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農林水産省

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WTO農業交渉担当官と学生との懇談会概要

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  1. 日時平成13年2月15日(木曜日)14時00分~16時45分
  2. 場所近畿農政局会議室
  3. 出席者
    (学生)
    藤原京都大学農学部生産環境科学科2回生、松山同大学経済学部1回生、梶谷立命館大学法学部2回生、伊藤近畿大学大学院農学研究科修士2年、鎌田同大学大学院農学研究科修士1年
    [農林水産省]
    米田国際経済課補佐、石橋同課国際化対応特別検討室係長
    <近畿農政局>
    永江企画調整部長、藪崎企画調整部次長、分部企画調整課長、山下同課補佐、勝野同課総括企画官、山本同課係長、榎設計課係長
  4. 議論の概要

概要の説明

米田補佐より、(1)WTO農業交渉日本提案の概要(パンフレット配布)、(2)2月5~7日に行われた農業委員会特別会合の結果概要、(3)3月下旬に予定される農業委員会特別会合等の議題、(4)11月上旬にカタールで開催予定の第4回WTO閣僚会議に向けての動き、等について説明

WTOについての取り組み

(学生A)99年7月に設立した国際環境NGO「SAGE(Solid Action on Globalization&Environment:セージ)」の活動を行っている。SAGEは会員50人強で、環境、農業、グロバリゼーションなど様々な分野で社会に提言を行うことを目的としている。99年のWTOシアトル閣僚会議に参加したほか、討論、セミナー、学園祭でのシンポジウム開催等を実施。昨年6月には、タイからIFG(International Forum of  Globalization)の方を、英国からFriends of Earth of  U.K.の方を同時に招き、スピーカー・ツアーとして日本全国を回った。

(学生B)法律を専攻しているが、昨年夏以降、レポート作成に当たってWTOについて興味を持った。実家が農家だが、大学の友人などと農業の体験学習を行い、改めて農業の大切さを認識した。農家も昔は農協に頼っていれば良かったが、今は農業だけでは食べていけず、祖父母も趣味として農業をやっている状況。

農産物の自由貿易体制、農業の多面的機能、食料安全保障

(学生B)私が作成したレポートでは、農業はテレビや自動車と違い、自然と一体となった昔からの産業であるが、同時に日本は国際社会の一員として世界の貿易体制にのっとる必要があり、消費者がこの点についてしっかりと認識していくべきといった内容でまとめたものの、いくつか疑問がある。ウルグアイ・ラウンドが転換点となって農産物の自由貿易体制が進んだが、そもそも世界の農産物の自由貿易は可能なのか、またWTOが各国の農業に対して強制力を持っているのか。更に、国内でコメが余っているのにミニマム・アクセスによる輸入を行っているのは疑問。

[米田]農産物の貿易自由化が可能かということや、WTOの強制力ということについては、極端なことを言えばWTOを脱退してしまえばよいということになるが、それは現実的ではなく、農産物貿易を含め世界で自由貿易を推進していく中で、そのためのルールをどのようにしていくかが重要である。WTOの議論は経済、政治をはじめ社会と密接な関係があり、我が国も考え方を交渉の場でしっかり主張していくことが重要である。コメのミニマム・アクセスについては、関税化の特例措置によるものを引き続き実施していくのは制度として問題であるとして今回の日本の農業提案でも主張しているところ。

(学生C)世界のルールにのっとってやっていくことは大変むずかしいこと。MA米もあるが、輸出する途上国は自国民の食べるものを減じてまでコメを輸出しているが、食料安全保障を考えた場合、いかがなものか。また、余っているコメを途上国にまわすようなことは考えていないのか。更に、多面的機能についての主張は認められるのか、水田農業を中心として多面的機能を訴えている一方で、カロリーベースの食料自給率アップの目標や減反実施は矛盾しないか。また、ケアンズ・グループがそのような矛盾点を指摘してきていないのか。

米田]世界の農産物の生産量に対する貿易量の割合は自動車など工業製品に比べて低く、またその割合は、農産物の品目による差が大きく、自由貿易に委ねているだけで食料安全保障を確保するのは困難。途上国に対する食料援助については、国際的な食料備蓄の構想として今回の提案の中で掲げている。多面的機能については、OECDにおける概念整理が行われ、我が国の主張に沿った内容となってまとまった。今後OECDでは、実証検討のワークショップなどを経て、多面的機能の政策措置についての検討が行われる予定である。我が国としては多面的機能発揮に政策介入が必要など政策目的の論理を構築することとし、結果をWTOにも反映させていきたい。また多面的機能について、引き続きフレンズ国会合や途上国への働きかけを通じ、理解を求めていく考え。

途上国の農業、中国のWTO加盟

(学生B)個人的に中国に行ったことがあるが、農村から都市部への人口集中や牛肉消費など食生活の変化といった大きな変化の様子を感じている。また、中国の田舎に行くと、農作業で馬とか牛を使っているところも多く、中国としても農業に対する課題も多いなか、WTOへ加盟してうまく対応していけるのか。都市と農村の格差の拡大や、食料自給の問題など、経済成長の中にある途上国として問題が生じているようである。

[米田]マレイシアに赴任していたことがあるが、マレイシアは途上国の中でも中進国で、農産物輸出国であるにも関わらず、農村から都市部への人口集中、産業構造の2次、3次産業へのシフトなどにより、国内産業の中では農業依存度は必ずしも高くない。途上国の中にも国によって、開発の度合いや地理的条件などに様々な違いがあるのが実態。

(学生D)中国のWTO加盟が予定されているが、加盟による農産物への影響は考えられるのか。

[米田]WTOの中国加盟作業部会において多国間の交渉が継続中である。影響について特定は難しいが、今後、中長期に何らかの影響が出てくることは考えられる。中国国内においては、WTO加盟に向けて法律の整備を行うなど、必要な対応をとっているようである。

WTO農業交渉のPR、関心のない一般の人への啓発

(学生E)WTO農業交渉について、関心のない一般の人についてPRしていくことが必要ではないか。消費者への意見募集などを行ってはどうか。

(学生C)WTO自体を知らない人が多く、また行政関係者でも国と府県レベルで認識が違う。実際の生活に密着したPRをしていくべきである。行政と実生活を接近させていかないと、日本の農業として主張が弱いのではないか。

[米田]ウルグアイ・ラウンドの時は、行政と生産者・消費者との連携がうまくいかず、国際交渉を行う前提である国内での議論で関係者間で認識の相違があった。新たな農業交渉においては、政治、行政、生産者とともに消費者等一般の方の総意を交渉に反映させていくこととしている。今回の日本の農業提案は、意見募集などのプロセスを経て、国民総意のもとに作ったものである。PRは、パンフレット、ホームページ、説明会、プレスリリース、雑誌・TV等マスコミの活用などあらゆる手段を通じて積極的に行っている。本日の皆さんとの議論の場も、まさにそうしたPRの一環として行っているものである。

(学生B)WTOについて、私の実家も含めて農家の認識はなく、行政が中心となって意識改革が必要。消費者も輸入品の危険性など意識は変化しているが、私自身、出費を切りつめるのは食費からで、国内産は価格的に厳しく、意識と実態が異なる面がある。食べることに関する取り組みや農村での実地研修が必要と考える。また、日本にとってWTOの農業面でのメリットはあるのか。

<勝野>消費者にとっては、安くて多様な農産物が得られるというメリットがある。また農業に従事する側にとっても、生産者であると同時に消費者でもあり、同様なメリットが考えられる。

(学生F)WTOについては、これから勉強して理解を深めたいが、農業はどの国にも関係する産業であり、世界の動きをとらえていく必要性を感じる。

WTO交渉の中での農業交渉

(学生A)WTO交渉の中で日本の国益とは何か。食料安全保障といっても、個人的には危機意識はなく、自給率が下がっても楽観的である。また、多面的機能について知識として理解していても、実感がわかないのが本当のところ。このような中で皆さんは、どのようにして個人的に目的意識(motivation)を持っているのか。

[米田]個人的な話になるが、自分の体験として、70年代の石油ショックによるトイレットペーパー不足など日常生活への影響が食料安全保障への危機意識と結びついている。戦時中のモノ不足、食料不足もそれほど昔の話ではないと考える。行政だけでなく、政治、生産者、消費者など国民の総意として国民の利益を反映することが国益ではないか。

<榎>先般、小学校高学年を対象に、世界の食料自給について勉強会を行った。小学生対象ということもあり、食料は自動車のように簡単に貸し借りはできないというような話であったが、子供達もモノを捨てるのは問題と考えているのを実感した。自分としては、食べ物があるのがうれしい、自分や家族が食べ物が困らないようにしたいというのがmotivationである。FAOの専門家でチリに赴任していたが、FAOの基本方針である食料の分配にしても、FAOの多くの加盟国の意見をまとめていくのが困難な中、農産物の自由化によって100%食料が行き渡るか疑問なしとしない。多面的機能については、農業を行って食料を食べていくだけでなく、その場で営まれる生活そのものが多面的機能ではないか。更にWTOの農業交渉に関しては、チリはケアンズだが、国内的に様々な意見があり、交渉の場で出す議論が国内の議論を全て反映している訳ではないのを感じた。

[米田]ケアンズ加盟国の中には、貿易部局と農業部局で意見が異なる場合がある。

(学生A)多面的機能については、米国のNGOでも擁護しているものもある。日本国内でもWTOに関しては、役所の中で農業の立場は弱いのではないか。

[米田]WTOについて、日本の農業提案をはじめ、会議の対処方針など関係省庁で協議、合意の上、全体の意見としてまとめており、立場が弱いということはない。

WTOの一層の理解の浸透(今回会議に参加して)

(学生C)WTOは、一般の人には理解しづらい。

(学生E)WTOの用語が難しい。「市場アクセス」にしても簡単な日本語にならないか。

(学生B)交渉官は交渉の場で議論を行うとともに、国内の人にもWTOについて理解してもらえるようにしてほしい。

(学生F)WTOについて今後とも勉強し、カタールのWTO閣僚会議に参加したい。

(学生A)カタールのWTO閣僚会議に参加し、身近に関連することとして何が起こるのかをつかんできたい。NGOには様々なものがあるが、国のWTO担当官も国益とともに地球益という視点が必要ではないか。

[石橋]WTOをわかりやすく説明してほしいという意見について、日本の農業提案作成に実際に関わり、パンフレットを作成してきた者として述べると、パンフレットをどのレベルにするかというのは作成段階でも議論があった。その上で、日本の農業提案の主張をそのまま取り上げ、なおかつわかりやすくということで手元のパンフレットのような内容とした。今回の日本の農業提案は、今後農業交渉が進む中で日本の主張として必要なものが盛り込まれており、日本の農業を守っていく上でぜひ日本の農業提案の内容を守っていきたい。

<榎>21世紀は、人口増加問題、水問題、気候変動問題などの問題があり、目の前の問題をどう考えていくかが重要。

<永江>皆さんの議論を聞かせてもらったが、WTOの国民への理解については農林水産省としても工夫を重ね、様々な取り組みをしていると考えている。WTOの言葉は確かに難しいし、多面的機能といっても実感がわかないだろうが、わかりやすくなるよう、是非若い皆さんの知恵を貸して欲しい。シンポジウムを開催しても、全く関心のない一般の人まで呼ぶのは難しいが、参加を促し理解を深めるには、身近なことから結びつけていくことが必要で、皆さんも協力して欲しい。

<分部>本日の会議のような機会を利用して、皆さんに食料や農業に関心を持って欲しい。皆さんには農林水産省の味方になってほしいと思っており、今後ともよろしくお願いしたい。

以上

お問い合わせ先

大臣官房国際部国際政策課対外政策調整室
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