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affインタビュー 第21回

内田 麻理香さん
料理と科学の共通点を見つけてから、家事が苦にならなくなりました。

私たちの日常には、さまざまな科学が潜んでいる。そんな切り口で科学の愉しさを伝える内田さんに、“食”への生かし方について聞きました。
内田麻理香さん

内田麻理香さん
Profile うちだ・まりか
1974年千葉県生まれ。97年、東京大学工学部応用化学科卒業後、同大学院工学系研究科応用化学専攻修士課程修了。同大学院博士課程中途退学後、専業主婦に。苦手な家事と好きな科学を結びつけて楽しもうと開設したホームページ『カソウケン(家庭科学総合研究所)』にアクセスが殺到。著書「カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ」も科学書としては異例のベストセラーに。現在は、東京大学工学部広報室特任教員を務める傍ら、TV出演や講演などを通じて科学の面白さを伝えている。
主婦の立場から、生活のあらゆる場面に応用されている科学について、わかりやすく伝えるサイエンスコミュニケーターとして、現在テレビなどにも活躍の場を広げている内田麻理香さん。家庭内で出合う科学を考え、解説する人気サイト「カソウケン(家庭科学総合研究所)」を2002年に立ち上げたのは、どんな思いがあったのだろう?

「実は、家事が苦手で。特に料理は苦手で、夫に『包丁を握らせるのが危ない』と言われたぐらい(笑)。苦手なものに取り組む毎日をなんとか楽しくしたいと突破口を探していて、そこで好きな科学と家事を結びつけてみようと始めたのが、『カソウケン』のサイトです」

結婚後の料理の失敗ネタには事欠かないと苦笑する彼女を救ったのも科学だった。

「なんとかして料理を上達させたいと思って料理本を見るんですけど、ただ作り方を紹介した本だと納得できない。でも、料理本を研究するうちに、科学的根拠まで説明されている本にもいくつか出合えたんです」

例えばダシのとり方。昆布とかつお節の両方を使うのは、化学物質の相乗効果を上手に利用するからなのだとか。

「旨味を感じる化学物質には、アミノ酸系と核酸系の二つがあり、混合すると舌で旨味を感じる感度が単独の場合と比べて数十倍に跳ね上がるんです。ダシを取る際に、昆布とかつお節の両方を使うのには、昆布に含まれるアミノ酸系の成分とかつお節に含まれる核酸系の成分の相乗効果でおいしく仕上るという科学的根拠があったんですね。理屈が分かるとひと手間かけてみようという気になるし、試してみるとやっぱりおいしいですよね」

内田家の週末の定番メニューのひとつというカレーの煮込み方も、科学的な根拠に裏打ちされているという。

「カレーを作る時、ときどき水っぽくなることがありますよね。あれは煮詰める時間が足りないからだと思っていませんか?実は水が蒸発するからとろみが出るのではなくて、小麦粉のでんぷん質が熱を与えることで糊化するから。小麦粉は糊化する温度が高いから、高温で煮込むととろみが出ます」

続いて「最近スポンジケーキをプロ並みに作るという無謀な目標がある」と話す彼女が、科学実験のように試行錯誤を繰り返して、行き着いた方法とは?

「スポンジの生地を泡立てる時に、まずハンドミキサーの高速で7分。それだけだとキメが荒いので低速で5分、さらに手で泡立てます。そうすると空気の穴が均一になって、ぼそぼそとした食感が残らないんです。高速で撹拌(かくはん)するだけでは光が乱反射するのですが、キメが整うと生地の表面が均一化されて全体がピカッと光ります。これが出来上がりの目安。ちょっとプロっぽく仕上がりますよ」

料理を科学的な視点で見るうち、「料理と科学って同じなんだと気づいた」と話す内田さん。

「大学時代の実験にも失敗がつきもので、科学は簡単に答えが出ないものだとつくづく感じました。料理も同じで、条件や気温、食材、使う道具が変われば、料理本通りに作っても失敗することもある。だから、必ず成功するとはいえないところに魅力を感じるようにもなれたんです。科学は決して難しいものではなく、生活で誰もが触れているもの。生活者のすべてが科学者なんです。そのことを一人でも多くの人に伝えて、科学の面白さを知ってもらうのが、これからの目標です」

坂本政十賜=写真
宇治有美子=構成

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