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旬のインタビュー 第7回

食文化研究家  魚柄 仁之助さん
お宅の冷蔵庫何が入ってますか?

『冷蔵庫で食品を腐らす日本人』を出版した魚柄さんに現代ニッポンの食生活について聞きました。
染瀬直人= 写真
食文化研究家 魚柄 仁之助さん
Profile うおつか・じんのすけ
食文化研究家。1956年、福岡県北九州市生まれ。大学で農業を学び、その後バイク店を18カ月間、古道具店を10年間経営。以後、健康的で無駄のない食生活を提言し続ける。著書に『うおつか流大人の食育』『うおつか流台所リストラ術 ひとりひとつき9000円』など多数。コミック『おかわり飯蔵』(原作)は、ドラマ・DVD化された。

「僕は長年、『食日記』をつけてます。食材のムダがわかるだけでなく、健康管理にもなりますよ」
「僕は長年、『食日記』をつけてます。食材のムダがわかるだけでなく、健康管理にもなりますよ」
『冷蔵庫で食品を腐らす日本人』……誰もが胸の奥をチクリと突かれるようなタイトルの書籍が、いま話題を呼んでいる。著者は魚柄仁之助さん。『うおつか流台所リストラ術』『うおつか流大人の食育』などの著書で知られる食生活研究家だ。

魚柄さんが長年にわたって提唱しているのが「健康的で無駄のない食生活」。本書でも、冷蔵庫の扉を入口に、食文化から食料自給率、地球環境問題までを舌鋒(ぜっぽう)鋭く論じている。

「冷蔵庫と向き合ってみると、日本人の食生活の激変ぶりがよくわかってくる。食材の質的変化、嗜好の変化、流通の変化、環境や健康に関する意識の変化……冷蔵庫って、実に多くのことを考えさせてくれる生活道具なんです」

そして言う。いまや家庭の冷蔵庫は食品の墓場と化している、と。不要な買いだめや食の浪費など、現代ニッポンの「飽食」は、冷蔵庫の巨大化によってもたらされたのだと。

「24時間、365日、同じ食品が変わらず店頭に並んでいる……このことを異常だと思わない感覚こそが問題なんです。キャベツが出来すぎてトラクターでつぶしている畑のようすをテレビで見て『なんてもったいない!』と感じる人は大勢いる。でも、テレビを見終わってスーパーへ行けば、いつものように冷蔵庫の肥やしを大量に買い込んでくるというのが、現代日本人の“普通の感覚”です。仮に、家庭菜園で野菜を育てていたらどうですか。ある作物がいっぱい採れたときには、調理法を工夫して何日でも食べるでしょう。不足しているときには別の食物を食べればいい……これを“貧しい”と思う感覚はいびつだと思うんです。いま“ワーキングプア”って呼ばれてる連中がいるでしょ。彼らの中でも、僕が提唱する食生活を実践しているというヤツが多いんですが、どうやら彼らも、コンビニに行けばいつでも何でも食べられる、ということの方がいびつだと気づいたようなんです。皆さんは知らないでしょうが、ヤツら、お金をかけずにけっこう安全でいいもの食べてますよ(笑)」

魚柄宅の台所をのぞかせてもらった。狭いながらも必要最小限の道具が整然と並び、揃いのガラス瓶に入ったお手製の乾物たちが整列している。

「台所はコックピット。機能的であることが大切で、広さは必要ないんです」

小ぶりの冷蔵庫を開ければ、中には日本酒の5合瓶が2本と、保存用に調理された食品の密閉容器がいくつか入っているのみ。

「残ってしまった魚の切り身は、冷凍庫に入れると味が落ちます。でも酒粕や味噌に漬けておけば、料亭の味に変身する。余ったダイコンも野菜室に入れるのではなく、切った後2〜3日天日干しにしてからしょうゆ漬けにすると、保存性も味もバツグンです」

冷蔵庫について考えてみることで、冷蔵庫が普及する以前の、日本人の食に対する姿勢や知恵が見えてくる。そして魚柄さんは、現代の日本人に「幸せな食生活」とは何かを問いかける。

「ここ数十年で『ごちそう』って圧倒的に少なくなったでしょ。僕らが子どもの頃は、年に1度か2度、家族揃っての外食が“お祭り”だったし、そこで食べたハンバーグは、その後何十年も記憶に残るほどの“ごちそう”だった。持続可能な食環境って、何も難しいことじゃない。“ささやかな幸福感を知る”ってことだと思うんです」

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