【MAFF REPORT】 生産者も行政も農業への思いは同じです
農村派遣研修リポート 4
福岡県うきは市 上村(うえむら)正勝さん 研修生 三浦友聡(生産局種苗課)
農林水産省では、若手職員を全国の先進的な取り組みをしている生産者のもとに派遣、約1か月間ホームステイをしながら仕事を体験する、農村派遣研修制度を行っています。日本の農林水産業の未来を担う、若者たちの活動をリポートします。
初めての農作業で筋肉痛
農作業の経験が全く初めてという三浦研修生を迎えてくれたのは、福岡県うきは市でブドウと柿を生産する果樹農家、上村正勝さんと後継者の勝彦さん。到着した10月中旬は、柿の収穫がスタートする1年で最も忙しい時期だった。これまでも学生や、海外からの研修生などを何人も受け入れてきた上村さんが、まず三浦研修生に注意したのは「ケガをしないように」ということだったという。研修生が参加する柿の収穫は、急な斜面に大きな脚立を立てて、高いところでは約4メートルの場所にある実を切り取っていく作業。プロの農家でも落下してケガをすることもあり、まず安全を心がけることが大切なのだという。
「消費者が商品価値を感じる、付加価値の高い農作物の生産現場が見たい。生産者の努力がそのまま農作物に反映され商品になるのは果物」だと考え、果樹農家での研修を希望したという三浦研修生だが、研修初日に「農業は大変な仕事だ」と痛感。早朝から、山の果樹園に出かけ、収穫した柿を運ぶため舗装されていない山道を何度も往復して、まずは体で憶えさせられたという。

選果作業中の上村さん(右)の元へ、カゴいっぱいに収穫した柿を届ける三浦研修生(左)
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両肩に柿を担いで、果樹園の坂道を下る三浦研修生。研修開始当時は、斜面の上り下りで筋肉痛になったこともあるという
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「農業は若者向き」という茶髪の後継者
果樹園での作業で、柿のとり方を指導したのは、上村さんの長男で後継者の勝彦さん。勝彦さんは当初「東京から東大出身の役所の人が来る」と聞いて、どう接したらよいか分からないと悩んだという。うきはに訪れた三浦研修生が、黒髪にメガネと予想通り真面目そうな雰囲気で「話が通じるのだろうか」と心配になったが、作業の段取りなどを説明していくうちに「農業を支えていきたいという思いは一緒だと分かって安心した。こっちの話を聞いて、一生懸命やろうとしてくれるし。やっている仕事は違っても、見ている方向は同じだという気がした。まあ、ずっと堅い感じなのは変わらないですが」と笑う。
いかにも真面目そうな研修生に対して、勝彦さんは、茶髪にピアスと今どきの若者風。それでも、子どものころから迷うことなく就農を決めていたという。「農家の仕事は昔っぽくて体力的にも大変そうと思われがちですが、今はテレビもパソコンもあって、都会の人と変わらない情報に接することができるし、会社勤めで組織に縛られることもなく、自分の時間を自由に使うこともできる。1年で一番忙しい収穫の時期はどうしようもないけど、収穫後の剪定(せんてい)などの仕事は、終わらせて休みをとって遊びに行きたいと思えば、早くはかどります。最近の若者が会社の上司と合わなくてすぐに辞めるなんてよく聞きますが、農業では上司ともめることなんてないですから。農業は実は今どきの若者向きの仕事なんじゃないかな」と話す。

研修生に柿のとり方を教える後継者の勝彦さん
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軽い素材を使ったカゴも、柿がたくさん入ると重さは約10キロに
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生産者の生の声を聞いて
地域の果樹農家では、勝彦さんと同世代の後継者が多く、交流も活発だという。
「若い人が多いから、同世代で柿の研究会を作って、道具や機械の導入についてや、消毒、病気への対策などの情報交換をしています。いま使ってるこのハサミも、長く使っても疲れなくてものすごく使いやすい。1日中使い続ける道具だから、道具選びにはこだわります。高所作業用の昇降機も、自分で工夫して改良してみたり。同世代の連中が集まるから、仕事の話は途中までで、後は普通の飲み会になりますけどね」と笑う。
後継者たちの会合に一緒に参加した研修生も「みんなパワフルで面白かったです」というが、何よりも驚いたのは、九州男児たちの飲みっぷりだったとか。
そんな研修生に対して、上村さんは「最初に話をしてみて、農業の現場のこともよく勉強していると思ったが、霞が関の農林水産省の中で調べても感じられないこともある。一緒に働いてみて、酒を飲んでみて、初めて分かることがあったのでは」と話す。
研修生も「研修に来るまでは、生産現場を報告書などに書かれた数字の羅列としてとらえていたような気がしますが、ここに来て、生産者の姿が見えるようになってきました。農業をとりまく厳しい現状の中で、行政がどう支えていくべきなのか正面から考えていきたい」と決意を語っていた。
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(左)高さ4メートルにも達する柿の収穫などに使う昇降機は、勝彦さん専用
(上)枝から切り離した後で、ヘタをきれいに切りそろえる。1日中使うハサミ選びにもこだわりがある
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