ホーム > 報道・広報 > 2010年aff(あふ)2月号 > 07年4月号目次 > 旬のインタビュー 第1回
| 季節の“食”をテーマにしたエッセー「おいしい庭」を5月に出版する、脚本家・作家の筒井ともみさんに、 人間の心と体と食べ物の関係について伺いました。 |
![]() Profile つつい・ともみ
1948年、東京世田谷生まれ。成城大学卒業後、スタジオミュージシャン(ヴァイオリン)を経て、脚本家に。主な作品にテレビドラマ「センセイの鞄」、映画「それから」「失楽園」「阿修羅のごとく」など。最近は脚本だけでなく、小説、エッセーなどでも活躍。今年4月から、東京藝術大学大学院映像研究科で脚本ゼミを担当。 新作「おいしい庭」は、光文社から5月18日発売。 ![]() 食べることと同様に着ることにもこだわる筒井さん。「これからヴァーチャルでなくフィジカルなものが注目されるエレガントな時代が来ると思う」という。 |
子どものころからおいしいものが大好きで、インスタント食品はほとんど口にしたことがないという筒井さん。自宅には産地直送の農産物を取り寄せ、土鍋でごはんを炊き、ぬか床をかきまぜ、季節に合わせたおかずを日々作る。 5月に発売されるエッセー『おいしい庭』はそんな筒井さんの食に関するこだわりや思い出が月ごとに描かれており、食材や料理の様子がリアルに想像できて、読むだけでおなかが空いてくる。ある意味で、お洒落な大人のための“食育本”というような内容だ。 筒井さんは「いま、自分が何を食べたらいいのか分からない人が増えてるでしょ。人の心と体がちゃんとしているためには、何を食べるか、何を着るか、どんな人と結びつくか、どんな世界に生きることを望むのかを、きちんと考え、自分の心と体で判断することが大切」という。中でも食べることは「細胞の中に(食べ物を)取り入れることなのだから」とこだわりを持っている。 こうした「細胞感覚」を持つようになったのは、子どものころに体が弱く、自身の体調に注意することが多かったためだという。「自分が透明な器のように思える。何が入ってきてどんな風に映るのかを感じるようにしている」という筒井さんにとっては、食べることも着ることも、自分の内面を見つめることにつながっているようだ。 しかし、自ら食材を作ることには興味がないという。そのかわり、筒井さんが感じる「おいしさ」の重要な要素が、食材を作る人、売る人への信頼。『おいしい庭』にも「私は都市生活者だから、農業を手伝うことはできない。(中略)私は字を書くという自分の仕事でお金を得て、そのお金でちゃんと作られた食材を買わせてもらう。それを食べてエネルギーをもらって、また自分の仕事に向かう。互いが互いを補い合って、ゆったりとした循環が続いていく」と書かれている。 「いい農業には時間も手間もかかるもの。キュウリが1本いくらで安い! なんて言っていないで、消費者は作っている人の努力に対して、もっと価値を認めてお金をかけてもいいはず。価格が多少高くても、自分の体に入るものなんだから。(食材を提供する人を)素直に信頼できる関係にならないと」と筒井さん。 筒井さんは昨年、島根県にある普段から愛飲している牛乳の生産者の牧場を訪ねた。ドラマの取材で立ち寄ることになったのだという。「奥出雲にある木次牧場というところです。日本で初めて低温殺菌を提唱したその牛乳を、私は日本一おいしいと思っているんだけど、ゴム長にジャンパーというスタイルで現れた牧場主の木次さんが、本当に牛そっくりで……。おいしい牛乳をつくる人は牛に似てくるのかと妙に納得してしまった」と笑う。 「いま、日本で世界的に認められるような才能のある人は、コミックやファッションや音楽に集まっていて、なかなか私と同じシナリオの分野には来てくれない。それでも、ひとつのサクセスストーリー、夢物語が生まれれば、人材が集まってくるはず。農業でも同じこと。私は農業政策には詳しくないけれど、お上に頼ってばかりではだめ。もちろん、政策をきちんとしてもらうことも大切だけど、農業をやるなら、自分の五感や細胞を頼りに、星の動きや地質を調べたりして、新しいものを生み出してみてほしい。農業の分野でもそういう成功例みたいなものが出てくればいいと思う。この国の未来のために農業が素敵な仕事になってほしい」。 |