ホーム > 報道・広報 > 2012年aff(あふ)5月号 > aff(あふ)バックナンバー > 09年4月号目次 > 特集2 季節の食材まるかじり 第9回(1)
| つんと来る独特の刺激とさわやかな香りが、日本食のおいしさを引き立てるワサビ。 「ワサビア・ジャポニカ」の学名を持つ、ニッポンの香辛料の魅力をお伝えします。 |
![]() ![]() 脂身の多いトロの刺身は辛味成分が揮発しにくいので、ワサビも多めに
![]() 「ワサビのパッケージは刺身に直接触れるものですから、工場の衛生面には注意しています」と担当者
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辛味成分の性質を知って、魚によってワサビの量を変える
食べた瞬間、鼻につんと来る刺激。唐辛子の辛さが「熱い」と感じるのに対して、ワサビの辛さは「冷たい」と感じるとも言われています。「ワサビの辛味成分、アリルイソチオシアネートは揮発性が強く、空気中に出たこの辛味成分が鼻を刺激して、つんと来るように感じるんですよ」と説明するのは、東京都内の業務用加工ワサビメーカー、カネク株式会社の井上尚也研究室顧問。86歳の今も、ワサビのおいしさを追求しています。 井上さんによると、ワサビを食べる時には、この揮発性の強さを意識するとさらにおいしくなるそうです。すりおろして放っておくと、次第に辛味が弱まってしまうからです。「実は、魚の脂肪分がワサビの辛味成分を包み、揮発を遅らせる役割を果たします。にぎり寿司でも、脂肪分の多いトロなどでは、ワサビは多め、脂の少ない白身魚の場合はワサビを少なめにすると、ちょうど良いワサビの刺激が味わえます。ご家庭で刺身を食べる時などに組み合わせを試してみてください」。 もうひとつ、ワサビの辛味を楽しむコツはすり方だそうです。 「実は、ワサビの根をそのまま食べても辛くはありません。すりおろすことによって、ワサビの細胞膜を破壊し、酵素が作用して辛味成分が発生します。だから、できるだけ細かく丁寧にすり下ろすことが必要。「の」の字を書くように円を描きながら、練るようにすりおろしてください。おろし金より鮫皮がよいと言われるのも、ワサビの細胞をできるだけ細かく破壊できるからです」 学名が「ワサビア・ジャポニカ」であることからも分かるとおり、本ワサビは日本原産の香辛料です。古くから薬草として使用され、江戸時代には幕府への献上品として珍重されました。江戸時代後期になると、寿司にワサビが使用されるようになったといいます。 井上さんが勤めるカネクは、東京都青梅市に本社があり、江戸時代からのワサビ産地として知られる奥多摩町とも深い関係があります。「昭和40年代の初め頃、奥多摩の山に登ると、谷を隔てて向こう側の山の頂上から、ワサビ田が帯のように山裾に広がっていく景色が今でも忘れられません。最近では、ワサビ田もずいぶん減って、あの景色は二度と見られなくなってしまった。ワサビ田というと、長野県の安曇野の広々とした風景が思い浮かぶかもしれませんが、多くのワサビ田は、奥多摩と同様、険しい山間の沢沿いにあり、大変な労働条件で後継者不足に悩んでいるんです」 消費者の好みを考えながら本物のワサビの味を求めて
明治時代以降、寿司が全国に広まって、ワサビを食べる機会が増えました。本ワサビは数が少なく高価な上に、一度すりおろすと保存できないため、西洋ワサビを使用した加工品が次々に開発されました。粉ワサビ、練りワサビ、最近では、おろした本ワサビも混ぜた生ワサビが人気です。井上さんはこれらの多くの商品開発に携わってきたそうです。 「刺身を食べる時には、ワサビを刺身に直接つけるのが昔ながらの食べ方だと思っていましたが、最近では、ワサビを醤油に溶いて食べる人が増えてきています。われわれも、醤油に溶けやすい商品を開発しています」と、若い消費者の好みも考えているそうです。 「ただ、少し寂しいのが、すりおろした本ワサビを食べて『辛くない』と言われること。チューブ入りのワサビの味がすべてではありません。本ワサビの良さを多くの人に知ってもらい、あの風味を再現することが加工メーカーとして最大の目標なのです」。 |
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カネク株式会社研究室 常任顧問
井上尚也さん Profile
国内の西洋ワサビの主産地、北海道の出身。産地での経験を生かして、昭和39年にカネク株式会社(代表取締役社長・岩田みどり)に入社、研究部門で活躍。86歳となった今も研究室長として、新製品開発や品質管理に携わっている |