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農林水産省

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家畜代謝・残留試験の導入

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平成26年7月14日更新

担当:消費・安全局農産安全管理課農薬対策室

はじめに

  これまで我が国では、飼料の多くを輸入に依存し、国内における飼料の生産量が少なかったため、飼料作物及び副産物が飼料に使用される作物(以下「飼料作物等」という。)に使用できる農薬の登録にあたって、農薬の畜産物への残留を十分に評価する仕組みがありませんでした。その結果、国内で飼料作物等に使用できる農薬は限られていました。
  近年、食料自給率を向上させるとともに、海外での飼料の生産不振に対応するため、飼料作物の生産振興が進められており、国内で飼料作物等の増産が見込まれています。そこで、農林水産省は平成26年5月、農薬の登録申請時に家畜代謝試験(家畜の体内で農薬がどのように変化するかを調べる試験)や家畜残留試験(乳や肉、卵等の畜産物に農薬がどの程度残留するかを調べる試験)のデータを求め、そのデータを用いて、畜産物を経由した農薬の摂取が消費者の健康に悪影響を及ぼさないことを確認して、その農薬を国内で飼料作物等に使用できるようにする仕組みを導入しました。

農薬の畜産物への残留を評価する仕組み

  我が国において、農薬の畜産物への残留を評価し、畜産物の安全を確保するための仕組みには、以下の2つがあります。このたび変更したのは、2つ目の仕組みです。

  1. 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(飼料安全法)に基づく飼料の残留農薬基準値の設定
      農林水産省は、主に輸入飼料を給与された家畜由来の畜産物の安全を確保するため、飼料安全法に基づき、国産及び輸入飼料中の残留農薬基準値を定めて規制してきました。
      飼料の残留農薬基準値を設定する際には、その農薬が飼料を通じてどの程度畜産物(乳や肉、卵等)に残留するか評価し、その畜産物を食べた消費者の健康に影響を及ぼすおそれがないことを確認しています。もし、消費者の健康に影響を及ぼすおそれがある場合には、飼料の残留農薬基準値を見直したり、飼料としての使用を制限するなどの措置をとっています。
      このたびは、飼料安全法に基づく飼料の残留農薬基準値設定等の規制についての変更はありません。
  2. 農薬取締法に基づく農薬登録にあたっての評価
      農林水産省は、これまで、国内で飼料作物や稲に使用できる農薬の登録にあたって、作物残留試験の結果から飼料作物や稲わらに一定濃度以上残留する場合に、乳への移行試験(畜産物の代表として乳に移行するかを調べる試験)のデータを求めてきました。そのデータから、乳に移行するような農薬は、登録を認めないか、もしくは、その農薬を使用した稲からできた稲わらを家畜に与えないよう指導していました。この仕組みでは、農薬が乳に残留するかどうかだけで使用の可否を判断していました。乳や肉、卵等それぞれの畜産物に農薬がどの程度残留するかを推定して畜産物を経由した農薬の摂取が消費者の健康に悪影響を及ぼさないことを確認する仕組みにはなっていませんでした。
      このたび、農林水産省は、新たに家畜代謝試験及び家畜残留試験のデータの提出を求めることとし、それぞれの試験の詳細を定めたガイドラインを作成しました。これらの試験のデータを用いて乳や肉、卵等それぞれの畜産物への農薬の残留量を推定し、消費者の健康に影響を及ぼさない場合は、その農薬を国内で飼料作物等に使用できるようになります。
      なお、副産物が飼料に使用される作物(例えば、稲は稲わらが飼料として利用されます)についても、飼料作物と同様に農薬の畜産物への残留を評価する仕組みにします。

家畜代謝試験・残留試験の概要 

  1. 家畜代謝試験
      飼料作物等における農薬の作物残留試験の結果、残留が認められた場合に、家畜代謝試験を実施します。放射性同位元素で標識した農薬の有効成分等を家畜に投与し、その農薬が家畜の体内のどの部分に移行し、どのような化合物に変化するかを調べます。
      家畜代謝試験の結果、畜産物(乳や肉、卵等)に農薬の有効成分やその主要な代謝物(家畜の体内で変化した化合物)が残留する可能性がある場合には、家畜残留試験で残留濃度を詳しく調べることになります。
  2. 家畜残留試験
      農薬の有効成分等を家畜に投与し、農薬の有効成分やその主要な代謝物が肉や卵等の畜産物にどの程度残留するかを調べます。
      家畜残留試験の結果と飼料作物等における農薬の作物残留試験の結果(飼料作物等にその農薬がどの程度残留するか)から、その農薬を家畜がどの程度摂取し、それによって農薬の有効成分やその主要な代謝物が畜産物にどの程度残留するかが推定できます。その濃度から、人が畜産物を介して農薬の有効成分やその主要な代謝物をどの程度摂取するかを推定して、消費者の健康に影響を及ぼすかどうかを評価します。消費者の健康に影響を及ぼすおそれがない場合のみ、飼料作物等にその農薬を定められた方法で使用することが認められ、肉や卵等それぞれの畜産物に残留農薬基準値が設定されます(注)。

(注) 畜産物の残留農薬基準値の検討・設定や、畜産物を介した農薬の有効成分等の摂取量の推定は、食品衛生法に基づき厚生労働省が行います。

  なお、新たに導入する家畜代謝試験及び家畜残留試験はGLP(Good Laboratory Practice:優良試験所規範)の適用対象としますので、データの信頼性を確保できる試験施設でのみ実施できます。

今後の運用

  1. 通知発出日(平成26年5月15日)の3年後以降の登録申請に対して、家畜代謝試験及び家畜残留試験のデータを要求します。ただし、通知発出日から3年以内でも、これらの試験のデータを提出できます。
  2. 既に登録された農薬や通知発出日から3年以内に申請される新しい農薬についても、順次、家畜代謝試験及び家畜残留試験のデータの提出を求め、畜産物への農薬の残留を評価します。データの提出期限は、通知発出日の6年後又は個別の農薬ごとに定めます(注)。
  3. GLPについては、通知発出日の6箇月後以降に開始する家畜代謝試験及び家畜残留試験に適用します。

(注) 個別の農薬ごとに通知した提出期限はこちら(PDF : 76KB)です。

関係通知

お問合せ先

消費・安全局農産安全管理課農薬対策室

代表:03-3502-8111(内線4503)
ダイヤルイン:03-3502-5969
FAX:03-3501-3774

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