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WTO農業交渉日本提案に関するシンポジウム概要(京都府)

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平成13年3月6日(火曜日)13時00分~16時30分
池坊学園こころホール(京都市)

近畿農政局長挨拶

本日は、年度末のお忙しい中、たくさんの方々にお集まりいただき、感謝。

WTO農業交渉日本提案についての説明会については、昨年、こういう形で提案をまとめていきたいということで、全国の農政局で実施したのだが、近畿農政局としても「意見を聞く会」を2回開催するとともに、インターネット等を通じて広く皆様からのご意見をいただいた。本日お集まりの皆様の中にも昨年来、いろいろな形でご意見を下さった方々もいらっしゃるかと思う。高いところからではあるがお礼申し上げる。

本日は、こうした皆様のご意見を踏まえて昨年12月にWTO事務局に提出した日本提案についての説明をさせていただきたい。WTO交渉が、皆さんにとって、どうも遠い世界のことという感じで、“よくわからない”、“難しい”というイメージで捉えられているということがあった。そこで、今回は、WTO農業交渉について、もう少し皆さんに身近に感じていただき、皆さんの生活にどう影響を及ぼしているのかを実感していただく中で、自らの問題として考えていただく契機になればということでシンポジウム形式での開催となった。近畿大学の池上先生を始め各界の先生方に参加いただいた。

WTO農業交渉に関しては現在、各国の提案が出そろって、それぞれの議論が始まったという段階で、国をあげて日本提案の実現に向け努力していくこととしているが、この問題は、国際問題であって、国内問題でもある。諸外国からの日本に対する様々な厳しい要求に対抗していくには、国内の皆様の理解が必要。

また、日本提案の前文で、哲学を示している。21世紀の農産物貿易の方向を定める重要な貿易交渉に向けた我が国のスタンスは、自分たちの国、農業だけを守りたいというのではなく、各国の「多様な農業の共存」を目指そうというもの。今回の日本提案の一番のポイントは、「多様な農業の共存」という人類の生存権にも通じるテーマを訴えているというところにある。

詳しくは、私どもの企画調整部長から提案の内容を説明させていただくが、私からは、本日お集まりの皆様方が、このシンポジウムを契機に、WTO農業交渉に関心を持ち、何かを自らの行動として起こしていただくことにつながることを期待し、挨拶に代えさせていただく。

WTO農業交渉日本提案について(企画調整部長)

WTO農業交渉日本提案についての説明:略

WTO農業交渉日本提案に関するシンポジウム

座長:池上甲一(近畿大学農学部教授)
それでは、パネルディスカッションに移らせていただく。
先程、近畿農政局から、今回のWTO農業交渉に対する日本のスタンスについて説明いただいた。正直なところ、専門的な勉強をしている人でもなかなか難しいというのが実感だろう。しかし、これはWTO自体がそういう性格のものであるということだ。学生さんにWTOについてのレポートを書かせると、世界保健機構(WHO)や、世界観光機関(WTO)の内容を書く人がいるくらいだ。それくらいなじみがないというのが一般的だろう。

そもそもウルグアイ・ラウンドで農業分野の合意があったはずなのに、なぜまたWTOで農業交渉をするのかについてもあまり理解されていない。それは94年に終了した前回のウルグアイラウンド交渉が”一応”の合意だったからだ。一応というのは、2000年にもう一度交渉しよう、そのことを前提として合意したという経緯があるから。

その再交渉に対する各国の提案がいろいろあり、その中の日本提案が先程の説明だった。

WTOでは国境措置、輸出補助金、国内政策をどうするかということが議論になる。今回の日本提案のポイントである多面的機能は、市場アクセスと国内助成との関連で重要な論点になると思われる。今日のディスカッションでは、第一にそこをめぐる議論をやりたいと考えている。

もう一つは、非貿易的関心事項と言われている食料安全保障についての議論である。私の知り合いでフランスに行っている人がいる。その知人によると、フランスでは狂牛病の問題で食品の安全性や食糧安全保障が多いに議論になっているそうだ。そのあたりのことについても後ほど議論をしていただく。

一方で、ケアンズグループと言われている輸出国の立場からは農産物だけ別のルールにするのはいかがなものかという意見もある。ここからは、産業としての農業をどう自立させていくのかという議論が必要だろう。

農業交渉の日本提案についてはいろんな立場がありうるが、できるだけ議論を沸騰させたい。私はその中で、それぞれの立場をつなぎあわせる通訳というか翻訳者のような立場に徹しさせていただく。そのことによって、WTO農業交渉の問題をできるだけわかりやすくしたいと思う。

今回、近畿農政局の主催でこのようなシンポジウムを開催することになったわけだが、その意図は、私たちのくらしと距離があるように見えるWTO農業交渉がどういう風に影響するのかを考えるきっかけにしてほしいという思いと、それから農林水産省に対して、こう望む!という提言を皆さんにいただきたいというあたりにあるようである。

まず、始めに、WTO農業交渉日本提案で、一番のポイントになっている農業の持つ「多面的機能」について、これは、一体どういうことかというのがあまり理解されていないように思う。農業の多面的機能について、滋賀県農業経営者協会会長の木村さんにコメントいただきたい。

<木村:滋賀県農業経営者協会会長>
トップバッターということで、大変難しい課題をおおせつかった。農業の持つ多面的機能については、釈迦に説法だと思うが、私は海外旅行好きで、ヨーロッパを始め、アメリカ、ブラジル、東南アジア等20カ国くらい行った。帰ってくる際、思うのは、日本に住んでいて良かったということ。山に木が整然と植わっている。よその国でこれくらい木がきれいに植わっている国はないと思う。日本は、降雨量が多いところで、山の木、田んぼの貯水能力が、相当洪水防止というか、国土保全に役立っているように思う。また、そこにたまった水が地下に浸透し、これがどこの国に行っても、飲み水に苦労するが、日本だけ、生水が平然と飲める。こういうことも大変ありがたいと思う。ヨーロッパ、米国では、大都市が河口にあるところはあまりない。日本はすべて河口に大都市が集中。これはやはり、山に木があり、田んぼがあるから。これらが、ダムの役割を果たしていることに理由があるのではと思う。

レクレーションの場の提供ということについても、日本は完全に四季が分かれている、季節季節に応じたレクレーションがあり、目を楽しませてくれる。そういう四季を通じての観光等で生計を立てている方もいる。文化の伝承というか、日本の神社仏閣の行事祭りごとは、五穀豊穣というか、主食の米を主に置いたもので、これもお金で買えない部分。こういうことが、農業が農業生産活動に伴って農産物以外の有形無形の価値をわりだす経済活動。決して貿易で得られるものではないと確信している。国土の保全を一つとりあげても、年間3.3兆億円の価値になる。農村が持つ休養機能についても約2兆円にのぼると言われている。多面的機能全体の評価額は6兆8000億円にのぼると言われている。農業の生産額は5兆円程度。生産額よりはるかに高い国土保全機能の対価があるということ。先程も申し上げたが、決して、貿易で買えるものでない。したがって、皆さん方にこうしたことを認識して、交渉に当たって欲しいと思う。

国内で農業生産をすることの意義であるが、農業生産を継続することが、多面的機能の発揮につながる。さらには、世論調査の結果にも出ているように3人のうち2人は限定付きながらではあるが国内農産物が安全だからという結果も出ている。

食料・農業・農村基本計画の目標として食料自給率の向上をうたっている。農業の多面的機能は難しいことだが、今までやってきたことが一番大事だと思う。何もよその国に命令してもらわなくてもこのまま続けていけばいいのではというのが私の意見。

<座長>
米作りの目的は食べ物を生み出すこと、つまり米を作ればごはんになるわけだが、その背後に水をためたり、水をきれいにしたり、洪水を防止したり、景観を提供したりする役割がある。だから、多面的機能を発揮するには、農業を維持することが一番だというご意見だった。そのためにはどういう農業がいいのかということについては、おそらく議論があろうと思う。景観の話や大気の話とも関連して、どういう農業を続けていけばいいのか。NGOの立場からどのように思われるか、川上さんにお伺いしたい。なお、AMネットについてもご説明を。

<川上:AMネット>
APECモニターNGOネットワーク、通称AMネット。1995年に大阪でAPECが開かれた。その際、世界のNGOが集まって京都でAPECが持つ意味について、議論しようとNGOが集まった。その時に宣言が出され、内容は本日資料として配布。決議文の中に、今後APECが社会に対しどのような影響を与えて行くのか監視しようということがあった。これを受け継いで活動を開始した。

その後、98年、MAI投資の自由化を進めようという協定の話が持ち上がったが、NGOがストップさせた。99年、WTOのシアトル会議があり、それにも関わり、APECからWTOへと段々活動を広げてきた。

我々は、自由化が社会に対する影響をウォッチして社会に提言する活動を続けてきた。

農業交渉については実際進んでいて、農水省のHPを見ると、実質的に提案が出たのが2月5~7日で、議論が始まっている。3月から具体的な議論をすることになっている。我々は、UR合意そのものが問題があると思っている。今できあがっている農業協定は、アメリカとEUの妥協の産物だと認識している。先程説明あった多面的機能、農業生産を維持することによって保たれる公益的機能については、日本政府は、生産しなければ保たれないという立場だが、アメリカ、EUは過剰生産し過ぎているから、削減しようという合意に至っている。国内支持、補助金、関税をきりつめていくということに合意した。グリーン・ボックスという例外規定があるが、生産刺激的な補助金をこちらに移しただけで、実際は補助は変わっていない。言っていることとやっていることはズレている。日本としては、公益的機能を維持するためには生産刺激的な補助金があってもいいという議論をしていくべきだ。

農業協定は、自由化し、関税を引き下げていこうという大前提があり、日本政府としては非常に苦しい立場にあると思う。長期目標として掲げている助成の削減や関税を引き下げましょうというそもそもの約束が間違っている。その意味で各国が提出したテキストの中では、一番まともなのが日本のものだと思っている。

問題なのは、多面的機能といってはいるが、「持続可能な環境保全型農業」をいかに実現するかが一番大事だと思っている。貿易ルールは二次的な問題だと思う。ところが今の協定は、助成措置、国境措置を削減していけばいいといっている。私たちは、まずは第一義的に持続的農業の実現のために何をするかが大切だと思っている。それから、それを実現するためには、どのような貿易ルール・農業政策が必要なのかをそれから考えればいい。

途上国のNGOも、Agreement of Agriculture(AOA)をどう見直すか、まずはアセスメントをしっかりして、どうするかを考えるべきという立場をとってる。まずは自由化交渉の前に、環境社会アセスメントを実施することが先決である。

EUは環境保全はやっているが、名ばかりで結局は規模拡大し、農業生産を拡大している。規模の大きな農業ばかり支援して、小規模農業をつぶしているのではないかという批判さえある。

OECDが多面的機能の研究をしているが、まだ、足りないと思う。

<座長>
国際交渉の場では多面的機能という主張をしても、環境保全という観点でみると、口で言っていることと、やっていることが違うではないかということだろう。アセスメントという発言があったが、それはウルグアイ・ラウンド以降の各国の政策と影響を色んな角度から点検するべきという主張である。日本提案では施策の点検のみだが、そのインパクトについても検証するべきだという発言だったと思う。

WTO農業協定の基本方向は、これまでいろんなタイプの国境措置で農産物の輸入を防ぐということをやってきたが、そうした国境措置をすべて関税化し、それを引き下げ、撤廃するんだということだ。

さて、いまスーパーに行くと、白菜が4分の1きれ、200円弱もする。もっと安くていいんじゃないかというのが消費者の感覚だろう。坂本さん、消費者の立場からは、安い輸入品が増えると暮らしやすくなるという見方ができるかと思うが、一方でこうした関税の引き下げによって、国内の農家の方は非常に困っている。ここらあたり、消費者団体というお立場からどのようにお考えか?

<坂本:全大阪消団連事務局長>
その前に、私は消費者団体の立場で、WTO交渉に大きな関心をもって参加したということを申し上げたい。この度の日本提案がまとめられて以降の経過については、パンフレットで詳しい説明があった。パンフレットの前半はわかりやすくまとめられている。

こういう前文を書くに至った政府の姿勢に敬意を表したい。農業交渉に望むにいたって各国民の意見を募り。世論調査を行った。こういうふうに国民の認識を広く集めて、こういう結論に至ったということが書いてある。基本的な哲学というのが24頁にあるとおり、農業の多面的機能、食料安全保障、消費者、市民社会への関心への配慮などを規定し、「提案」本分の前文に「各国農業が破壊されることのないよう」と明記した。我が国の農業もこれ以上破壊されないよう、再生させるため主張していただきたい。

私への課題だが、ご指摘のように今スーパーで売られている野菜は輸入野菜の占める割合が高まっている。WTO農業協定が結ばれて以来の農産物の輸入というのが洪水のごとく増えてきたのは事実。それについて、消費者としては、一方では暮らしが大変。収入が減ってきているので、食生活というのは、何よりもはずせない、譲れない部分だが、それで切りつめた暮らしの配分をしなければならない状況にある中で、野菜が安く手に入るというのは大変助かる。また、いろいろ種類が増えてきた、色とりどりの野菜があって、どこのもの?と言われるような素材が手に入ることはメリットと言えるかもしれない。だが、長い目で見た場合、安いということと、安全な、良品質なものがずっと安定的に手に入るのか、その保障があるのかということとは別問題。消費者として一番懸念すること。なんといっても日本の国土で一番近いところで、手に入る、消費者の近いところで作られているということは、必要で、消費者の意識や意向は、八割以上が国産のものを求めている。

ただ、安い野菜が目の前にある、自分のふところを勘案して、国産の野菜を選ぶのか、外国の輸入品を選ぶのか、となると、やはり安いものを選ぶということは現実にはあるが、国産の安全・安心な野菜が、日本の国土、水、土から生み出されたものがほしいというのは、変わらない。農家の苦労を知り、せっかく作ったものを市場に出さず、段ボール代にもならないと廃棄されているという話を聞くと胸が痛む。

最近、トマト、ピーマン、たまねぎ、ごぼうなどの輸入が増えている。泉州はたまねぎの特産と知られているが、大阪全体でかつては、2万300トン、6、7年前は収量があったが、その後5年で、1万700トンに減っていると聞く(平成5年と平成10年の対比)。わずか5年の間に半減した。農家が作らなくなった。さらにそれから数年たって、激減している状態。甘みのあるたまねぎというのは、大阪の人間なので、泉州のたまねぎと思うのだが。先日も大量なたまねぎを土にかえして、トラクターでひいているのをテレビで見た際、本当に心が痛んだ。私たち消費者団体として食料、農業問題に関心がある。生産者と交流し、産地にもうかがっているが、山間地では家族規模での経営はやっていけない、若い後継者がみつからないという話を聞く。米は、日本の主食で、米を中心に農業が栄えてきたのだが、米を輸入している中で日本は減反を強いられて、耕作放棄されている。こういう状況を見れば、米も作らなくなれば、それに伴って作れているものも作られなくなり、関連して衰退してきている。それが、WTO農業協定とどうかかわってくるのかということだが、URから、農業協定へということで移っている。米も例外なき関税化ということで関税化された。その影響はここ4、5年の間に思ったよりも早く進んできている。消費者にとって国内で作られている農産物が恒久的に手に入らなくなるのではという懸念が早いテンポで進んでしまったということ。

安全性の問題もある。SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)。これさえも各国の農産物とか、風土、食文化を踏まえてそれぞれの国の安全基準が作られてきたのに、それを無視した形で取り決められ、日本でも「食品衛生法」をかえてきた。農薬の残留基準についても、野放しにするよりいいが、基準そのものを国際基準にあわせていくということで問題。たくさんの輸入農産物の中に指摘される「問題」もあり、大きな不安材料になっている。

<座長>
表示のことで、お聞きしたいのだが、経済情勢の厳しい中で、原産地表示が消費の選択にどこまで影響している?

<坂本:全大阪消団連事務局長>
表示は大きい。原産地表示は法律で整備されて実施されつつあるが、消費者としても期待している部分がある。ブロッコリーを選ぶとき、国内産のものを選びたいと思いつつ、価格の問題は無視できないところだが、そこに表示することで、消費者が、将来の問題まで思い描くかどうかはわからないが、表示が消費者の選択の基準として一定の効果を及ぼすのではないかと思う。そういう意味でも表示そのものが消費者にとってわかりやすい(正確な)ものであってほしいと思う。

<座長>
泉州の玉ねぎは、大阪人にとって大変なじみが深い。しかし、その泉州玉ねぎが輸入玉ねぎの影響で激減している。隣のおじさん、おばさんが作っていた地場の食べ物が食べられなくなっている。これが現実だ。

米についても、ウルグアイやパラグアイで安くコシヒカリを作り、日本に売り込もうとしている。なぜ、日本の反対側にある南米でわざわざ日本向けの米を作らなければいけないのか。輸送のエネルギー問題や南米の食料問題の面からも考えなければならない。

さて、輸入農産物が増えているわけだが、それを小売につなぐ役割を担っている流通業者の内田さん、輸入農産物の増加が卸売業者の経営にどのような影響を与えているのか。輸入品がどんどん増加し、国内農産物が減少していくという今の傾向について、どのように思われるか?

<内田:京都青果合同(株) 副社長>
卸売業者の立場としてコメントをさせていただく。ただ、ものを流していたらいい、国産であっても輸入品であっても数さえさばけばいいのではないか、という考えもあるかも知れないが、存在理由からして、輸入品が増えればいいということはない。卸売業者は、生産者と消費者の間にいて仕事をしている。

卸売業者の仕事は二つある。消費者の求めているものを安定的に供給すること。農家の方が苦労して作られたものを適正価格で販売すること。これからすると、我々が輸入品を扱うというと、消費者に安定的に供給するためということと考えて欲しい。台風などで輸入品を扱うということはあり得るということ。

昔は、ものを作っている方が強い力を持ち、買う側は、弱い立場にあった。今はそれが逆転している。今は消費者がものを選んでいる時代になった。今までは作ったものを消費者に売るということだったが、今は消費者の求めているものを売っていく時代。

そうなると消費者が何を求めているかがポイントになる。安全、安心、鮮度、おいしさ、値頃感を消費者は求めている。今の消費者のみなさんは、自分で気づいていないかも知れないが、世界の中でも一番口の肥えた国民だと思う。

仕事の関係で海外に行くが、どの国に行ってスーパーで商品をみても、日本の品質、品揃えは世界一。果物についても日本の果物は世界一の品質。みかん、りんご、いちご、見た目、味ともに世界最高峰。このように素晴らしい品質のものに慣れている日本の消費者の目や口を満足させられるのはやはり国産農産物しかないと思う。輸入品は時と場合によって必要になると思うが、あくまで脇役で、主役は国産農産物。

昔から京都では三里四方のものを食べていれば健康だと言われてきた。日本人にあうのは、日本気候・風土にあった農産物である。

野菜の中には、収穫の時期を間違えると栄養価が下がってしまうとか、時には有害な物質を含んでしまう農産物もある。日本の農家は日本の気候条件の中で長年作っているので間違うということはないと思う。海外で日本向け野菜を作ろうと思うと、輸送時間がかかる、出荷に合わせるために、収穫のタイミングがずれることもあると思う。

アメリカの野菜、果物をアメリカで食べるとおいしく感じることがある。これはアメリカの気候のもとで食べるから。それを日本にもってきて食べると美味しいとは限らない。やはり鮮度が落ちるということで、近場のものの方がいい。我々卸売業者としてはまず国産ありき。不足している時に輸入品を扱うというスタンス。

日本の消費者の方々のニーズが変わらない限り、日本の農産物は大事で、農業を保護していただきたい。このまま国産が減少していくと、歯止めがかからない状態になると思う。非常に困ってしまう。一番困るのは消費者である。私たち、皆さん方の時代はまだそんなに影響でないと思うが、子どもや孫の時代、国産がないことによって困ることになると思う。この点は消費者に理解いただき、国産農産物をともに支えていく必要があると思う。

<座長>
国産農産物の生産が減ると困るのは消費者だというご意見だ。国産を基本とした食文化が作られてきたからで、それが破られると健康にまで影響する。3里四方のものを食べると健康によいというのは、一般的に身土不二と言われてきたことと共通している。

では、野菜産地の農協組合長ということで、本日はあわじ島農協組合長の前川さんに起こしいただいている。野菜産地では、輸入品の急増を阻止するために、セーフガードの発動を求める声が強いが、いかがお考えか。

<前川:あわじ島農協組合長>
あわじ島農協は、淡路島の南半分を受け持つ農協。主たる生産物はたまねぎ、レタス、キャベツ、はくさいの4品目。名前をあげた品目は重量野菜。生産に対しては、特に近畿農政局の管内で、生産に対する施設、農家の機械等への助成を多くいただいている。野菜の価格は、平成4年度、平成12年度が急激に安い年だった。私のところの全体の生産量が年間10万トン。これは、日本国民の野菜消費量が1500万トンなので、国民で必要な野菜の2日分を供給している全国でも有名な産地。坂本さんから話があったが、昭和40年がたまねぎ面積の一番多い年次だった。私のところで3000haあった。その時は、大阪の生産が一番大きかった。大阪府が3500haもっていた。それが今、うちが約1400ha、50%面積が割り込んでいる。この状況は、昨年の安値の場合、1ケース20kg、農家に払った値段が330円。はくさい4分の1、200円という話があったが、農家の手取りは、20kg330円。

詳しい事情は後ほど申し上げるが、こんな安値の年に、14億6000万円という野菜の安値補償金をもらっている。だけど面積が減る、作る人がいなくなる。これはなぜかを考えて欲しい。それ以上に、一番始めに木村さんの言われたとおり、食料・農業・農村基本法の原点にあるような棚田の保護というような事が提示されているように、農家が国土を守っている。これがこのように農業収入が他産業に比例できない状況になると今後の農業生産への危惧がある。消費者が安いものを買うというのは、今の社会なのでいいと思う。安いものといいものの見分け方をしてほしいと思う。

<座長>
あわじ島に野菜供給安定基金から14億円のお金が流れても、生産者は減っている。それはどういうことかということを考えて欲しい。過保護農政とよく批判されてきたが、保護されているなら減るはずがない。この問題は、生産者の直接所得補償という議論にもつながる話だった。

次に、米の問題に移りたい。減反面積が拡大され、100万ha、40%に近づこうとしている。それなのに、70万トンあまり、日本の消費量の1割弱を輸入義務として受け入れている。単純に言うと、減反しているのに、米を輸入するのはどういうことか。これが農家の基本的疑問である。このあたりについて木村さん、もう一度ご意見を。

<木村:滋賀県稲作経営者会議会長>
正直言って、なかばあきらめるわけでもないが、あきらめるという感じで思っていただいてもいいのではと思う。

消費は年々下がっていると国をあげていっている。最近の消費量減少の現実を基準にすると、ミニマム・アクセス(MA)数量も少なくなって当然だと思う。生産者としては、行政に携わっている人がどう思うか知らないが、消費量が減ったら減るんだと思う。

実施期間終了後、特例措置をとっていると大変な量になるということで、途中で関税化したということで、当初より受け入れた場合より、高い数字になっている。この点についても、先程も申し上げたが、あきらめ感の中で、仕方がないことだと認識している。

それよりも、あれだけ国会で何度も何度も米は一粒たりとも、輸入しないと言って、私たちは信用していた。にもかかわらず、突然、細川総理の時に輸入を突然受け入れた。こうした生産者の心境を皆さんに察していただきたいと思う。私たち大型稲作生産者にとって80万トンも何万トンも五十歩、百歩。あきらめの境地。

<座長>
ルールの面から見ると、ミニマムアクセス(MA)の基準となった国内消費量が最初の時よりも減っているので、MA米の量は理屈として下げられるべきだろう。しかしそうなっても、日本の稲作を中心になって担わなければならない生産者にとっては、たいして変わらないという心境をお話しいただいた。

自主流通米価格の低迷についてもMA米が影響しているという意見がある。食料自給率を向上させようといっている時だからこそ、米、麦の中心的担い手が経営を持続できるような方策を本気で考えなければならない。

さて、これまでは、どちらかというと国内農業よりのコメントが続いたかと思う。

これに対して、農業も工業と同じように扱うべきだという農工一体論や、日本は工業の比較優位性により発展してきた、だからもっと自由化を推進すべきだという議論がある。関西連携協議会事務局長の田中さんに、産業界の代表として、コメントいただきたい。

<田中:関西連携協議会事務局長>
私は、民間エコノミストとして発言させていただく。私自身田舎の出身である。昭和30年代、小中学生の頃、故郷には、田んぼが一面にあり、イナゴ、ザリガニ、ホタル、赤トンボをとったり、芋畑にいったり、稲刈りをしたりという経験がある。親が生きているので、田舎に帰ると、ヨシやアシが一面に生えていて、田んぼにはやたらに杉が生えている。ため池に水は入っていないという光景。一体、我が故郷はどこに行ったのかという状態。どこに農業の多面的機能があったのかというのが現状である。

食料・農業・農村基本法は市場原理を導入するという考えで作っており、それと今回の日本提案がどういう関係があるのかが私には見えてこない。

四万十川で無農薬の米作りをしている友人がいる。大阪で外食産業を手広くやっていて、自分のところで出す米はそこで作っている。現在、田を使ってくれと言う人が多いという。農業を産業として育てる政策が一体あったのか?UR対策で6兆100億円の予算がついて構造改善するといっていたが、本当に構造改善されたのか?農業は世界で最も科学的な産業といわれていのだが、果たして日本の農業がそうなっているのか疑問。

1haの田んぼで兼業で生活している人の農業と大規模農家とは全く違う。

国際貿易交渉というのは国益をいかに守るかということでしのぎあいをしながら、交渉するもの。国益が何か、日本の中でわかっていない。農水省も悩みながら交渉しているのではと思う。もうすぐ参議院選があるが、都市の反乱というのが起こるのでは?都市と農村が対立している。農業予算がおかしいという批判が出ている。その中で農業交渉するのだから、農水省も大変。

セーフガードの問題。たまたまNHKの番組に出ており、先週はセーフガードの話をしてくれといわれた。しいたけ、ねぎ、畳表とかが問題になるかと思う。これは、日本人同志の問題である。補助金が全くなくなったニュージーランドの農家は日本に向けてにんじんを作って売ったら儲かるということで、血のにじむような努力をし、儲けている。曲がったものはシンガポールなど他の国へもっていく。上海でも日本向けに野菜を作っている。日本の輸入業者、スーパーが経営指導し、日本向け農産物の生産・輸出指導をしている。開発輸入との関係をどうするのか?世界が農業だけでなく、資本、サービスも自由化される中で、農水省の中だけでなく、トータルで議論しないといけない。

農業は、非常に魅力のある産業であるはずだが、現状そうなっていない。農地法の制約があり、科学的な大農場を持とうと思っても許されない規制がある。どうやって産業として育てていくのか、いずれにしても世界の流れはグローバル化し、国境を越えてやってくる。その中で、農業どうするかは国民的議論をする必要がある。

関西経済同友会には安全保障委員会があり、食料安全保障についても議論した。2020年に中国で、1億3000万トンの穀物輸入が必要になる。ワールドウォッチ研究所は、3億トンを超える穀物飼料の輸入が必要というレポートを出している。農地は増えないのに、人口は増加している。現在、2億トンの輸出量しかない穀物を中国が全部輸入するとどうなるか。トータルの食料自給率は45%にしようということだが、日本の経済がしっかりして、高いものでも買えるようにしておかないといけない。現在の農業のやり方を維持するために工業を犠牲にするということになれば、食料輸入ができないということになるかもしれない。そうしたことを踏まえて農業どうあるべきかを議論する必要。

<座長>
グローバリゼーションが進む中で、人、モノ、金、すべて国境を越えて飛んでいってしまう。そういう状況の下で、国益をどう考えるのか議論すべきという意見だった。その際に、国益と企業益と市民益とは必ずしもイコールではないことに注意が要る。

衣料品でもタオルのセーフガードの話が出ている。価格破壊で小売業界に旋風を巻き起こしているユニクロは、対中国の特恵関税枠を巧妙に活用している。この例は、世界の利益、その下での日本の利益がどこにあるのか、国益と市民の利益、企業の利益がどういう関係を持てばいいのかを考える際のヒントになる。こうした幅広いスタンスから交渉にのぞまなければいけないということだろう。

しかし、国益と企業益と市民益とがズレている現在、国民のコンセンサスが、どのあたりで得られたと判断するのか、難しい。

先程、坂本さんが、日本提案の前文に至る過程に対して敬意を表したいとおっしゃった。私もその点は、最後のまとめの時に申し上げたいと思っていた。こういうパネルディスカッションという形態を取って、農業のうちわだけでないところで議論しようというのは、前回のURの時と大きく違う点である。透明性を高め、国民参加の手続きをとりたいという現れと見て良いだろう。

ところが、HP等でパブリックコメントを求めても、現実には意見があまり出ないというの現実がある。もう一歩、踏み込んだ取り組み、改革が必要だ。この点は、日本のNGOの力量問題とも関連する。環境NGO、開発NGO、人権NGOなどいろいろあるが、日本のNGOはなかなか一人前に育たない、アメリカのNGOに比べ、非力である。代替的な提案が少ない理由の一端はそのあたりにもあるように思う。

一般の方々に関心を持っていただくというのは、大変重要なことだと思うのだが、そのあたり、NGOで活動されている川上さん、国民の意見をひろっていく、集めていくための取り組みについてご意見をうかがいたい。あわせて、グローバリゼーションの中で、日本の果たす役割についてどのようにお考えか、途上国との関係も含めてお話し下さい。

<川上:AMネット>
関心を高める方法としては、情報をできるだけわかりやすく伝えてもらうということが大切。また、議論する場を増やしていくことも必要。このシンポジウムもそういう場だと思うが、WTO特別会合についての情報が、農水省のHPにも掲載があり、各国の反応も掲載してもらっていた。ずっとウォッチしていないとそれが出ているというのもわからず、いつのまにそんなことやったのかということになるが、日本はどう考え、他の国がどう考えていて、どういう議論があるのかということが、とりあえず、HPで情報提供されることには意義がある。

アメリカ、EUは国内政策をがっちり固めて交渉に臨むという姿勢をとっている。そういう意味で、日本は基本法を作った。その策定過程でいろいろ議論はされたのだと思うが、一般市民としてはよくわからない。遠いところで話をしているという感じがする。

日本人が、どういう中で生きているのか、昔は多面的機能があって生きていた。それがどんどん変わってきて、気にしない人も生まれている。そういう中で農水省の人たちがいろいろ喚起していくことが必要。食生活についても、判別できる舌がなかったら、区別できない。本当の味がどういうものがわかることも大切。

ヨーロッパでは、景観が大切なものとなっていて、農業政策だけでなく、土地政策としても入ってきている。看板を日本のようにばたばたたてていては、景観どころではない。ヨーロッパでは、垣根規制や看板規制をして総合的なことをやっている。その一環で多面的機能で景観守りたいというのは説得力ある。日本の国内の農業、農村、都市政策を含めたあり方を本当はきちっと議論する必要がある。本来そうあるべきなのだが、そればっかりやっていても実は、農業交渉は勝手に進んでいく。

交渉担当者が、本当に社会全体の国益を背負っているのかということに対し疑問がある。私は産業界の産業益を担っているだけなのではないかと思ってしまう。EU、米国やケアンズの担当者などは特にそういう傾向が強いように思える。

それだけの議論をしているとは思えないという面もある。という意味で、なかなか難しい。だから、日本国内で議論するのはもちろん必要で、交渉過程で、できるだけわかりやすく情報公開していくことも必要。テクニカルターム、例えば、国内支持というような言葉をわかりやすく徹底する必要。生産者の方もちろんわかっていると思うが、そこもどれだけ伝わっているのか疑問だし、ましてや消費者、一般市民にどれだけ伝わっているかというとなかなかしんどい状況だと思う。

国会でも大いに議論したらと思う。国会もいろんな議論しなければいけないのだろうが、マスコミも含めて文句を言いたい。もっと日本の将来、いやそれだけではだめで、「地球益」について議論すべきである。私は、「国益」というのは前時代的な考えだと思える。NGOはナショナリストではなく、「地球益」を目指し、持続可能な農業を目指している。

いろんな主張があってよくて、そういう議論をするために情報を出して欲しい。昨年1年間あって、農水省は限られたキャパの中でやっていたということで、それなりにやっていたと思うが、まだまだだと思う。

私たちのスタンスは、持続可能な農業経営をどうやるか。食料安全保障をどう確保するか。FAOでずっと議論されてきたが、途上国の問題、貧困層に対する影響まで見据えて議論したい。そういうスタンスに立たないと、国益のぶつけあいになる。

日本提案のパンフレットの中で、2頁、ケアンズグループの間でも利害がずれている。シアトルの時も途上国が、URは、アメリカとEUの妥協の産物だと主張していた。途上国は、UR合意を実行すれば、輸出が増えて潤うんだと言われ、合意した。蓋を開けると潤った国とそうでない国の差が出てしまった。

途上国でも、単に輸出が増えればいいというものでない。自給型農業が輸出型農業になってしまい、輸出型というのはコストがかかるので、途上国政府は外貨確保に魅力があり、自給型農業をつぶし、輸出型にすることで今ある貧困をさらに深刻化させているのではないかと思う。これでは、持続可能な環境保全型農業は実現できない。

こうした様々な問題に関する議論をあいまいに、うやむやにしたまま自由化交渉へと進むといろんな問題が出ると思う。だから、シアトルの時にNGOからも反発が出た。

<座長>
大競争時代は、貧困をさらに拡大していくという意見だった。その事を正しく認識しておかないと、公平な議論ができないし、いわゆる途上国の支持も得られない。

ところが、我が身にひるかえってみて、具体的な生活の場面では想像力がそこまで至らないという問題がある。坂本さん、今、川上さんから指摘があったような点について、一生活者としてどのように感じられるか。また、どうすれば、WTO交渉への関心が高まるだろうか。

<坂本:全大阪消団連事務局長>
一市民、一消費者として考えるのは大変難しいこと。日々の食卓、日々の消費活動を通じて、やはり生きていくために、日本に住もうとどこに住もうと、何をみつめていかなければいけないかということに尽きてしまい、WTOだけでなく、個々の生き方の問題になると思う。

私たちは、たまたま食の安全、食料問題に関する運動を様々な団体と連携し、テーマを決めて、運動展開してきた。

食管法から食糧法になり、WTO協定の批准、農業基本法の大改定をしてきた。こういう動きも系統的に捉えてきて現状の食問題、経済問題を考えられる。95年に協定が結ばれて以降、私たちの環境はどうなったか、生産の環境はどうなったか、常に見続け、関心を寄せてきたから、WTO交渉に対し、意見が言えると思う。

なぜ、わかりにくいか。全ての仕組みの前提にグローバリジェーションがあり、経済問題がある。田中さん自身のプライベートな「ふるさと考」には共感するが、経済界全体の国益のために農業が衰退していかざるをえず、大規模農業を振興していかなければいけないというご意見に対しては、如何なものかと思う。

トータルの国益という言葉は好きでないが、国民サイドにたった、自立、国際的共存、健康に生きられる社会を日本の中に作ってこそ、国際的にも対等、平等に貢献していけるトータルな考え方を国民の中にしっかりコンセンサスを作っていくことが必要で、そういう内容を国民に知らせていく必要がある。そういう交渉の報道をマスコミもあまりしない。3月に特別交渉が行われるというのも、マスコミの取り上げ方が不足している。

日本提案のパンフレットには、こういう内容で提案したということが掲載され、さらに、現状分析が随分されている、これも評価したい。日本の農業がどこまできたかがわかり、これは、私は評価している。しかし、さらに一歩踏み込んでどうしてこういうことになったのか、何のためにこうなったのか反省もしてほしい。その上で、新たに国際協定の中でこういう提案をしようとしていることをもっとわかりやすく国民に訴えかけてもいいのではないかと思う。これからが大切。40%の自給率という今の実情の中で、協定の中身を実現しきるために、いろんな部分で、盛り込んでいる重要項目について、踏み込んでどういう政策が必要(国内政策の見直し)かということを示し、国民の後ろ盾、バックアップを求めて欲しい。そういう意味で、NGOの活動は重要で、国際舞台で、国際ルールづくりに当たって国際会議の周りを取り囲んで、NGOは非常に活躍している。

WTOを囲んでの国際的NGOネットワークは随分すすんでいる。国内でのPR活動をする際には我々も協力していきたい。いろいろアプローチをしていただきたいと思う。

大事なのは、自給率を10年くらいの間に引き上げていくということを具体的に実現させていくための政策を計り、訴えていくことで、そうすれば国民には理解されるし、歓迎されると思う。環境問題の視点からもこの問題は、急がなければとりかえしのつかない課題である。

<座長>
農水省は孤立無縁ではない、市民、NGO、NPOは、日本提案のようなスタンスを貫くなら十分支援ができるというメッセージだったと思う。やはり、食と環境に関心があるからだろう。とすると、WTOに対する消費者の関心を高めるためには、食料消費という視点からのアプローチが一番大切なのだろう。

食料安全保障には、国内自給を基本とする食料安全保障論や、ひとつの国としてのセーフティーネットは確保すべきという食料安全保障論、さらには途上国の飢餓を削減するという国際レベルでの食料安保というような違いがある。食糧安全保障を確保する手法としては、国内生産と輸入、備蓄を組み合わせることで確保を図るべきという意見もある。

そこで、安定的な輸入というのは、どの程度可能なのか。日本に農産物を輸出している国の中で、穀物についていえばアメリカが圧倒的なシェアを占めている。

内田さんは、系列会社として農産物の輸入会社をお持ちで、出向されていた経験もあるそうだが、果たして、輸出国が日本に安定的に輸出してくれるかどうかといった疑問こついて、実際問題、どのように思われるか?自身の経験を踏まえてご意見をうかがいたい。

<内田:京都青果合同(株)副社長>
系列会社で輸入会社があり、そこに10年いて、生鮮の輸入青果物の扱いをしていた。私の祖父がバナナを扱い始め、柑橘類の輸入を始め、輸入を拡大してきた。バナナ、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、アメリカンチェリーなども扱っている。

今、申し上げた果物の中で、メインはバナナのような国内で生産されていないもの、国内で時期的にできないもの、季節的に不足するものを輸入している。台風等突然の理由があって生産が激減した時に安定的に供給するために輸入する。

平成3年にレタスが非常に不作になり高騰したことがあり、輸入商社がこぞってアメリカから輸入した。最初は順調でスーパーで売っていた。そのうち国内のレタスの生産が回復し店頭に並ぶようになると輸入レタスに手を出さず、2つならんでいると、消費者は国産を選んでいた。結局輸入レタスは選ばれなかった。平成3年最初の輸入5800トンで、国内の総消費量の1%足らず。その後、増えたり、減ったりを繰り返し、現在6000トン前後が輸入。我々は輸入レタスを小売店では、めったに目にしない。流通形態を見ると、輸入レタス6000トンのうち6%くらいだけが小売店で販売されている。残りの大半は、外食産業向けに出荷されている。皆さんは小売店で、輸入品と国産を区別して買える。しかし、レストランで出てくれば選択できない。

話は変わるが、輸入会社にいた頃の経験をお話しする。アメリカからオレンジを仕入れる際、アメリカの国内の状況がよくなると日本に対する値段も上がる。日本国内の値段に関係なく上げてくる。そうこうするうちに、韓国のマーケットでアメリカのオレンジの輸入を解禁した。アメリカは喜んで韓国へ出すようになり、そうすると日本への輸出が極端に減る。また、別の話で韓国に行っていちごの契約をしてきた。数量と値段を決めて一定期間いちごを輸入することになった。しばらくすると、出荷が止まったので、聞くと、天候状況が悪く、品物が悪くて出せないと言い訳をする。

よく調べると韓国国内での値段が高騰し、我々が契約した値段より上がったので、輸出せずに国内にまわしたということだった。

こういうことからわかるように決して彼等に我々は供給を安定的にしてもらえるということは望めない。

我々が海外からの供給に頼ってもいいのは、嗜好品である果物や日本にないものだけ。これらであれば影響ない。生きていくために絶対必要なものはぜひ国内で自給するべき。米は日本人の主食だし、エネルギーの源なので、国内で生産すべきだと思う。

1972年、今から28年前、アメリカで大豆が大凶作になり、アメリカが輸出規制をした。皆さん、ご記憶にあると思うが日本では豆腐の値段が高騰した。日本政府がアメリカ政府に対し緊急要請した。米国高官の日本に対する返事はどこの国でも自分の国の食料供給を優先するのは当然ではないかと一蹴された。

1972年のアメリカ大豆の輸出禁止措置が原因で、翌年にオイル・ショックが起こっている。産油国がアメリカの措置に対抗し、原油価格を引き上げた。これがオイル・ショックの原因。ロシアがアフガニスタンに侵攻したとき、アメリカはロシアへの穀物輸出を禁止した。アメリカが穀物を戦略物質として使った。食料はこれだけ恐ろしいものであるということ。

日本がこれまでどおり、諸外国に食料を頼ることは、国際交渉力がなくなり、食料が不足した際、食料確保をどうするのかということが心配になる。諸外国が飢餓状態になれば、自分の国の国民を大事にする。供給量が限られていると、日本がいくら金を出しても手に入らないことになりかねない。これが先程から言われている自給率40%ということ。日本人はよく平和ボケをしていると言われるが、こういうことを考えると、そうだと思う。

海外に食料の安定供給を求めるのは難しい。工業製品ではないので、国内で生産を維持して、増やしていくことが国民のためになると思う。

<座長>
田中さん、このことについていかがか。

<田中>
今の話と同じで、アメリカというか食料輸出国は、食料を戦略的に扱うのは当たり前の話。では、日本はどのように食料自給率を高めるかということが問題。

昭和30年代は、県道のわきに、かぼちゃやトウモロコシを植えていた。あぜ道に大豆も作っていた。校庭をひっくりかえせば、農業生産できる。

どうしてこれだけ科学技術が発達した国で農業生産を産業としてやらないのか。企業が農業に参入しようと思っても非常に難しいのが現状。

ある大手メーカーが効率的に花を作ったが、売ろうとしても慣行があり、贈答用であれば、いいが、市場で売れないということであった。そういう点も含めていろんな規制が残っている。日本の農業をどうしていくのか、農業をやりたい人が安心して携わるにはどうしたらいいのか、考えて欲しい。環境を維持するなら環境省もあるので、環境予算を使ってやればいい。

産業として育ているといってもイメージがわかないと思う。農業をやりたいという若い人が出てくるような環境づくりになると思う。四万十川では、いろんな人が田んぼをつかってくれという人がいる中で、手放したくないという人もいる。

基盤整備をして、大規模化することができない。本当に農業をやりたいという人がやれない環境にある。そこらあたりを食料安全保障との関係でどう考えていくべきか、ある意味で、農水省に質問を投げかけたい。

<座長>
産業界として、輸入一辺倒というのは危ないというのは認識された上で、食料安全保障を向上させていくための農業政策のあり方についてご提言をいただいた。感謝申し上げたい。

食料安全保障を向上させるには、誰が農業をするのかという問題を避けて通れない。施設園芸等には若い担い手が育っているものの、米や麦などの土地利用型農業ではあまり多くない。自給率の向上には、土地利用型農業の動向が重要な条件となる。その前提として経営安定が大切になる。

先程、あわじ島農協の前川さんから後半でご意見をいただけるということだったので、このあたりでお願いしたい。

<前川:あわじ島農協組合長>
率直な意見、WTOは135カ国という多くの国の間で合意を得る環境にないのでは?各国間の意見の相異があるのが当然。日本がこれだけ経済大国に成長してしまい、農産物について輸入の規制をするというのは、なかなか国の交渉として、うまくいかないのではと感じる。そういう点からすると、お手元に配布しているが、こんなことが農業を支える重要な部分ではと思う。3月3日の日本農業新聞に輸入たまねぎ七割不合格という記事が出た。1月末から2月中旬までの中国の輸入たまねぎ1万9600トンのうち、虫の付着で不合格になったのが1万3000トンだったということがあった。今、申し上げた七割の不合格品が、農水省の植物防疫検査ではっきりした。害虫を処理するのに、農水省の植物防疫所が、臭化メチル、青酸ガスによって処理したと書いてあった。病原性大腸菌O-157がかいわれ大根で発生した時に、我々のレタスに対しても風評がでて、抗菌フィルムに包んで出荷した。

たまたま1月26日からベトナムへ行って来た。ベトナムでは原虫が原因で大変な問題がおきている。メコン川は5カ国を流れて最後がベトナム。そういうことで、ベトナム産の農産物には原虫が付着している。兵庫県の衛生試験場で、輸入たまねぎを中心に調査をしてもらっている。既に輸入たまねぎから原虫を発見したということ。私たち子どもの頃は回虫に悩まされた。時代が進んで病虫に悩まされた時期があった。日本の農業は、人糞によって野菜の生産がされていたので、人体に回虫が入った。私たちは学校で薬を飲まされた。今の原虫、線虫という論議は日本の60年前と同じ。ベトナムは環境にやさしい農業をしているので、そういう問題が出る。稲を作って、家鴨を飼って、川に人間が人糞を排出している。今、農産物を輸入するようになり日本人が原虫に悩まされている。農水省は輸入野菜に対し青酸ガス、メチルガスを使って輸入野菜を消毒している。

レタスが萎縮病にかかっているが、これはウィルスが付着してなる病気。臭化メチルで駆除したいというが、国は臭化メチルを使うことは禁止している。アメリカでは、毎年消毒している。内田さんがレタスの輸入のことを言ったが、たまねぎは、臭化メチルで変色しないが、レタスは真っ白になる。先進国は農薬をふんだんに使っているし、東南アジアでは原始的農業なので虫害が多くあるということを認識してほしい。私の希望として申し上げることは、日本国民のために輸入野菜の検査を徹底的にやってほしい。日本国民は清潔な環境で生活しているので感染症への抵抗性が弱い。原虫は東南アジアの人は平気。

投書を紹介したい。スーパーで淡路のたまねぎ10kg1箱を買ったのだが、中身が違う。その方のご主人が淡路の出身なので、結婚以来淡路のたまねぎを食べており、違うことはすぐ分かるということで、箱と中身を変えて売っていることに苦情をされた。

私のところのたまねぎは生育期間が約7ヶ月ある。日本人の生活は北緯40度での生活。その地域の旬のものを食べることが栄養価が高いことに結びつく。消費者の人には区分けできない。淡路たまねぎと書いてあってもスーパーの店頭で差し替えることができる。特にアメリカのワシントン州のたまねぎになるとわからない、カリフォルニア州のものは区別できる。これは緯度の問題。中国のたまねぎ、山東省から来るのは日本のものと区別するの難しい。

生産者側が20kg300円売っているのに、5個300円で小売店で売っているのは輸入たまねぎ。国産は5個300円では流通できない状態。

牛丼の吉野屋が繁栄している。一時、斜陽になったが、私どものたまねぎを使うようになって調子がよい。たまねぎを使う時、たまねぎを四つに切り、4分の1をどんぶりに入れる。輸入たまねぎでは有効率45%、私のところのは、72%と言われた。

雪印の問題、消費者の皆さんは加工乳を飲まなくなってきた。冬場では40トンしか生乳の生産できなかったが、最近100トンに。

口蹄疫から狂牛病の問題が起きて、私どもの黒牛の販売が上昇。消費者の皆さんは、こういう問題に敏感。

国の皆さんがセーフガードとWTO交渉と先程申し上げたようなことの意義を考え、農業の指導をお願いしたい。

<座長>
食料安全保障といっても、フードセキュリティー(量の問題)とフードセイフティー(安全性の問題)の問題を仕分けして議論しなさいということでしょうか。検疫をちゃんとやれ、それが国内産地の生産環境を支援することになる。ただ、検疫協定自身は、今回の農業交渉には入ってこないのだが。

木村さん、食料安全保障に大きくかかわる米や麦の担い手についてお考えを手短に。

<木村:滋賀県稲作経営者会議会長>
経営に安定に必要な施策。いろいろあるのだが、税務署が毎年所得標準を出している。10a当たりの稲作所得、昭和53年9万4728円だったのが、今年はわずか5万円余りだった。私たち、稲作農家の1俵当たりの損益分岐点は1万2千円で、これを割ると危ない。今年は滋賀県の日本晴れが1万100円だった。このようなことなので、経営を安定させるための経営安定対策が実施されているが、このような対策をさらに充実していただきたい。

それとともに、生産調整をすると、麦、大豆、栽培をするととも補償も含め、10a当たり7万円を超す収入になる。しかし、このことは、大型稲作経営者としては、割り切れないものがある。この7万円の金が永遠に続くものではないと思うのだが、現実にもらって当たり前ということで、自分の将来設計に組み込んでいる人がいる。そういう人は、そうとうひどい目にあうのではと思う。減反、生産調整をして当たり前という、考え方が今日本の生産農家にはびこっている。しかし、四半世紀にものぼる生産調整は、そういうことをしなくて田んぼに全部米が植えられる状態が本当の姿だと思う。私たちも足腰の強い経営を目指してがんばっている。じっとしていては足腰は弱まるばかり。私たちも思いきり動き回る。消費者の方のニーズに応えるために、動き回るので、動き安いような施策をお願いしたい。

消費者の方への注文。子どもたちにごはんのよさを伝えて欲しい。朝ごはんをたいてやってほしい。アメリカでは日本食ブームが起きている。せめてもう1杯ごはんを食べてもらうと、250万トン消費することになるらしい。無理かもわからないが、腹いっぱいのところ、もう半分食べて欲しい。

子どもさんの話なのだが、「三つ子の魂百まで」というが、学校教育の中で、何か手段を講じて欲しい。外食時の食べ残し、今は食べ残して当たり前。行儀が悪いという形で伝えて欲しい。

<座長>
大分時間が迫ってきた。せっかくの機会なので、会場からの発言を2名に限って、お願いしたい。

<本田:全日農京都府総連合会>
先のUR交渉で、EUが食肉一括方式ということで、豚肉の輸入を減らしたという経緯があり、日本も米だけでなく、麦も輸入しているので米麦一括方式、セクター方式というのを今回の交渉の一つのカードとして交渉に臨んだらと思う。

先の農水省の事務次官と話をした時に、この話をしたら、これまでの交渉はそういう考え方でやっていないので、交渉の連続性からして、難しいと言われた。しかし、日本もそういわずに、EUはやっているので、具体的戦術を持って取り組んでもらいたいと思う。

<八田:全農林>
前川先生に聞きたい。基本計画では野菜の自給率を10年度に84%、22年度に87%としている。野菜の自給率が増加するということになっているが、この数字を正しいと思うか?

木村先生、極めて本音の話で申し訳ないが、後継者がいないということは、儲からないということで他産業より収入が少ないからだと聞く。それにかかわらず、度々海外旅行に行っているというお話だったが、他に収入があるのか?

坂本先生にお聞きしたい。日本の農業を大事にするなら、アメリカの自動車産業、電機産業を大事にしていかなければいけないと思う。今まで日本の労働者は、過酷な労働条件で働いてきて、過労死という言葉も国際語になっている程である。そうして働いてきて、自動車、電機を輸出し、貿易黒字を出してきたが、これも日本の労働者の低賃金と過酷な労働の上に成り立っていたということを反省すべき。

それで、輸入はほとんど発展途上国から入ってきているのだが、野菜を輸入しないということになれば、発展途上国、アジア諸国は永久に途上国でいろということにならないか。

<座長>
難しい質問もあるが、木村さんから順次、簡潔にお答え下さい。

<木村>
自分の規模を言うのを忘れていた。今、滋賀県で30haで米専業、自家販売100%でやっている。

<前川>
40年に3千haだったたまねぎの面積が1500haの面積になったといったのでそういう質問になったのだと思うが、儲からない野菜は作らない、儲かるものを作るということで、作物転換をしている。私のところで、40年にゼロだったレタスが、今は1000haの面積がある。農業の収入の不足するものはやめて儲かるものに品目転換する。全国的にも野菜全体としての生産量はそう落ちていないが、品目によっては落ちているということ。

<坂本>
工業中心の発展をとげている過程で、その代わり農産物は買いなさいよという相手国の政策を受け入れてきた。1960年代、経済協定以降、輸入は非常な勢いで伸びてきた。そういう経過をたどって、現状がある。しかし、今それを問題にするよりは、ここまで来た先進国の中でも最低の自給率をどう向上させるのか、世界的な規模で見て食料をどう確保するかを考えるべき。農業は、大変なエネルギー、化学物質を使いすぎているという面もある一方、人類が生きていく上で必要な環境をも維持する機能を持っている。今、回復させること、作れるところで作らないと間に合わない。できるところはやる、そういう観点で回復させていくべき。それにふさわしい、社会(世界規模から見ても)のあり方を確立する必要がある。途上国にも先進国に共通した問題と思う。

<座長>
まだ、会場の方々から質問、意見などがあると思うが、本日配布されているアンケート用紙を利用してほしい。
最後に、今ご質問がなかった、3人のパネリストの皆さんから1分ずつ、これだけは伝えたいということをお願いしたい。

<内田>
とりあえず、日本政府には妥協せず、主張を通していただきたい。MAは失敗だったと思うが、これを繰り返さないでほしい。生産者は消費者の命を守り、消費者は生産者の生活を守という信頼関係及びお互いの感謝の気持ちを持つことが大事。このお互いのバランスが崩れる時が危ない。

<田中>
2007年から日本の人口が減少していく。財政情報はさらに悪化し、交付税や補助金も出せなくなる。日本全体が、経済界が、農業界がといわず、身近な地域でお互いに協力しながら、自分達の知恵を出し合って活性化の努力をしていく必要。

<川上>
今日は具体的な話しが聞けて、非常に勉強になった。
これまでのWTOでの議論は、2月の話を聞いても日本にとっては厳しい状態。提案の中に問題は残っているものの日本提案が各国の提案の中では一番マシなものと思うので、WTOの議論の中に、(アセスメントの実施を含めて)どれだけ日本政府の主張を広げられるかは重要な点。そのためには、市民一人一人ができることとして、議員に働きかけるとか、官僚に電話するとか、マスコミ・新聞をチェックして投稿するとか、そうしたことをしていく必要。農林水産省はHPで意見を募集もしているが、一般から届く意見が少ないと嘆いている部分もあるので、どんどん意見を出してプレッシャーを与えることが大事。アメリカの団体は善し悪しはあるが、業界が独自に政府にものすごいプレッシャー与えている。それに比べて日本の業界団体は農水省の傘の下でがんばれ、がんばれといっており、それでは心もとないと思う。独立した姿勢と活動が必要ではないか?私自身に返していえば、NGOとしてWTO交渉を今後もウォッチングする行動を続けて行く。市民一般としても、一人一人が、今後の交渉の行方をきちんとウォッチングしていくことが一つの責任ではないだろうか。

<座長>
それでは、私の方で本日のシンポジウムのまとめをしなければならないのだが、時間が迫っているので、印象を3点だけ述べて、まとめとしたい。

  1. 今日は、日本政府の提案を広く知ってもらい、理解してもらうことが目的だった。今回のような試みは是非続けて欲しい。その上で、日本提案はまだ提案しただけで、スタート地点に立ったばかりだということを強調したい。日本の提案を具体化していくことが課題であり、そのためには国民の理解と支援が必要である。
  2. この点に関して、田中さんから、多面的機能はどこにあったのかというかなり厳しい指摘があった。農法のあり方を含めて、生産者も反省すべき点あると思う。反省すべき点は反省し、多面的機能にかなうような農業を、産業としても成り立つようにしていく努力が大切だ。
  3. そのためにはプロジェクト方式のような対応が求められる。省庁部局ごとの縦割りでなく、例えば教育との連携、あるいは経済産業省、外務省、国土交通省等と連携をとっていくべきである。その中で農業交渉の提案内容が日本の将来、暮らしやすい社会を作り上げるための大事な条件だというところにまで、政府内でも認識を高めて欲しい。

最後に局長から少し感想なり、コメントをお願いしたい。

<局長>
先生方の中で、田中さんから質問があったので、お答えしたい。

農業を産業政策としてやっていくべきという話があった。基本法ができ、基本的には産業としての農業を作り上げたいという思いで進めている、農業の担い手は、他の産業並にかせげるようにという経営体を育てていきたいというのが基本。今、そういう農家を認定農業者といって、近畿では6千数名いるが、全国的になかなか進んでいない部分はある。

施設園芸もあるが、土地利用型農業が多い。資産として農地を保有することが多いという問題がある。農家は財産として、農地を持つ。なかなかそういった農業だけで、自立できる人が少ないのが現状。

企業の農地の取得を認めたらという話があった。基本法の時に議論があり、経済界からは、会社が農地を買えるようにという話がでた。企業が投機目的に土地を所有するのでは?といったような議論があり、部分的な規制緩和をすることになった。

市場では、会社が育てた花の出荷の規制はないと思うのだが。

外国との関係を考えると、規模の問題では大きな違いがある、中国等人件費が極端に違う等対等にやっていくのはなかなか難しいという実情がある。外国との関係でどう農業を守っていくか難しい問題。

今日は貴重なご意見を頂き、感謝。情報提供も積極的にやらせていただきたい。


WTO農業交渉『日本提案』に関するシンポジウム  委員略歴

【座長】

池上甲一(いけがみ・こういち)
近畿大学農学部教授。環境経済学、食料貿易論、貿易法政論を担当。
京都大学農学部卒。昭和60年京都大学農学部助手、平成3年同講師、平成5年近畿大学農学部助教授を経て、平成11年より同教授。
他に龍谷大学経済学部、京都大学、同大学院、平安女子短期大学、大阪府立大学、神戸女学院大学、関西大学などの非常勤講師を務める。

【パネリスト】

田中英俊(たなか・ひでとし)
関西広域連携協議会事務局長。
東京大学法学部卒。昭和43年三和銀行入行。平成10年三和総合研究所理事・調査部長。平成11年より関西広域連携協議会事務局長。
NHK(関西)・経済コメンテーター、関西経済同友会安全保障委員会副委員長など各種委員会等のメンバー。

内田隆(うちだ・たかし)
京都青果合同株式会社副社長
昭和60年京都大学農学部卒。昭和61年米国カリフォルニア大学ディビス校農業経済学部大学院修士課程卒。
昭和60年京都青果合同(株)入社。平成元年(株)ローヤル出向、平成11年京都青果合同(株)取締役総合企画室室長。平成12年同社代表取締役副社長。

木村秀夫(きむら・ひでお)
滋賀県稲作経営者会議会長。
平成2~6年滋賀県指導農業士会副会長。平成4~10年滋賀県稲作経営者会議副会長。平成6~10年滋賀県指導農業士会副会長。平成6~7年全国指導農業士会副会長。平成9年より滋賀県稲作経営者会議会長。
平成8年毎日農業賞第45回全国農業コンクール優秀賞受賞。

前川敬一(まえがわ・けいいち)
あわじ島農業協同組合組合長。
兵庫県経済連野菜課長、同洲本支所長、三原郡三原町助役、あわじ島農業協同組合専務理事を経て、現職。

坂本允子(さかもと・よしこ)
全大阪消費者団体連絡会事務局長。
昭和54年全大阪消費者団体連絡会常任理事。昭和62年同事務局次長(専従)。平成5年常任理事兼事務局長。
大阪府消費者保護審議会委員。大阪府米穀流通協議会委員。NGO「地球環境と大気汚染を考える全国市民会議」理事。NPO「レーチェル・カーソン日本協会」理事。

川上豊幸(かわかみ・とよゆき)
APECモニターNGOネットワーク。神戸大学大学院国際協力研究科博士課程在籍。
平成7年よりAPEC・NGO関西実行委員会、平成8年よりAPECモニターNGOネットワークに参加。フィリピン・マニラ(平成8年)、カナダ・バンクーバ(平成9年)、マレーシア・クアラルンプール(平成10年)でのAPECに関するNGO並行会議、平成11年の第3回WTOシアトル閣僚会議に参加。

お問い合わせ先

大臣官房国際部国際政策課対外政策調整室
ダイヤルイン:03-3591-0758
FAX:03-5512-7652