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特集2 体も心も温まる ふるさと鍋紀行(1)-1/2-


ふんわりと立ち上る湯気とともに、郷愁をかきたてられる香りが広がる鍋料理。
冬野菜や魚介類などの旨みが染み出したつゆをすすれば、なぜか頑固親父の顔もほころび、体も心もほかほかに。
その味わいに幸福感がこみ上げる、日本の郷土料理です。
あらかじめ具材を鍋の中に寄せて盛り込むことから、名付けられた「寄せ鍋」。だし汁を注いで火にかけると香りが立ち上る。(調理/コーディネイト・稲垣知子)
あらかじめ具材を鍋の中に寄せて盛り込むことから、名付けられた「寄せ鍋」。だし汁を注いで火にかけると香りが立ち上る。(調理/コーディネイト・稲垣知子)

「鍋料理の魅力は“心の温もり” が感じられること」と語る柳原さん。(東京・赤坂の柳原料理教室で)
「鍋料理の魅力は“心の温もり” が感じられること」と語る柳原さん。(東京・赤坂の柳原料理教室で)
「水の国」だからこそ各地で発達をとげた、郷土色豊かな鍋もの

鍋は、ふるさとの味。ほっこりと炊かれた大根や、甘くとろけるネギ、新鮮な魚や貝など材料は地方によってさまざまなれど、その味わいは私たち日本人の心を強くとらえてきました。そんな鍋料理が育まれてきた背景について、江戸懐石近茶流(きんさりゅう)宗家の柳原一成さんはこう語ります。

「日本の冬の郷土料理を数えてみれば、9割近くが鍋料理です。おでん、すきやきなど代表的なものばかりではなく、その地方ならではの鍋料理が全国に伝えられています。これほどさまざまな鍋料理が食べられている国は、世界でもまれ。日本がこのような鍋大国となった最大の理由は、“いい水”に恵まれていたからです。もしもヨーロッパや中国がよい水に恵まれていたら、もっとバリエーション豊かな鍋料理が発達したのではないでしょうか」

やわらかく、清らかな水は、昆布やかつお節のだしをとるのにも最適。湯豆腐やちり鍋など水を主として前面にとり入れた鍋が発達したのもよい水があったからです。

「日本料理のルーツは煮る、炊く。つまり“水”が基本です。飛鳥時代以前、すでに中国から仏教の教えとともに油が伝えられていたとされますが、日本はあまりにも水がよかったために、油を使う料理はお寺の精進料理にとどまり、一般に広がりませんでした。そのため、戦後に油が大量消費されるようになるまで、日本の川はとてもきれいでした」

さらに、鍋料理の発達に大きな影響をもたらしたのが、醤油の登場。鎌倉時代、紀州の湯浅地方(和歌山県湯浅町)で発祥したと伝えられる醤油が、江戸時代になって庶民の生活に入り込むと、味に音階が生まれ、鍋文化はさまざまな表情になり、各地で花開きました。

柳原式鍋もの分類図
水煮科
だし汁は使わず真水で炊き、具から出るだしを楽しむ。味付けは、各人が好みの薬味や調味料でいただく。
煮汁鍋科
醤油や味噌などで味付けしただし汁を使う。全国8~9割の鍋料理がこの分類に当てはまる。
すき鍋科
土鍋ではなく鉄鍋を使い、濃い味に作った割り下や味噌だれで煮る。

本吉恭子=取材・文
加藤タケ美=写真

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