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| もっと気軽にフランス料理を楽しんでほしい…三ツ星シェフでありながら、シンプルなフランス料理を提唱するマルタンさんに、日本とフランスの食文化について聞きました。 |
![]() ![]() Profile ダニエル・マルタン
1952年、フランス・オーベルニュ地方生まれ。15歳から本格的に料理を学び、フランス各地で腕を磨く。83年、パリの「ホテルリッツ」の副料理長を経て87年に銀座「マキシム・ド・パリ」の総料理長として来日。91年には「ル・コルドンブルー東京校」の校長にして主任教授に。「フランス料理をもっと気軽に楽しんでもらいたい」との思いから、三ツ星シェフでありながら、「シンプルなフランス料理」を提唱。 ![]() フライパン1本でできるお手軽フレンチ
(サンマーク出版) |
「銀座マキシム・ド・パリの総料理長として来日したのが87年。若かった私は、ちょうど『インターナショナルな視点を身につけたい』と意気込んでいたところでした。1年で戻ってくればいい…最初は、そんな軽い気持ちで日本の土を踏んだんです」 そんなマルタンさんが、その後20年以上の長きにわたって日本に滞在することになったのは、なぜなのか? 「まず、日本人との仕事はやりやすいと感じたんです。食に対する感性の繊細さに共感できるものがありました。それと、日本の魚がすばらしいこと。世界中を見渡しても、これほど多様な魚が集まる国はありません。日本の市場は、世界で最も水準が高いのではないでしょうか。そして、日本のどこに行っても高い鮮度が保たれていることには感動すら覚えます。日本人は日本の食材や食文化に、もっと自信を持っていいと思います」 実は、フランス料理界においてダニエル・マルタンの名を不動のものにしたのが、ほかならぬこの「魚」である。当時のフランスでは、日本の刺身のように生の魚を料理として供する習慣はなかった。しかし… 「私が生魚をマリネにして出したところ、お客たちが口々に『おいしい』と言ってくれたのです。一方で私はマスコミの間で『あいつは頭がおかしい』と言われていましたが、今やパリでは、日本のスシやサシミを食べるために、人々が長い行列をつくっていますよ」 いま、日本の食料自給率は39%。対してフランスは122%と、欧州各国の中でも最高レベルの自給率を誇る。日本とフランス両国の食文化を知るマルタンさんの目に、この差はどう映っているのだろうか? 「食材に限った話ではありませんが、日本人はブランド好きですね。○○産の○○とか…フランス人もブランド食材を珍重しますが、そういう食材はレストランで食べるもので、日常の食卓にはマルシェ(市場)で買った地元の食材が並ぶのが普通です。それに、多くのフランス人にとってレストランで食事をするのは特別なとき。家族の誕生日とか、何かの記念日とかね。それ以外の日は、母親が作った料理を家族みんなで食べることが幸せなんです。日本のように日常的に外食をしたり、でき合いの料理を買ってきて食べるという習慣も、あまりありません」 私たち日本人は、食生活における“ハレ”と“ケ”の区別を、いつごろからなくしてしまったのだろう。マルタンさんは家庭で、手ごろな食材で、おいしい料理を楽しむ幸福をかみしめてほしい、と、遠く日本の地で手軽でシンプルなフランス料理を提唱し続けている。 そんなマルタンさんの“おふくろの味”とは? 「モツの煮込み料理かな。陶器の鍋に材料を入れて、24時間コトコトと煮込むんです。といっても、家で煮込むワケじゃない。土曜日の朝に馴染みのパン屋さんに頼んで、パンを焼く窯の片隅に鍋を入れておいてもらう。そして翌日パンを買いに行くときに、その鍋を受け取ってくるんです。で、煮込み料理と焼きたてのパンを一緒に食べる…これが、日曜の朝のお楽しみでした」 今年6月に著書『フライパン1本でできるお手軽フレンチ』を上梓した。 「おいしい料理を家族で楽しむ機会が増えれば、きっと食料自給率も上がります。特に日本の魚は『世界一贅沢な食材』。もっとおいしく味わいましょう」 |