールオーバー等に対する規律を強化することが必要である。
  3. 現行協定において、輸入関税は譲許され、かつ特定国だけに対し譲許税率を引き上げることはできない。一方、輸出補助金については、全体の数量・金額の約束さえ守れば、特定国に対しいくら輸出補助金を付与しても構わないこととなっている。これは輸出入規律のバランスの点から問題であり、輸出補助金単価の譲許及びその段階的削減を行うべきである。
  4. また、開発途上国が関心を有する輸出品目・市場に対する輸出補助金に対する規律を強化すべきである。
  5. 輸出信用は、輸出補助の効果を持ち得る政策措置であり、輸出補助に関する約束の迂回措置とならないよう、OECDにおける議論を踏まえ、適切な規律が必要である。
  6. 現在国内支持に分類されている政策措置のうち、輸出補助の効果を持つ政策について精査し、輸出規律の下に置くべきである。

(2)輸出禁止・制限、輸出税

  1. 食料安全保障の確保は、全ての国にとって重要な責務である。このような中で、輸出国が一時的に採る輸出禁止・制限は、それが当該国の食料安全保障のために必要な措置であったとしても、輸入国の食料安全保障に重大な影響を及ぼし得る。
  2. 輸入については、関税以外の国境措置が原則として全て関税に置き換えられている。一方、輸出禁止・制限については、現行協定上柔軟な実施が可能となっている。このため、輸出禁止・制限を全て関税化(輸出税化)する。
  3. 現行協定では、輸入関税が全て譲許され、削減が約束されている一方、輸出税に関する規定は全く存在しない。今後想定される輸出税の設定も含め、全ての輸出税を予め譲許することが必要である。また、輸出税が適用される品目については、国内生産量の一定割合につき輸出税を非課税とする枠の設定を行うことが必要であり、このための規律を明確化すべきである。
  4. また、輸出国が輸出税の設定を行っていない場合に緊急に輸出制限を講じなければならない事態に備えて、予め規律の明確化を行う必要がある。 

5  国家貿易に関する提案

提案
国家貿易は市場で極めて大きな影響力を有することから、その行動の透明性と予見可能性を向上させるための規律を確立する。
また、国家貿易の国際市場への影響力や現行規律の実態等を踏まえ、輸出国家貿易と輸入国家貿易は明確に区別した上で、その規律の明確化を検討する。

  1. 国家貿易企業の運営の透明性を向上させるため、その国別輸出入数量、輸出入価格等を通報対象とする。また、年次計画の公表を義務付ける。
  2. 特に国際市場全体への影響の極めて大きい輸出国家貿易に関する規律として、更に以下の事項を義務付ける。
    (a.)時季別の輸出数量、輸出価格及び調達価格等の通報
    (b.)政府からの財政支援の禁止
    (c.)不測の事態を想定した最小限の輸出や備蓄の義務付け等、国際市場の安定への貢献 

背景

  1. 国家貿易は市場で大きな影響力を有することから、一定の規律に従い、責任ある行動をとることが必要である。
  2. そのため、国家貿易企業の行動の透明性を向上させ、かつ予見可能なものとするために、通報の対象、方法等に関する規律を明確化することが必要である。
  3. 一方、国家貿易企業に関する規定は、輸出、輸入を区分していないが、輸入国家貿易は一国内の限られた市場にのみ影響を及ぼすのに対し、輸出国家貿易はその行動が国際市場全体に影響を及ぼしている。
  4. しかし、現行協定においては、輸入国家貿易に比べ、輸出国家貿易についての規律は極めて緩やかなものとなっており、輸出国家貿易は、国内価格より低い輸出価格の設定による輸出の促進や国内の生産事情に応じた輸出量の調整等の措置を講じることができる。
  5. 以上の点にかんがみ、輸出国家貿易と輸入国家貿易は明確に区別した上で、輸出国家貿易については、特に透明性、予見可能性を高めるために、時季別の輸出数量、輸出価格及び調達価格等の通報の義務付けや政府からの財政支援の禁止等の規律に服せしめることが必要である。
  6. また、輸出国家貿易は、国際市場に極めて大きな影響力を有することから、国際的な農産物貿易の安定を通じて多国間の食料安全保障への貢献を図ることも必要である。そのため、不測の事態を想定した最小限の輸出や備蓄の義務付け、あるいは資金の提供等を通じたこれに相当する国際市場の安定への貢献を行うことが必要である。

6  開発途上国への配慮に関する提案

提案
飢餓・栄養不足問題を抱える開発途上国にとっては、食料の安定供給の確保が最優先の課題となっている。我が国はこれまでの開発途上国との対話を踏まえ、自助努力による問題解決ができるよう、貿易ルールへの配慮及び食料安全保障のための支援スキームを強化していくこととする。

(1)国境措置に関する規律

国境措置に関する規律及びその適用に関し、食料安全保障を確保するために大幅な柔軟性を付与する。

(2)国内支持に関する規律

国内支持に関する規律及びその適用に関し、国内消費向けの食料増産に必要な助成に影響を与えないよう、柔軟性を付与する。

(3)輸出規律・国家貿易に関する規律

輸出規律及び国家貿易に関する規律を強化するに当たり、開発途上国にとって過大な負担とならないよう、義務の免除・緩和措置を講じる。

(4)食料安全保障上の要請への対応

二国間や多国間の食料援助のスキームを補完し、一時的な不足等の状況に際して現物の融資を行い得る国際備蓄の枠組みを検討する。 

背景

(1)国境措置、国内支持、輸出規律・国家貿易に関する規律

食料純輸入開発途上国をはじめとする多くの開発途上国は、飢餓・栄養不足問題等の問題に直面している。こうした国々にとって食料安全保障の達成が最優先課題であり、貿易ルールにおいてもこの点に十分に配慮することが必要である。

このため、これらの問題を抱えている開発途上国については、特別な配慮として引き続き国境措置・国内支持に関する規律や水準につき柔軟性を認めていくことが適当である。

(2)食料安全保障上の要請への対応

現在開発途上国を中心に8億人を超える飢餓・栄養不足人口が存在していることに加え、災害や経済危機等により、大量の食料援助需要が発生しており、食料安全保障は世界的な課題となっている。

このような事態に対処するためには、長期的には開発途上国の食料生産基盤を強化しなければならないが、当面は、二国間や多国間の食料援助のスキームを強化していくことが必要である。また、このようなスキームを補完し、一時的な不足等の状況に際して現物の融資を行い得る国際備蓄の枠組みを検討すべきである。

7  消費者・市民社会の関心への対応に関する提案

提案
食料の6割を輸入に依存し、また世界最大の食料純輸入国である我が国の消費者・市民社会は、その世界最大の農産物顧客という立場と食品の安全性や選択に関する情報を重視する観点から、真に公平で公正な貿易ルールの確立を求めている。また、我が国の消費者・市民社会は同時に農業の多面的機能や地球環境の保全・資源維持への配慮についても大きな関心を有している。

以下の提案は、我が国国民各層が有している様々な関心のうち、特に農業交渉に直接的に関連するものについて取りまとめたものである。

(1)食料の安定的な供給

  1. 農業協定第20条を超える助成及び保護の削減は、国民全体で取り組んでいる食料自給率向上の努力を著しく阻害するものであることから、我が国の消費者・市民社会の受け入れるところでない。
  2. 輸出国における輸出禁止、輸出制限、輸出税の徴収、輸出促進のための各種助成といった国際市場の不安定性を増幅する措置に対する規律を強化するとともに、輸入国家貿易等、国際市場の変動からくる影響を軽減し、国内への安定的な食料の供給に資する役割がある体制を維持する。

(2)安全な食生活の確保

貿易ルールの検討に当たっては、食品の安全性の確保を第一義とする。UR合意後生じた新たな課題について、現行協定の問題点の有無の検証を行う。また、食品の安全性を確保するための防疫体制を充実強化する。

(3)食品に関する消費者の選択を可能とする情報の提供

  1. 消費者が安心して食品に関する選択を行うため、輸入品、国産品を問わず適切な表示による情報提供を行う体制を構築する。
  2. なお、遺伝子組換え食品の表示に関しては、コーデックス食品規格委員会において適切な国際的ルールを策定する。

(4)WTO農業交渉に関する情報の積極的な開示・提供

交渉の透明性を確保するために、消費者・市民社会に対して十分な情報を開示するとともに、必要な意見表明の機会を提供する。

背景

(1)食料の安定的な供給

  1. 現在、我が国の食料自給率は40%(カロリーベース)であるが、これは1億2千万を超える人口を擁する国として少な過ぎ、国民の多くは大きな不安を抱いている。
  2. 我が国は、食料・農業・農村基本法に基づき市場指向的な農政改革を推進しつつ、生産者、消費者双方の努力により食料自給率を引き上げることとしている。基本計画において2010年の食料自給率を現在の40%から45%に引き上げる目標を設定し、国内生産、安定的な輸入、食料備蓄のバランスをとり、国民への食料安定供給の確保を図ることとしている。
  3. 我が国は市場アクセス及び国内支持に関する提案を消費者のニーズを踏まえて行っており、世界最大の食料純輸入国の消費者の要求として各国の真剣な検討を望むものである。
  4. また、食料輸入国の消費者として、食料に係る国際市場が本来不安定であることにかんがみ、国際市場の変動からくる消費生活への影響を最小限にするための貿易ルールの確立を切望している。

(2)安全な食生活の確保

  1. 我が国は、食料の安定供給の一端を担う食料輸入に関してはその安全性確保を基本方針としており、これに支障がある貿易ルールは容認しない。 また、食品の安全性を確保するための防疫体制を充実強化する。
  2. UR合意後、遺伝子組換え食品の増加や消費者の安全性への関心の高まり等から新たな課題が生じている。我が国の消費者も食生活における安全確保のための十分な対応を求めている。
  3. WTOにおいては、貿易関連措置に限って問題点を整理する必要がある。この場合、例えば現行SPS協定がUR合意後生じてきた新たな課題に十分対応できているかをレビューする必要がある。
  4. また、特に遺伝子組換え食品を中心とした食品の安全性に関しては、WTO以外の国際機関で検討が行われており、先の九州・沖縄サミットにおいてもOECDとコーデックス食品規格委員会の取組を支持し、作業の進展を期待するとの共同声明が採択された。したがって、WTOにおける検討はOECDによる科学的知見の蓄積及びコーデックス食品規格委員会での議論と連携して取り組むことが必要である。

(3)食品に関する消費者の選択を可能とする情報の提供

  1. 我が国は、消費者の要望に応え、JAS法による新たな品質表示基準を本年3月に告示したところであり、遺伝子組換え食品に関する表示についても2001年4月1日より適用する予定である。
  2. 各国においてもそれぞれに表示制度の検討・導入を行っており、消費者の食品の選択に関する信頼を確保する観点から、安定した国際的ルールの策定を急ぐべきである。
  3. この問題に関しては、コーデックス食品規格委員会において議論が行われているところであり、その場において検討し、結論を出すべきである。

(4)WTO農業交渉に関する情報の積極的な開示・提供

消費者・市民社会の関心に応えていくためには、農業者、消費者等が組織する非政府組織(NGO)を含め、十分な情報を開示するとともに、必要な意見表明の機会を提供することが必要である。 

8  農業交渉の進め方(位置付け)

提案
今次農業交渉は、包括ラウンドの一環としてシングル・アンダーテイキング(一括受諾方式)の下に実施・妥結されるべきである。

(参考) 農業の多面的機能、食料安全保障の配慮の観点から見た日本提案の内容

本提案各項目において、農業の多面的機能、食料安全保障の考え方は、次のように反映されている。

  1. 市場アクセス
    関税水準及びアクセス数量については、多面的機能の発揮及び食料安全保障の確保等に配慮し、品目毎の生産・消費の実情、国際需給の状況、農政改革の進捗状況等を踏まえ、柔軟性を確保して適切に設定する。
    特に、UR交渉で関税化された品目は、各国における多面的機能の発揮や食料安全保障の確保の観点も踏まえ、十分な配慮を行う。
    特別セーフガードについても引き続き存続させる。
  2. 国内支持
    各国が農業の多面的機能の発揮及び食料安全保障の確保等に配慮しつつ、農政改革推進を図るため、実施の経験を踏まえた「緑」の政策の要件の改善、「青」の政策の存続、現実的な国内支持水準の設定を行う。
  3. 輸出規律のあり方
    食料輸入国の食料安全保障を確保するためには、輸入国への輸出の安定性、予見性を確保することが必要であることから、輸出規律を強化する。
  4. 国家貿易
    輸出国家貿易は国際市場全体に影響を及ぼし、食料輸入国の食料安全保障に影響を与える可能性があるため、その活動が透明性を有し、予見可能なものとなるよう、規律を明確化する。
  5. 開発途上国への配慮
    開発途上国にとって、食料の安定供給の確保が最優先の課題となっていることに十分配慮し、国境措置・国内支持に関する規律や水準につき柔軟性を認める。
    また、二国間や多国間の食料援助のスキームを補完し、一時的な不足等の状況に際して現物の融資を行い得る国際備蓄の枠組みを検討する。
  6. 消費者・市民社会の関心への対応
    世界最大の食料純輸入国である我が国の消費者・市民社会は、国民への食料の安定供給に大きな関心を有している。そのため、食料自給率向上の努力を阻害するような農業協定第20条を超える助成及び保護の削減は、我が国の消費者・市民社会の受け入れるところでない。
    また、国際市場の不安定性を増幅する措置に対する規律を強化するとともに、輸入国家貿易等、国際市場の変動からくる影響の軽減に資する体制を維持する。