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にっぽんの伝統食をたずねて「食の記憶」第3回 -3/3-

浜納豆(静岡県浜松市三ヶ日町)


僧家に伝わる中世の滋味に辛さと香りを添える幻の薬味

大福寺製の浜名納豆、大福寺納豆。正月の年賀として檀家(だんか)へ贈ったものだという。今も住職の目の届く桶数しか仕込まない。
大福寺製の浜名納豆、大福寺納豆。正月の年賀として檀家(だんか)へ贈ったものだという。今も住職の目の届く桶数しか仕込まない。
問い合わせ/大福寺 静岡県浜松市北区三ヶ日町福長220-3
Tel 053−525−0278
僧家に伝わる中世の滋味に辛さと香りを添える幻の薬味

さて、もう一つのヤマ場は、豆麹と一緒に仕込む辛皮(からかわ)造り。百年前に絶滅したといわれる幻の香辛料である。

しっとりと乾いた浜名納豆の中に、ときおりピリッと涼しいものを噛みあてる。

その正体は山椒の木の皮の塩漬け。山椒の実を上回る辛さは、長期熟成の桶の中の雑菌や虫を遠ざける役目もする。

刺激的なヒリヒリには、内臓の働きを活発にする作用があり、古くから健胃薬や防腐剤としても用いられてきた。

珍重されたものらしく、桃山時代の茶会記の献立にも辛皮の名がでてくる。江戸庶民は佃煮にしたり、眠気覚ましに使った。

明治以降、辛皮の記録はほとんどなく、今では作れる人も稀少だ。

山椒の幹と枝を、薪の火で1時間ほど釜ゆでして、じっくり蒸らす。湯気でも目がヒリヒリする。表皮を剥いで粗皮をこそげ落とし、薄皮をひと月甕(かめ)に塩漬けする。

粗皮むきは、ことに難行だ。

「1日中やっていると、指先がしびれて感覚がなくなります」

止めてしまおうかとも思うが、

「待ってくれている人がありますから」

と瑠璃子さんは思い直す。

芽や実を詰むのとはわけが違う。棘(とげ)だらけの腕の太さほどある山椒の木を、根元から伐(き)り倒して薬味にしてしまうのである。

酷暑にどれほどの手が、汗まみれで造り継いできたことか。

数百年の汗と重みがつまった見栄えのしない納豆こそ、国宝と呼ぶにふさわしい。

山椒の幹や枝を釜ゆでして皮を剥く。ゆで加減がよければ、 するりときれいにむける。
山椒の幹や枝を釜ゆでして皮を剥く。ゆで加減がよければ、するりときれいにむける。
黒い表皮を木べらできれいに削り取って、一カ月間塩漬けした辛皮。
黒い表皮を木べらできれいに削り取って、一カ月間塩漬けした辛皮。

1枚1枚包丁で千切りにし、もう一度ゆで、塩抜きして準備完了。袋につめて桶の底に仕込む。
1枚1枚包丁で千切りにし、もう一度ゆで、塩抜きして準備完了。袋につめて桶の底に仕込む。

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