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農林水産省

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農林水産大臣年頭所感

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明けましておめでとうございます。
平成三十年の新春を迎え、皆様の御健勝をお祈りいたしますとともに、我が国農林水産業の一層の発展に向けて所感の一端を申し述べ、年頭の御挨拶とさせていただきます。

昨年は、度重なる豪雨や台風など、多くの災害が発生し、農林水産業も大きな被害を受けました。農林水産省といたしましても、被災者の皆様の気持ちに寄り添って、復旧に向けて全力をあげてまいります。

農林水産大臣に就任してから約五ヶ月、大臣の職責に当たる中で、活力ある地域社会の維持や、食料安全保障の観点から、農林水産業の重要性を改めて実感しております。
一方、我が国農林水産業は、今、大きな曲がり角に立っています。今後我が国を襲う人口減少の急進展は、農林水産業にとっては、国内の売り先の減少が急進展することに他なりません。
しかしながら、我が国の農林水産業は、世界市場や国内消費者の多様なニーズを視野に入れて、女性や若者も含め、意欲ある農林漁業者の創意工夫を活かせる改革を進めていけば、伸びしろが大きい産業でもあります。
このピンチとチャンスの併存という現状から抜け出し、農林水産業を活力ある産業へと展開していくため、腰を据えた総合的な政策を強力に推進していく所存です。
昨年十二月には、「農林水産業・地域の活力創造プラン」を改訂し、これまでの農政改革に続き、抜本的な林業改革の内容を固めるとともに、水産業改革の方向性を明確にしました。これを踏まえて、次期通常国会に関連法案を提出するなど、農林水産業を成長産業とし、農林漁業者の所得向上を実現するための改革を展開してまいります。

以下、本年における農林水産行政の主な課題と取組の方針について申し述べます。


【食料・農業・農村政策】
国内の人口は減少する一方、世界では、人口が増加し、富裕層も増え、日本食がブームです。輸出は、我が国の農林水産物・食品の生産拡大につながる一つの有効な手段であります。「農林水産業の輸出力強化戦略」に沿って、HACCPやハラールなど輸出先国が求める食肉処理施設の整備の推進、「JFOODO(ジェイフードー)」によるプロモーションや事業者のサポート等の輸出環境の整備を着実に実施してまいります。
コメ輸出の飛躍的な拡大に向け、昨年九月に「コメ海外市場拡大戦略プロジェクト」を立ち上げました。今後、本プロジェクトにより、輸出事業者と輸出産地のマッチングの推進、輸出ターゲット国を特定した重点的なプロモーションの実施等更なる輸出拡大に向けた取組を進めてまいります。

農業の発展基盤を強化していくためには、農業生産基盤の整備を着実に進めていくことが肝要です。農地中間管理機構の取組を、農業委員会改革と連動した地域の推進体制の強化、基盤整備との連携の強化などを通じて、さらに加速化してまいります。
また、底地を全面コンクリート張りした農業用ハウス等について、農地転用許可を不要とする仕組みや、所有者不明の農地を簡易な手続で、農地中間管理機構にリースできる仕組みを創設します。

これに加え、農業者が自由に経営展開できる環境を整備するためには、農業者の努力では解決できない構造的問題への対処も不可欠です。農業競争力強化支援法に基づき、農業者が一円でも安く生産資材を調達し、一円でも高く農産物を販売できる環境を整備するため、生産資材業界や農産物の流通・加工業界の再編や参入を促進します。
特に、食品流通については、その多様化が進む中、時代の変化に即した流通構造の確立が重要です。
このため、物流の効率化や情報通信技術の導入等により、食品流通全体の合理化を進めるとともに、公正な取引の場である卸売市場については、多様化している流通の実態を踏まえて規制を見直し、各市場の実態に応じた創意工夫を促進いたします。これにより、生産者、消費者双方にとってメリットのある食品流通構造の改革を実現してまいります。

米政策改革については、農業者自らの経営判断により、需要に応じた生産・販売を実現するため、本年産から、米の直接支払交付金や行政による生産数量目標の配分を廃止します。その上で、全国ベースの需給見通しや各都道府県、各地域ごとの作付動向の中間公表等によるきめ細かい情報提供や麦、大豆、飼料用米等の戦略作物に対する支援を引き続き実施してまいります。

我が国農業を取り巻く現下の環境変化に対処していくため、農協が農業者の協同組織であるという原点に立ち返り、農業者の所得向上に全力で取り組むという使命を果たしていくことが重要です。JAグループの自己改革に大いに期待すると同時に、農林水産省として、自己改革の取組状況をフォローアップし、真に農業者のための改革が実現するためには協力を惜しまないつもりです。

中山間地域をはじめとする全国の農山漁村の活性化は重要な課題です。地域資源を最大限に活用し、美しく活力あふれる農山漁村を創り上げる。そのために、収益性の高い農林水産物の生産・販売や六次産業化の展開、都市農村交流や農村への移住・定住の促進など、地域の特色を活かした多様な取組を支援してまいります。
特に、地域の景観、伝統的な食、古民家等を活用した農泊がビジネスとして実施できる体制を構築するとともに、鳥獣被害対策の強化や、安全で良質なジビエの安定供給、需要拡大等に取り組み、農山漁村の所得向上と地域の活性化を実現してまいります。

強い農林水産業の実現には、現場の課題を科学技術の力で克服していくことも不可欠です。
明確な開発目標の下、現場での実装を視野に入れた技術開発、国が中長期的視点で取り組むべき基礎的・先導的な技術開発、研究成果に直接アクセスできる環境の整備を促進します。

また、我が国の農林水産物・食品に対する国内外の需要を取り込むためには、その前提として食の安全と消費者の信頼確保が不可欠です。このため、農薬等の生産資材について安全性の確保や国際的な標準との調和を図るための見直しを行うなど、科学的根拠に基づき食品の安全性を向上させるとともに、正確な情報伝達による消費者の信頼確保に万全を期してまいります。


【経済連携協定への対応】
粘り強い交渉の結果、昨年十一月にはTPPの早期発効に向けた取組の一環として、TPP署名十一か国による協定の大筋合意が確認され、また、昨年十二月には、日EU・EPA交渉が妥結しました。
TPPや日EU・EPA交渉において、農林水産分野については、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割当やセーフガード等の措置を獲得しました。
それでもなお残る農林漁業者の方々の不安や懸念にもしっかり向き合い、合意内容等についての説明を尽くすとともに、安心して再生産に取り組むことができるよう、昨年十一月に改訂した「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、平成二十九年度補正予算案において、必要な予算額を確保しました。引き続き、農林水産業を成長産業とするための体質強化策や協定発効に合わせた経営安定対策の充実など、十分な対策を講じてまいります。


【林業政策】
林業については、戦後造成された人工林を中心に本格的な利用期を迎えている森林資源を有効に活用し、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立していくことが、喫緊の課題です。
このため、適切に森林管理が行われるよう、森林所有者の責務を明確化します。その上で、所有者自らが森林を管理できない場合には、市町村が委託を受け、意欲と能力のある林業経営者に集積・集約化するとともに、経済ベースにのらない森林について市町村が公的な管理を行う「新たな森林管理システム」を構築します。創設が予定されている森林環境税(仮称)も活用し、施策の具体化に取り組んでまいります。また、新システムを構築する地域を中心として、路網整備等の重点化を図るとともに、流通コストの削減や付加価値の高い木材を供給する体制を実現します。


【水産政策】
この三十年間で、世界では水産物の需要が増大し、漁業生産量も二倍に拡大したのに対し、我が国の漁業生産量は半減しました。
このような中、今後の水産政策においては、我が国周辺に広がる世界有数の広大な漁場の潜在力を十分に活用し、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と年齢バランスのとれた漁業就労構造を確立させなければなりません。
このため、国際的にみて遜色のない科学的、効果的な水産資源の評価・管理方法を確立し、水産資源を維持・回復させるとともに、漁業に関する制度を、漁業の生産性の向上を促進し、新規参入がしやすくなる公正なシステムにしていくことが重要です。現場の実態をしっかりと踏まえながら検討を深め、本年夏を目途に、具体的な改革案を取りまとめます。


【東日本大震災からの復興】
昨年、福島、宮城、岩手の各県を訪問し、農林水産業が東日本大震災からの復興に果たす役割の大きさを再認識いたしました。津波・原子力災害からの農林水産業の再開支援、福島県産農林水産物の生産から流通・販売に至るまでの総合的な風評対策等、単なる復旧にとどまらない、東北の未来を見据えた復興に、引き続き、全力で取り組んでまいります。


以上、年頭に当たり、今後の政策展開を中心に、私の所感の一端を申し述べました。
農林水産業の持続的な発展と農林漁業者の皆様の所得向上を実現し、そのことを通じて、自給率を向上させ、国民の皆様の豊かな食生活を守る。この使命感を持ち、農林水産業が大きく飛躍する一年にしたいと思います。
農林水産行政に対する皆様の御支援と御協力を賜りますよう、本年もよろしくお願い申し上げます。



平成三十年一月

農林水産大臣 齋藤 健