このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

農産物貿易レポート(要旨)

  • 印刷

1999年11月
農林水産省

はじめに

我が国では、経済の成長と国際化を通じて豊かで多様な食生活を実現してきたが、同時に、食料供給の過半を海外に依存することとなり、国民の食生活の安定が世界の食料・農産物貿易事情と密接不可分な状況となっている。このような状況の下で、2000年初からWTO次期農業交渉が開始されるが、本交渉は、先般成立した食料・農業・農村基本法の下で食料の安定供給の確保を図っていくうえでの国際的な枠組みを規定する極めて重要な交渉として位置付けられるものである。

このWTO次期農業交渉で我が国の立場が十分反映された最終合意を獲得するためには、先ず国民各界各層の幅広い理解と支持の下に我が国の考え方をとりまとめるとともに、これに対する国際社会の理解が得られるよう各国への働きかけを積極的に行っていくことが何よりも重要である。このような認識の下、各方面での議論等を踏まえ、平成11年4月に「次期WTO交渉における対応の基本的考え方」、同年6月に「次期交渉に向けての日本の提案」を取りまとめ、WTOに提案をしたところである。

このような情勢のなかで、農産物貿易の現状や諸外国の農産物貿易政策、国際貿易ルール等に対する各方面からの関心が高まるとともに、これらについての全体像を概観できるコンパクトな資料が求められていた。

こうしたことから、農林水産省において、国内外の農産物貿易の動向、我が国の農産物交渉の経緯、諸外国の農産物貿易政策の概要や問題点等について網羅的かつ体系的に取りまとめ、本レポートを作成したところである。本レポートが、国民各界各層の理解を得るうえでの一助になれば幸いである。

第1章  世界の農産物貿易の動向

(1)農産物貿易の特徴

  1. 世界の農産物貿易は、生産量に占める輸出量の割合(貿易率)が小さく、しかも少数の国・地域に輸出国が集中する構造となっていること等から、一部の生産・輸出国の生産変動や政策変化に影響されやすいなどそもそも不安定。
    主要農作物の貿易率(1997年) 
  2. 世界の穀物消費量は、開発途上国を中心とした人口増加と所得向上に伴う肉類消費量の拡大により着実に増加。一方、穀物生産量は主要国の農業政策や気象動向等により大きく変動。
  3. 近年の穀物需給は、期末在庫率が過去最低水準まで落ち込んだ95、96年度以降、豊作等により緩和傾向で推移しているものの、期末在庫率は過去の水準に比べると低水準で推移。加えて、異常気象の影響による作柄変動の可能性が高まっていること等もあいまって、世界の食料需給は短期的な不安定性が増大。また、人口増加と肉類消費量の拡大による穀物需要の大幅な増加が見込まれること等から、世界の食料需給は中長期的にはひっ迫する可能性があることも配慮が必要。

(2)農産物貿易の構造変化

  1. 輸入では国内経済の混乱が続く旧ソ連、東欧のシェアが低下するとともに、人口増加と経済成長に伴う消費者ニーズの高度化・多様化等を背景にアジア、アフリカ及び南米のシェアが上昇。輸出では輸出振興の取組強化を行ってきた米国や農業生産の拡大等に取り組んできた南米のシェアが上昇。
  2. 近年の穀物貿易の流れをみると、米国、EU、オセアニアから旧ソ連や東欧諸国への輸出が減少し、米国、オセアニアからアジアやアフリカへの輸出が大きく増加。アジアやアフリカ等の開発途上国では、今後とも所得水準の上昇に従って農産物需要が増大すると見込まれることから、このような先進輸出国への依存傾向が更に強まる可能性。
  3. 地域別の農産物貿易収支の動向をみると、北米やオセアニア等の輸出依存地域とアジア等の輸入依存地域の2極分化が鮮明になるとともに、アジア、アフリカ等南米を除く開発途上国の農産物貿易収支の悪化が明瞭。
    国・地域別、経済地帯別農作物貿易収支額の推移

第2章  我が国の農産物貿易の現状

(1)我が国の農産物貿易の動向

  1. 我が国の貿易収支は、工業製品を中心に輸出が輸入以上に拡大傾向で推移したことから、81年以降、恒常的な黒字。我が国の貿易構造は、食品や鉱物性燃料が大きな赤字となっている一方、機械類・輸送機器は大きな黒字であり、他の主要先進国と比べて、商品分類ごとの輸出入バランスに極端な偏り。
  2. 我が国の農産物輸入は、国土条件等の制約の下で消費者ニーズの多様化・高度化、長期的な円高の影響、市場アクセスの改善等を背景に、大きく拡大。世界農産物輸入に占める我が国のシェアも高く、小麦、とうもろこし、肉類は世界第1位、大豆ではEUに次ぐ第2位。
  3. 品目別の輸入動向をみると、穀物や植物性油脂は、国民所得の増大に伴う食生活の多様化・高度化に伴い、60年代から80年代前半にかけて大きく増加したが、その後、その伸びは鈍化。一方、肉類や野菜及びこれらの調製品が80年代後半以降急激に増加。また、加工品や半加工品のシェアも拡大傾向で推移。
     1960年1970年1980年1990年1995年1998年
    1位 小麦 とうもろこし とうもろこし とうもろこし 豚肉 たばこ
    2位 大豆 大豆 大豆 牛肉 牛肉 牛肉
    3位 粗糖 小麦 小麦   たばこ アルコール飲料
    4位 とうもろこし 粗糖 粗糖 豚肉 とうもろこし 豚肉
    5位 牛脂 グレーンソルガム コーヒー豆 たばこ アルコール飲料 とうもろこし
    6位 バナナ グレーンソルガム 大豆 大豆 大豆
    7位 コブラ たばこ 牛肉 小麦 小麦 小麦
    8位 乾燥ミルク(脱脂) コーヒー豆 豚肉 菜種 鶏肉 コーヒー豆
    9位 たばこ 牛脂 たばこ 鶏肉 コーヒー豆 鶏肉
    10位 ふすま 羊肉 アルコール飲料 コーヒー豆 生鮮野菜 生鮮野菜
  4. 我が国の農産物の貿易収支は、恒常的に大幅な赤字となっており、98年で4兆4千億円。我が国は、84年以降、世界第1位の農産物純輸入国。
    我が国の農産物貿易動向
  5. 我が国は、穀物等主要な農産物の輸入額の8割以上を米国等の2ヶ国に依存。主要輸出国との間では年間取引数量の目標を設定するなどの安定的な輸入確保の取組を実施。また、国際会議等の場では、食料輸入国の立場から輸出国に対し安定供給の重要性等について主張。
    円グラフ
  6. 食料の安定的な輸入に向けて、食料外交の積極的推進や情報収集体制の整備、輸入相手国の多元化等を図るとともに、主要食料等の備蓄制度の適切かつ効率的な管理・運営が必要。特に、WTO次期交渉では、我が国は、世界最大の農産物純輸入国の立場から、食料安全保障の重要性等について、積極的に主張していくことが重要。 

(2)我が国の農産物交渉等の経緯

  1. 我が国の農産物に関する国境措置は、55年のGATT加盟以来ほぼ半世紀にわたる累次の交渉ののち、99年4月の米の関税措置への切換えをもって全て関税化。現行の関税水準についても、これらの経緯を経て形成。
  2. 我が国は、国内生産を維持すべき重要な農産物については国境措置をできる限り維持。国内生産では需要に応ずることが困難な品目については、諸外国の要請に応えつつ、輸入数量制限の撤廃、関税率の引下げ等市場アクセスの改善に努力。
  3. 主な交渉における農産物等の交渉経緯

ア    ケネディ・ラウンド(1964~1967年)
我が国は、農林水産物の総税目数のうち約50%強(270品目、64年の農林水産物輸入額の28%)について関税引下げ等を実施。

イ    東京ラウンド(1973~1979年)
我が国は米国との交渉において、牛肉、かんきつについて、83年度までの輸入枠を順次拡大することで合意。その他、我が国は、大豆、ナタネ、バナナなど税目数で約200品目(76年の農林水産物輸入額の21%)について関税引下げ等を実施。

ウ    日米農産物交渉
米国は我が国の牛肉、かんきつについての輸入数量制限の撤廃を主張。84年に84年度から87年度までの輸入枠の順次拡大等について、88年には91年4月から輸入数量制限を撤廃することなどで合意。
一部乳製品、でん粉等12品目の輸入数量制限措置について、87年、雑豆、落花生を除く10品目がGATT違反であるとの裁定を受け、88年、プロセスチーズ等について輸入数量制限を撤廃することなどで合意。

エ    ウルグァイ・ラウンド(1986~1993年)
国境措置、国内支持、輸出競争の3分野にわたり保護水準を引き下げていくことについて交渉。
我が国は、包括的関税化に反対する立場を積極的に主張したが、大多数の国が包括的関税化を支持する中、一定の要件を満たす農産物については関税化の特例措置を認めること等を内容とする調整案を受入れ。

我が国の農産物貿易交渉等の推移
暦年主な出来事主な輸入数量制限撤廃品目(注)
1955年 GATT加盟 ライ麦、コーヒー豆、ココア豆
大豆、しょうが
羊、玉ねぎ、鶏卵、鶏肉、にんにく
落花生、バナナ、粗糖
いぐさ、レモン
ココア粉
1960年 121品目輸入自由化
1961年 貿易為替自由化の基本方針決定
1962年  
1963年 GATT11条国へ移行
1964年  
1966年  
1967年 ケネディ・ラウンド決着('63~)
1970年  
豚の脂身、マーガリン、レモン果汁
ぶどう、りんご、グレープフルーツ、牛、豚肉、紅茶、なたね

配合飼料、ハム・ベーコン、精製糖

麦芽
ハム・ベーコン缶詰
1971年  
1972年  
1973年 アメリカ大豆等輸出規制
1974年  
1978年 日米農産物交渉妥結(牛肉・かんきつ)
東京ラウンド決着('73~)
1984年 日米農産物交渉決着(牛肉・かんきつ)
総合経済対策
 
 
豚肉調製品(一部)
グレープフルーツ果汁

ひよこ豆
プロセスチーズ、トマトケチャップ・ソース
トマトジュース、牛肉・豚肉調製品
1985年 対外経済対策
1986年 ウルヴァイ・ラウンド開始
アクション・プログラム
1988年 日米農産物交渉合意(牛肉・かんきつ、12品目)
1989年
 
 
1990年  
フルーツピューレ・ペースト、パイナップル缶詰
非かんきつ果汁
牛肉、オレンジ
オレンジ果汁
 
 
小麦、大麦、乳製品(バター、脱脂粉乳等)、でん粉、雑豆、落花生、こんにゃく芋、生糸・繭、米
1991年 ダンケル合意案提示
1992年  
1993年 ウルヴァイ・ラウンド決着('86~)
1995年 ウルヴァイ・ラウンド合意実施
1999年  
2000年 WTO次期交渉開始

(注)代表的な品目のみ掲載した。また、品目名については、商品の分類に関する国際条約で定められた名称によらず、一般的な名称により表記したものを含む。

(参考)日米農産物交渉における12品目 [1]プロセスチーズ、[2]フルーツピューレ・ペースト、[3]フルーツパルプ、パイナップル缶詰、[4]非かんきつ果汁、[5]トマト加工品(トマトジュース及びトマトケチャップ・ソース)、[6]ぶどう糖・乳糖等、[7]砂糖を主成分とする調製食料品、[8]粉乳・れん乳等乳製品、[9]でん粉、[10]雑豆、[11]落花生、[12]牛肉及び豚肉調製品。

 

(3)ウルグァイ・ラウンド農業合意における約束事項の実行状況

  1. ウルグァイ・ラウンド農業交渉においては、国境措置、国内支持、輸出競争の3分野について具体的かつ拘束力のある約束を作成し、95年から2000年までの6年間でこれを実施することで合意。我が国は、この合意内容について、関係国内法令を整備すること等により95年から着実に実行。
  2. 国境措置については、原則として全ての輸入数量制限等の非関税措置を関税化し、関税相当量(国内卸売価格と輸入価格の差)を設定。関税化品目を含めた農産物全体の譲許税率(関税相当量を含む。)を平均36%(各品目ごとに最低15%)、毎年同じ比率で削減。
  3. 関税化品目について、基準期間(86年~88年)における輸入実績または輸入割当枠に基づいて設定した「アクセス機会」(輸入量)を維持または拡大。また、一定以上の輸入の増加または輸入価格の低下があった場合、代償なしで追加的に関税を課すことができる特別セーフガードを導入。
  4. 米については、非貿易的関心事項の重要性を考慮し、関税化の場合と比べ加重したミニマム・アクセス機会を受入れ、関税化の特例措置を適用。 なお、99年4月からは、実施期間中に関税措置に切り換えると、それ以降のミニマム・アクセス数量の増加が半分に抑えられること、極めて少数の国しか適用していない関税化の特例措置に固執した場合、WTO次期農業交渉において連携を図るべき関係諸国の理解を得られなくなる恐れがあること等の理由により、関税措置に切換え。
  5. 国内支持のうち、削減対象とされている政策(「黄」の政策)については、助成合計量(AMS)により計算された基準期間における支持総額の20%を実施期間において、毎年同じ比率で削減。我が国のAMS(96年度)は、96年度の約束水準はもとより2000年度の約束水準と比べても既に16%下回っている。

    (注)我が国において、輸出補助金に該当する施策はない。


    関税化品目等についての新たな輸入制度の概要
    品目従前の
    国境措置
    関税化等導入に伴い導入する国境措置
    国境措置の
    基本的枠組み
    アクセス機会関税相当量
    (1995年度
    →2000年度)
    アクセス数量
    (1995年度
    →2000年度)
    適用税
    輸入差益の上限
    (1995年度
    →2000年度)
    輸入数量
    制限
    [関税措置移行前]
    輸入数量制限及び国家貿易制度を維持
    379千トン→758千トン 無税 292円/kg(削減せず) 関税化特例措置
    [関税措置移行後]
    国家貿易制度を維持
    (1999年度→2000年度)
    644.3千トン→682.2千トン
    無税 292円/kg(削減せず)
    (1999年度→2000年度)351.17円/kg→341円/kg
    輸入数量制限 国家貿易制度を維持 小麦
    5,565千トン→5,740千トン
    無税 53円/kg→45円/kg 65円/kg→55円/kg
    大麦
    1,326.5千トン→1,369千トン
    無税 34円/kg→29円/kg 46円/kg→39円/kg
    乳製品 輸入数量制限 一部品目については国家貿易制度を維持


    民間貿易は関税割当制度
    農畜産業振興事業団
    137千トン→137千トン 
    (生乳換算)

    民間貿易
    (学校給食、飼料等例)
    脱脂粉乳 93千トン
                      →93千トン
    バター 1.9千トン 
                      →1.9千トン
    (その他)
    125千トン→125千トン
    脱脂粉乳
    25%
    358円/kg→304円/kg 466円/kg+25%
    →396円/kg+21.3%
    バター
    35%
    950円/kg→806円/kg 1,159/kg+35% 
     →985円/kg+29.8%
    でん粉 輸入数量制限 関税割当制度 157千トン→157千トン 25%   140円/kg→119円/kg
    雑豆 輸入数量制限 関税割当制度 120千トン→120千トン 10%   417円/kg→354円/kg
    落花生 輸入数量制限 関税割当制度 75千トン→75千トン 10%   726円/kg→617円/kg
    こんにゃく芋 輸入数量制限 関税割当制度 267トン→267トン 40%   3,289円/kg→2,796円/kg
    生糸・繭 その他の輸入制限 生糸
    国家貿易制度
    798トン→798トン 生糸
    7.5%
      8,209円/kg→6,978円/kg

    関税割当制度

    140円/kg
      2,968円/kg→2,523円/kg
    豚肉 差額関税制度 ・差額関税制度を関税化し、基準輸入価格を93年度の482.5円/kg(枝肉の場合)から15%削減する。
    ・特別セーフガードに加え、別途、輸入量の急増に対し、分岐点価格を引上げるための緊急調整措置を導入する。
    ・アクセス数量は設定せず。

    注1 適用税率、輸入差益および関税相当量については、当該品目区分内に2以上のものがある場合は、代表的なものを例示した。

    注2 米、麦、乳製品、でん粉、豚肉については、調製品を含む。

    注3 輸入される米の一部およびホエイパウダーの一部については、売買同時入札制度(SBS方式)を適用する。

    UR農業合意の概要
    区分対象施策約束の実施方式(6年間)
    国境措置 関税 農産物全体で平均36%(品目毎に最低15%)削減
    輸入数量制限等
    (非関税措置)
    原則としてすべての輸入数量制限等を関税に転換(関税化)し、関税と同様に削減
    国内支持 市場価格支持、不足払い等 助成合計量(AMS)を20%削減
    輸出競争 輸出補助金 金額で36%、対象数量で21%削減

(4)我が国の農産物貿易政策に関する各国の報告書等に対する反論

  1. 外国貿易障壁報告書(米国通商代表部、99年)
    日本の農産物部分概要日本側反論・コメント
    植物検疫上の品種別試験
    日本の植物検疫は、いくつかの農産物について十分な科学的根拠なしに輸入を禁止している。

    植物検疫は、外国からの病害虫の侵入を防止するため、科学的根拠に基づいて実施している。
    コメの輸入拡大
    関税化後も米国・コメ産業の日本市場への継続的な参入を期待。

    我が国市場での需要に応じた品種開発等の輸出努力、他の輸出国との品質・価格等の競争の面で努力が基本である。
    バイオテクノロジー(GMO表示)
    遺伝子組換え食品について、遺伝子組換え技術の発展を阻害する不必要、不適当な表示を義務付けないよう要請する。

    消費者の関心を考慮しつつ、表示の合理性、信頼性及び実行可能性のある表示ルールを定め、実施していくこととしている。
  2. 国際市場アクセス優先交渉分野報告書(カナダ外務貿易省、99年)
    日本の農産物部分概要日本側反論・コメント
    ナタネ油(可食油)の関税撤廃
    UR交渉の結果、ナタネ油の関税は大幅に引き下げられたが、依然として食用油の輸入を抑え、日本国内の搾油業者を有利にしている。

    UR交渉において2000年までに大幅な関税引下げ(基本税率から36%の引下げ)を約束し、段階的な引下げを行っており、これ以上の引下げは考えていない。
  3. 対日ワーキングペーパー及び貿易政策の一般的特色:日本(EU委員会、99年)
    日本の農産物部分概要日本側反論・コメント
    豚肉の輸入制度
    日本の豚肉の関税の緊急措置発動によって深刻な市場の混乱を招いた。緊急措置が発動されている限り、EUからの豚肉は日本市場から排除される。

    関税の緊急措置はWTO協定に整合的である。UR合意の着実な実施が重要であり、見直す状況にない。
    我が国の豚肉の関税緊急措置は、輸出国に対し分け隔てなく適用している。
    動植物検疫
    日本はEUに単一市場が存在することを認識せず、未だ地域主義を適用していない。

    地域主義については、双方の専門家で意見交換を行っていくことが重要である。
  4. 貿易交渉目標・結果報告書(オーストラリア外務貿易省、99年)
    日本の農産物部分概要日本側反論・コメント
    コメ
    オーストラリアは日本に対し、コメの輸入の時期、価格付け、流通方法の見直しを要求する。流通の改善により、日本の消費者は新米を年2回入手できる。

    ミニマム・アクセス米については、国内需給状況、ニーズ等を勘案し、計画的輸入が行えるよう、入札時期・数量を決定しており、南半球の収穫時期等を勘案して入札時期を設定するものではない。
  5. 貿易政策検討制度対日審査(WTO、98年)
    農業部分各国質問日本側回答
    規制緩和
    農業については、規制緩和の対象からほとんど除外されてきた。(EU、韓国)

    米の政府売渡し義務の廃止、検疫サービスの延長を実施しており、農業が規制緩和において除外されたというのは事実誤認である。
    関税
    日本の農産物は依然高関税である。(香港、カナダ、ニュージーランド、米国、オーストラリア、インドネシア)

    二次関税については、UR合意の結果に則って、基準年の内外価格差を基に設定されたものである。関税化品目以外の農産物についても、UR合意を着実に実施しており、同合意に基づく所要の削減を行っている。

 

第3章  諸外国の農産物貿易政策とそれらの問題点

(1)米国

  1. 米国の主要な農業政策は、生産調整と不足払制度を廃止し、作付けの自由化、農家直接固定支払制度の導入を内容とする96年農業法に基き実施。また、農家が農産物を担保にして、過去の市場価格を基準に算定した融資単価に基づき商品金融公社(CCC)から融資を受ける短期価格支持融資制度を継続。国境措置については、ウルグァイ・ラウンド農業合意により、輸入数量制限措置や課徴金制度を全て関税化。
  2. 個別貿易政策等の概要と問題点

ア    輸出補助金政策
米国政府が穀物、乳製品等の輸出業者に対して補助金を支給する制度。輸出補助金は、現行WTO協定において、供与総額・総量がウルグァイ・ラウンド合意に基づく削減約束の範囲内であれば任意に付与できるとされているが、国際貿易への歪曲的な効果等が問題。

イ    農産物輸出信用保証
開発途上国等が行う商業ベースでの米国産農産物輸入のための借入金に対し、商品金融公社(CCC)が債務保証を行う制度。本制度は、貿易歪曲的な効果を持つほか、返済不履行の場合はCCCが債権を回収することから、輸出補助金の迂回に近い性格。

ウ    輸出管理制度
「国際緊急経済権限法」に基づく大統領令の発動により、国内供給の不足等の理由により農産物等の輸出を規制する制度。本制度は、貿易歪曲的な効果を有するだけなく、輸入国の安定的な食料輸入を阻害する等、食料安全保障上も問題。

エ    99年度包括歳出法に基づく農家支援パッケージ
98年以降の穀物価格の低下や自然災害等により経済的損失を被った生産農家に対する総額約60億ト゛ル規模の農家救済策(98年10月決定)。本制度については、その一部を「緑の政策」として通報しているが、真に「緑の政策」に該当するか否かについての詳細な検討が必要。また、本制度の導入は市場指向的な農業を目指す96年農業法の趣旨にそぐわない。

オ    外国販売会社を通じた輸出補助制度
米国の親会社が、海外領に置かれた子会社を通じて米国産品の輸出を行った場合、その収入の一定割合を課税対象から控除する制度。WTOは、99年10月、本制度が輸出補助金及び国内産品優先補助金に該当するとした上で、2000年10月までの撤廃を要求。 
価格支持融資制度の仕組み 

主な対象作物のローンレート     (単位:ドル/ブッシェル)
会計年度1996年1997年1998年1999年
小麦 2.58 2.58 2.58 2.58
とうもろこし 1.89 1.89 1.89 1.89
大豆 4.97 5.26 5.26 5.26

注:小麦、飼料穀物のローンレートは農務長官の権限で在庫率に応じて引下げることが可能。


輸出奨励計画(EEP)の支出実績    (単位:百万ドル)
会計年度1994年1995年1996年1997年1998年
 支 出 額 1,151 339502
小麦 891 243 5 0 0
小麦粉 78 27 0 0 0
飼料穀物 100 17 0 0 1
2 5 0 0 0
植物油 30 0 0 0 0
冷凍豚肉 14 13 0 0 0
冷凍鶏肉 21 21 0 0 1
鶏卵 15 13 0 0 0

注:飼料穀物は、大麦モルト、大麦を含む。


輸出信用保証計画の実績    (単位:百万ドル)
 会計年度 1994年1995 年 1996年 1997年1998年
GSM-102(短期) 3,080 2,772 3,079 2,809 3,963
GSM-103(長期) 140 149 151 63 56

農産物への輸出規制発動事例
実施時期内容
1973年6~9月 大豆及び同製品の輸出禁止ないし規制
1974年・75年 ソ連・ポーランドに対する小麦の輸出規制
1980年 1月 ソ連に対する穀物輸出の部分的禁輸措置

(2)カナダ

  1. カナダの農業政策は連邦政府と州政府との共同所管。具体的には、NISA(純所得安定口座)や作物保険等の経営安定対策、小麦ボード等を通じた穀物輸出を実施。国境措置については、小麦、牛肉、乳製品等の輸入数量制限措置を全て関税化。
  2. 個別貿易政策等の概要と問題点

ア    輸出補助金政策
ウルグァイ・ラウンド合意により、各品目毎の輸出補助金の量・額を譲許。96、97年度にバター・脱脂粉乳に少額の輸出補助金が支払われたが、97、98年度は輸出補助金の適用はなし。

イ    乳製品のスペシャルミルククラス制度
輸出業者への補助金給付の代わりに、輸出向け乳製品等に利用される安価な加工原料乳の乳価クラス(スペシャルミルククラス)を導入。生産者へは、本制度及びその他の生乳との平均乳価が支払われているが、これは、輸出乳製品による損失を国内向け乳製品の価格で補填するものであり、WTOパネルは、99年5月、輸出補助金の規律違反に当たると認定。

ウ    カナダ小麦ボードを通じた穀物輸出
カナダ小麦ボード(CWB)は、西部平原州で生産された穀物のうち、輸出用の小麦・大麦の集荷、輸出等を独占。本ボードのような輸出国家貿易企業については、輸入国家貿易企業と比べ通報義務を負わない等規律が緩やかなものとなっており、輸出国・輸入国の権利義務のバランスの面から問題。
 カナダ小麦ボード(CWB)の業務内容

(3)EU

  1. EUは、共通農業政策(CAP)に基づき、市場介入、関税の賦課、直接支払い等の市場政策を実施。この他、条件不利地域対策や農業環境政策等の構造政策も実施。
    共通農業制度(CAP)の概要(穀物)
  2. 個別貿易政策等の概要と問題点

ア    輸出補助金・輸出税
EUは、域内市場における急激な価格変動等を防止する必要性等を考慮しつつ、輸出補助金の付与(輸出税の賦課)を実施。輸出補助金は世界貿易への歪曲的効果等が問題。輸出税は、域内の供給確保及び価格安定化を優先するものであり、輸出国・輸入国の権利義務のバランスの面から疑問。

イ    プロセスチーズに対する輸出補助金
EUは、プロセスチーズの輸出について、その原料となる域内産の脱脂粉乳及びバターの輸出補助金を交付する仕組みを導入したが、これは脱脂粉乳及びバターの輸出補助金をプロセスチーズに転用したもので、輸出補助金の削減約束上問題。

(4)オーストラリア

  1. オーストラリアの農業政策については、連邦政府が各種の国際交渉、食料品輸出入時の検疫、税制、干ばつ対策等を担当しているが、その他の農業政策は各州政府が担当。国境措置は、輸入は全て関税化されているが、輸出は、小麦、米、砂糖については公社、ボードによる一元管理を継続。
  2. 個別貿易政策等の概要と問題点
    ボードによる小麦の輸出の一元管理 オーストラリア小麦ボード会社(AWB)は、生産者からの小麦等の買付け・保管・輸送、小麦の国内販売その他穀物の国内外の取引業務、小麦輸出(豪州産小麦の8割以上)の一元管理等を行ってきたが、99年7月1日に小麦生産者を株主とする株式会社(AWB Ltd)として完全に民営化。民営化後の小麦輸出一元管理については、「98年小麦流通法」によって設立された小麦輸出局(WEA)がAWBから輸出一元管理権の委譲を受けるものの、AWB Ltdに業務を委託するという形で事実上継続。カナダ小麦ボードと同様、輸出国家貿易企業の問題点を共有。 
    オーストラリア小麦ボード(AWB)改革の概要

(5)その他問題とみられる諸外国の貿易政策等

チェコにおいては、小麦等の輸出に当たって輸出許可証が必要。この輸出許可証の発行は、生産量・国内需要量の見通しを立てた上で行われることとされており、国内での深刻な供給不足や市場混乱の事態となった場合には、輸出許可証の発行割当が適用される等、輸出制限的な運用が行われる可能性。ハンガリーのとうもろこしの輸出制度もおおむね同様。 

(6)諸外国間の農産物貿易紛争の事例

  1. 米国/EU間のホルモン牛肉問題について

ア    EUは、消費者の不安等を理由に肥育ホルモン剤を使用した食肉の輸入を89年1月から全面禁止。これに対し、米国は、本措置はGATT及びSPS協定に不整合であるとして、96年1月にGATT協定に基づく協議を要請し、同年5月にWTOパネルが設置。

イ    97年8月のパネル報告では、肥育ホルモン牛肉の輸入禁止は、国際的な基準に基づいておらず、また、国際貿易に対する差別または偽装した制限であり、SPS協定に違反であると認定。

ウ    EUはこの判断を不服としてDSB上級委員会に上訴。98年1月のDSB上級委員会の報告は、EUの措置は国際貿易に対する差別または偽装した制限をもたらすものではないとしたが、EUの措置が十分な危険性の評価に基づいていないという点については、パネルの判断を支持。

エ    本措置は99年5月13日までにWTOと整合的なものにすることとされたが、期限後もEUが輸入禁止措置を撤回しなかったことから、米国は、同年7月以降、EUからの輸入品の関税率の引上げを実施(農産品を中心に34品目)。

  1. 米国/EU間のバナナ問題について

ア    EUは、バナナの輸入について、旧植民地であるACP(アフリカ・カリブ海・太平洋)諸国産を優遇する措置を実施。

イ    米国は、中南米産バナナを主として扱う国内のバナナ業者からの通商法301条に基づく提訴を受けて、EUのバナナ輸入制度が米国経済に悪影響を与えているとして、他の中南米諸国とともにGATT協定に基づく協議を実施し、96年5月にWTOパネルが設置。

ウ    97年5月に提出されたパネル報告は、ACP諸国産バナナの取扱業者を優先する本制度は、第三国の流通業者を競争上不利に扱うもの等として、WTO協定に不整合と認定。EUはこれを不服としてDSB上級委員会に上訴したが、DSB上級委員会報告書もパネル報告書の認定内容を基本的に支持。

エ    EUは98年10月、新制度を導入し、実質的貿易関心国に対して追加的関税割当を実施。しかし、米国は、EUが輸入ライセンスの発給を過去の実績に応じて行うことは、ACP諸国産バナナを取り扱うEU域内業者が依然として優遇されることから、この措置は勧告の実施にあたらないとして、99年3月以降、EUからの輸入品の関税率の引上げを実施(ハンドバック等17品目)。

  1. ラム輸入をめぐる米国/オーストラリア・ニュージーランド間紛争について

ア    米国のラム(子羊肉)輸入は国内供給量の約2割を占め、そのほとんどがオーストラリア・ニュージーランド産であることから、両国産ラムは米国ラム市場における主要な競争相手。

イ    米国のラム業界は、98年10月、オーストラリア及びニュージーランドからの輸入増大がラムの価格低迷を招き、国内産業に深刻な損害を与えたとして、セーフガード措置の発動による輸入数量制限、関税引上げ等を要請。

ウ    これを受けて米国の独立調査機関が調査を開始し、99年2月、ラムの輸入急増が国内産業に対し重大な損害を及ぼす実質的原因であると判断。大統領は、99年7月から3年間関税割当を適用するセーフガード措置を発動。

エ    オーストラリア及びニュージーランドは、99年7月、米国のセーフガード措置発動に対して、GATT協定に基づく協議を要請。

  1. 遺伝子組換え作物をめぐる諸情勢について

ア    安全性について
99年6月のEU環境理事会において、遺伝子組換え作物の承認手続きを定めたEU指令について、安全性に関する規制を強化する方向で改正していくことに合意。また、EU15カ国中12カ国が、この改正が実施されるまで新たな承認を行わない等の方針を宣言。このようなEUの動きに対し米国は科学的な根拠に基づかない環境保護団体の反対や政治的な動機等によるものであると批判。

イ    表示問題について
EUは、97年から遺伝子組換え食品の表示を義務づけ(具体的な実施細目が決まっていなかったこと等から義務表示は未実施)。これに対し、米国は、既存の食品と比較して著しい成分変化等がある場合にのみ遺伝子組換え作物の義務表示を行うべきと主張。また、分別管理や現在の検査方法に要するコストが大きいこと等から大きな貿易障害であると批判。一方、EUは、表示については、安全性が科学的に確保された場合であっても、消費者の関心や倫理的考慮といった目的によっても行われるべきと主張。

ウ    国際会議での議論
OECD(経済協力開発機構)、CODEX(FAO/WHO合同食品規格委員会)、WTOの貿易の技術的障害に関する委員会(TBT委員会)等の場において、遺伝子組換え作物の安全性や表示のあり方等について検討。

第4章

  1. 我が国は、ウルグァイ・ラウンド交渉において、農業合意を受入れ、現在までその着実な実施に最大限の努力。
  2. 現行WTO協定の枠組みは一定の合理性があると考えているが、食料輸入国と輸出国、先進国と開発途上国との間での公平・公正な貿易ルールという見地からは十分とはいえないと認識。
  3. WTO次期農業交渉は、2000年初から開始されるが、21世紀の世界の農産物貿易ルールの方向が決定される極めて重要な交渉。また、次期交渉では、先般成立した食料・農業・農村基本法の理念である国内農業生産の増大を基本とした食料の安定供給、農業・農村の有する多面的機能の発揮等我が国の考え方が十分反映された交渉結果を獲得することが極めて重要。さらに、遺伝子組換え体(GMO)を含む食品の安全性等様々な新たな課題が生じてきており、これらにどのように応えていくかということも重要な課題。
  4. 以上を踏まえれば、次期交渉においては、現行WTO協定の枠組みを基本的に維持しつつ、輸出入国間の権利義務バランスの回復や我が国を含む各国の市場指向的な政策転換の円滑な推進、また、農業協定の実施の経験等を踏まえつつ、必要な見直しを行っていくべき。
  5. このような認識の下、農林水産省においては99年4月末に取りまとめた「次期WTO交渉における対応の基本的考え方」に基づき消費者団体、経済団体等に対する説明や農林水産省のホームページ等を通じた情報提供も積極的に実施。また、国会の場においても各般の議論。
  6. これらを踏まえ、99年6月末に「次期交渉に向けての日本の提案」を取りまとめ、WTOにも提出。今後とも、各方面への説明や情報提供に努めるとともに、各界での議論等を踏まえ、国民合意の形成を図りながら交渉を行っていく考え。

次期交渉に向けての日本の提案骨子<農業>

次期交渉の目的

  1. 次期交渉の目的は、食料輸入国と輸出国、先進国と開発途上国のいずれにとっても公平で、かつ、真に公正な貿易ルールの確立を図り、各国の農業が共存できるような国際規律とすること。
  2. この場合、

[1]農業の多面的機能の重要性をはじめ、各国の農業政策の円滑な実施、各国の農業の自然的条件、歴史的経緯の違い等への十分な配慮がなされること、

[2]特に、多面的機能としても位置付けられる食料安全保障については、国際的な食料需給の不安定性や、開発途上国の飢餓・栄養不足問題を考慮すれば、国内生産が基本であることに十分な配慮がなされること

[3]輸出国と輸入国の権利義務のバランスを回復することが確保されるべき。

次期交渉の視点

  1. このため、

[1]輸出入国間の権利義務のバランスを回復する観点から、輸出禁止・制限措置、輸出税、輸出補助金、輸出国家貿易等、輸出面に関する規律を強化するとともに、

[2]その他の現行WTO農業協定の規律の枠組みは基本的に維持しつつ、各国が取り組んでいる市場指向的な政策転換の円滑な実施を促進するよう、また、今までの農業協定の実施の経験等を踏まえつつ、見直しを行うべき。

  1. また、開発途上国については、その置かれた状況、ニーズに応じ、協定上の義務の円滑な実施の支援や食料安全保障の達成を含め、特別な配慮が払われるべき。
  2. 更に、遺伝子組換え食品の取扱い等新たな課題については、積極的な取り組みが必要。

次期交渉の場

  1. 農業に関する次期交渉は、国内支持、国境措置、輸出規律等多岐にわたる事項を総合的に取り扱わねばならないこと等、農業が他の分野とは異なる特性を有すること等を踏まえ、独立した農業交渉グループを設立し、国内支持、国境措置及び輸出規律に関する交渉を総合的・効率的に進めるべき。
  2. また、遺伝子組換え食品の取扱い等新たな課題については、現状分析、問題点の洗い出し、現行各協定との関係整理等を多角的に検討するための適切な場が設けられるべき。

お問い合わせ先

大臣官房国際部国際経済課WTO等交渉チーム
ダイヤルイン:03-3502-8057
FAX:03-3591-6765