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魚柄仁之助の「もったいなくない食生活」 第6回

昭和14年のリッチな味“豚肉(とんにく)すゐとん”


昭和14年発行「主婦之友」(主婦之友社)の付録「國策お惣菜料理の作方二百種」より
昭和14年発行「主婦之友」(主婦之友社)の付録「國策お惣菜料理の作方二百種」より

魚柄 仁之助さん
Profile うおつか・じんのすけ
食文化史研究家。1956年、福岡県北九州生まれ。大学で農業を学び、その後バイク店を18カ月間、古道具店を10年間経営。以後、健康的で無駄のない食生活を提言し続ける。『冷蔵庫で食品を腐らす日本人』『うおつか流 大人の食育』など著書多数。最新刊は『冷蔵庫で食品を腐らせない日本人』。
すゐとんという料理、どーしても戦中戦後の“ひもじい”イメージがぬぐえないのだが、この豚肉すゐとんはヘルシーかつ旨い。まずダシがきいておりますな。一人前に対して昆布は5cm角、鰹節は1カップで十分。そして豚肉はスライス1枚でいいのだ。豚肉が多すぎるとギトギトと脂っぽくなるが、このくらいだとあっさりしていて、まるで「治部煮」みたいなもんですね。

そして問題の小麦粉が何ともニクイ。小麦粉と片栗粉を混合させることで食感がツルンとしてきます。3cm角に切って茹でると、京都の生八ッ橋みたいなモチモチ感が漂うのです。今回は3cm角に切った後、中心部をキュッとつまんで耳の形にして入れましたの。キュッとつまんだとこが、シコシコしてこれまたよろしい。まんなかシコシコ、まわりツルッ。昭和14年の日本人は何とも上品なすゐとんを食べておったんですね。

一般にスイトンと呼ばれておるのは、水と小麦粉とをこねて団子にし、そいつをビー玉くらいにちぎって茹でるものが多いのです。戦中戦後のレシピでは、小麦粉を水でゆるく溶き、お好み焼きの生地くらいにして、それをスプーンですくい、湯に落としております。量を増やすためなのでしょうが、あまり旨いものではありません。しかし昭和14年のすゐとんは「小麦粉ってこんなにも旨いのか!」と驚くほどリッチなものでありました。

今回、このすゐとんを再現してみて感じたのは、東北の郷土料理である「ひっつみ」や「はっと汁」がそれを受け継いでいるのではないか?ということです。輸入物の小麦でなく、細々とつくられている南部小麦を使い、北海道でつくられたジャガイモのでんぷんを使ったすゐとん、ひっつみ、はっと汁は、間違いなく日本産粉食文化と言えましょう。国際的な食料価格高騰…とか言われてますが、国産地粉大さじ3杯で腹いっぱいだから、コリャ安いもんだわ。

豚肉すゐとん 【豚肉すゐとん】
作り方
  1. ニンジン、ダイコンはいちょう切り、豚バラスライスは2〜3cmに切り、昆布と鰹節のだしに入れて煮る。
  2. 小麦粉と片栗粉を3対1の割合で混ぜ、少量の水を差しながら荒く水回しをする。
  3. 3分ほどこねたら1時間寝かせ、のし棒で2mm厚に伸ばし、3cm角に切る。
  4. これを鍋に入れて煮、塩としょうゆで味を整えたら、ぶつ切り長ネギを散らしてできあがり。
加藤タケ美=写真

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