ホーム > 農林水産大臣年頭所感
明けましておめでとうございます。
平成二十四年の輝かしい新春を迎え、皆様の御健勝をお祈りいたしますとともに、食と農林漁業の再生の推進につき所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。
私は、農林水産大臣を拝命してから一年三か月にわたり、食と農林漁業の再生のために奮闘してまいりました。新年に当たり、任務の重大さを改めて認識し、初心に戻って職務にまい進しようと決意を新たにしているところであります。
昨年は、東日本大震災をはじめ、集中豪雨や台風など多くの災害に見舞われました。災害で亡くなられた皆様の御冥福をお祈りするとともに、被災された方々に改めて心よりお見舞い申し上げます。また、復旧・復興に向けて尽力されている皆様に、心から敬意を表します。これらの災害では、農林水産関係に大きな被害が出ていることから、今後とも、農林水産省を挙げて被災した農林水産業者の皆様への支援に取り組んでまいります。
中でも、東日本大震災からの復興は、最大かつ最優先の課題であります。今回の被災地の多くは農山漁村であり、農林水産省が前面に立って復興に全力を尽くすことが必要です。私自身、積極的に現地に赴き、被災地域の方々との対話に努めてまいりました。また、昨年六月には水産について、八月には農業・農村について、それぞれ復興マスタープランを策定しました。これらに基づき、我が国有数の食料供給基地である東北地域等の復興を一刻も早く成し遂げるため、今年も引き続き全力を挙げてまいります。
農林水産業と農山漁村は、食料の安定供給はもとより、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成といった多面的機能の発揮を通じ、国民の暮らしに重要な役割を担っています。しかしながら、近年、所得の減少、担い手不足の深刻化や高齢化といった大変厳しい状況に直面しており、今や、我が国の食と農林漁業の再生は待ったなしの課題となっています。
一昨年九月の就任以来、私は、「食料・農業・農村基本計画」に基づく農政の三本柱、すなわち、「戸別所得補償制度」、「農山漁村の六次産業化」、「食の安全・安心の確保」を農政の要として、食料自給率五十パーセントの実現を目指し、日夜取り組んでまいりました。
さらに、昨年十月には、「食と農林漁業の再生推進本部」において「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」を決定いたしました。これに基づき、必要な施策を五年間で集中展開し、食と農林漁業の再生を早急に進めていかなければなりません。今年は、その集中展開の一年目となるべき重要な年であり、緊張感を新たに農林水産行政を進めていく考えです。
以下、新たな農林水産行政の主な課題と取組の方針を申し述べます。
第一に、持続可能な力強い農業の実現であります。
「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針」では、新規就農を増やし、将来の日本の農業を支える人材を確保するとともに、現場の方々の主体的な判断を尊重しつつ、平地で二十から三十ヘクタール規模の経営体が大宗を占める構造を目指すこととしています。このため、就農前後の青年就農者に対する給付金の給付や法人雇用就農の促進、農業経営者教育等による新規就農の増大や、戸別所得補償制度により多様な経営体の経営の安定を図った上で、規模拡大加算や農地集積に協力する者への協力金の交付、生産基盤整備を通じたほ場の大区画化等による農地集積の推進などに取り組んでまいります。
第二に、六次産業化等による農山漁村の活性化であります。
農林水産業・農山漁村の再生のためには、地域で新たに産業を創出し、雇用と所得の場を確保するとともに、中山間地域の振興や多様な都市と農村の交流を推進していかなければなりません。このため、地域の多様な「資源」と「産業」とを結びつけ、「農山漁村の六次産業化」を推進するとともに、若者や子どもが農山漁村に定住できる地域社会を構築していくことが、今後の農山漁村の「鍵」になると考えております。
このため、六次産業化法等に基づき、農林漁業者等の取組や人材の育成に対する支援を行ってまいります。また、六次産業化に取り組む農林漁業者等に対して、資本力強化や経営支援を行うため、官民共同で「農林漁業成長産業化ファンド」を創設すべく、必要な制度の構築等に努めてまいります。さらに、革新的な技術の開発から実用化・普及までの一貫した取組を進めてまいります。
また、こうした取組と併せて、昨年十一月の「農林水産物・食品輸出戦略検討会」の提言を踏まえ、我が国農林水産物・食品の輸出戦略を立て直し、一層の輸出の拡大に取り組みます。
さらに、農山漁村には、太陽光、風力、地熱、バイオマス、小水力といった未利用の豊富な資源が存在しています。こうした資源を地域主導で活用することにより、農林漁業の振興と再生可能エネルギーの導入促進とを一体的に取り組んでまいります。
第三に、食の安全と消費者の信頼の確保であります。
農林水産業の発展には消費者からの信頼が不可欠であり、食の安全・安心を求める消費者ニーズに対応した生産・製造・流通体制を整えていくことが必要です。
このため、農林水産省は、国民の健康を守ることを第一に、「後始末より未然防止」の考え方を基本に、リスクを把握するために実態調査を進めるとともに、農場から食卓にわたり科学的根拠に基づき食品の安全性向上のための取組を推進してまいります。また、農薬や飼料等の生産資材の適正な使用の徹底を図るとともに、食品表示の適正化による消費者への的確な情報の提供を行います。
また、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザについては、改正家畜伝染病予防法に基づき、今後の発生防止に万全を期してまいります。
一方で、今回の原子力発電所事故は、我が国の食品の安全・安心に大きな影響を与えたところであり、我が国の農林水産物・食品に対する消費者からの信頼回復や国際的な信認の回復が不可欠となっています。
このため、厚生労働省と連携して農林水産物・食品中の放射性物質の検査体制を強化します。また、肥料や飼料等の生産資材について放射性物質の検査を引き続き行うとともに、生産段階における適切な管理を行ってまいります。
併せて、このような国内での安全確保に係る取組を海外にも発信することにより、国際的な信認の回復にも努めてまいります。
経済連携については、昨年十二月に閣議決定された「日本再生の基本戦略」に基づき、幅広い国々と戦略的かつ多角的に検討を進めてまいります。その際には、情報を国民に提供し、議論をしてもらい、関係者の理解を得ながら進めていくことが重要であると考えております。なお、環太平洋パートナーシップ協定については、交渉参加に向けて関係国との協議に入ることにしたところであり、この協議において更なる情報収集を行ってまいります。
第四に、森林・林業政策であります。
我が国は、国土の三分の二を森林が占める緑豊かな「森林国」であります。戦後、先人の営々たる努力によって造成された約一千万ヘクタールの人工林は、植栽から幾十年もの歳月を経て資源として本格的に利用可能な時期を迎えつつあります。
この豊かな森林と林業の再生を図るべく、「森林・林業再生プラン」及び「森林・林業基本計画」に沿って、現場で使いやすく実効性の高い森林計画制度の定着、「森林管理・環境保全直接支払制度」による支援、低コスト化に向けた路網整備の推進、フォレスター等の人材の育成などの取組を進めてまいります。また、木材加工流通施設の整備、木質バイオマスの利用促進についても、積極的に取り組んでまいります。さらに、公共建築物の木造化、木質化等の地域材の利用拡大に向けても、関係府省と連携しつつ、農林水産省が率先して取り組んでまいります。これらの取組によって、木材自給率五十パーセントの実現を目指します。
また、海岸防災林の復旧・再生や台風等により被災した山地の復旧整備など災害に強い森林作りに取り組みます。
第五は、水産政策であります。
我が国は四方を海に囲まれ、豊かな漁場に恵まれております。我が国の水産業は、健康で豊かな食生活の一翼を担うとともに、地域経済の発展にも大きな役割を果たしています。一方、世界的に水産資源の状況が低迷していることが問題となっています。世界有数の漁業国であり、同時に水産物消費国でもある我が国は、率先して水産資源の管理に努めていかなければなりません。
このため、計画的に資源管理に取り組む漁業者に対する支援策である「資源管理・漁業所得補償対策」を推進するとともに、マグロ等の国際的な管理下にある水産資源について、科学的な知見に基づき、持続的な利用が確保されるよう国際社会をリードしてまいります。
特に、本年は、新たな水産基本計画を策定する重要な年であります。東日本大震災からの復興、水産資源管理の強化、意欲ある漁業者の経営安定、加工・流通の持続的発展と安全な水産物の安定供給の実現など幅広い観点から検討を進めてまいります。
以上、年頭に当たり、今後の政策展開を中心に私の所感の一端を申し述べました。
私は、二十一世紀のキーワードは「水と食料」であると以前より申し上げてまいりました。世界の食料需給がひっ迫基調となる中、食料の多くを海外に依存している我が国は、国を挙げて、将来にわたる国民への食料の安定供給の確保に取り組まなければなりません。私は、副大臣、政務官、そして全国で働いている農林水産省の全職員とともに、食料の安定供給の基盤たる農林水産業の再興と農山漁村の再生に向け、懸命に取り組んでまいります。
本年も国民の皆様の御支援と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
平成二十四年一月
農林水産大臣 鹿野 道彦