ホーム > 報道・広報 > 2012年aff(あふ)5月号 > aff(あふ)バックナンバー > 08年8月号目次 > にっぽんの伝統食をたずねて「食の記憶」第3回 -3/3-
![]() ![]() 大福寺製の浜名納豆、大福寺納豆。正月の年賀として檀家(だんか)へ贈ったものだという。今も住職の目の届く桶数しか仕込まない。
問い合わせ/大福寺 静岡県浜松市北区三ヶ日町福長220-3 Tel 053−525−0278 |
僧家に伝わる中世の滋味に辛さと香りを添える幻の薬味
さて、もう一つのヤマ場は、豆麹と一緒に仕込む辛皮(からかわ)造り。百年前に絶滅したといわれる幻の香辛料である。 しっとりと乾いた浜名納豆の中に、ときおりピリッと涼しいものを噛みあてる。 その正体は山椒の木の皮の塩漬け。山椒の実を上回る辛さは、長期熟成の桶の中の雑菌や虫を遠ざける役目もする。 刺激的なヒリヒリには、内臓の働きを活発にする作用があり、古くから健胃薬や防腐剤としても用いられてきた。 珍重されたものらしく、桃山時代の茶会記の献立にも辛皮の名がでてくる。江戸庶民は佃煮にしたり、眠気覚ましに使った。 明治以降、辛皮の記録はほとんどなく、今では作れる人も稀少だ。 山椒の幹と枝を、薪の火で1時間ほど釜ゆでして、じっくり蒸らす。湯気でも目がヒリヒリする。表皮を剥いで粗皮をこそげ落とし、薄皮をひと月甕(かめ)に塩漬けする。 粗皮むきは、ことに難行だ。 「1日中やっていると、指先がしびれて感覚がなくなります」 止めてしまおうかとも思うが、 「待ってくれている人がありますから」 と瑠璃子さんは思い直す。 芽や実を詰むのとはわけが違う。棘(とげ)だらけの腕の太さほどある山椒の木を、根元から伐(き)り倒して薬味にしてしまうのである。 酷暑にどれほどの手が、汗まみれで造り継いできたことか。 数百年の汗と重みがつまった見栄えのしない納豆こそ、国宝と呼ぶにふさわしい。 |
![]() 山椒の幹や枝を釜ゆでして皮を剥く。ゆで加減がよければ、するりときれいにむける。
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![]() 黒い表皮を木べらできれいに削り取って、一カ月間塩漬けした辛皮。
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