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![]() Profile やまもと・けんじ
1971年愛媛県生まれ。1997年慶應義塾大学院政策メディア研究科修士課程卒業。株式会社野村総合研究所を経て、2000年ワイズシステム株式会社入社、産地の商品企画・開発、マーケティング・コンサルティングを実施。04年5月株式会社グットテーブルズ設立、代表取締役就任。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」は単行本化されるなどの人気。主な著書に「実践 農産物トレーサビリティ──流通システムの『安心』の作り方」。 |
戦後の物のない時代、「食べられる」ことだけで満足できた日本人は、高度成長期、さらにバブル経済期を経て、物質を得るだけでは満足できず、多用な選択肢を求め、その中から自分に合った物を選ぶように変化した。欲望が細分化したといえる。バブルが崩壊し、財布のひもは堅くなったが、細分化した欲望はそのまま残っている。いま日本の消費者が求める食品は「おいしい」「新鮮」「安全」「安い」などと非常にわがままなものだ。 この消費者のわがままに応えるため、加工食品メーカーや外食産業は外国産の食材を使って価格を下げてきた。500円ワンコインで肉を食べて満腹になることができるのは、おかしいことではないか。大手スーパーは新規出店競争とともに安値争いを続けている。その結果、国内の農業生産者たちや、国産食材を使用する企業が危機に陥っている。 また、家庭で料理をしない人が増えている昨今、スーパーでも惣菜の売れ行きが良くなっているという。惣菜など加工に使用する農産物は、B品、C品であり、当然生食用のA品よりは価格が下がる。生産者側から見れば、最も品質が良く高値の商品が売れないということになる。惣菜に頼る食生活も、農産物の価格低下を招いているのだ。 食品偽装問題にしても、低価格により正常な利益が得られず、不正に走らざるを得なかったとの見方もできる。しかし、問題の続発で消費者保護の流れが加速すれば、“安全”を担保するために、ますます生産コストは高くなり、企業の負担はさらに大きくなる。それでも消費者側が「価格は据え置きで」というのは許されるのか。食品全体の価格が現在の約2倍となるぐらいが適正な価格といえるのではないだろうか。 原油高による穀物高の影響で、最近、食品の価格が値上げされるケースが増えてきた。これは食品の価格に対する認識を変えるひとつのチャンスだと考えている。すでにEU圏内の穀物高の影響で、外食や加工食品の価格が上がっているイタリアでは、家庭で自炊する人が増えてきているそうだ。日本でも、食品の価格が上昇すれば、多くの人が早く家に帰って料理をするという習慣を取り戻せるかもしれない。材料を選べない加工食品と違い、自分で食材を選ぶとなれば、国産のものを選択する人も増え、生産者に還元され、自給率の改善にもつながるだろう。 農業の後継者不足は、生産コストに収入が見合わず、「業(なりわい)」として成り立たないことが最大の原因だ。農業は国の根幹を支える大切な産業。これを守っていくためには、消費者の利便性を多少損ねるぐらいの勇気が必要だろう。まずは、安すぎる食べ物の価格を適正に上げることから始めたい。 |