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農林水産省

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八郎潟干拓「挑戦と変革の物語」のヤンセン

オランダ国

1902年(明治35年)~1982年(昭和57年)

生い立ち

ピーター・フィリップス・ヤンセンは、明治35年、オランダ国ドルドレヒト市に生まれる。昭和21年水利省主任技師等を経てデルフト工業大学水力工学科教授に就任。さらにデルタ計画の指導者を兼ねるとともにNEDECO(オランダ技術コンサルタント)および世界銀行顧問として国際的な活躍を展開する。特に八郎潟については同29年、現地を視察して干拓計画の概要とその有利性を説いた「日本の干拓についての所見」を政府に提言し、さらに数次にわたる来日指導によって事業の進展に貢献した功績は大きい。昭和57年逝去。80歳。

ヤンセン

ピーター・フィリップス・ヤンセン

地区概要

干拓面積

八郎潟の面積22,024haに対して干拓面積は、次のとおりである。

  • 中央干拓地:15,666ha(大潟村の面積に同じ)
  • 周辺干拓地:1,573ha
  • 合計:17,239ha

中央干拓地は延長約52kmの堤防で囲まれ、地区内の排水は、南北に貫かれた中央幹線排水路およびその末端に設けられた南部排水機場と北部排水機場で行われる。

調整池など

干拓地以外の八郎潟の残余の水面は、調整池、東部承水路、西部承水路となっている。防潮水門によって日本海の水が入らないようにし、淡水化をはかり、農業用水として使用している。また、日本海への水の流れを円滑にするために、それまでに蛇行していた流れを直線的にした。

入植・増反戸数

入植戸数:589戸(大潟村に入植した農家数)

増反戸数:4,450戸(周辺町村で水田が増えた農家数)

入植者の募集は昭和41年から48年の間、5次に分かれて行われた。また、周辺干拓地は、西部・東部・南部・北部の四地区に分けられ、さらに21区分され、それぞれ周辺農家の増反地とした。

 

工事着工前の八郎(S32.9)

工事着工前の八郎(S32.9)

圃場(田んぼ)、集落について

新農村(大潟村)の圃場については、60haを標準とした農業機械利用の合理的な営農作業が行うことができるものとした。また、集落整備については、入植者の生活環境整備に重点を置いた農家住宅と各種施設の建設を行った。

総事業費

国営干拓事業費:543億円

事業団事業費:309億円

合計:852億円

建設工事期間

国営干拓事業:昭和32年度~51年度

事業団事業:昭和40年度~51年度

ヤンセンの実績

1957年、北欧を襲った暴風雨で干拓の国オランダは、北海に面した堤防が決壊し、広大な干拓地に荒波がうずまき、数百人の犠牲者を出した。干拓王国を世界に誇るオランダが、大自然の驚異の前にはひとたまりもなく敗北した。しかし、この事件以来、オランダの干拓堤防はすべて“千年の確率”をめざしてどんな防風雨、荒波にも耐えられる設計が施されるようになった。ネデコ(オランダ対外技術援助機関)もこの点を強調し、八郎潟はその規模からみてもオランダと同様「 “千年の大計”をもとに安全度が必要である。」とはっきり言っている。この堤防の安全度はいくら背のびして考えても及ばない点であった。

では、日本の技術者は、干拓技術でオランダから具体的にどんな点を学んだのか。それは、

  1. 計画の基礎になる潮位、雨量などのデータは、“超過確率”という過去の記録をはるかに上回る値を目安にする(日本では、「過去の最大とか、第二位」などの記録を採用していた)。
  2. 「まあ、この程度でよかろう」などという妥協は決してせず、徹底した調査結果をもとに科学的に優劣を決める。
  3. 調査は着工以前も、実施中も、完成後も続ける。
  4. 工事は全部機械で行ない、短期間に完成させる。

などであった。しかし、八郎潟干拓の最大の難工事であった軟弱地盤の上に堤防を築く方法については、日本は初め堤防の下の柔らかい泥土の流動を防ぐための盛土をして、その上に堤防を乗せる工法を考えていたが「それでは吹けば飛ぶように不安定だ」と、オランダ側は、堤防の下5m位までの泥土を全部取り除き、どっしり重みのある砂と置き替え、2mほどの砂床の上に盛土する「サンドベッド工法」という独自の工法を提案した。このほか堤防の構造や排水方法など、オランダの優れた技術が数多く折り込まれた。

八郎潟干拓地(S44.6)

八郎潟干拓地(S44.6)

現在の干拓地

基幹土地改良施設のうち、防潮水門、南部および北部排水機場が日本海中部地震の影響により著しい機能低下を来しているため、施設の機能回復を行い、農地災害を未然に防止し、農業生産の維持、農業経営の安定および国土保全を図るため、国営男鹿東部農地防災事業(八郎潟)が平成8年度から行われ、平成19年度に完了している。

現在の八郎潟

現在の八郎潟

おわりに

平成19年度から始まった「農地・水・環境保全向上対策」(平成26年度からは「多面的機能支払交付金」)の活動の一環として、水質保全に係る取り組みが実施されている。

また、八郎湖が全国11番目の指定湖沼に指定されるとともに、周辺九市町村が指定地域に指定された。今後はさらに水質保全対策に向けた取り組みが加速するものと期待される。

 

参考文献

大潟村干拓博物館

八郎潟(18)~秋田魁新聞

国営男鹿東部農地防災事業概要図

交通アクセス

秋田道自動車昭和男鹿半島インターI.Cから車で国道101線方面天王・男鹿方面へ25分

 

本記事は、「農村振興第701号」(全国農村振興技術連盟)に掲載された「秋田県 三浦新七 氏」の記事を転載したものである。

 

担当

秋田県 農林水産部 農地整備課 調整・企画班
TEL:018-860-1828
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お問合せ先

農村振興局整備部設計課

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